選考対策 / 面接
面接で「なぜ民間へ」と聞かれたとき
公務員の中途採用の面接で、必ず出る質問です。
「なぜ、民間に移ろうと思われたのですか」
この質問に、正解の答えはありません。ただし、聞かれている意図には、型があります。
意図を外した答えをすると、回を重ねても同じ質問が出ます。逆に、意図に合った答えをすれば、1回で終わります。
この記事では、意図の整理と答え方を扱います。書類での転職理由の扱いは転職理由を職務経歴書に書くかにあります。
聞かれている3つの意図
| 意図 | 確認したいこと |
|---|---|
| ① 続くか | すぐ戻る、すぐ辞めることにならないか |
| ② 理解しているか | 民間と役所の違いを分かったうえで選んでいるか |
| ③ 逃げていないか | 現職の不満からの回避ではなく、選んで来たか |
3つとも、「覚悟」を聞いているわけではありません。
確認したいのは、事実の把握と、判断の筋です。「頑張ります」では、どの意図にも答えていません。
「民間を知らない」のは、制度上の当然です
答え方を考える前に、前提を1つ確認しておきます。
地方公務員法第38条第1項です。
> 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(中略)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員(中略)を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
許可を受けなければ、営利企業に従事できない。
つまり、民間の経験が無いことは、制度上そうなっているということです。本人の意欲や関心の問題ではありません。
この事実は、卑下する材料でも、言い訳の材料でもありません。
面接で「民間の経験がありませんが」と前置きする必要はありませんし、逆に「民間のことも分かっています」と言う必要もありません。
分かっている範囲を正確に言い、分かっていない部分は認める。これが、②の意図に対する最も確実な答えです。
答えの型
3段で答えます。全体で1分以内。
| 段 | 内容 |
|---|---|
| ① 何をしてきたか | 役所で担ってきた仕事を、1文 |
| ② 何を続けたいか | その中の、どの部分を続けたいか(現職を否定しない) |
| ③ なぜ民間か | その部分が、民間側のどの環境で広がるか |
悪い例
> 年功的な制度で、成果が処遇に反映されません。また、異動があるため専門性が積み上がらず、民間で自分の力を試したいと考えました。
①が無く、②が不満で、③が抽象的です。3つの意図のどれにも答えていません。
良い例
> 財政課で3年間、部局の予算の査定を担当してきました。前提の数字を揃えて、相手と合意を作る進め方が、自分に合っていると感じています。(①②)>> ただ、自治体では査定の対象が毎年度の予算に限られ、投資の効果が数年先に出る事業でも、判断の材料が単年度の枠の中に収まります。投資の回収まで通して見る仕事は、事業会社の側にあると考えました。(③)>> スピードや評価の仕組みが違うことは理解しています。決裁の段数が減るぶん、判断の責任が個人に寄ることも含めて、その環境を選びたいと考えています。
現職を否定していません。そのうえで、民間側にしかないものを1つ挙げています。
最後の1文が、②の意図(理解しているか)への答えです。
補足の材料を、1つ用意しておく
「違いを理解しているか」を確認されたときに、具体を1つ出せると強いです。
| 材料 | 言い方の例 |
|---|---|
| 会計の違い | 現金主義と発生主義の違いは把握しています。減価償却や引当金の実務は未経験です |
| 顧客の違い | 役所は相手を選べませんが、民間は取引先を選べる。その違いは理解しています |
| 評価の違い | 成果が処遇に反映される仕組みであることは、条件として受け止めています |
| 速度の違い | 事前に論点を詰めておけば、決裁の回数は減らせます。その経験はあります |
4つとも、「分かっている範囲」と「分かっていない範囲」を分けて話す形になっています。
分かっていないことを言うと不利になる、ということはありません。むしろ、全部分かっていると言うほうが、確認の質問が続きます。
「なぜ公務員になったのか」と続けて聞かれたら
この質問は、セットで出ることがあります。意図は、入庁の判断と、いまの判断がつながっているかの確認です。
答え方は、当時の理由を否定しないことです。
