制度とお金 / 失業給付と税金
副業収入がある場合の申告
公務員でいる間、副業は「原則として、しない」ものでした。退職すると、その制限は外れます。退職から入社までの空白の期間に、知人の会社を手伝って報酬を受ける。転職後に、休日に執筆や講師の仕事をする。こうした収入は、税の上で「給与以外の所得」になり、申告の線が別にあります。
この記事では、在職中の制限と、退職後・転職後の副業の収入の申告を、地方公務員法、所得税法、地方税法の条文と国税庁の案内で整理します。税は個別性が高い分野なので、一般的な取扱いを書きます。自分の申告の要否は、税務署と市区町村で確認してください。確定申告の全体は退職した年の確定申告に書いています。
在職中——任命権者の許可が要る
地方公務員法第38条第1項は、こう定めています。
> 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(中略)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(中略)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
役員を兼ねる、自ら営利企業を営む、報酬を得て事業や事務に従事する。この3つは、任命権者の許可がなければできません。在職中に「退職後の準備」として副業を始めることは、この制限に当たります。退職の前に始めるなら、許可の申請が要るということです。許可の基準は自治体の規則で定められています。
この制限は、退職した日で外れます。退職の翌日から、副業でも、事業でも、法律上の制限はありません。ただし、転職先の就業規則で副業が制限されている場合があるので、転職先の規則は別に確かめてください。
退職後・転職後——所得税の線は「給与以外の所得が20万円」
副業の収入は、税の上では給与所得以外の所得——多くの場合は雑所得、規模によっては事業所得——になります。収入から必要経費を引いた「所得」の額で、申告の要否が決まります。
国税庁のNo.1900は、給与所得者で確定申告が必要な人として、給与が1か所から支給されており、給与以外の所得金額が20万円を超える者を挙げています。根拠は所得税法第121条第1項で、1か所からの給与の全部について源泉徴収と年末調整を受けている者は、給与以外の所得金額の合計額が20万円以下であれば確定申告を要しない、と定めています。
| 状況 | 所得税の確定申告 |
|---|---|
| 転職先で年末調整を受け、副業の所得(収入 − 経費)が20万円以下 | 原則、要らない(第121条第1項) |
| 転職先で年末調整を受け、副業の所得が20万円超 | 要る(No.1900) |
| 年をまたいで再就職し、年末調整を受けていない | 副業の額にかかわらず、確定申告で全体を精算(退職した年の確定申告) |
「20万円」は収入ではなく所得です。収入が30万円でも経費が15万円なら所得は15万円で、20万円以下です。経費の領収書を保管してください。
住民税の線は「額にかかわらず申告」
所得税の20万円の線は、住民税にはありません。地方税法第317条の2第1項は、市町村民税の納税義務者が3月15日までに前年の所得などを記載した申告書を市町村長に提出しなければならないと定め、ただし書きで、給与支払報告書が提出される給与所得者などを除いています。給与以外の所得がある場合は、この除外に当たらず、額が20万円以下でも住民税の申告が要るというのが一般的な取扱いです。
| 副業の所得 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 20万円以下 | 確定申告は原則不要 | 市区町村への申告が要る(3月15日まで) |
| 20万円超 | 確定申告が要る | 確定申告をすれば市区町村にも通知され、別の申告は不要 |
所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告は別に要る——ここが見落とされやすい点です。確定申告をすれば、その内容が市区町村に通知されるので、住民税の申告は別に要りません。
退職の年の空白の期間の副業
退職から入社までの空白の期間に副業の収入があった場合は、その年の確定申告の要否の話になります。
- 年内に転職先に入社して年末調整を受けたなら、副業の所得が20万円を超えるかで所得税の申告の要否が決まり、住民税は額にかかわらず申告
- 年をまたいで再就職したなら、年末調整を受けていないので、給与も副業も含めて確定申告で精算する
空白の期間の副業は、失業者の退職手当や求職者支援制度の給付に関わることがあります。失業している日について支給される給付は、収入がある日の扱いが別になります。該当する方はハローワークで確認してください(ハローワークで公務員が使える制度)。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、副業で効いてくる点は3つです。
