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制度とお金 / 失業給付と税金

退職手当が一定額に満たない場合の給付

公務員には失業給付がない。そう聞いて、それで終わりにしている方がほとんどです。

ところが、法律には「失業者の退職手当」という制度があります。退職手当の額が、雇用保険の基本手当に相当する額に満たない場合に、その差額を、公共職業安定所を通じて支給する仕組みです。勤続年数が短い方——つまり、退職手当が少ない方——ほど、関係します。転職先を決めずに辞める若手の方には、知っておく価値があります。

この記事では、失業者の退職手当が、誰を対象に、いくらを、どういう条件で支給するのかを、国家公務員退職手当法第10条の条文で整理します。地方公務員の退職手当は所属自治体の条例で決まります(地方自治法第204条)が、多くの条例が国の第10条に相当する規定を置いています。自分の自治体の条例に同じ規定があるかを、必ず確かめてください。雇用保険がない理由は公務員に雇用保険がない理由、「退職手当が代わり」の正確なところは「退職手当が失業給付の代わり」の正確なところに書いています。

なぜこの制度があるのか

雇用保険法第6条第6号は、国や自治体に雇用される者のうち、離職した場合に他の法令や条例に基づいて受ける給与の内容が、求職者給付および就職促進給付の内容を超えると認められる者を適用除外としています。除外の理由は「退職手当が失業給付を超えるから」です。

では、超えない場合はどうなるか。勤続が短く、退職手当が失業給付に相当する額に届かない場合です。その差を埋めるのが、第10条の失業者の退職手当です。雇用保険の対象外である代わりに、退職手当の側で失業給付と同じ水準を保証するという構造です。

誰が対象か——勤続12か月以上で、退職手当が基本手当相当額に満たない者

第10条第1項の骨は、こうです。

> 勤続期間十二月以上(特定退職者(中略)にあつては、六月以上)で退職した職員(中略)であつて、第一号に掲げる額が第二号に掲げる額に満たないものが(中略)支給期間内に失業している場合において、(中略)退職手当として、同法の規定による基本手当の支給の条件に従い、公共職業安定所を通じて支給する。

要件内容
勤続期間12か月以上(特定退職者——雇用保険法の特定受給資格者に相当する者——は6か月以上)
額の比較第1号の額(既に受けた一般の退職手当の額)が、第2号の額(基本手当の日額×所定給付日数)に満たないこと
状態支給期間内に失業していること
条件雇用保険法の基本手当の支給の条件に従う(求職の申込み、失業の認定など)
窓口公共職業安定所(ハローワーク)を通じて支給

第2号の額は、その退職者を雇用保険の受給資格者とみなし、勤続期間を被保険者期間と、退職の日を離職の日とみなして雇用保険法を適用した場合に受け取れる「基本手当の日額に所定給付日数を乗じて得た額」です。つまり、「もし雇用保険に入っていたら受け取れたはずの基本手当の総額」と、実際に受けた退職手当を比べ、退職手当のほうが少なければ対象になります。

いくらを、いつから、どれだけの期間受け取るか

第1項の続きは、支給の額と期間の骨を定めています。要点は3つです。

1. 日額は「基本手当の日額に相当する金額」

支給されるのは、その退職者が雇用保険の受給資格者だったとした場合の基本手当の日額に相当する額です。日額で、失業している日について支給されます。

2. 退職手当を日数に換算した分と待期の後から

第1項は、一般の退職手当の額を基本手当の日額で除して得た数(1未満の端数は切り捨て)に待期日数を加えた日数分を経過した後の失業している日について支給する、と定めています。つまり、受け取った退職手当は「基本手当の何日分か」に換算され、その日数の間は支給されません。その日数と待期の日数を過ぎてから、日額の支給が始まります。

3. 上限は「所定給付日数から待期日数を減じた日数分」

第1項のただし書きは、所定給付日数から待期日数を減じた日数分を超えては支給しないと定めています。雇用保険の基本手当と同じ上限です。

項目内容
日額基本手当の日額に相当する額
支給が始まる時期退職手当を基本手当の日額で割った日数+待期日数を経過した後
上限所定給付日数 − 待期日数
支給期間雇用保険法の受給期間に相当する期間(原則、離職の日の翌日から1年。妊娠・出産・育児などで30日以上職業に就けない場合は最長4年まで延長)

つまり、「基本手当の総額 − 退職手当」の差額を、日額の形で、失業している日について、上限まで受け取る形です。第2項は、退職手当を受けていない者について、基本手当の日額に相当する額を所定給付日数の範囲で支給する、と定めています。

高年齢者・短期雇用の場合

第4項と第6項は、雇用保険法の高年齢被保険者や短期雇用特例被保険者に相当する者について、それぞれ高年齢求職者給付金、特例一時金に相当する額との差額を支給する形を定めています。勤続期間の要件は6か月以上です。転職の場面では、第1項の形が中心になりますが、再任用の後の退職など、高年齢の方はこちらに当たることがあります。

