制度とお金 / 年金
共済期間は転職後どうなるか
「公務員として10年、民間で20年。年金は、どうつながるのか」。転職を考える方から、この形の質問をよく受けます。
答えは、「つながる」です。ただし、つながり方が3層に分かれていることを知っておくと、共済組合や年金事務所に聞くときに、答えの意味が分かります。老齢基礎年金の受給資格の期間、老齢厚生年金の被保険者期間、そして公務員だけの退職等年金給付。この3つで、共済組合員だった期間の扱いが少しずつ違います。
この記事では、共済組合員としての期間が、転職後にどう扱われるかを、厚生年金保険法、国民年金法、地方公務員等共済組合法の条文と、日本年金機構の説明で整理します。年金は個別性が高い分野なので、制度の骨を書きます。自分の記録は、共済組合と年金事務所で確認してください。
出発点——共済組合員の期間は「厚生年金の被保険者期間」
平成27年10月の一元化以降、地方公務員は厚生年金保険の被保険者です。厚生年金保険法第2条の5第1項第3号は、「地方公務員共済組合の組合員たる厚生年金保険の被保険者」を第3号厚生年金被保険者と定義しています。
つまり、共済組合員だった期間は、厚生年金の被保険者期間です。民間の会社員としての期間(第1号厚生年金被保険者期間)と、同じ厚生年金の中の、種別の違う期間として並びます。別の制度の期間を持ち寄って通算する、という形ではありません。
なお、平成27年9月以前の共済組合員の期間も、一元化の際に厚生年金の被保険者期間とみなす扱いになっています。日本年金機構の説明では、各実施機関が加入期間ごとに年金を決定し支払う、とされているので、一元化の前の期間も含めて、共済組合が記録を持っています。
層1:老齢基礎年金の受給資格——10年
まず、年金を受け取れるかどうかの入口です。国民年金法第26条は、老齢基礎年金の支給要件を定め、そのただし書きで「保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が十年に満たないときは、この限りでない」としています。10年が、受給資格の期間です。
公務員の期間は、国民年金の第2号被保険者の期間として、この10年に数えられます。公務員10年、民間20年なら、合わせて30年です。転職で途切れることはありません。
層2:老齢厚生年金の要件と額——期間はそのまま通算
厚生年金保険法第42条は、老齢厚生年金の受給権者をこう定めています。
> 老齢厚生年金は、被保険者期間を有する者が、次の各号のいずれにも該当するに至つたときに、その者に支給する。> 一 六十五歳以上であること。> 二 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が十年以上であること。
65歳以上で、受給資格の期間が10年以上あり、厚生年金の被保険者期間を持っていれば、老齢厚生年金が支給されます。共済組合員だった期間は、この「被保険者期間」です。
地方公務員等共済組合法第75条は、共済組合が行う厚生年金保険給付を老齢厚生年金、障害厚生年金及び障害手当金、遺族厚生年金とし、第3号厚生年金被保険者期間に基づくものに限ると定めています。つまり、
- 公務員の期間に基づく老齢厚生年金は、共済組合が決定し支払う
- 民間の期間に基づく老齢厚生年金は、日本年金機構が決定し支払う
という形で、期間ごとに実施機関が分かれますが、計算の仕組みは同じ厚生年金です。日本年金機構の説明では、一元化後は届書等をどちらの窓口でも受け付け、各実施機関が加入期間ごとに年金を決定・支払う、とされています。請求は1か所で足り、支給元が2つになる形です。
層3:退職等年金給付——公務員の期間だけの上乗せ
3つ目の層が、公務員だけの上乗せです。地方公務員等共済組合法第88条第1項は、退職年金の受給権者を「一年以上の引き続く組合員期間を有する者が退職した後に六十五歳に達したとき」と定めています。
この層は、民間の期間とは通算されません。民間にはない制度だからです。ただし、共済組合員だった期間の分は、転職後も残り、65歳で受け取れます。仕組みは職域加算と年金払い退職給付に書いています。
3層をまとめる
| 層 | 共済組合員の期間の扱い | 転職後 |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金の受給資格(10年) | 第2号被保険者の期間として数える | 通算される |
| 老齢厚生年金 | 第3号厚生年金被保険者期間として数える | 通算される。公務員の期間の分は共済組合、民間の期間の分は日本年金機構が支払う |
| 退職等年金給付 | 組合員期間に応じて積み上がる | 通算されないが、積み上がった分は残り、1年以上あれば65歳で受け取れる |
「つながるか」という問いへの答えは、層1と層2は「つながる」、層3は「別の口座として残る」です。
