制度とお金 / 失業給付と税金
ふるさと納税と退職の関係
ふるさと納税を毎年している方が、退職の年に前年と同じ額を寄附して、控除の上限を超えたという話をよく聞きます。
理由は2つあります。上限は「その年の所得」で決まるので、年の途中で退職すると下がること。そして、退職の年に確定申告をすると、ワンストップ特例が無効になり、寄附金控除を確定申告に含めなければならないこと。どちらも、在職中には意識しなかった点です。
この記事では、退職の年のふるさと納税で何が変わるかを、総務省のふるさと納税ポータルサイトの説明で整理します。税は個別性が高い分野なので、一般的な取扱いを書きます。自分の上限と手続きは、寄附の前に自治体や税務署で確認してください。確定申告の側は退職した年の確定申告に書いています。
出発点——控除は3つの部分でできている
総務省の説明によれば、ふるさと納税の控除は、自己負担の2,000円を除いた額について、次の3つで構成されます。
| 部分 | 計算 |
|---|---|
| 所得税の控除 | (ふるさと納税額 − 2,000円)× 所得税の税率 |
| 住民税の基本分 | (ふるさと納税額 − 2,000円)× 10パーセント |
| 住民税の特例分 | (ふるさと納税額 − 2,000円)×(100パーセント − 10パーセント − 所得税の税率)。ただし住民税の所得割額の20パーセントが上限 |
いわゆる「上限」の正体は、特例分の「所得割額の20パーセント」です。これを超えて寄附すると、超えた分の特例分は控除されず、自己負担が2,000円を超えて増えます。
所得割額は、その年の所得で決まります。だから、所得が減れば上限も下がる。退職の年に効くのは、この点です。
変わる点1:上限が下がる
在職中は、年間の給与が前年と大きく変わらないので、前年の実績を目安に寄附できました。退職の年は、給与が退職の月までで止まります。
| 場面 | その年の給与 | 上限の目安 |
|---|---|---|
| 在職中(1年分の給与) | 12か月分 | 前年の実績に近い |
| 3月末に退職し、年内に再就職しなかった | 3か月分 | 前年より大きく下がる |
| 3月末に退職し、5月に転職先に入社 | 3か月分+転職先の8か月分 | 転職先の給与の水準で変わる |
「前年と同じ額」が、いちばん多い失敗です。退職の年は、退職の月までの給与と、転職先の給与の見込みを合わせて、その年の所得を見積もり直してから寄附の額を決めてください。ポータルサイトなどの目安の計算は、その年の所得の見込みを入れて使います。
退職手当の扱いにも注意が要ります。退職手当は退職所得として他の所得と分離して課税され、住民税も分離課税で支払い時に特別徴収されます。ふるさと納税の特例分の上限の計算では、この分離課税の退職所得の所得割は基礎に含まれないと考えておくのが安全です。退職手当を受け取ったからといって、その年のふるさと納税の上限が大きくなるわけではありません。個別の計算は自治体で確認してください。
変わる点2:確定申告をすると、ワンストップ特例が無効になる
総務省の説明によれば、ワンストップ特例制度は、確定申告の必要がない給与所得者等が、寄附先が同一年度内に5団体以内の場合に、寄附先の自治体に申請書を出す(提出期限は翌年1月10日まで)ことで、確定申告なしに控除を受けられる仕組みです。控除は住民税からまとめて行われます。
そして、ワンストップ特例の申請をしていても、その後に確定申告をした場合は、特例は無効となり、控除額の全体を確定申告の内容に基づいて計算し直すとされています。
退職の年は、確定申告をする方が多いです。年をまたいで再就職した方は、確定申告をしないと納め過ぎた所得税が戻りません(退職した年の確定申告)。医療費控除を受ける方も確定申告です。その確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になります。
| 退職の年の状況 | ふるさと納税の控除の受け方 |
|---|---|
| 年内に転職先に入社し、年末調整を受け、確定申告をしない | ワンストップ特例が使える(5団体以内、翌年1月10日までに申請) |
| 確定申告をする(年をまたぐ再就職、医療費控除など) | ワンストップ特例は無効。寄附金控除を確定申告に含める |
確定申告をするなら、ワンストップの申請をしていても、寄附金の受領証明書を使って、確定申告書に寄附金控除を記載してください。記載しなければ、ふるさと納税の控除は受けられません。
退職の年の手順
- 退職の月までの給与と、転職先の給与の見込みを合わせて、その年の所得を見積もる
- その見込みで、上限の目安を出し直す
- その年に確定申告をするかどうかを先に決める(年をまたぐ再就職、医療費控除、退職手当の申告書の出し忘れなど)
- 確定申告をするなら、ワンストップは使わず、寄附金の受領証明書を保管して確定申告に含める
- 確定申告をしないなら、5団体以内で翌年1月10日までにワンストップの申請
