制度とお金 / 年金
iDeCoは公務員と会社員で何が違うか
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公務員も会社員も入れます。ただし、毎月いくらまで掛けられるか——拠出限度額——が、公務員と会社員で違います。そして、転職すると、自分の区分が変わり、限度額も変わります。
さらに、2026年12月分から、限度額そのものが引き上げられます。転職を考えている方は、「いま」の限度額と「12月から」の限度額の両方を知っておく必要があります。
この記事では、公務員と会社員のiDeCoの違いを、厚生労働省の資料と確定拠出年金法の条文で整理します。掛金の額や商品の選び方は個別性が高いので、ここでは制度の骨を書きます。自分の掛金は、加入している運営管理機関で確認してください。年金の全体は受給額への影響の考え方に書いています。
拠出限度額は「他の年金制度との合算」で決まる
確定拠出年金法第69条は、個人型年金加入者掛金の1年間の総額が「拠出限度額」を超えてはならないと定め、限度額そのものは政令に委ねています。そして、限度額は、その人が他にどの年金制度に入っているかで変わる仕組みです。
厚生労働省の資料によれば、現在の月額の限度額は次のとおりです。
| 区分 | 現在の月額の限度額 |
|---|---|
| 会社が企業年金を実施していない会社員 | 23,000円 |
| 会社が企業年金を実施している会社員 | 20,000円(企業年金と合わせて55,000円が上限) |
| 国家公務員・地方公務員 | 20,000円 |
| 自営業者など(第1号被保険者) | 68,000円(国民年金基金と合わせて68,000円が上限) |
公務員は、企業年金を実施している会社員と同じ扱いです。理由は、公務員には退職等年金給付という共済の上乗せがあり、これが企業年金に相当する「他制度の掛金」として数えられるからです。仕組みは職域加算と年金払い退職給付に書いています。
2026年12月から、限度額が引き上げられる
厚生労働省の資料によれば、令和8年12月分(2027年1月引き落とし分)から、限度額が引き上げられます。
| 区分 | 現在 | 2026年12月分から |
|---|---|---|
| 会社が企業年金を実施していない会社員 | 23,000円 | 62,000円 |
| 会社が企業年金を実施している会社員 | 20,000円 | 企業年金と合わせて62,000円が上限 |
| 国家公務員・地方公務員 | 20,000円 | 54,000円(62,000円 − 共済掛金相当額8,000円) |
| 自営業者など | 68,000円 | 75,000円(国民年金基金と合わせて) |
公務員向けの資料には、「国家公務員・地方公務員の拠出限度額54,000円=62,000円(拠出限度額)−8,000円(共済掛金相当額)」と明記されています。公務員の限度額が会社員(企業年金なし)より8,000円少ないのは、共済の退職等年金給付の掛金相当額を差し引くからです。
同じ資料は、掛金額の変更は2026年9月頃から受付を予定しているとし、加入している運営管理機関に問い合わせるよう案内しています。あわせて、70歳になるまで掛金を拠出できるようになることも示されています。
3つの税の優遇——公務員も会社員も同じ
厚生労働省の資料は、iDeCoの税の優遇を3つ挙げています。
| 優遇 | 内容 |
|---|---|
| 掛金が全額所得控除 | 拠出した掛金の全額が所得から控除される |
| 運用益が非課税で再投資 | 通常の金融商品の運用益にかかる源泉分離課税がかからない |
| 受け取るときも優遇 | 年金として受け取れば公的年金等控除、一時金なら退職所得控除 |
この3つは、公務員でも会社員でも同じです。違うのは限度額だけです。資料の例では、毎月2万円を拠出した場合の年間の節税効果を7万2千円、毎月5万4千円の場合を19万4千4百円としています(所得税20パーセント、住民税10パーセントの場合)。税率は人によって違うので、自分の場合は資料の前提を確かめてください。
転職すると、区分と限度額が変わる
公務員から会社員に転職すると、iDeCoの区分が変わります。
| 転職先 | 転職後の限度額(現在) | 転職後の限度額(2026年12月分から) |
|---|---|---|
| 企業年金のない会社 | 23,000円 | 62,000円 |
| 企業型確定拠出年金のある会社 | 20,000円(企業年金と合わせて55,000円) | 企業年金と合わせて62,000円 |
| 確定給付企業年金のある会社 | 企業年金と合わせて55,000円の範囲 | 企業年金と合わせて62,000円の範囲 |
転職先に企業年金があるかないかで、限度額が変わります。しかも、企業型確定拠出年金がある会社では、iDeCoを続けるか、企業型に移換するかという選択が出てきます。その話は企業型確定拠出年金がある会社に移るときに書いています。