転職するとどうなるか
公務員から民間に転職するとき、期間の扱いで効いてくる点は3つです。
1. 受給資格の10年と、老齢厚生年金の期間は、そのまま通算される
公務員の期間が短くても、民間の期間と合わせて数えます。転職で「振り出しに戻る」ことはありません。
2. 公務員の期間の分は、共済組合が支払う
65歳の請求のとき、支給元が共済組合と日本年金機構の2つになります。請求は1か所で受け付けられます。
3. 退職等年金給付は、公務員の期間の分だけ残る
民間の期間とは通算されませんが、1年以上の組合員期間があれば、65歳で受け取れます。
なお、退職から入社まで間があく場合、その期間は国民年金の第1号被保険者になり、保険料を自分で納めます。この期間も、納めれば受給資格の期間と老齢基礎年金の額に数えられます。手続きは退職時の年金の手続きに書いています。
手続きと期限
期間の通算そのものに、本人の手続きは要りません。基礎年金番号でつながっていれば、制度上は通算されます。実務で確かめておくべきことは、次の3つです。
- ねんきん定期便で、公務員の期間が加入記録に載っているかを確かめる
- 載っていなければ、共済組合に記録の照会をする
- 転職先に基礎年金番号を伝える(入社時の資格取得の届出で使われます)
65歳の請求のときは、日本年金機構と共済組合のどちらの窓口でも受け付けられます。退職時に共済組合から交付される書類は保管しておいてください。
誤解されやすい点
「公務員の期間は、辞めると年金の計算から外れる」と思い込む
厚生年金の被保険者期間として、そのまま通算されます。
「共済年金と厚生年金は別の制度だから、別々に計算されて損をする」と思い込む
一元化後は同じ厚生年金です。実施機関が分かれるだけで、計算の仕組みは同じです。
「退職等年金給付も民間の期間と通算される」と思い込む
通算されません。公務員の期間の分だけが残り、65歳で受け取れます。
「請求は共済組合と年金事務所の両方に行く」と思い込む
窓口は一本化されています。支給元が2つになるだけです。
まとめ
- 共済組合員だった期間は、厚生年金保険の第3号厚生年金被保険者期間です(厚生年金保険法第2条の5)。民間の期間と同じ厚生年金の中の期間として並びます
- 老齢基礎年金の受給資格(10年)には、公務員の期間がそのまま数えられます(国民年金法第26条)
- 老齢厚生年金は、65歳以上で受給資格の期間が10年以上あれば支給され、公務員の期間の分は共済組合が、民間の期間の分は日本年金機構が決定し支払います(厚生年金保険法第42条、地方公務員等共済組合法第75条)
- 退職等年金給付は民間の期間とは通算されませんが、1年以上の組合員期間があれば65歳で受け取れます(第88条)
- 請求は1か所で足り、支給元が2つになります(日本年金機構の説明)
- ねんきん定期便で公務員の期間が載っているかを確かめ、載っていなければ共済組合に照会してください
よくある質問
公務員として6年で転職します。6年分の年金はどうなりますか
6年分は、厚生年金の被保険者期間として残り、民間の期間と通算されます。受給資格の10年にも数えられるので、民間で4年以上勤めれば合わせて10年に達します。老齢厚生年金の額は、公務員の6年分は共済組合が、民間の期間の分は日本年金機構が計算して支払います。退職等年金給付は、1年以上の組合員期間があるので、65歳で受け取れます。ただし、組合員期間が10年未満のため、終身の側の基礎額は給付算定基礎額の2分の1のさらに2分の1です(職域加算と年金払い退職給付)。6年分が「消える」ことはありません。
一元化の前(平成27年9月以前)の期間も、通算されますか
されます。一元化の際に、平成27年9月以前の共済組合員の期間も厚生年金の被保険者期間とみなす扱いになっており、日本年金機構の説明では、各実施機関が加入期間ごとに年金を決定し支払う、とされています。記録は共済組合が持っています。一元化の前から公務員だった方は、ねんきん定期便に公務員の期間が載っているかを確かめ、載っていなければ共済組合に照会してください。また、この期間には廃止された職域加算に相当する経過的職域加算額が別に残ります。その扱いは被用者年金一元化で何が変わったかに書いています。
65歳になったとき、共済組合と年金事務所のどちらに請求すればよいですか
どちらでも受け付けられます。日本年金機構の説明によれば、一元化後は厚生年金に関する届書等は、日本年金機構または各共済組合等のいずれの窓口でも受け付けられます。ただし、決定と支払いは加入期間ごとに各実施機関が行うので、公務員の期間の分は共済組合から、民間の期間の分は日本年金機構から支給されます。退職等年金給付は共済組合にしかない制度なので、共済組合への請求を忘れないでください。退職時に共済組合から交付される書類と組合員の番号を、基礎年金番号と一緒に保管しておいてください。