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、ふるさと納税で効いてくる点は3つです。
1. 退職の年の上限は、その年の所得で見積もり直す
前年の実績は使えません。退職の月までの給与と転職先の給与を合わせて見積もります。
2. 確定申告をするなら、ワンストップは無効
寄附金の受領証明書を保管して、確定申告に含めてください。
3. 退職手当は上限を押し上げない前提で考える
分離課税なので、その年のふるさと納税の上限の計算には基本的に効きません。
手続きと期限
| 場面 | すること | 期限 |
|---|---|---|
| 寄附の前 | その年の所得の見込みで上限を出し直す | 寄附の前 |
| 確定申告をしない場合 | ワンストップ特例の申請書を寄附先の自治体に提出(5団体以内) | 翌年1月10日まで |
| 確定申告をする場合 | 寄附金の受領証明書を保管し、確定申告書に寄附金控除を記載 | 確定申告の時期(還付の申告は翌年から5年以内) |
| ワンストップ申請後に確定申告が必要になった | 特例は無効。確定申告に寄附金控除を含める | 同上 |
ワンストップの期限は翌年1月10日で、確定申告の時期より早いです。退職の年は、12月の時点で「確定申告をするか」を決めておくと、どちらの手続きにするかが決まります。
誤解されやすい点
「上限は前年と同じ」と思い込む
その年の所得で決まります。退職の年は下がることが多いです。
「ワンストップの申請をしておけば、確定申告をしても控除される」と思い込む
確定申告をするとワンストップは無効です。確定申告に寄附金控除を含めなければ、控除されません。
「退職手当があるから上限が上がる」と思い込む
退職所得は分離課税で、上限の計算には基本的に効かないと考えておくのが安全です。
「退職の年はふるさと納税をしないほうがよい」と思い込む
上限を見積もり直せば、できます。額を前年のままにしないだけです。
まとめ
- ふるさと納税の控除は、所得税の控除、住民税の基本分、住民税の特例分の3つで、特例分は住民税の所得割額の20パーセントが上限です(総務省の説明)
- 上限はその年の所得で決まるので、退職の年は下がることが多いです。退職の月までの給与と転職先の給与を合わせて見積もり直してください
- ワンストップ特例は、確定申告の必要がない給与所得者等が、5団体以内で、翌年1月10日までに申請する仕組みです。確定申告をすると無効になり、寄附金控除を確定申告に含める必要があります
- 退職所得は分離課税で、ふるさと納税の上限の計算には基本的に効かないと考えておくのが安全です
- 退職の年は、年末にまとめて、確定申告をするかを先に決めてから寄附するのが順当です
- 自分の上限と手続きは、自治体や税務署で確認してください
よくある質問
3月末に退職して、年内は再就職しません。ふるさと納税の上限はどのくらい下がりますか
その年の給与が1月から3月までの3か月分になるので、上限は前年より大きく下がります。特例分の上限は住民税の所得割額の20パーセントで、所得割額はその年の所得で決まるからです(総務省の説明)。具体的な額は、3か月分の給与と、退職後に納めた社会保険料などの控除を反映した所得で計算されるので、ここでは出せません。退職手当は分離課税なので、上限の計算には基本的に効かないと考えてください。年内に再就職しないなら確定申告をすることになる場合が多いので、ワンストップは使わず、寄附金の受領証明書を確定申告に含める形になります。上限の目安は、その年の所得の見込みを自治体や税務署で確認してから出してください。
すでにワンストップの申請をしていますが、退職の年に確定申告が必要になりました
ワンストップ特例は無効になります。確定申告書に、その年のふるさと納税の全てを寄附金控除として記載してください。総務省の説明では、ワンストップ特例の申請をしていても、その後に確定申告をした場合は特例は無効となり、控除額の全体を確定申告の内容に基づいて計算し直すとされています。申請書を出した分も、確定申告に含めなければ控除されません。寄附先の自治体から届く寄附金の受領証明書を使います。証明書が手元になければ、寄附先の自治体に再交付を依頼してください。確定申告の要否そのものは退職した年の確定申告に書いています。
退職手当を受け取った年は、ふるさと納税の上限が上がりますか
上がらないと考えておくのが安全です。退職手当は退職所得として他の所得と分離して課税され、住民税も分離課税で支払い時に特別徴収されます。ふるさと納税の特例分の上限は住民税の所得割額の20パーセントですが、この分離課税の退職所得に係る所得割は、上限の計算の基礎に含まれないと考えておいてください。「退職手当が入ったから、その分だけ多く寄附できる」という前提で寄附すると、上限を超える可能性があります。個別の計算は、自治体の税の窓口か税務署で確認してください。退職手当の税の仕組みは退職所得の課税の仕組みに書いています。