転職したら、運営管理機関に届出が要ります。加入者の区分が変わるためです。届出をしないと、掛金の引落しが止まることや、限度額を超える掛金の扱いが問題になることがあります。入社が決まったら、加入している運営管理機関に「転職した場合の届出」を確認してください。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、iDeCoで効いてくる点は3つです。
1. 転職先に企業年金があるかで、限度額が変わる
企業年金がなければ、現在23,000円、2026年12月分から62,000円。あれば、企業年金と合わせた上限の範囲です。内定の段階で確かめてください。
2. 運営管理機関への届出が要る
加入者の区分が変わります。入社後、速やかに届け出てください。様式と期限は運営管理機関で確認します。
3. 2026年12月分からの引上げは、公務員のままでも受けられる
54,000円への引上げは、転職しなくても受けられます。引上げのために転職する理由にはなりません。
手続きと期限
| 場面 | すること | どこで |
|---|---|---|
| 転職が決まった | 転職先に企業年金があるか、あるならどの型かを確かめる | 転職先の担当部門 |
| 入社した | 加入者の区分の変更を届け出る | 加入している運営管理機関 |
| 企業型確定拠出年金がある会社に入った | iDeCoを続けるか、企業型に移換するかを決める | 転職先の担当部門と運営管理機関 |
| 2026年12月分からの引上げに合わせて掛金を変えたい | 掛金額の変更を届け出る(受付は2026年9月頃から) | 加入している運営管理機関 |
掛金の額を変えられる回数や時期には決まりがあります。運営管理機関で確認してください。
誤解されやすい点
「公務員はiDeCoに入れない」と思い込む
入れます。限度額が会社員と違うだけです。
「公務員の限度額が低いのは不利だから」と思い込む
共済の退職等年金給付という上乗せがあるため、その分を差し引いている形です。
「転職しても、iDeCoは何もしなくてよい」と思い込む
加入者の区分が変わるので、運営管理機関への届出が要ります。
「2026年12月の引上げは会社員だけ」と思い込む
公務員も20,000円から54,000円に引き上げられます。
まとめ
- iDeCoの拠出限度額は、他の年金制度との合算で決まります(確定拠出年金法第69条、政令)
- 現在の月額は、企業年金のない会社員が23,000円、企業年金のある会社員と公務員が20,000円です(厚生労働省の資料)
- 2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から、企業年金のない会社員は62,000円、公務員は54,000円(62,000円 − 共済掛金相当額8,000円)に引き上げられます。掛金額の変更は2026年9月頃から受付です
- 掛金の全額所得控除、運用益の非課税、受取時の控除の3つの優遇は、公務員も会社員も同じです
- 転職すると加入者の区分が変わり、運営管理機関への届出が要ります。転職先に企業年金があるかで限度額が変わります
- 公務員の限度額が低いのは、共済の退職等年金給付という上乗せがあるからで、損をしているわけではありません
よくある質問
公務員でiDeCoに入っています。転職したら何をすればよいですか
加入している運営管理機関に、加入者の区分の変更を届け出てください。公務員(共済組合員)から会社員に変わると、iDeCoの区分と限度額が変わります。転職先に企業年金がなければ、現在は23,000円、2026年12月分からは62,000円が限度額です。企業年金があれば、その掛金と合わせた上限の範囲になります。届出の様式と期限は運営管理機関で確認してください。転職先に企業型確定拠出年金がある場合は、iDeCoを続けるか企業型に移換するかの選択もあるので、企業型確定拠出年金がある会社に移るときを併せて読んでください。
2026年12月の引上げに合わせて、いつ手続きをすればよいですか
厚生労働省の資料では、2026年12月分(2027年1月引き落とし分)からの掛金額の変更について、2026年9月頃からの受付を予定しているとされています。詳細は加入している運営管理機関に問い合わせるよう案内されています。資料では、e-iDeCo(オンライン手続き)では2026年12月1日から24日の間に手続きが可能とされていますが、手続きの内容によっては12月分の変更に反映できない場合があるとも書かれています。早めに運営管理機関に確認してください。転職を予定している方は、転職後の区分で限度額が変わるので、転職の時期と合わせて考える必要があります。
iDeCoを一時金で受け取ると、退職手当と同じ退職所得控除を使いますか
同じ退職所得控除の枠を使います。厚生労働省の資料は、iDeCoを一時金で受け取る場合は退職所得控除による優遇措置があるとしています。退職手当も退職所得として同じ控除の仕組みで計算されるため、受け取る時期が近いと、控除の枠を分け合う形になり、計算に調整が入ることがあります。この扱いは個別性が高く、受け取る年の税制によっても変わるので、受け取る時期が近づいたら、税務署か税理士に確認してください。退職手当の側の控除の仕組みは退職所得控除と税金に書いています。