制度とお金 / 年金
職域加算と年金払い退職給付
「公務員の年金には3階部分がある」。この言葉は、いまも聞きます。ただし、その3階の中身は、平成27年10月で入れ替わっています。
一元化の前にあったのは「職域加算(職域部分)」で、これは廃止されました。いまあるのは「退職等年金給付」——日本年金機構の説明では「年金払い退職給付」——です。名前が違うだけではなく、仕組みが違います。そして、転職を考える方にとって、この部分が「公務員を辞めると止まる年金」の実体です。
この記事では、退職等年金給付がどう積み上がり、いつ、どう受け取れるのかを、地方公務員等共済組合法の条文と共済組合の公式の説明で整理します。年金は個別性が高い分野なので、制度の骨を書きます。自分の付与額の累計と見込みは、共済組合で確認してください。一元化の全体は被用者年金一元化で何が変わったかに書いています。
職域加算は廃止され、退職等年金給付が創設された
KKR(国家公務員共済組合連合会)の説明によれば、一元化の前の共済年金には厚生年金に相当する部分に加えて職域部分があり、平成27年10月の一元化で廃止されました。代わって創設されたのが退職等年金給付です。地方公務員等共済組合法第76条は、その種類を次のように定めています。
> この法律による退職等年金給付は、次に掲げる給付とする。> 一 退職年金 二 公務障害年金 三 公務遺族年金
転職を考える方に関わるのは、退職年金です。
職域加算と退職等年金給付の違いは、「仕組み」にあります。地方職員共済組合の説明によれば、退職等年金給付は積立方式で、給付の設計はキャッシュ・バランス方式、保険料率の上限は1.5パーセントと法律で定められています。職域加算が厚生年金相当部分と一体で計算される「上乗せ」だったのに対し、退職等年金給付は、自分の掛金と利子で積み上がる別の口座のような仕組みです。
どう積み上がるか——付与率と基準利率
第77条第1項は、退職等年金給付の額の基礎となる「給付算定基礎額」を、こう定めています。
> 組合員期間の計算の基礎となる各月の掛金の標準となつた標準報酬の月額と標準期末手当等の額に当該各月において適用される付与率を乗じて得た額に当該各月から当該給付事由が生じた日の前日の属する月までの期間に応ずる利子に相当する額を加えた額の総額とする。
分解すると、毎月、次の計算が積み上がります。
| 要素 | 中身 | 誰が決めるか |
|---|---|---|
| 標準報酬の月額・標準期末手当等の額 | その月の給与と期末手当等の標準額 | 給与で決まる |
| 付与率 | それに乗じる率 | 地方公務員共済組合連合会の定款(第2項) |
| 利子 | 掛金の払込みの月から給付事由の前月までの期間について、基準利率で複利(第3項) | 基準利率は毎年9月30日までに、国債の利回りを基礎として連合会の定款で定める(第4項) |
つまり、毎月の給与に付与率を掛けた「付与額」が積み上がり、それに基準利率で複利の利子が付く。その総額が給付算定基礎額です。組合員でいる月だけ、付与額が増えます。組合員でなくなれば、付与額の積み増しは止まり、それまでの分に利子が付き続ける形です。
どう受け取るか——終身と有期の2本立て
第87条は、退職年金を2つに分けています。
> 退職年金は、支給期間を終身とするもの(以下「終身退職年金」という。)及び支給期間を二百四十月とするもの(以下「有期退職年金」という。)とする。
| 種類 | 支給の期間 |
|---|---|
| 終身退職年金 | 終身 |
| 有期退職年金 | 240か月(20年)。申出により120か月(10年)に短縮できる(第2項) |
第89条第2項は、終身退職年金の算定の基礎となる額を給付算定基礎額の2分の1とし、組合員期間が10年に満たないときはさらに2分の1と定めています。つまり、給付算定基礎額の半分が終身、半分が有期に振り分けられる形で、組合員期間が10年未満だと終身の側が半分になります。終身退職年金の額は、その基礎額を受給権者の年齢に応じた終身年金現価率で除して計算します(第1項)。
有期退職年金の短縮の申出は、給付事由が生じた日から6か月以内に、退職年金の支給の請求と同時に行う必要があります(第87条第3項)。
いつ受け取れるか——1年以上の組合員期間と65歳
第88条第1項は、受給権者をこう定めています。
> 一年以上の引き続く組合員期間を有する者が退職した後に六十五歳に達したとき(その者が組合員である場合を除く。)、又は六十五歳に達した日以後に退職したときは、その者に退職年金を支給する。
要件は2つです。1年以上の引き続く組合員期間があること。そして、退職した後に65歳に達すること(または65歳以後に退職すること)。転職して民間に移った方も、1年以上の組合員期間があれば、65歳に達したときに退職年金を受け取れます。
転職するとどうなるか
公務員から民間に転職するとき、退職等年金給付で効いてくる点は3つです。
