制度とお金 / 失業給付と税金
ハローワークで公務員が使える制度
「公務員は雇用保険に入っていないから、ハローワークには関係ない」。そう思って、一度も行かずに転職活動を終える方が多くいます。
雇用保険の給付と、ハローワークの窓口は、別のものです。雇用保険の基本手当は受けられませんが、求職の申込み、職業紹介、職業訓練、そして退職手当が少ない場合の差額の給付は、公務員を辞めた方も使えます。使えるものと使えないものを分けて知っておくと、転職活動の道具が1つ増えます。
この記事では、ハローワークで公務員が使える制度を、職業安定法と求職者支援法の条文で整理します。雇用保険がない理由は公務員に雇用保険がない理由、退職手当が少ない場合の差額の給付は退職手当が一定額に満たない場合の給付に書いています。
出発点——ハローワークは「雇用保険の窓口」だけではない
ハローワーク(公共職業安定所)の仕事の中心は、職業紹介です。職業安定法第4条第1項は、職業紹介を「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」と定義しています。雇用保険の給付は、その上に乗っている別の制度です。
そして、第5条の7は、こう定めています。
> 公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者は、求職の申込みは全て受理しなければならない。
求職の申込みは、全て受理される。雇用保険に入っていたかどうかは、要件に入っていません。公務員を辞めた方も、求職の申込みをすれば、求職者として扱われます。
使えるもの1:求職の申込みと職業紹介
求職の申込みをすると、求人の検索、職業相談、職業紹介が使えます。職業安定法第4条第4項は、職業指導を「実習、講習、指示、助言、情報の提供その他の方法により、その者の能力に適合する職業の選択を容易にさせ」るものと定義しています。相談と情報の提供は、給付の有無と関係なく受けられます。
公務員から民間への転職で、ハローワークの求人が合うかどうかは、行き先によります。行政が相手の企業、地域の中小企業、公的な性格の団体の求人は、ハローワークに出ていることが多くあります。一方で、専門職や管理職の求人は、民間の職業紹介や求人サイトのほうが多い分野もあります。1つの経路として使うのが順当です。
使えるもの2:失業者の退職手当の手続き
国家公務員退職手当法第10条は、退職手当の額が雇用保険の基本手当に相当する額に満たない場合に、差額を「公共職業安定所を通じて」支給すると定めています。この手続きは、ハローワークで行います。求職の申込みをし、失業の認定を受け、雇用保険の基本手当の支給の条件に従って、日額が支給されます。
勤続が短く、退職手当が少ない方は、この制度の対象になり得ます。自治体の条例に同じ規定があるかを確かめたうえで、退職の書類を持ってハローワークに行ってください。詳しくは退職手当が一定額に満たない場合の給付に書いています。
使えるもの3:求職者支援制度——職業訓練と給付金
雇用保険の対象外の求職者のための制度として、求職者支援制度があります。根拠は「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」(求職者支援法)です。第2条は、特定求職者をこう定義しています。
> 公共職業安定所に求職の申込みをしている者(雇用保険法(中略)第四条第一項に規定する被保険者である者及び同法第十五条第一項に規定する受給資格者である者を除く。)のうち、労働の意思及び能力を有しているものであって、職業訓練その他の支援措置を行う必要があるものと公共職業安定所長が認めたものをいう。
雇用保険の被保険者でも受給資格者でもない求職者が対象です。公務員を辞めた方は、雇用保険の被保険者ではなく、受給資格者でもないので、この定義に入り得ます。
第7条は、公共職業安定所長が指示した認定職業訓練等を特定求職者が受けることを容易にするため、職業訓練受講給付金を支給することができると定めています。給付金の支給の基準は厚生労働省令で定められ、収入や資産などの要件があります。
| 求職者支援制度で使えるもの | 内容 |
|---|---|
| 認定職業訓練 | 公共職業安定所長の指示を受けて受講する職業訓練 |
| 職業訓練受講給付金 | 訓練を受ける間の給付金。収入・資産などの要件を満たす場合(第7条、厚生労働省令) |
| 就職の支援 | 訓練中と訓練後の職業相談・職業紹介 |
職種を変える転職を考えている方は、この制度で訓練を受けながら次を探す道があります。ただし、給付金には要件があり、訓練の指示はハローワークが行うので、「受けたい訓練を自由に選べて、必ず給付金が出る」制度ではありません。窓口で相談してから判断してください。
使えないもの——雇用保険の給付
雇用保険法第6条第6号により、公務員は雇用保険の適用除外です。したがって、雇用保険の給付は使えません。
| 使えないもの | 理由 |
|---|---|
| 基本手当(失業給付) | 雇用保険の被保険者ではない。代わりに失業者の退職手当(退職手当法第10条) |
