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制度とお金 / 任用

特定任期付職員(専門的知識を持つ職員)

自治体の採用情報に、「弁護士」「公認会計士」「DX推進の責任者」「財政の専門家」といった募集が、任期付で出ることがあります。これらの多くが、特定任期付職員です。高度の専門的な知識経験または優れた識見を持つ人を、その専門性を一定の期間活用する業務のために、任期を定めて常勤の職員として採用する制度で、専用の給料表と業績手当が設けられています。

転職を考える公務員にとって、特定任期付職員は2つの意味を持ちます。民間で専門性を積んだ後に、その専門性で公務に関わる道として。そして、自治体が外部の専門家をどう迎え、どう処遇するかを知る材料として。財政課の経験に会計・公会計・DXの専門性を加えた人は、この制度の対象になり得ます。

この記事では、特定任期付職員の要件、任期、給与(国の俸給表を基準にした専用の給料表と業績手当)、一般任期付職員との違い、財政・会計の経験がどう評価されるかを整理します。採用の要件、任期、給与は自治体の条例によるので、募集の要項で確かめてください。任期付職員の全体は任期付職員の制度に書いています。

要件——第3条第1項

地方の任期付職員法第3条第1項は、任命権者は、高度の専門的な知識経験または優れた識見を有する者を、その者が有する当該高度の専門的な知識経験または優れた識見を一定の期間活用して遂行することが特に必要とされる業務に従事させる場合には、条例で定めるところにより、職員を選考により任期を定めて採用することができる、と定めています。

要素内容
人の要件高度の専門的な知識経験、または優れた識見
業務の要件その専門性を一定の期間活用して遂行することが特に必要とされる業務
採用の方法選考(競争試験ではない)
根拠条例で定めるところによる

「高度の」専門性と、「一定の期間」「特に必要」という業務の限定が、一般任期付職員(第3条第2項:専門的な知識経験)との違いです。弁護士、公認会計士、医師、大学教員、企業の専門職など、部内で育成できない専門性を持つ人が想定されています。

任期と更新

項目内容
任期5年を超えない範囲で任命権者が定める(第6条第1項)
任期の明示採用の際に明示(第6条第3項)
更新任期が5年に満たない場合、採用した日から5年を超えない範囲で更新できる(第7条第1項)
他の職への任用採用時の職と同一の業務を主たる内容とする他の職への任用など、採用の趣旨に反しない場合に限る(第8条第1項)

5年が上限で、上限を超えて続けることはできません。任期の満了後に、改めて別の募集に応募して採用される形はあり得ますが、自動的な継続はありません。

給与——国の俸給表を基準にした専用の給料表と業績手当

地方の任期付職員法には給与の定めがなく、給与は自治体の給与条例によります。多くの自治体が、国の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第7条に準じて、特定任期付職員の専用の給料表と業績手当を条例で設けています。

項目国の法律(第7条)の定め自治体の条例での扱い
俸給表特定任期付職員に適用する俸給表を法律で定める。1号俸405,000円から7号俸893,000円までの7段階国の俸給表に準じた専用の給料表を条例で定める自治体が多い
号俸の決定従事する業務に応じて、人事院規則で定める基準に従い決定業務の内容と専門性に応じて条例・規則で決定
特別の事情俸給表により難いときは、人事院の承認を得て、7号俸を超える額を定めることができる条例で同様の特例を設ける自治体がある
予算の範囲内号俸と俸給月額の決定は予算の範囲内で行う同様
業績手当業績に応じた手当条例で業績手当を設ける自治体が多い

専用の給料表は、常勤の職員の給料表とは別の体系で、専門性に応じた額が最初から設定されている点が、一般任期付職員との大きな違いです。募集の要項に「特定任期付職員の給料表○号給」と示されることが多く、額は自治体の条例で確かめてください。

一般任期付職員との違い

項目特定任期付職員(第3条第1項)一般任期付職員(第3条第2項)
人の要件高度の専門的な知識経験または優れた識見専門的な知識経験
業務の要件専門性を一定の期間活用して遂行することが特に必要専門性が必要な業務で、部内で育成に相当の期間を要するなどの事由がある
給与専用の給料表と業績手当(条例)常勤の職員の給料表による格付け
任期5年以内5年以内
典型弁護士、公認会計士、DXの責任者、特定分野の専門家経験者採用に近い専門職(会計、法務、広報など)

財政課の経験に民間の専門性を加えた人が応募する場合、特定任期付と一般任期付のどちらの募集かで、給与の体系が変わります。募集の要項で、どの条文に基づく採用かを確かめてください。

財政・会計の経験はどう評価されるか

専門性の組合せ対応しやすい募集
財政課の経験+公認会計士・税理士公会計の導入・運用、財務書類の作成・分析、内部統制の責任者
財政課の経験+民間のDX・システムの経験DX推進の責任者、財務会計システムの刷新の責任者
財政課の経験+コンサルティング・調査研究の経験行政改革、財政の分析と計画、公共施設のマネジメント
財政課の経験+金融機関の経験資金の調達・運用、第三セクターの経営の改善

財政課の経験だけでは「高度の専門的な知識経験」の要件を満たしにくく、民間で加えた専門性との組合せで要件に合うというのが、面談での実感です。財政課の経験は、自治体の業務の理解として、専門性を公務に生かす土台になります。

