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時間外勤務手当の仕組み|割増率と上限
予算編成や議会の前、災害対応のときなど、公務員にも時間外勤務が続く時期があります。その時間に対して支払われるのが時間外勤務手当です(国の給与法では「超過勤務手当」と呼びます)。明細で額は見ていても、1時間あたりいくらで、何割増しになっているのかまで確かめる機会は少ないかもしれません。
この記事では、時間外勤務手当の根拠、1時間当たりの単価の出し方、割増率、月60時間を超えたときの扱い、管理職の扱い、民間の残業代との違いを整理します。時間外勤務を命じられる時間の上限(月45時間・年360時間など)は時間外勤務の上限規制にまとめているので、この記事では手当の計算を中心に書きます。
地方公務員の時間外勤務手当は、各自治体が条例と規則で定めます。この記事では特定の自治体の単価や割合を示しません。自分の扱いは、所属の給与条例・規則と人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
時間外勤務手当の根拠——地方自治法と労働基準法
地方自治法第204条第2項は、条例で支給できる手当の1つとして時間外勤務手当を挙げ、休日勤務手当、夜間勤務手当とは別に並べています。同条第3項で、額と支給方法は条例で定めることとされています。
地方公務員には、労働基準法の多くの規定が適用されます。地方公務員法第58条第3項は、職員に適用しない労働基準法の規定を列挙していますが、割増賃金を定めた第37条はその中に挙げられていません。そのため自治体の条例も、労働基準法第37条の水準を下回らない形で定められているのが一般的です。
労働基準法第37条の割増率は次のとおりです。
| 区分 | 割増率 |
|---|---|
| 時間外・休日の労働 | 2割5分以上5割以下の範囲で政令で定める率以上(第1項) |
| 時間外労働が月60時間を超えた部分 | 5割以上(第1項ただし書) |
| 午後10時から午前5時までの労働 | 2割5分以上(第4項) |
1時間当たりの単価——給与法第19条
国家公務員の場合、手当の計算の土台になるのは勤務1時間当たりの給与額です。給与法第19条は、これを次のように定めています。
(俸給月額+これに対する地域手当などの月額)× 12 ÷(1週間の勤務時間 × 52)
国の1週間の勤務時間は、休憩時間を除き38時間45分です(勤務時間法第5条第1項)。分母は38.75時間×52週=2,015時間になります。
ここで押さえておきたいのは、単価に入る手当と入らない手当です。国の条文では、俸給に加えて地域手当、広域異動手当、研究員調整手当が入ります。扶養手当、住居手当、通勤手当は入りません。地域手当の仕組みは地域手当の記事にまとめています。
割増率——人事院規則9-97第2条
給与法第16条第1項は、正規の勤務時間を超えて勤務することを命じられた職員に、勤務した全時間に対して、1時間当たりの給与額に100分の125から100分の150までの範囲で人事院規則が定める割合を掛けた額を支給するとしています。その割合は人事院規則9-97第2条で次のとおりです。
| 勤務の区分 | 割合 |
|---|---|
| 正規の勤務時間が割り振られた日の勤務(平日の残業など) | 100分の125 |
| それ以外の日の勤務(週休日の勤務など) | 100分の135 |
| 上の勤務が午後10時から午前5時までの場合 | それぞれに100分の25を加算 |
あわせて、関連する手当も条文で定められています。
| 手当 | 内容 |
|---|---|
| 休日給(第17条) | 祝日や年末年始の休日に、正規の勤務時間中に勤務したとき。100分の125から100分の150の範囲で人事院規則が定める割合 |
| 夜勤手当(第18条) | 正規の勤務時間として午後10時から午前5時までに勤務したとき。100分の25 |
月60時間を超えたとき——第16条第3項と超勤代休時間
時間外勤務が1か月について60時間を超えた場合、その超えた時間には、第1項の割合にかかわらず100分の150(午後10時から午前5時までは100分の175)を掛けた額を支給するとされています(給与法第16条第3項)。
この60時間を超えた分については、超勤代休時間という仕組みがあります。勤務時間法第13条の2は、60時間超の手当を支給すべき職員に対し、手当の一部の支給に代えて、一定の期間内の勤務日の勤務時間を「超勤代休時間」として指定できるとしています。指定された時間に勤務しなかったときは、100分の150と通常の割合との差の部分は支給しなくてよいとされています(給与法第16条第4項)。休みで受け取るか、手当で受け取るかの違いです。
管理職は対象外——第19条の8