職業訓練を受ける場合

第8項と第9項は、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける場合の扱いを定めています。訓練を受け終わる日までの間、基本手当の支給の条件に従って退職手当を支給する形です。第10項以下には、技能習得手当、寄宿手当に相当する退職手当の定めもあります。職業訓練を受けながら次を探す形も、制度として用意されています。

転職するとどうなるか

転職を考えている方にとって、失業者の退職手当で効いてくる点は3つです。

1. 勤続12か月以上で、退職手当が基本手当の総額に満たなければ対象

勤続が短い方ほど、当たりやすいです。自分の退職手当の見込みと、基本手当の総額の見込みを比べてください。

2. 手続きはハローワークで、条件は雇用保険の基本手当と同じ

求職の申込みと失業の認定が要ります。転職先が決まっている方は、失業していないので対象になりません。

3. 自分の自治体の条例に、同じ規定があるかを確かめる

国の第10条に相当する条が条例にあるかどうかで、扱いが決まります。「失業」で例規集を検索してください。

手続きと期限

失業者の退職手当の手続きは、公共職業安定所(ハローワーク)を通じて行います。一般的な流れは、次のとおりです。

順序することどこで
1退職時に、退職票などの書類を受け取る(様式は自治体による)人事の担当課
2求職の申込みをするハローワーク
3失業の認定を受ける(雇用保険の基本手当の条件に従う)ハローワーク
4退職手当を日数換算した期間と待期の後、失業している日について日額が支給される自治体(ハローワークを通じて)

支給期間は、原則として退職の日の翌日から1年です(雇用保険法の受給期間に相当)。妊娠・出産・育児などで引き続き30日以上職業に就けない場合は、公共職業安定所長に申し出れば加算され、最長4年までです。期間を過ぎると、残りは受け取れません。

書類の名称と手続きの細目は自治体ごとに違います。退職の前に、人事の担当課に「失業者の退職手当の手続き」を制度の照会として確かめてください。

誤解されやすい点

「公務員には失業給付に相当するものが一切ない」と思い込む

退職手当が基本手当の総額に満たない場合の差額を支給する制度があります(第10条)。

「勤続が長くても受けられる」と思い込む

退職手当が基本手当の総額を超えていれば、対象になりません。勤続が長い方は、通常、超えます。

「辞めれば自動的に支給される」と思い込む

ハローワークで求職の申込みをし、失業の認定を受ける必要があります。転職先が決まっていれば対象外です。

「国の制度だから、自治体でも同じ」と思い込む

自治体の条例に同じ規定があるかは、条例ごとです。例規集で確かめてください。

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まとめ

よくある質問

勤続3年で退職手当が少ないのですが、対象になりますか

国の第10条の形では、勤続12か月以上で、退職手当の額が「基本手当の日額×所定給付日数」に満たなければ対象です。勤続3年なら12か月以上の要件は満たします。あとは、自分の退職手当の見込額と、雇用保険の受給資格者だった場合の基本手当の総額を比べます。勤続3年程度の自己都合退職の退職手当は、基本手当の総額に満たないことが多いので、対象になる可能性があります。ただし、自治体の条例に同じ規定があるか、手続きの様式は何かを、人事の担当課に制度の照会として確かめてください。支給の条件は雇用保険の基本手当と同じで、ハローワークでの求職の申込みと失業の認定が要ります。

転職先が決まっていても受けられますか

受けられません。第10条は「支給期間内に失業している場合」に支給すると定め、雇用保険法の基本手当の支給の条件に従うとしています。失業している——職業に就く意思と能力があって求職の申込みをしているのに就職できない状態——であることが条件で、転職先が決まっている方は失業していません。退職から入社まで間があいても、入社が決まっていれば対象外です。この制度は、次を決めずに辞めて探す方のための差額の給付です。次を決めてから辞める方には関係しません。

受け取った失業者の退職手当は、退職所得ですか

退職手当法の上では「退職手当として」支給されるものです(第10条第1項)。ただし、失業している日について日額で支給されるという性質は、一般の退職手当とは違います。税の扱いが一般の退職手当と同じとは限らないので、受け取る前に税務署か税理士に確認してください。一般の退職手当と同じ年に受ける場合や、翌年にまたがって受ける場合の扱いも、受け取る時期と額で変わります。退職所得の仕組みは退職所得控除と税金に書いています。なお、雇用保険の基本手当は非課税ですが、失業者の退職手当は雇用保険の給付ではなく退職手当なので、扱いが同じとは限りません。確認してから資金計画に入れてください。

出典

  1. 国家公務員退職手当法 第10条(失業者の退職手当)|e-Gov法令検索
  2. 雇用保険法 第6条(適用除外)|e-Gov法令検索
  3. 地方自治法 第204条(給与その他の給付)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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