制度とお金 / 任用
独立行政法人・公社への転職
公立大学、公立病院、公設の試験研究機関、土地開発公社、住宅供給公社、道路公社——自治体の周りには、法律に基づいて設立された法人があり、財政課はその財務や貸付、損失補償を扱います。これらの法人への転職を考える方から、「公務員のままなのか、辞めることになるのか」「共済はどうなるのか」という質問を受けます。
答えは、法人の種類によって違います。地方独立行政法人のうち特定地方独立行政法人の職員は地方公務員で、一般地方独立行政法人と公社の職員は非公務員です。公立大学と公立病院の多くは一般地方独立行政法人で、職員は非公務員です。転職の位置づけも、身分によって変わります。
この記事では、地方独立行政法人と公社の法律上の仕組み、職員の身分、処遇と共済、転職の位置づけ(民間への転職と公務員の間)を整理します。処遇は法人ごとの規程によるので、転職を考える方は、法人の就業規則と募集の要項で確かめてください。
地方独立行政法人——2つの区分
| 区分 | 定義(地方独立行政法人法) | 職員の身分 | 典型 |
|---|---|---|---|
| 地方独立行政法人 | 住民の生活、地域社会・地域経済の安定等の公共上の見地から、その地域で確実に実施される必要がある事務・事業で、自治体が自ら直接に実施する必要のないもののうち、民間に委ねた場合に必ずしも実施されないおそれがあるものを、効率的・効果的に行わせるため、自治体が設立する法人(第2条第1項) | ── | ── |
| 特定地方独立行政法人 | 地方独立行政法人のうち、業務の停滞が住民の生活等に直接かつ著しい支障を及ぼすため、または業務運営の中立性・公正性を特に確保する必要があるため、職員に地方公務員の身分を与える必要があるものとして、設立団体が定款で定めるもの(第2条第2項) | 地方公務員(第47条) | 一部の試験研究機関、一部の病院 |
| 一般地方独立行政法人 | 特定地方独立行政法人以外の地方独立行政法人 | 非公務員 | 公立大学法人、多くの公立病院、試験研究機関 |
公立大学を設置する地方独立行政法人(公立大学法人)は、第2条第2項のかっこ書により特定地方独立行政法人から除かれる業務(第21条第2号:大学の設置・管理)を行うので、一般地方独立行政法人です。公立大学の職員は非公務員です。
職員の身分と処遇——特定と一般で何が違うか
| 項目 | 特定地方独立行政法人 | 一般地方独立行政法人 |
|---|---|---|
| 身分 | 地方公務員(第47条)。地方公務員法の多くの規定が適用される(一部は第53条で適用除外) | 非公務員。労働基準法、労働契約法などの労働法規が適用される |
| 給与 | 法人の給与規程(地方公務員としての枠内) | 法人の給与規程 |
| 共済 | 地方公務員共済の組合員 | 法人の健康保険・厚生年金(設立の経緯により共済の適用がある場合がある) |
| 退職手当 | 法人の規程 | 法人の規程 |
| 服務 | 地方公務員法の服務(守秘義務、職務専念義務、営利企業への従事等の制限など) | 法人の就業規則 |
| 労働三権 | 地方公務員としての制約 | 労働組合法が適用され、争議権がある |
| 採用 | 法人が採用(成績主義の枠内) | 法人が採用(民間と同様) |
「独立行政法人に転職する」と一言で言っても、特定なら公務員の身分が続き、一般なら民間と同じ労働者の身分になります。募集の要項で、どちらの法人かを確かめてください。
移行時の職員の引継ぎ——第59条
自治体の内部組織(病院、大学、試験研究機関など)が地方独立行政法人に移行する際、その組織の職員は、別に辞令を発せられない限り、法人の成立の日に法人の相当の職員となる(第59条第1項:特定地方独立行政法人、第2項:一般地方独立行政法人)と定められています。
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 自治体の病院が一般地方独立行政法人に移行 | 病院の職員は、移行の日に法人の職員(非公務員)になる。退職手当は通算の扱い、共済の扱いは設立の経緯による |
| 財政課の職員が移行の対象になるか | 財政課は移行する組織ではないので対象外。財政課から法人の事務局に異動を希望する場合は、退職して法人に採用される形(一般)または派遣・出向の形 |