> 地域の仕事に関わりたいと考えて入庁しました。実際に、◯年間その仕事をしてきて、いまも間違った選択だったとは思っていません。そのうえで、担当する範囲を自分で選べる環境で続けたいと考えるようになりました。
当時の判断を否定すると、いまの判断の信頼性も下がります。「当時は深く考えていませんでした」と答える方がいますが、この答えは②と③の両方に響きます。
入庁の理由がはっきりしない場合でも、「その後に何を見つけたか」で答えられます。「入った時点では漠然としていましたが、◯◯を担当してから、この仕事の面白さが分かりました」という形です。
避けたほうがよい言い方
| ✕ | なぜ |
|---|---|
| 「民間の厳しさを学びたい」 | 学びに来る人として読まれます |
| 「安定より挑戦を選びました」 | 比べている軸が抽象的です |
| 「公務員では成長できないと思いました」 | 現職の否定になり、次も同じ言い方をすると読まれます |
| 「民間のスピード感に魅力を感じて」 | 中身を知らずに言っていると受け取られやすい |
| 「どこでもよいので早く決めたい」 | ③が無く、条件だけと読まれます |
1つ目は、とくに多い言い方です。中途採用は、即戦力を採る枠です。学びに来る姿勢を前面に出すと、採用の目的と合いません。
学ぶ意欲は前提なので、わざわざ言わなくて構いません。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 現職の不満から始める
①事実から始めてください。
2. ③が抽象的
民間側にしかない具体を1つ入れてください。
3. 「民間を理解しています」と言い切る
分かっている範囲と、分かっていない範囲を分けて話してください。
4. 前置きで卑下する
民間の経験が無いのは制度上のことです。断る必要はありません。
5. 答えが長い
1分以内。長くなるほど言い訳に近づきます。
6. 「学びたい」で締める
中途採用の枠と合いません。
まとめ
- 聞かれている意図は、①続くか ②違いを理解しているか ③逃げていないかの3つです
- 地方公務員法第38条第1項は、任命権者の許可を受けなければ営利企業に従事できないと定めています。民間の経験が無いのは制度上のことです
- 答えは、①何をしてきたか ②何を続けたいか ③なぜ民間かの3段、1分以内です
- ③に、民間側にしかない具体を1つ入れてください。抽象的だと、同じ質問が繰り返されます
- 分かっている範囲と、分かっていない範囲を分けて話すほうが通ります
- 「学びたい」で締めない。中途採用は即戦力を採る枠です
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よくある質問
自治体向けの事業をしている会社なら、この質問は出ませんか
出ます。むしろ、自治体向けの会社のほうが踏み込んで聞かれることがあります。理由は、役所の出身者を採用した経験があるからです。過去に採用した方が定着したか、しなかったか。その経験にもとづいて確認されます。確認されやすいのは、「発注する側から、受注する側に回ることをどう受け止めているか」です。立場が逆になるため、そこに抵抗がないかを見られます。答えるなら、「発注者として何を見ていたかが分かるぶん、提案する側でも使える」という筋が自然です。立場の変化を認めたうえで、その経験を使う側に回ると言えば足ります。
「戻れなくなりますが、よいのですか」と確認されました
この確認は、①の意図(続くか)そのものです。答えるときは、制度を調べたうえで決めたことを示してください。退職手当の扱い、年金の取扱い、共済から健康保険への切り替え。違いを把握したうえで判断した、という事実が伝われば足ります。「覚悟しています」という言い方は、根拠がないため答えになりません。なお、経験者採用の枠で自治体に戻る道が完全に閉じるわけではありませんが、面接の場でその話を持ち出すと、①の確認が長引きます。聞かれた範囲で答えるにとどめてください。
民間で働いたことがないので、質問に説得力が出ません
説得力は、民間の知識ではなく、自分の経験の具体性から出ます。この質問で見られているのは、民間への理解の深さではなく、判断の筋です。役所で何をしてきて、その中の何を続けたくて、なぜそれが民間側なのか。この3つがつながっていれば、経験の有無は問われません。むしろ、知らない業界の話を推測で語るほうが、その場で崩れます。調べて分かる範囲(事業の内容、顧客、公表されている資料)は押さえたうえで、分からない部分は面接で質問する。確認する姿勢は、①の意図にも良い材料になります。