選考対策 / 面接
「年収が下がっても大丈夫か」への答え方
中途採用の面接で、確認として出る質問です。
「現在の処遇より下がる可能性がありますが、問題ありませんか」
この質問には、2つの意図があります。
1つは、条件の確認。提示できる範囲を先に伝えて、入社後に相違が生じないようにするという意図です。
もう1つは、定着の確認。処遇が下がることを受け入れられないまま入社すると、短期間で動く材料になるためです。
この記事では、この質問への向き合い方を扱います。面接の全体像は公務員からの転職面接|全体の流れと準備にあります。
前提:条件は、対等な合意で決まります
この質問に萎縮する必要はありません。
労働契約法第3条第1項です。
> 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
対等の立場における合意。つまり、条件は一方的に決まるものではなく、合意で決まるという建て付けです。
「下がっても構いません」と即答する必要はありません。
確認すべきことを確認したうえで、判断する。それが、この条文の前提に沿った対応です。
結論:3段で答える
| 段 | 内容 |
|---|---|
| ① 前提の理解 | 処遇が変わる可能性があることは理解している |
| ② 判断の軸 | 何を重く見て応募しているか(処遇以外) |
| ③ 確認 | 提示の時期と、条件の内訳を確認したい |
③を入れて構いません。確認することは、消極的な態度ではありません。
答え方の例
> 処遇が現在と同じ水準になるとは考えていません。制度が違うので、単純な比較ができないことも理解しています。>> 応募にあたって重く見ているのは、担当する分野を継続できることと、成果が評価に反映される仕組みがあることです。この2点が満たされるのであれば、処遇の水準は御社の制度に従います。>> そのうえで、賞与や手当を含めた年間の見込みと、評価による変動の幅については、選考が進んだ段階で確認させていただければと思います。
1分以内です。③があることで、条件を軽視していないことも伝わります。
比較するときに見る項目
公務員の処遇と、民間の処遇は、構成が違います。単純に基本の額だけを比べると、判断を誤ります。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 月々の支給 | 基本の額と、諸手当の内訳 |
| 賞与 | 支給の有無、算定の方法、評価による変動の幅 |
| 退職金 | 制度の有無、算定の方法、勤続との関係 |
| 社会保険 | 共済から健康保険・厚生年金への切替え |
| 時間外 | 支給の方法(実績か、固定か) |
| 昇給 | 頻度と、評価との関係 |
とくに、退職金と賞与の扱いは、制度によって大きく違います。
所属の退職手当の規程と、応募先の制度を、それぞれ確認してください。税・社会保険・年金は個別性が高いので、共済組合や年金事務所で確認することを勧めます。
この記事では、具体的な金額の目安は示しません。自治体ごとにも、会社ごとにも条件が違うためです。
下がらない場合もあります
必ず下がる、という前提も正確ではありません。
| 下がりにくい場合 | 理由 |
|---|---|
| 専門の資格が要件の職種 | 資格と実務が揃う人が限られる |
| 自治体向けの事業で、行政の経験が要件 | 代わりの人材が少ない |
| 管理職としての採用 | 職責に応じた水準になる |
| 技術職で、発注者側の経験が要件 | 発注者支援の分野で需要がある |
逆に、未経験の職種に移る場合は、下がることが多いです。これは、経験の評価であって、人の評価ではありません。
自分がどちらに当たるかは、求人票の応募条件を見れば、ある程度は分かります。「行政での実務経験」が条件に入っていれば、その経験が評価される求人です。
「下がること」以外の変化も見る
処遇の話は、額の増減だけではありません。受け取り方の仕組みが変わります。
| 変わること | 内容 |
|---|---|
| 変動の幅 | 評価によって、年ごとに増減する仕組みが一般的です |
| 支給の時期 | 賞与の回数や算定の期間が、公務員の制度とは異なります |
| 手当の構成 | 住居や扶養に関する手当の有無と要件が、会社ごとに違います |