転職するとどうなるか

転職を考えている方にとって、特定任期付職員で効いてくる点は3つです。

1. 民間で加える専門性が、公務に関わる道を開く

財政課の経験+会計・DX・法務などの専門性が、特定任期付職員の要件に合います。

2. 専用の給料表と業績手当がある

国の俸給表(1号俸405,000円〜7号俸893,000円)を基準にした条例の給料表で、常勤の職員とは別の体系です。

3. 任期は5年以内。満了後の道を並行して持つ

上限を超えて続けることはできません。満了後の民間への復帰や再度の応募を、任期中に準備してください。

手続きと期限

順序手続き時期場所
転職を考えたら民間で加える専門性(会計、DX、法務など)を、将来の公務との関わりを視野に選ぶ転職前転職支援
民間で専門性を積む資格、実績、責任者の経験を積む転職後転職先
募集を見つけたら第3条第1項(特定)か第2項(一般)か、要件、任期、給料表の号給、業績手当を確かめる募集の時期募集の要項
応募選考(書類、面接、専門性の実証)募集の時期任命権者
採用任期の明示。常勤の職員として共済に加入採用の日人事の担当課
任期中満了後の道(民間への復帰、再度の応募)を並行して準備任期中──

誤解されやすい点

「特定任期付職員は誰でも応募できる」と思い込む

高度の専門的な知識経験または優れた識見が要件です(第3条第1項)。財政課の経験だけでは届きにくいです。

「給与は常勤の職員と同じ給料表」と思い込む

専用の給料表と業績手当を条例で設けている自治体が多いです。国の俸給表を基準にしています。

「任期を更新すればずっと働ける」と思い込む

採用した日から5年を超えない範囲です(第7条第1項)。

「地方の法律に給与が書いてある」と思い込む

地方の任期付職員法に給与の定めはなく、自治体の給与条例によります。国の法律の俸給表が基準です。

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まとめ

よくある質問

財政課の経験だけで、特定任期付職員に応募できますか

応募はできますが、「高度の専門的な知識経験または優れた識見」の要件を満たすかどうかは選考の判断で、財政課の経験だけでは届きにくいのが実情です。第3条第1項の要件は、部内で育成できない高度の専門性を外部から迎えるための水準で、弁護士、公認会計士、特定分野の責任者の経験などが典型です。財政課の経験は、自治体の財政の実務の理解として価値がありますが、他の自治体の財政課の職員も持つ経験なので、それだけで「高度の」専門性と判断されることは多くありません。一方で、財政課の経験を持つ人が民間で会計の資格、DXの責任者の経験、コンサルティングの実績を加えると、「自治体の財政を理解し、かつ専門性を持つ人」として要件に合いやすくなります。財政課の経験のみで公務に戻る道としては、経験者採用(経験者採用で公務員に戻る道)や、一般任期付職員(第3条第2項)の募集のほうが現実的です。どの募集がどの条文に基づく採用かは要項で確かめてください。

特定任期付職員の給与は、募集の要項でどう示されますか

「特定任期付職員の給料表○号給」または年間の給与の見込額として示されることが多いです。額は自治体の条例で定められています。地方の任期付職員法には給与の定めがなく、自治体の給与条例が、国の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第7条の俸給表(1号俸405,000円から7号俸893,000円までの7段階)に準じた専用の給料表を定めています。号給は、従事する業務の内容と専門性の水準に応じて決定され、募集の要項に「○号給を予定」「年間の給与の見込み○円程度」と示されます。業績手当は、業績に応じて支給される手当で、条例により支給の基準が定められます。期末手当、通勤手当などの手当は常勤の職員に準じ、共済の組合員となります。民間の専門職の給与と比べる場合は、給料表の号給の額×12に業績手当と期末手当を加えた年間の額で並べてください。額の水準は自治体と業務により幅があるので、応募の前に募集の要項と人事の担当課で確かめるのが確実です。

特定任期付職員の任期が満了したら、どうなりますか

任期の満了で退職します。同じ自治体で改めて募集があれば応募でき、民間に戻る道もあります。特定任期付職員の任期は5年を超えない範囲で、更新も採用した日から5年以内なので(第6条第1項、第7条第1項)、5年を超えて同じ任期で続けることはできません。任期の満了後に、同じ自治体が同種の業務で新たに募集を行えば応募でき、選考を経て採用されることはあり得ますが、自動的な継続ではありません。民間に戻る場合、特定任期付職員として公務に関わった経験(公会計の導入の責任者、DXの推進の責任者など)は、自治体向けの企業、監査法人、コンサルティングで、公務と民間の両方を知る専門家として評価されます。任期の満了後は再就職者の働きかけの規制(地方公務員法第38条の2)が及び、在職した自治体の役職員への契約等事務に関する働きかけは離職後2年間できません。任期の満了の1年前から、次の道(民間への復帰、他の自治体の募集、同じ自治体の再募集)を並行して準備するのが、満了と同時に次に移る形です。

出典

  1. 地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律 第3条(職員の任期を定めた採用)/第6条(任期)/第7条(任期の更新)/第8条(任用の制限)|e-Gov法令検索
  2. 一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律 第3条(任期を定めた採用)/第7条(給与に関する特例)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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