1. 在職中は許可が要り、退職の翌日から自由になる
地方公務員法第38条の制限は退職で外れます。転職先の就業規則は別に確かめてください。
2. 所得税の線は「給与以外の所得が20万円」
収入ではなく所得(収入 − 経費)です。経費の記録を残してください。
3. 住民税は額にかかわらず申告
確定申告をしない場合でも、市区町村への申告が別に要ります。
手続きと期限
| 場面 | すること | 期限・場所 |
|---|---|---|
| 在職中に副業を始めたい | 任命権者の許可を申請 | 自治体の規則に従う |
| 転職先で副業をしたい | 就業規則を確かめる | 転職先 |
| 副業の所得が20万円超 | 確定申告 | 翌年2月16日〜3月15日(税務署) |
| 副業の所得が20万円以下で、確定申告をしない | 住民税の申告 | 翌年3月15日まで(市区町村。第317条の2) |
| 年をまたいで再就職し、年末調整を受けていない | 給与と副業を含めて確定申告 | 還付の申告は翌年から5年以内 |
副業の収入は、支払う側から「支払調書」が出ることがあります。税務署は支払う側の情報を持っているので、申告の要否は自分で判断して、必要なら期限内に出してください。
誤解されやすい点
「退職後の準備なら在職中の副業は問題ない」と思い込む
地方公務員法第38条の許可がなければ制限に当たります。退職の翌日からが自由です。
「20万円以下なら何の申告も要らない」と思い込む
所得税の確定申告は原則不要でも、住民税の申告は別に要ります(地方税法第317条の2)。
「20万円は収入の額」と思い込む
所得(収入 − 経費)の額です。経費を引いた後で判断します。
「転職すれば副業は自由」と思い込む
転職先の就業規則で制限されている場合があります。法律の制限とは別に確かめてください。
まとめ
- 在職中は、任命権者の許可がなければ、役員の兼職、営利企業の経営、報酬を得ての事業や事務への従事はできません(地方公務員法第38条)。退職の翌日から、法律上の制限は外れます。転職先の就業規則は別に確かめてください
- 副業の収入は給与以外の所得(雑所得か事業所得)で、収入から経費を引いた「所得」の額で申告の要否が決まります
- 所得税は、年末調整を受けていて、給与以外の所得が20万円以下なら確定申告は原則不要、20万円超なら要ります(所得税法第121条第1項、No.1900)
- 住民税は、額にかかわらず申告が要ります(地方税法第317条の2)。確定申告をすれば別の申告は不要です
- 年をまたいで再就職した年は、年末調整を受けていないので、給与と副業を含めて確定申告で精算します
- 副業の収入と経費を月ごとに1枚の表にしておくと、年末に線を超えるかが分かります
よくある質問
退職から入社までの3か月に、知人の会社を手伝って15万円の報酬を受けました。申告は要りますか
所得税は、その年に転職先で年末調整を受けたなら、給与以外の所得が20万円以下なので確定申告は原則不要です(所得税法第121条第1項)。ただし、15万円は収入で、経費があれば所得はそれより小さくなります。住民税は、額にかかわらず市区町村への申告が要ります(地方税法第317条の2)。翌年3月15日までに、市区町村の窓口で申告してください。年をまたいで入社した場合は、年末調整を受けていないので、給与と副業を含めて確定申告で精算します。その場合は、確定申告をすれば住民税の申告は別に要りません。個別の扱いは税務署と市区町村で確認してください。
在職中に、退職後に始める事業の準備をしても大丈夫ですか
準備の内容によります。地方公務員法第38条第1項が制限しているのは、営利企業の役員などを兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することです。報酬を受けず、営利企業を営んでいない段階の情報収集や勉強は、この制限の対象ではないと考えられますが、会社を設立して役員に就く、報酬を受けて仕事を始める、といった行為は、在職中なら許可が要ります。許可の基準は自治体の規則で定められています。退職の翌日からは自由なので、報酬を伴う行為は退職後に始めるのが順当です。判断に迷う場合は、自治体の人事の担当課か服務の担当に確認してください。
転職先で副業が認められています。所得税と住民税の申告はどうなりますか
所得税は、副業の所得(収入 − 経費)が20万円を超えれば確定申告が要り、20万円以下なら転職先の年末調整だけで原則足ります(No.1900、所得税法第121条第1項)。住民税は、額にかかわらず市区町村への申告が要ります(地方税法第317条の2)。確定申告をすれば市区町村にも通知されるので、別の申告は不要です。副業の所得が雑所得か事業所得かは規模や継続性で変わり、事業所得なら青色申告などの選択肢もあります。転職先の就業規則で副業が認められていても、副業の所得が住民税の特別徴収の額に反映されて転職先に分かることがあります。気になる方は、市区町村で普通徴収の選択ができるかを確認してください。