| 教育訓練給付 | 雇用保険の被保険者・元被保険者向けの給付 |
| 再就職手当などの就職促進給付 | 同上 |
「ハローワークに行っても給付がないから無意味」ではなく、「雇用保険の給付は使えないが、それ以外は使える」が正確な形です。
転職するとどうなるか
転職を考えている公務員の方にとって、ハローワークで効いてくる点は3つです。
1. 求職の申込みは、誰でもできる
雇用保険の有無は要件ではありません(職業安定法第5条の7)。職業紹介と相談は、転職活動の経路の1つとして使えます。
2. 退職手当が少ないなら、失業者の退職手当の手続きの窓口
勤続が短い方は、対象になり得ます。退職の前に、条例と見込額を確かめてください。
3. 職種を変えるなら、求職者支援制度の相談先
雇用保険の対象外の求職者向けの訓練と給付金があります。要件があるので、窓口で相談してください。
手続きと期限
| 場面 | すること | どこで |
|---|---|---|
| 転職活動を始める | 求職の申込み(本人確認の書類を持参) | ハローワーク |
| 失業者の退職手当の対象になり得る | 退職時の書類を持って求職の申込み、失業の認定 | ハローワーク。支給期間は原則として退職の日の翌日から1年 |
| 職業訓練を受けたい | 職業相談で訓練の指示を受ける。給付金の要件を確認 | ハローワーク |
失業者の退職手当には支給期間があります。雇用保険法の受給期間に相当する期間で、原則として退職の日の翌日から1年です。退職後、早めに窓口に行ってください。求職の申込みと職業紹介そのものには、期限はありません。
誤解されやすい点
「公務員はハローワークを使えない」と思い込む
求職の申込みは全て受理されます(職業安定法第5条の7)。使えないのは雇用保険の給付です。
「ハローワークに行けば失業給付が出る」と思い込む
雇用保険の基本手当は出ません。退職手当が基本手当の総額に満たない場合の差額(失業者の退職手当)が、条件を満たせば出ます。
「職業訓練は雇用保険に入っていた人だけ」と思い込む
求職者支援制度は、雇用保険の対象外の求職者のための制度です(求職者支援法第2条)。
「教育訓練給付が使える」と思い込む
雇用保険の被保険者・元被保険者向けの給付なので、公務員は使えません。
まとめ
- ハローワークの中心は職業紹介で、求職の申込みは全て受理されます(職業安定法第4条・第5条の7)。雇用保険の有無は要件ではありません
- 使えるものは、①求職の申込みと職業紹介 ②失業者の退職手当の手続き(退職手当法第10条) ③求職者支援制度の職業訓練と給付金(求職者支援法第2条・第7条)の3つです
- 使えないものは、雇用保険の給付——基本手当、教育訓練給付、就職促進給付——です(雇用保険法第6条第6号)
- 失業者の退職手当には支給期間(原則、退職の日の翌日から1年)があります。退職後、早めに窓口へ
- 求職者支援制度の給付金には収入・資産などの要件があり、訓練の指示はハローワークが行います
- 行くか行かないかではなく、何のために行くかを先に決めてください
よくある質問
転職先を決めてから辞めます。ハローワークに行く意味はありますか
失業者の退職手当と求職者支援制度は、失業している方・求職している方のための制度なので、転職先が決まっている方には関係しません。求職の申込みそのものはできますが、次が決まっているなら使う場面は限られます。ハローワークが意味を持つのは、次を決めずに辞める場合と、職種を変えるために訓練を受けたい場合です。転職先を決めてから辞める方は、退職手当の手続きと年金・健康保険の切替えのほうが実務の中心になります。資金の面は退職手当をあてにした資金計画の考え方に書いています。
求職者支援制度の給付金は、公務員を辞めた人でも受けられますか
要件を満たせば受けられる可能性があります。求職者支援法第2条は、特定求職者を、公共職業安定所に求職の申込みをしている者のうち雇用保険の被保険者・受給資格者を除き、労働の意思と能力があって支援が必要と公共職業安定所長が認めた者と定義しています。公務員を辞めた方は雇用保険の被保険者でも受給資格者でもないので、この定義に入り得ます。ただし、職業訓練受講給付金には、厚生労働省令で定める収入・資産などの要件があり(第7条第2項)、退職手当を受け取った直後は資産の要件に関わることがあります。要件の詳細と自分が当たるかは、ハローワークの窓口で確認してください。
ハローワークの求人に、行政の経験を評価するものはありますか
あります。ただし、経路の1つとして見てください。ハローワークの求人は地域の中小企業が中心で、行政が相手の事業を手がける企業、地域の団体、公的な性格の法人の求人が出ていることがあります。一方で、専門職や管理職の求人は民間の求人サイトや職業紹介のほうが多い分野もあります。ハローワークだけで「評価する求人がない」と結論づけるのは早いです。行政が相手の企業に絞った求人は、当社の求人一覧でも見られます。複数の経路を並べて、自分の経験の値の付き方を比べてください。経験の言い換えは、部署別の記事——たとえば財政課の経験は民間で何と呼ばれるか——で扱っています。