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へき地手当・特地勤務手当とは
離島の学校に赴任した先生、山間部の出張所に勤める職員。明細に「へき地手当」や「特地勤務手当」という欄があるかもしれません。どちらも勤務地の不便さに着目した手当ですが、根拠になる法律も、対象になる職員も違います。名前が似ているので、同じものと思われていることもあります。
この記事では、へき地手当と特地勤務手当のそれぞれの根拠、対象、額の決まり方、異動に伴う「準ずる手当」、転職したときにどうなるかを整理します。
地方公務員のへき地手当・特地勤務手当は、各自治体が条例と規則で定めます。対象となる学校や官署、支給割合は自治体ごとに異なります。この記事では特定の自治体の指定や額を示しません。自分の扱いは、所属の給与条例・手当の条例や規則と人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
2つの手当の根拠——地方自治法第204条
地方自治法第204条第2項は、条例で支給できる手当として、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)とへき地手当(これに準ずる手当を含む。)を別々に挙げています。同条第3項で、手当の額と支給方法は条例で定めることとされています。地方公務員法第25条第1項により、条例にもとづかない給与は支給できません。
2つの手当の違いを先にまとめると、次のとおりです。
| へき地手当 | 特地勤務手当 | |
|---|---|---|
| 主な対象 | へき地学校等に勤務する教員・職員 | 離島など生活の著しく不便な地の官署に勤務する職員 |
| 法律の根拠 | へき地教育振興法第5条の2 | 国は給与法第13条の2(自治体は条例) |
| 額の基準 | 文部科学省令の基準を参酌して条例で定める | 国は人事院規則9-55 |
| 異動時の手当 | へき地手当に準ずる手当(第5条の3) | 特地勤務手当に準ずる手当(給与法第14条) |
へき地手当——へき地教育振興法第5条の2
へき地教育振興法は、教育の機会均等の趣旨にもとづき、へき地における教育の水準の向上を図ることを目的としています(第1条)。第2条は「へき地学校」を、交通条件や自然的・経済的・文化的条件に恵まれない山間地、離島その他の地域にある公立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程と、学校給食の共同調理場と定義しています。
第5条の2第1項は、都道府県(指定都市が設置する学校などは指定都市)が、条例で指定するへき地学校等に勤務する教員と職員にへき地手当を支給しなければならないとしています。「支給できる」ではなく「しなければならない」と書かれているのが特徴です。月額は、文部科学省令で定める基準を参酌して条例で定めます(同条第2項)。
その基準が、へき地教育振興法施行規則です。
- 学校ごとに、駅や停留所、病院などまでの距離や交通の条件から点数を算定し、合計点数でへき地学校を指定する。45点から79点が一級、以下段階を追って200点以上が五級(第3条第1項)
- 35点から44点の学校は「へき地学校に準ずる学校」として指定する(第3条第2項)
- へき地手当の月額は、給料と扶養手当の月額の合計額に、級別に応じて100分の25を超えない範囲で定める割合を掛けた額(第8条第1項)
点数には、積雪やなだれで道路が40日以上交通困難になる場合の補正なども定められています(第5条)。どの学校が何級に当たるかは、都道府県・指定都市の条例と規則で決まります。
特地勤務手当——給与法第13条の2と人事院規則9-55
国家公務員の特地勤務手当は、給与法第13条の2第1項で、離島その他の生活の著しく不便な地に所在する官署として人事院規則で定めるもの(特地官署)に勤務する職員に支給するとされています。月額は、俸給と扶養手当の月額の合計額の100分の25を超えない範囲で人事院規則が定めます(同条第2項)。
人事院規則9-55第2条は、特地官署の級別区分に応じて次の支給割合を定めています。
| 級別区分 | 支給割合(俸給+扶養手当の月額に対して) |
|---|---|
| 六級地 | 100分の25 |
| 五級地 | 100分の20 |
| 四級地 | 100分の16 |
| 三級地 | 100分の12 |
| 二級地 | 100分の8 |
| 一級地 | 100分の4 |
級別区分は冬期(11月1日から翌年3月31日まで)とそれ以外で分けて定められており(第2条第2項)、冬期以外は支給しない官署もあります(第3条)。
自治体の職員にも、離島の支所や山間部の出張所などに勤める職員に特地勤務手当やこれに準ずる手当を置いている自治体があります。対象や割合は条例・規則で確かめてください。
異動に伴う「準ずる手当」
どちらの手当にも、異動して住居を移した人に一定期間付く「準ずる手当」があります。
国の特地勤務手当に準ずる手当は、官署を異にする異動に伴って住居を移転し、異動先が特地官署または準特地官署に当たる場合に、異動の日から3年以内(条件に該当すればさらに3年以内)、俸給と扶養手当の月額の合計額の100分の6を超えない範囲で支給するとされています(給与法第14条第1項、人事院規則9-55第4条)。
