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住居手当の仕組み|持ち家と賃貸で何が違うか
引っ越しをして家賃が変わった、家を買って賃貸を出た。住まいが変わると、給与明細の「住居手当」の欄も変わることがあります。賃貸に住んでいたころは付いていた手当が、持ち家に移ったら付かなくなった、という経験をした方もいるかもしれません。
住居手当は、自ら住むために住宅を借り受け、一定の額を超える家賃を支払っている職員に支給する手当です。国では、対象になる職員、家賃に応じた月額の計算、支給されない場合、届出と支給の始期が、法律と人事院規則に書かれています。この記事では、住居手当の条文、賃貸と持ち家の違い、額の計算、届出の期限、転職との関係を整理します。
地方公務員の住居手当は、各自治体が条例で対象と額を定めます。この記事では特定の自治体の額を示しません。国の額は法律の条文で確かめたものだけを書いています。自分の扱いは、所属の給与条例と人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
住居手当の根拠——地方自治法第204条と給与条例
地方自治法第204条第2項は、条例で支給できる手当の1つに住居手当を挙げています。同条第3項は、手当の額と支給方法を条例で定めなければならないとしています。地方公務員法第25条第1項は、職員の給与は給与条例にもとづいて支給しなければならず、条例にもとづかずに金銭を支給してはならないとしています。
自治体の給与条例では、住居手当について次のようなことが定められているのが一般的です。
| 定めること | 内容 |
|---|---|
| 支給の対象 | 借家・借間に住む職員か、ほかに対象があるか |
| 家賃の下限 | いくらを超える家賃を払っている職員に支給するか |
| 月額の計算 | 家賃に応じた額の出し方と上限 |
| 支給しない場合 | 公舎・宿舎に住む職員、親族から借りている場合など |
| 届出と支給の始期・終期 | いつまでに届け出れば、いつから支給するか |
国の住居手当——給与法第11条の10
国家公務員の住居手当は、給与法第11条の10に定められています。多くの自治体の制度はこれを参考にしているので、国の形を知っておくと自分の条例も読みやすくなります。
第1項は、次のいずれかに当たる職員に支給するとしています。
| 号 | 対象 |
|---|---|
| 第1号 | 自ら居住するため住宅(貸間を含む)を借り受け、月額16,000円を超える家賃を支払っている職員 |
| 第2号 | 単身赴任手当を受ける職員で、配偶者が住むための住宅を借り受け、月額16,000円を超える家賃を支払っているもの など |
第1号のかっこ書きは、国家公務員宿舎法の有料宿舎を貸与されて使用料を払っている職員などを除いています。宿舎に住んでいる職員は、家賃にあたるものを払っていても対象になりません。
家賃に応じた月額の計算——第11条の10第2項
第2項第1号は、家賃の月額に応じて手当の額を次のように定めています。
| 家賃の月額 | 住居手当の月額 |
|---|---|
| 27,000円以下 | 家賃の月額 − 16,000円 |
| 27,000円超 | 11,000円 +(家賃の月額 − 27,000円)× 1/2(加算は17,000円まで) |
計算した額に100円未満の端数があるときは切り捨てます。条文から計算すると、たとえば次のようになります。
| 家賃の月額 | 住居手当の月額(計算例) |
|---|---|
| 20,000円 | 4,000円 |
| 27,000円 | 11,000円 |
| 40,000円 | 17,500円 |
| 61,000円以上 | 28,000円(上限) |
ポイントは、家賃が上がるほど手当も上がるが、増え方は途中から半分になり、家賃61,000円で頭打ちになることです。家賃の高い住宅に移っても、上限を超えた部分は手当に反映されません。
第2項第2号は、単身赴任で配偶者の住宅の家賃を払っている場合(第1項第2号)は、同じ計算で出した額の2分の1としています。自分の住まいと配偶者の住まいの両方に当たる場合は、両方の額を合計します。
持ち家と賃貸で何が違うか
国の現行の給与法第11条の10第1項は、対象を住宅を「借り受け」て家賃を支払っている職員として書いています。自分が所有する住宅に住む職員を対象にする号はありません。国では、賃貸に住んでいれば条件次第で支給され、持ち家に住んでいれば支給されない、というのが条文の形です。
自治体では、条例で対象が定められます。持ち家の扱いを含め、条例の定め方は自治体ごとに違うことがあります。持ち家に係る手当があるかどうかは、自分の自治体の給与条例で確かめてください。
借りていても支給されない場合——人事院規則9-54第2条
人事院規則9-54第2条は、第1項第1号から除く職員として、次の2つを挙げています。
| 号 | 支給されない職員 |
|---|---|
| 第1号 | 地方公共団体や独立行政法人造幣局などの法人から貸与された職員宿舎に住んでいる職員 |
| 第2号 | 扶養親族が所有する住宅、または配偶者・父母・配偶者の父母(扶養親族以外)が所有し、または借り受けて住んでいる住宅を借りて住んでいる職員 など |
第2号は、身内の家を借りて家賃を払っている場合のことです。親が持っている家に住んで親に家賃を払っても、国では住居手当の対象になりません。家賃を払っているかどうかだけで決まるわけではない、という点は押さえておきたいところです。
手続きと期限——届出から15日
国では、住居手当の手続きが人事院規則9-54第5条から第8条に定められています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 届出(第5条第1項) | 要件を満たしたときは、証明する書類を付けて住居届で速やかに届け出る。住宅や家賃の額などに変更があったときも同じ |