国の条文では、時間外勤務手当(超過勤務手当)、休日給、夜勤手当の規定は、管理監督職員等と指定職俸給表の職員には適用しないとされています(給与法第19条の8第1項・第2項)。代わりに、管理監督職員等が臨時・緊急の必要で週休日などに勤務したときは、管理職員特別勤務手当を支給するとされています(第19条の3)。
自治体でも、管理職手当を受ける職員には時間外勤務手当を支給しない扱いが条例で定められていることがあります。どの職からが対象外になるかは、所属の給与条例で確かめてください。
転職するとどうなるか
1. 民間の割増率の最低ラインは、労働基準法第37条
民間企業の残業代も、労働基準法第37条の割増率が最低ラインです。月60時間を超えた分は5割以上、深夜は2割5分以上とされています。率の水準そのものは、公務員の制度と大きくは変わりません。
2. 単価の土台が会社ごとに違う
労働基準法第37条第5項は、割増賃金の基礎となる賃金に、家族手当や通勤手当などを入れないとしています。何が基礎に入るかは、会社の賃金の組み立てで変わります。基本給を低めにして手当を厚くしている会社では、同じ月給でも残業代の単価が変わります。
3. 固定残業代(みなし残業)の有無を確かめる
民間の求人では、月給に一定時間分の残業代を含める固定残業代の形がよく見られます。その場合、何時間分が含まれているのか、それを超えた分は別に支払われるのかを、求人票と労働条件通知書で確かめてください。また、労働基準法第41条は、監督若しくは管理の地位にある者には労働時間・休日に関する規定を適用しないとしています。管理職として入社する場合は、残業代の扱いが変わる可能性があります。
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誤解されやすい点
「公務員の時間外勤務手当は予算の範囲で打ち切り」と思い込む
国の条文は、正規の勤務時間を超えて勤務することを命じられた職員に、勤務した全時間に対して支給するとしています(給与法第16条第1項)。手当は命じられた勤務に対するもので、時間外勤務を命じる・命じないの管理とは別の話です。
「公務員には月60時間超の割増がない」と思い込む
国では、月60時間を超えた分に100分の150の割合が定められています(給与法第16条第3項)。地方公務員にも労働基準法第37条が適用されます。
「単価は給料だけで決まる」と思い込む
国の単価には地域手当なども入ります(給与法第19条)。一方、扶養手当や通勤手当は入りません。
「休日に出勤すればすべて休日給」と思い込む
国では、週休日(土日など)の勤務は時間外勤務の扱いで100分の135、祝日法による休日などの正規の勤務時間中の勤務は休日給の扱いです(第16条・第17条)。区分が違います。
まとめ
- 時間外勤務手当は、地方自治法第204条第2項にもとづき条例で支給できる手当の1つ。地方公務員にも労働基準法第37条が適用される(地方公務員法第58条第3項に挙げられていない)
- 国では、勤務1時間当たりの給与額×割増率で計算する。単価は(俸給+地域手当など)×12÷(週38時間45分×52)(給与法第19条)
- 割増率は、平日の残業が100分の125、週休日などの勤務が100分の135、深夜はそれぞれ100分の25を加算(人事院規則9-97第2条)
- 月60時間を超えた分は100分の150。超勤代休時間を指定して、一部を休みに代えることができる(給与法第16条第3項・第4項)
- 管理監督職員等には適用しない(第19条の8)。転職先では、固定残業代の時間数と管理職の扱いを確かめる
よくある質問
時間外勤務手当は1分単位で計算されますか
端数の扱いは、この記事で確かめた法律の条文には書かれていません。国の給与法第16条は「勤務1時間につき」の額を定めていますが、端数の時間や金額の処理は、条例の施行規則など下位の定めで扱われることが一般的です。自分の扱いは、人事担当課や給与担当で確かめてください。民間企業でも、時間の端数処理は会社の規程と労働基準法の考え方で決まるので、入社前に就業規則を確かめておくと安心です。
テレワークや在宅での時間外勤務にも手当は出ますか
国の条文は、勤務する場所ではなく、正規の勤務時間を超えて勤務することを命じられたかどうかで支給を決めています。給与法第16条第1項は、正規の勤務時間を超えて勤務することを命じられた職員に、勤務した全時間に対して支給するとしています。自宅で勤務した時間をどう記録し、どう命令を受けるかは、各自治体のテレワークの規程で定められています。テレワークの制度はテレワークの記事にまとめています。
時間外勤務手当も共済の掛金や税金の対象になりますか
一般的には、時間外勤務手当も給与の一部として、所得税の源泉徴収や共済の掛金の計算の対象になります。時間外の多い月は給与の額が増えるので、源泉徴収される税額も変わるのが一般的な取扱いです。共済の掛金の算定にどの月の給与が使われるかは、所属の共済組合の案内で確かめてください。具体的な税額は扶養の状況などで変わるので、明細と税務署の案内で確認するのが確実です。