移行時の引継ぎは、その組織の職員に限られ、財政課の職員が法人に移る場合は、退職と採用の形か、派遣の形になります。
公社——非公務員
| 公社 | 根拠 | 職員の身分 |
|---|---|---|
| 土地開発公社 | 公有地の拡大の推進に関する法律第10条(自治体が単独または共同で設立) | 非公務員 |
| 地方住宅供給公社 | 地方住宅供給公社法 | 非公務員 |
| 地方道路公社 | 地方道路公社法 | 非公務員 |
公社の職員は非公務員で、公社の就業規則と給与規程による処遇です。自治体からの派遣(公益的法人等への派遣法の対象になる場合)と、退職して公社の職員になる転籍の両方があります。財政課は、土地開発公社の借入金の債務保証や損失補償、経営の健全化を扱う立場で、公社の財務を知っています。
転職の位置づけ——民間と公務員の間
| 転職先 | 位置づけ | 転職の考え方 |
|---|---|---|
| 特定地方独立行政法人 | 地方公務員の身分が続く。自治体から法人への「転職」は、退職と採用の形 | 公務員としての制度(共済、服務)が続くので、民間への転職とは違う。経歴は公務員の延長 |
| 一般地方独立行政法人(大学、病院) | 非公務員。民間の労働者と同じ身分 | 民間への転職に近いが、業務は公共性が高く、自治体との関係が深い。財政課の経験は法人の財務・経営の業務で評価される |
| 公社 | 非公務員 | 自治体の関連団体への転籍に近い。第38条の2の規制が正面から効く |
一般地方独立行政法人と公社への転職は、身分の面では民間への転職と同じで、地方公務員法の服務は及ばず、労働法規が適用されます。一方で、自治体との関係が深いので、再就職者の働きかけの規制(第38条の2)は、転職先が自治体と契約・補助の関係を持つ場合に及びます。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、独立行政法人・公社で効いてくる点は3つです。
1. 特定か一般か、公社かで、身分がすべて変わる
特定は地方公務員、一般と公社は非公務員。募集の要項と定款で最初に確かめてください。
2. 一般地方独立行政法人と公社は、民間への転職と同じ身分
労働法規が適用され、地方公務員法の服務は及びません。共済は法人の健康保険・厚生年金に変わります。
3. 財政課の経験は、法人の財務・経営で評価される
自治体の側から見ていた法人の財務を、法人の側で扱う転職です。第38条の2の規制は、自治体との契約・補助の関係で及びます。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 転職を考えたら | 法人が特定地方独立行政法人か一般か、公社かを確かめる | 最初に | 募集の要項、法人の定款 |
| 応募の前 | 法人の就業規則、給与規程、退職金、社会保険(共済か健康保険・厚生年金か)を確かめる | 応募の前 | 法人 |
| 同時に | 在職中に自分が決定に関わったその法人との契約・補助・貸付・損失補償を書き出す | 応募の前 | 自分で |
| 退職 | 退職手当の受取り。共済の扱いの切替え | 退職日 | 人事の担当課、共済組合 |
| 転職後 | 第38条の2の規制に触れる業務(自治体への契約等事務に関する働きかけ)から外れる形を確かめる | 入職時 | 法人 |
誤解されやすい点
「独立行政法人の職員は全員公務員」と思い込む
地方公務員なのは特定地方独立行政法人の職員のみ(第47条)。一般地方独立行政法人(公立大学、多くの公立病院)と公社の職員は非公務員です。
「公立大学法人の職員は公務員」と思い込む
公立大学法人は一般地方独立行政法人で、職員は非公務員です(第2条第2項、第21条第2号)。
「独立行政法人なら共済が続く」と思い込む
特定なら共済、一般と公社は原則として法人の健康保険・厚生年金です(設立の経緯による例外あり)。
「独立行政法人・公社は第38条の2の対象外」と思い込む
自治体と契約・補助の関係を持つ法人への再就職は、規制の対象です。自らが決定した契約・処分は期間なく規制されます。
まとめ
- 地方独立行政法人は、特定地方独立行政法人(職員は地方公務員、第47条)と一般地方独立行政法人(非公務員)に分かれ、公立大学法人と多くの公立病院は一般地方独立行政法人です(地方独立行政法人法第2条、第21条)