| 昇給の決まり方 | 年数ではなく、評価と等級で決まる仕組みが多くなります |
4つ目が、いちばん大きい違いです。初年度の水準が同じでも、数年後の差は大きくなることがあります。
面接では、「評価はどのような項目と頻度で行われますか」と確認しておくと、この部分の見通しが立ちます。入社時の水準より、上がり方のほうが長期では影響します。
生活の条件から逆算する
面接の準備とは別に、自分で決めておくことがあります。
「これ以下では受けない」という水準です。
| 決めておくこと | 理由 |
|---|---|
| 年間の見込みの下限 | 提示を受けてから迷わない |
| 下限を下回る場合の対応 | 辞退するか、交渉するか |
| 通勤や転居の費用 | 条件に含めて比較する |
| 配偶者の扶養や社会保険の扱い | 世帯の条件が変わることがある |
この水準を決めておくと、面接で答えるときに迷いません。
決めていないと、提示を受けてから考えることになり、返答が遅れます。
経験の言い換えから相談することもできます。
なお、この確認は面接の場でなくても構いません。人材会社を経由している場合は、担当者に先に聞いておくほうが早いことが多いです。
よくある失敗
1. 「こだわりません」と答える
事実でないことが多く、確認しない人とも読まれます。
2. 現在の処遇を正確に把握していない
手当と賞与を含めた年間の額を確認してから臨んでください。
3. 基本の額だけで比較する
賞与、退職金、手当。構成が違います。
4. 下限を決めずに面接に臨む
提示を受けてから迷います。
5. 一次の面接で条件を細かく聞く
条件の確認は、選考が進んだ段階が一般的です。
6. 提示の場で即答する
持ち帰って検討する、と伝えて構いません。
まとめ
- この質問の意図は、条件の確認と定着の確認の2つです
- 労働契約法第3条第1項は、労働契約を対等の立場における合意に基づいて締結・変更するものとしています。確認することは正当な対応です
- 答えは、①前提の理解 ②処遇以外の判断の軸 ③確認したいことの3段です
- 比較するのは、基本の額だけでなく、賞与・退職金・手当・社会保険・時間外・昇給です
- 「こだわりません」とは答えない。内訳を確認する姿勢を示してください
- 下限を先に決めておく。提示を受けてから迷わずに済みます
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よくある質問
希望する条件を聞かれたら、どう答えますか
現在の水準を基準に述べるのが一般的です。「現在の年間の支給を基準に考えていますが、職務の内容と評価の仕組みを踏まえて、御社の規定に従います」という形です。具体的な希望額を先に出すかどうかは、状況によります。人材会社を経由している場合は、担当者が間に入って調整することが多いので、担当者に希望を伝えておくほうが進めやすくなります。直接応募の場合は、現在の水準を正確に伝えたうえで、提示を待つという進め方が無難です。いずれにしても、現在の年間の額を正確に把握しておくことが前提になります。
提示された条件が想定より低い場合、交渉できますか
交渉の余地があるかどうかは、会社と職種によります。等級ごとに幅が決まっている会社では、幅の範囲内での調整にとどまることが多いです。交渉する場合は、金額だけでなく、根拠を添えてください。「求人票に挙げられている◯◯の経験について、◯年の実務があります」という形です。根拠のない増額の要望は、通りにくいです。また、入社後の評価で上がる仕組みがあるかを確認するという方法もあります。初年度の水準より、上がり方のほうが長期では影響します。人材会社を経由している場合は、担当者に交渉を依頼できます。
退職手当が減ることが気になります
この点は、必ず確認してから判断してください。退職手当は、勤続の年数と退職の理由で支給の率が変わる仕組みが一般的です。自己都合による退職の場合の取扱いは、所属の退職手当の規程に定められています。あと数年で率が変わる場合、動く時期によって差が生じます。これは、面接の準備とは別に、先に確認しておくべき事項です。所属の人事の担当か、規程で確認してください。税の取扱いも併せて確認が必要です。退職所得の課税は、他の所得と分けて計算される仕組みがあるため、具体的な計算は税務署や税理士に確認してください。一般的な取扱いと、個別の事情は異なります。