選考対策 / 面接
条件交渉はどこまでできるか
内定の提示を受けたとき、条件に相談の余地があるかどうかは、多くの方が気にする点です。
「交渉すると、印象が悪くなるのではないか」
役所では、給与も勤務条件も条例で定まっています。個人が交渉する場面がありません。そのため、この場面に慣れていないのは自然なことです。
この記事では、相談できる範囲と伝え方を扱います。提示を受ける場の全体はオファー面談で確認すべきことにあります。
合意により変更できる、と書かれています
まず、制度の前提を確認します。
労働契約法第8条です。
> 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
合意により、労働条件を変更できる。
つまり、条件は固定されたものではなく、合意で動き得るものとして制度が組まれています。
相談すること自体は、制度の前提の範囲内です。
ただし、合意が前提である以上、相手が応じなければ変わりません。「交渉すれば通る」という話ではありません。
相談できる範囲と、難しい範囲
| 項目 | 相談の余地 |
|---|---|
| 入社の日 | 比較的相談しやすい |
| 勤務地(複数の拠点がある場合) | 相談の余地がある |
| 働き方(在宅勤務、時差出勤) | 制度の範囲内で相談できる |
| 処遇 | 等級の幅の範囲内であれば相談の余地 |
| 担当する業務 | 募集の枠によるため、難しいことが多い |
| 等級・役職 | 制度で決まっているため、難しい |
| 賞与や退職金の制度 | 会社の制度そのものなので、変更できません |
上の3つは、相談しやすい部分です。
下の3つは、個人のために制度を変えることになるため、応じられないのが通常です。
「何でも相談できる」わけでも、「何も相談できない」わけでもありません。
伝えるときは、根拠を添える
金額だけを伝えると、応じにくくなります。
| ✕ | ○ |
|---|---|
| 「もう少し上げていただけませんか」 | 「求人票の◯◯の経験について、◯年の実務があります。その点を踏まえてご検討いただけますでしょうか」 |
| 「他社はもっと高いです」 | 「他社からも提示をいただいており、条件面で迷っています」 |
| 「生活が厳しいので」 | 「現在の年間の支給を基準に考えており、◯◯程度であれば判断しやすくなります」 |
根拠になるのは、求人票に挙げられている要件と、自分の実務の対応です。
2つ目について補足します。他社の提示を引き合いに出すこと自体は、事実として伝える範囲であれば問題ありません。
ただし、金額を並べて比較を求める形にすると、条件だけで動く人と受け取られます。
伝える時期
| 時期 | 適否 |
|---|---|
| 応募の段階 | 希望を伝えるのは可。交渉ではなく前提の共有 |
| 面接の途中 | 早すぎます。仕事の話が中心の段階です |
| 提示を受けた後 | 適切な時期 |
| 受諾した後 | 避けてください。合意した内容の変更になります |
4つ目を守ってください。
受諾した後の再交渉は、信頼に影響します。入社前の段階で、条件を確認せずに受諾したことになるからです。
だから、受諾の前に確認してください。
相談は、1回にまとめてください。処遇、入社の日、勤務地を別々に持ち出すと、やり取りが長くなり、双方の負担が増えます。確認したい点を整理して、一度に伝えるほうが進みます。
人材会社を経由する場合
担当者に依頼できます。
| 依頼できること |
|---|
| 処遇の相談(根拠を添えて伝えてもらう) |
| 入社の日の調整 |
| 勤務地や働き方の確認 |
| 提示の内訳の確認 |
直接伝えにくい内容ほど、間に入ってもらうほうが進めやすいです。
担当者は、応募先の制度の幅を把握していることがあります。「その会社は等級ごとに幅が決まっているので、この範囲であれば相談できます」といった情報を持っている場合があります。
自分で全部を交渉する必要はありません。
処遇以外で調整できる部分
処遇が動かない場合でも、他の部分で調整できることがあります。
| 項目 | 相談の例 |
|---|---|
| 入社の日 | 退職の手続きに合わせて、1〜2か月後ろにする |
| 初期の配属 | 希望する業務に近い部署から始められないか |
| 在宅勤務の運用 | 入社後どの段階から利用できるか |