- 公社(土地開発公社、地方住宅供給公社、地方道路公社)の職員は非公務員で、公社の就業規則と給与規程による処遇です
- 自治体の組織が法人に移行する際は、その組織の職員が法人の職員になります(第59条)。財政課の職員が法人に移る場合は、退職と採用、または派遣の形です
- 一般地方独立行政法人と公社への転職は、身分の面では民間への転職と同じで、労働法規が適用され、共済は法人の健康保険・厚生年金に変わります
- 第38条の2の働きかけの規制は、自治体と契約・補助の関係を持つ法人への再就職に及びます。財政課で決定に関わった貸付・損失補償・補助は期間なく規制されます
- 最初に「特定か一般か、公社か」を確かめると、身分、共済、服務、労働三権のすべてが決まります
よくある質問
公立病院を運営する地方独立行政法人の事務局に転職を考えています。公務員のままですか
その法人が特定地方独立行政法人か一般地方独立行政法人かによります。多くの公立病院の法人は一般地方独立行政法人で、職員は非公務員です。地方独立行政法人法第2条第2項は、業務の停滞が住民の生活等に直接かつ著しい支障を及ぼすなどの理由で職員に地方公務員の身分を与える必要があるものを、設立団体が定款で特定地方独立行政法人と定めると規定し、第47条により特定地方独立行政法人の職員は地方公務員です。病院の法人は、設立の際に特定とするか一般とするかを自治体が判断し、近年は一般地方独立行政法人として設立される例が多くなっています。一般なら、職員は非公務員で、労働基準法・労働契約法などが適用され、地方公務員法の服務は及ばず、共済は原則として法人の健康保険・厚生年金に変わります(設立の経緯により共済の適用が続く場合があるので法人に確かめてください)。募集の要項と法人の定款で、特定か一般かを確かめ、就業規則、給与規程、退職金、社会保険を確かめてから応募してください。財政課の経験は、病院の法人の財務・経営(予算、決算、資金、起債に相当する借入)で評価されやすく、自治体の側から見ていた病院の財務を法人の側で扱う転職として位置づけが明確です。
土地開発公社に転職する場合、財政課での貸付や損失補償の業務は問題になりますか
転職自体は禁じられませんが、第38条の2の規制が及ぶので、転職後に公社の側から自治体への貸付・損失補償・契約に関する働きかけをする業務からは外れる必要があります。土地開発公社は自治体が設立する法人で(公有地の拡大の推進に関する法律第10条)、自治体からの借入金の債務保証・損失補償、土地の買戻しの契約など、自治体と密接な契約の関係を持ちます。財政課でこれらの業務に関わった方が公社に転職すると、離職後2年間、離職前5年間の組織(財政課を含む自治体の執行機関の組織)の役職員に対し、離職前5年間の職務に属する契約等事務(貸付、損失補償、買戻しの契約など)に関して、職務上の行為の要求・依頼ができません(第38条の2第1項)。在職中に自らが決定した契約・処分については、期間なく規制されます(第5項)。公社の事務局で、自治体との契約の交渉を担当する業務は、規制と正面から重なるので、経理、総務、土地の管理など、規制に触れない業務を担当する形を公社と確かめてください。自治体の退職管理の条例で、公社への再就職が届出の対象になっていることも多いので、人事の担当課で確かめてください。
一般地方独立行政法人に転職した後、民間や他の自治体に移ることはできますか
できます。一般地方独立行政法人の職員は非公務員で、転職の自由は民間の労働者と同じです。他の自治体の公務員になるには採用試験または選考を経ます。一般地方独立行政法人の職員は、地方公務員法の服務が及ばず、法人の就業規則による守秘義務などを守れば、民間への転職に制限はありません。自治体を離職してから2年に満たない間は第38条の2の規制が続き、離職前5年間の組織の役職員への契約等事務に関する働きかけはできません。他の自治体の公務員に戻る場合は、経験者採用や任期付職員の募集に応募し、採用試験または選考を経る形で、法人での経験(財務、経営、事業の運営)が評価の材料になります。経歴の位置づけは、一般地方独立行政法人での経験が「公共性の高い法人での財務・経営の実務」として、自治体向けの企業、監査法人、コンサルティング、他の法人で評価されます。財政課の経験と法人の経験を組み合わせると、「自治体の側と法人の側の両方から公共の財務を扱った人材」として、特定任期付職員(特定任期付職員(専門的知識を持つ職員))の要件に合う場面も出てきます。