| 確認と決定(第6条) | 届出の事実を確認し、月額を決定または改定する |
| 家賃が明確でないとき(第7条) | 家賃と食費などを併せて払っている場合は、人事院の基準で家賃に相当する額を算定する |
| 支給の始期(第8条第1項) | 要件を満たした日の属する月の翌月から(その日が月の初日なら、その月から) |
| 届出が遅れたとき(同項ただし書) | 事実が生じた日から15日を経過した後に届け出たときは、届出を受理した日の属する月の翌月から |
| 額の改定(第8条第2項) | 変更の事実が生じた日の属する月の翌月から。増額の場合は15日の規定が準用される |
転居したら、まず住居届です。引っ越してから16日目以降に届け出ると、支給の始まりがずれて、その間の手当は受けられません。反対に、家を買って賃貸を出たのに届け出ないまま受け続けると、後から返納を求められることがあります。自治体の届出の期限と様式は、規則や人事担当課の案内で確かめてください。
転職するとどうなるか
1. 民間の住宅手当は会社ごとに違う
民間企業の住宅手当は、法律で決まったものではなく、会社の賃金規程で決まります。置いていない会社もあれば、賃貸だけを対象にする会社、持ち家にも付ける会社、一定の年齢や勤続年数までに限る会社もあります。内定の段階で、住宅手当の有無、対象、額、期限を確かめると、月々の差が見えます。
2. 手当の代わりに借上げ社宅を用意する会社もある
会社が住宅を借りて社員に貸す形(借上げ社宅)をとる会社もあります。この場合は、手当として現金で受け取るのではなく、家賃の一部を自己負担する形になります。税や社会保険での扱いは、現金の手当か住宅の貸与かで変わることがあるので、転職先の人事担当や税務署で確かめてください。
3. 公務員どうしの転職でも条件が変わる
ほかの自治体や国に移る場合は、移った先の条例や規則が適用されます。持ち家の扱いや家賃の下限が違うこともあるので、経験者採用で移るときは確かめてください。給料と手当の全体の組み立ては月給の計算にまとめています。
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誤解されやすい点
「家賃を払っていれば必ず住居手当が付く」と思い込む
国では、家賃が月額16,000円を超えることが要件で(給与法第11条の10第1項第1号)、宿舎に住んでいる場合や、親族の家を借りている場合は対象から外れます(人事院規則9-54第2条)。
「家賃に比例して手当が増える」と思い込む
国の計算では、家賃27,000円を超えた部分は2分の1しか反映されず、加算は17,000円までです(第11条の10第2項第1号)。上限は月額28,000円になります。
「届け出れば引っ越した月からさかのぼって付く」と思い込む
国では、支給は要件を満たした日の属する月の翌月からで、15日を過ぎて届け出ると届出を受理した日の属する月の翌月からになります(人事院規則9-54第8条第1項)。
「持ち家でも住宅ローンを払っていれば対象になる」と思い込む
国の現行の条文は、住宅を借り受けて家賃を払っている職員を対象にしています。住宅ローンの返済は家賃ではありません。自治体の扱いは条例で確かめてください。
まとめ
- 住居手当は、地方自治法第204条第2項にもとづき条例で支給できる手当の1つ。対象と額は自治体の条例で決まる
- 国では、自ら住むために住宅を借り受け、月額16,000円を超える家賃を払っている職員が対象(給与法第11条の10第1項)
- 国の月額は、家賃27,000円以下なら家賃−16,000円、27,000円超なら11,000円に超えた分の2分の1(17,000円まで)を加える。上限は28,000円(同条第2項)
- 国の現行の条文に、持ち家の職員を対象にする号はない。自治体の扱いは条例で確かめる
- 宿舎に住む職員や、親族の家を借りている職員は対象外(人事院規則9-54第2条)
- 事実が生じてから15日を過ぎて届け出ると、支給の始まりが届出の受理日の翌月にずれる(同規則第8条)
よくある質問
引っ越して家賃が変わったら、何をすればよいですか
国の場合、住居届を速やかに出すのが基本です。人事院規則9-54第5条第1項は、住居手当を受けている職員の住宅や家賃の額などに変更があったときも届け出るとしています。家賃が上がって手当が増える場合、変更の事実が生じた日から15日を過ぎて届け出ると、増額の始まりが届出の受理日の属する月の翌月にずれます(第8条第2項)。届出には、賃貸借契約書など家賃の額が分かる書類の提出を求められるのが一般的です。自治体では様式と添付書類が規則で決まっているので、転居が決まった段階で人事担当課に確かめておくと安心です。
家を買ったら、住居手当はどうなりますか
国では、持ち家に移ると住居手当の要件を欠くことになります。国の給与法第11条の10第1項は、住宅を借り受けて家賃を払っている職員を対象にしているためです。支給は要件を欠くに至った日の属する月で終わります(人事院規則9-54第8条第1項)。届け出ないまま受け続けると、後から返納を求められることがあります。自治体によっては条例で持ち家の扱いが違うこともあるので、購入が決まったら給与条例と人事担当課で確かめてください。住宅ローン控除など税の扱いは別の制度なので、税務署や国税庁の案内で確認してください。
退職した月の住居手当はどうなりますか
国では、要件を欠くに至った日の属する月までが支給の終期とされています。人事院規則9-54第8条第1項は、住居手当の支給は要件を欠くに至った日の属する月をもって終わると定めています。ただし、その日が月の初日のときは前月で終わります。退職すれば職員ではなくなるので、退職月までが一般的な扱いですが、月の途中で退職したときの扱いは、条例と規則で確かめてください。転職先に住宅手当があるときは、転職先の規程にしたがって改めて申請します。社宅や寮を利用する場合は、入居の時期と退職の時期を合わせて考えておくと、住まいの空白ができにくくなります。