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制度とお金 / 任用

事務・技術・専門職で任用はどう違うか

自治体の採用試験は、「事務」「土木」「建築」「電気」「化学」「保健師」「保育士」「社会福祉」といった区分で行われます。財政課にいるのは主に事務職ですが、同じ庁内に技術職と専門職(資格免許職)がいて、採用の区分が違えば、その後の任用(異動、昇任、専門性の扱い)も違います。

この違いは、転職の場面で効きます。事務職は異動の幅が広く、経験が「自治体の業務全般」として評価される一方、技術職と専門職は、資格と専門性が民間の職種に直結し、転職先の選び方が変わります。財政課の経験を持つ事務職の方と、技術職・専門職の方では、転職の準備の組み立てが違います。

この記事では、任用の法律上の原則(成績主義、任命の方法、採用の方法、受験の資格要件)と、事務・技術・専門職ごとの任用の違い、転職で経験がどう評価されるかの違いを整理します。採用の区分と異動の運用は自治体によるので、自分の自治体の運用は人事の担当課で確かめてください。

任用の法律上の原則——職種を問わず共通

条文内容
第15条(任用の根本基準)職員の任用は、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならない(成績主義)
第17条(任命の方法)職員の職に欠員を生じた場合、任命権者は、採用、昇任、降任または転任のいずれかの方法により職員を任命する
第17条の2(採用の方法)人事委員会を置く自治体では競争試験(規則で定める場合は選考)、置かない自治体では競争試験または選考
第18条(試験機関)採用試験または選考は人事委員会等が行う(他の自治体との共同、国・他の自治体への委託も可)
第19条(受験の資格要件)人事委員会等は、受験者に必要な資格として、職務の遂行上必要であって最少かつ適当な限度の客観的かつ画一的な要件を定める

任用の原則は職種を問わず共通で、違いは「受験の資格要件」と「採用の区分」の運用から生じます。第19条により、資格要件は職務の遂行上必要な最少の限度で定められ、技術職・専門職では学歴の区分や資格・免許が要件になります。

3つの職種——採用の区分と任用の違い

項目事務職技術職専門職(資格免許職)
採用の区分事務(行政)。学歴の区分(大卒程度など)土木、建築、電気、機械、化学、農業、林業など。専門の学歴が要件のことが多い保健師、保育士、社会福祉士、栄養士、獣医師、薬剤師など。資格・免許が要件
受験の資格要件(第19条)年齢、学歴の区分年齢、専門の学歴または資格年齢、資格・免許の取得(見込み)
配属の幅広い。財政、税務、福祉、企画、総務など部署を横断専門の分野(土木なら道路、河川、下水道など)の中で異動資格に対応する職場(保健所、保育所、福祉事務所など)の中で異動
昇任一般行政職の給料表で、係長、課長へ技術職の職として昇任。管理職では事務職と同じ職に就くことも専門職の給料表(医療職給料表など)または一般行政職の給料表
専門性の扱い部署ごとの業務の経験として蓄積資格(技術士、施工管理技士など)と実務の経験として蓄積資格・免許と実務の経験として蓄積
任期付・会計年度任用事務の補助など技術の専門的な業務(特定任期付の対象になることも)資格に対応する職(保育士、保健師の会計年度任用など)

財政課は事務職の配属先の1つで、事務職の異動の幅の中で財政の経験を積む形です。技術職・専門職が財政課に配属されることは少なく、その代わり、専門の分野で経験を深めます。

転職で経験がどう評価されるか——職種ごとの違い

職種転職先で評価される経験転職の準備で効く点
事務職(財政課の経験)予算編成、決算、起債、財政の分析、条例・規則の理解、庁内の調整。自治体の業務全般の理解経験を業界の言葉で説明する(自治体向けの企業、監査法人、金融機関、コンサルティング)。資格がなくても経験で評価される場面が多い
技術職土木・建築・電気などの専門の実務、発注者としての経験、資格(技術士など)資格と専門性が民間の職種に直結。建設コンサルタント、設計事務所、ゼネコン、インフラの企業。発注者の経験は受注者の側で評価される
専門職(資格免許職)資格に基づく実務(保健、保育、福祉、栄養など)資格がそのまま転職先の要件。民間の病院、施設、企業の同じ職種。公務員の経験が民間で評価されるかは分野による

事務職は「経験を翻訳する」準備が要り、技術職・専門職は「資格と専門性を示す」準備が要るという違いです。財政課の事務職は、経験の翻訳の準備に時間をかける価値があります。

職種の変更——事務から技術へ、技術から事務へ

場面仕組み
在職中に職種を変える採用の区分は採用時に決まり、在職中の職種の変更は、自治体の運用による(職種変更の選考を設けている自治体がある)。多くの自治体で例外的
技術職が管理職として事務の職に就く課長級以上で、技術職が部長・副市長などの職に就くことは通常の運用
退職して別の職種で再受験する別の職種の採用試験を受け直す形。年齢の要件と資格の要件による
民間で資格を取って専門職として公務に戻る資格免許職の採用試験や経験者採用に応募する形