1. 付与額の積み増しは止まる。積み上がった分に利子は付き続ける
組合員でなくなった月から、新しい付与額は乗りません。それまでの給付算定基礎額は残り、基準利率で利子が付きます。
2. 組合員期間が1年以上あれば、65歳で受け取れる
第88条の要件です。退職した後に65歳に達したときに支給されます。
3. 組合員期間が10年未満だと、終身の側が半分になる
第89条第2項の定めです。10年の手前で辞める方は、終身退職年金の基礎額が給付算定基礎額の4分の1になります。有期の側の扱いは、共済組合に確認してください。
なお、平成27年9月以前から公務員だった方は、廃止された職域加算に相当する「経過的職域加算額」を、退職等年金給付とは別に持っています。その扱いは被用者年金一元化で何が変わったかに書いています。
手続きと期限
退職等年金給付の請求は、65歳に達したときに共済組合に行います。転職して民間に移った方も、請求先は在職していた共済組合です。退職時に共済組合から交付される書類と、組合員の番号は保管しておいてください。
有期退職年金の支給期間を120か月に短縮したい場合は、給付事由が生じた日から6か月以内に、支給の請求と同時に申し出ます(第87条第3項)。期限を過ぎると、240か月のままになります。
付与率と基準利率は、連合会の定款で定められ、基準利率は毎年見直されます。自分の給付算定基礎額の見込みは、共済組合に照会してください。退職の意思を伝えなくても、制度の照会として聞けます。
誤解されやすい点
「職域加算がまだある」と思い込む
平成27年10月に廃止されました。いまあるのは退職等年金給付です。平成27年9月以前の期間には経過的職域加算額が残ります。
「辞めると3階部分が消える」と思い込む
積み増しが止まるだけです。積み上がった分に利子が付き、1年以上の組合員期間があれば65歳で受け取れます。
「退職等年金給付は全部終身でもらえる」と思い込む
給付算定基礎額の2分の1が終身、2分の1が有期(240か月)です。組合員期間が10年未満なら終身の側はさらに半分です。
「退職金と同じように退職時にもらえる」と思い込む
年金です。65歳からの支給で、退職時に一時金で受け取る仕組みではありません。
まとめ
- 一元化で職域加算は廃止され、退職等年金給付(退職年金・公務障害年金・公務遺族年金)が創設されました(地方公務員等共済組合法第76条)。積立方式で、保険料率の上限は1.5パーセントです
- 給付算定基礎額は、毎月の標準報酬に付与率を乗じた付与額の総額に、基準利率で複利の利子を加えた額です(第77条)。組合員でいる月だけ、付与額が増えます
- 退職年金は終身退職年金と有期退職年金(240か月、申出で120か月)の2本立てで、給付算定基礎額の2分の1ずつが基礎になります。組合員期間が10年未満なら終身の側はさらに2分の1です(第87条・第89条)
- 1年以上の引き続く組合員期間があれば、退職した後に65歳に達したときに支給されます(第88条)
- 転職すると、付与額の積み増しは止まりますが、積み上がった分は残り、65歳で受け取れます
- 自分の給付算定基礎額は、共済組合に制度の照会として聞いてください
よくある質問
勤続8年で転職します。退職等年金給付はどうなりますか
1年以上の引き続く組合員期間があるので、退職した後に65歳に達したときに退職年金を受け取れます(第88条第1項)。ただし、組合員期間が10年に満たないため、終身退職年金の基礎額は給付算定基礎額の2分の1のさらに2分の1になります(第89条第2項)。有期の側の扱いと、具体的な見込みは共済組合に確認してください。8年分の付与額と利子は残り、退職後も基準利率で利子が付きます。「消える」わけではありません。
転職先で企業年金があれば、退職等年金給付と両方もらえますか
両方です。退職等年金給付は在職していた共済組合が支給し、転職先の企業年金は転職先の制度が支給します。制度が別なので、一方が他方を減らすことはありません。ただし、それぞれの請求先と時期が違うので、退職時に共済組合から交付される書類と組合員の番号を保管し、65歳の時点で共済組合に請求することを忘れないでください。企業年金の側は、転職先の制度で確認してください。企業型の確定拠出年金がある会社に移る場合の考え方は、年金の記事で順次扱います。
有期退職年金を10年に短縮すると、何が変わりますか
支給の期間が240か月から120か月になり、月々の額は増えますが、受け取る総額の考え方は共済組合の計算によります。第87条第2項は、受給権者の申出により支給期間を120か月とすると定め、第3項は、その申出を給付事由が生じた日から6か月以内に、支給の請求と同時に行わなければならないとしています。期限を過ぎると、240か月のままです。どちらが有利かは、その時点の年齢と他の収入で変わるので、65歳の請求の時点で共済組合に相談してください。転職の時点で決める事項ではありません。