へき地手当に準ずる手当も同じ考え方で、在勤地を異にする異動に伴って住居を移転し、異動先がへき地学校等などに当たる場合に支給するとされています(へき地教育振興法第5条の3)。施行規則は、支給を住居を移転した日から始め、異動の日から3年(任命権者が必要と認めた場合は6年)で終えるとしています(第10条)。
準ずる手当は「その場所に勤めていること」ではなく「異動して移り住んだこと」に着目した手当です。同じ学校・官署に勤めていても、地元出身で異動に伴う転居がない人には付かないことがあります。
転職するとどうなるか
1. 民間には法律上の同じ手当はない
民間企業には、へき地手当や特地勤務手当にあたる法律上の定めはありません。遠隔地勤務手当、離島手当、赴任手当などを置くかどうかは、会社の賃金規程で決まります。
2. 勤務地に付く手当は、勤務地が変われば無くなる
どちらの手当も、勤務する学校や官署の所在で決まります。転職して勤務地が変われば付かなくなります。いまの明細から比べるときは、これらの手当を外した額で比べてください。給料と扶養手当の合計に割合を掛ける作りなので、割合が高い級地では差が大きくなります。
3. 時間外の単価の土台も変わる
国の給与法第19条は、勤務1時間当たりの給与額を俸給の月額と地域手当・広域異動手当・研究員調整手当の月額から計算するとしています。特地勤務手当はここに入っていません。民間の残業代の土台に何が入るかは会社の規程によります。時間外勤務手当の計算は時間外勤務手当の記事にまとめています。
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手続きと確認のしかた
確認するとよいのは次の点です。
- 所属の条例・規則:自分の学校・官署が何級に指定されているか、支給割合、冬期とそれ以外で区分が違うか
- 指定の見直し:学校の統合や移転、交通条件の変化で指定が変わることがある(へき地教育振興法施行規則第12条)
- 準ずる手当の期間:異動の日から何年で終わるか、延長の条件は何か
- 扶養手当との関係:給料(俸給)と扶養手当の合計に割合を掛けるので、扶養の届出が額に影響する
扶養手当の仕組みは扶養手当の記事、単身で赴任している場合は単身赴任手当の記事にまとめています。
誤解されやすい点
「へき地手当と特地勤務手当は同じもの」と思い込む
地方自治法第204条第2項は、2つを別の手当として挙げています。へき地手当はへき地教育振興法にもとづく教職員の手当、特地勤務手当は特地官署に勤務する職員の手当です。
「へき地に住んでいれば付く」と思い込む
どちらも勤務する学校・官署の指定で決まります(へき地教育振興法第5条の2、給与法第13条の2)。
「準ずる手当はずっと付く」と思い込む
国の特地勤務手当に準ずる手当は異動の日から3年以内が原則です(給与法第14条第1項)。へき地手当に準ずる手当も、施行規則で3年(必要と認められれば6年)とされています(第10条)。
「割合は給料だけに掛かる」と思い込む
国の特地勤務手当も、へき地手当の基準も、給料(俸給)と扶養手当の月額の合計額に割合を掛けます(人事院規則9-55第2条、へき地教育振興法施行規則第8条)。
まとめ
- へき地手当と特地勤務手当は、地方自治法第204条第2項で別々に挙げられた手当。どちらも条例で定める
- へき地手当は、条例で指定するへき地学校等に勤務する教職員に、都道府県・指定都市が支給しなければならない(へき地教育振興法第5条の2)。基準は給料と扶養手当の月額の合計の100分の25以内(施行規則第8条)
- 国の特地勤務手当は、離島など生活の著しく不便な地の特地官署に勤務する職員に付く。割合は級地に応じて100分の4から100分の25(給与法第13条の2、人事院規則9-55第2条)
- 異動して住居を移した人には、準ずる手当が原則3年以内付く(給与法第14条、へき地教育振興法第5条の3)
- 民間には法律上の定めはない。比べるときは勤務地に付く手当を外して比べる
よくある質問
事務職でもへき地手当は付きますか
へき地教育振興法第5条の2は、へき地学校等に勤務する「教員及び職員」を対象にしています。学校に勤務する事務職員や、共同調理場に勤務する職員も条文上の対象に含まれます。一方で、市役所の支所など学校以外に勤める職員は、へき地手当ではなく、自治体が条例で定める特地勤務手当などの対象かどうかで決まります。自分がどちらの対象かは、所属の条例と人事担当課で確かめてください。
へき地手当・特地勤務手当は退職手当の計算に入りますか
一般的には、退職手当は給料月額をもとに計算されるので、これらの手当は計算の土台に入らないのが一般的な取扱いです。計算の土台となる額や加算の扱いは、各自治体の退職手当条例で定められています。自分の場合は、退職手当条例と人事担当課で確かめてください。退職手当の計算は退職手当の基本額の記事にまとめています。
へき地手当・特地勤務手当は税金の対象になりますか
一般的には、これらの手当も給与の一部として、所得税の源泉徴収の対象になります。共済の掛金の計算にどう入るかは、所属の共済組合の案内で確かめてください。具体的な税額は扶養の状況などで変わるので、明細と税務署の案内で確認するのが確実です。