| 研修の期間 | 未経験の分野について、立ち上がりの支援があるか |
| 役割の見直しの時期 | 評価の最初の機会がいつか |
5つ目が、実質的な意味を持つことがあります。
入社時点の等級が動かなくても、最初の評価の機会が半年後なのか1年後なのかで、その後の見通しが変わります。
「入社後、最初に評価いただけるのはいつ頃でしょうか」と確認しておくと、処遇の相談をしなくても、見通しが立ちます。
条件は、金額だけではありません。自分が何を優先するかを決めてから、動かせる部分を探すほうが、結果として納得できる形になります。
相談しない判断もある
提示された条件に納得しているなら、相談する必要はありません。
「交渉しないと損」という考え方は、実態に合いません。
むしろ、次の場合は相談を見送るほうが確実です。
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 提示が求人票の範囲の上限に近い | 動く余地が小さい |
| 未経験の職種で、教育を前提とした採用 | 立ち上がりを見てからの評価になる |
| 条件以外が決め手になっている | 相談で関係が変わるほうが損 |
3つ目について補足します。仕事の内容や体制が決め手なのであれば、その条件を確保することを優先してください。
経験の言い換えから相談することもできます。
なお、相談した内容と、その回答は記録に残してください。口頭で「入社後に見直す」と言われた場合、その時期と条件を確認して書き留めておくほうが確実です。入社後に確認したくなったときの材料になります。
よくある失敗
1. 金額だけを伝える
根拠を添えてください。
2. 他社の金額を並べて比較を求める
条件だけで動く人と受け取られます。
3. 面接の途中で条件を持ち出す
時期が早すぎます。
4. 受諾した後に再交渉する
合意した内容の変更になります。
5. 制度そのものの変更を求める
個人のために制度は変えられません。
6. 相談しないと損だと考える
納得しているなら、相談の必要はありません。
まとめ
- 労働契約法第8条は、労働者及び使用者が、その合意により労働条件を変更することができるとしています
- 相談しやすいのは、入社の日・勤務地・働き方。等級や制度そのものは、変更できません
- 処遇は、等級の幅の範囲内であれば相談の余地があります
- 金額だけを伝えない。求人票の要件と自分の実務の対応を根拠として添えてください
- 時期は、提示を受けた後。受諾した後の再交渉は避けてください
- 条件は、交渉で作るより、応募の段階で選ぶほうが確実です
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よくある質問
相談したことで、内定が取り消されることはありますか
相談を理由に取り消されることは、通常ありません。労働契約法第8条が示すとおり、条件は合意により変更できるものです。相談すること自体が問題になる場面は、多くありません。ただし、伝え方によっては印象に影響します。金額を並べて比較を求める、期限を切って要求する、受諾後に蒸し返す。この3つは避けてください。また、相談の結果、条件が変わらなかった場合に、そのまま受諾するかどうかは自分で決められます。相談したから受諾しなければならない、ということはありません。
現在の処遇を正確に伝えるべきですか
伝えるのが通常です。多くの場合、提示の算定に使われます。そのため、年間の支給の額を正確に把握しておいてください。基本の給料、諸手当、賞与。この3つを合計した年間の額です。なお、実際より高く伝えるのは避けてください。源泉徴収票の提出を求められることがあり、食い違うと信頼に影響します。一方、低く伝える必要もありません。正確に伝えたうえで、「現在の水準を基準に考えています」と述べれば足ります。
入社の日の相談は、どのくらい動かせますか
会社の事情によります。前任者の退職が迫っている場合や、事業の立ち上げの時期が決まっている場合は、動かせる幅が小さいことがあります。一方、増員の募集であれば、1〜2か月の調整は応じられることが多いとされています。相談するときは、理由を添えてください。「所属の規程で、退職の申し出から◯か月を要します」という形です。制度上の理由であれば、理解されます。なお、入社の日を遅らせる相談は、早いほど調整しやすいです。提示を受けた段階で伝えてください。