採用の区分は、在職中の任用の幅を決めるので、事務職として採用された方が技術職の専門性を身につけることは、自治体の中では難しく、民間で資格を取る道が現実的です。

転職するとどうなるか

転職を考えている方にとって、職種の違いで効いてくる点は3つです。

1. 事務職は「経験の翻訳」、技術職・専門職は「資格と専門性の提示」

準備の中身が違います。財政課の事務職は、経験を業界の言葉で説明する準備に時間をかけてください。

2. 技術職・専門職は、資格が転職先の要件に直結する

発注者の経験は受注者の側で評価されます。資格の整理と実績の記録を先に。

3. 職種の変更は自治体の中では難しく、民間で資格を取る道が現実的

採用の区分が任用の幅を決めます。別の職種に進みたいなら、転職と資格の取得を組み合わせます。

手続きと期限

順序すること職種
転職を考えたら自分の職種の型(翻訳型か資格型か)を決める全職種
事務職財政課の経験を業界の言葉で説明する準備(財政課の経験の翻訳)事務
技術職資格(技術士、施工管理技士など)と発注者としての実績を整理する技術
専門職資格・免許と実務の経験を整理し、民間の同じ職種の求人を見る専門
職種を変えたい場合民間で資格を取る道、別の職種の採用試験の要件を確かめる全職種

誤解されやすい点

「任用の原則は職種で違う」と思い込む

成績主義(第15条)、任命の方法(第17条)、採用の方法(第17条の2)は職種を問わず共通です。違いは受験の資格要件と採用の区分の運用です。

「事務職は資格がないから転職で不利」と思い込む

財政課の経験は、自治体の業務全般の理解として、資格の代わりに評価されます。翻訳の準備が要るだけです。

「技術職の発注者の経験は民間で評価されない」と思い込む

発注者の視点を持つ技術者は、受注者の側で貴重です。資格と実績を整理して示してください。

「在職中に職種を変えられる」と思い込む

採用の区分は採用時に決まり、在職中の変更は自治体の運用で例外的です。

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まとめ

よくある質問

財政課の事務職です。資格がないと転職で不利ですか

不利ではありません。事務職の経験は、資格の代わりに「自治体の業務全般の理解」として評価され、財政課の経験は自治体向けの企業、監査法人、金融機関、コンサルティングで資格より重く見られる場面もあります。事務職の採用の区分は、第19条の受験の資格要件として学歴の区分と年齢を定めるだけで、資格・免許を要件にしていません。その代わり、事務職は配属の幅が広く、財政、税務、福祉、企画などの経験が「自治体の業務全般の理解」として蓄積されます。転職先が自治体を顧客とする企業なら、この理解は資格では得られない価値で、予算編成、決算、起債、条例・規則の運用の経験は、自治体の内側を知る人材として評価されます。準備で要るのは、経験を業界の言葉で説明する「翻訳」で、これに時間をかければ、資格の有無は転職の成否を左右しません。資格を取るなら、簿記や公会計の資格のように、財政課の経験と組み合わせて価値が増すものを選ぶと、翻訳の材料が増えます。

技術職です。発注者の経験は、民間の受注者の側で評価されますか

評価されます。発注者の視点を持つ技術者は、受注者の側(建設コンサルタント、設計事務所、ゼネコンなど)で貴重で、資格と実績を整理して示せば、転職先の選択肢は広いです。技術職の採用の区分は、第19条の受験の資格要件として専門の学歴または資格を定め、採用後は専門の分野(道路、河川、下水道、建築、電気など)で経験を積みます。自治体の技術職は、設計・工事の発注者として、積算、設計の審査、工事の監督、検査を担い、この経験は、受注者の側で「発注者が何を見て、どう判断するか」を知る人材として評価されます。転職の準備は、技術士、施工管理技士などの資格の整理と、担当した事業の規模・内容・役割の記録が中心で、事務職の「翻訳」より、専門性の提示に重点があります。発注者から受注者に移る場合、再就職者の働きかけの規制(地方公務員法第38条の2)が及ぶので、離職後2年間は前の自治体の役職員への契約に関する働きかけができない点は、事務職と同じです。

事務職から技術職に職種を変えたいのですが、方法はありますか

在職中の職種の変更は自治体の運用で例外的で、民間で資格を取って専門職として転職する道、または別の職種の採用試験を受け直す道が現実的です。採用の区分は採用時に決まり、第17条の任命の方法(採用、昇任、降任、転任)のうち、転任は同じ職種の中での異動が通常で、事務職から技術職への転任は、専門の学歴・資格の要件がある技術職では認められにくいです。職種変更の選考を設けている自治体もありますが、対象と要件は限られます。別の職種の採用試験を受け直す場合、年齢の要件と専門の学歴・資格の要件を満たす必要があり、在職中に受験することは可能ですが、合格すれば新たな採用として条件付採用から始まります。民間で資格(建築士、技術士、社会福祉士など)を取り、民間でその職種の実務を積んでから、専門職の経験者採用や任期付職員として公務に戻る道もあります(任期付職員の制度)。財政課の事務職の経験は、どの道でも「自治体の業務の理解」として生きるので、職種を変える場合も無駄にはなりません。

出典

  1. 地方公務員法 第15条(任用の根本基準)/第17条(任命の方法)/第17条の2(採用の方法)/第18条(試験機関)/第19条(受験の資格要件)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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