選考対策 / 面接
「利益を意識したことはあるか」への答え方
公務員の面接で、答えに詰まる質問の代表です。
「利益を意識して仕事をされたことはありますか」
正直に答えれば、「ありません」です。自治体に利益という概念はありません。
ただし、そこで止まると、この質問は落ちます。
聞かれているのは、利益の経験ではありません。限られた資源の中で、費用と効果を見比べて判断した経験があるかです。
この記事では、その材料の出し方を扱います。面接の全体像は公務員からの転職面接|全体の流れと準備にあります。
結論:3つの材料で答える
| 材料 | 何を話すか |
|---|---|
| ① 収支 | 歳入を確保した経験(使用料、手数料、補助金、収納) |
| ② 原価 | 費用を積み上げた経験(積算、単価、人件費の把握) |
| ③ 効果 | 費用と効果を比べた経験(事業の見直し、優先順位) |
3つのうち、1つでも具体的に話せれば足ります。
「利益はありませんが、◯◯はありました」という形で答えてください。否定してから、具体を出す。この順です。
自治体には、単年度の収支の規律があります
利益が無いことと、収支を見ていないことは別です。
地方自治法第208条です。
> 普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。>> 2 各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。
「各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない」。
その年度の収入の範囲で、その年度の支出を賄う。これは、単年度で収支を合わせる規律です。
利益は出ませんが、収支が合わないことは許されません。
この構造を説明したうえで、自分が関わった部分を出す。それが、この質問の答えになります。
民間との違いも、ここから説明できます。民間は複数年で投資を回収しますが、自治体は単年度で均衡させる。違いを把握していることが示せます。
① 収支——歳入を確保した経験
「役所に収入は無い」と思われがちですが、あります。
| 種類 | 関わった経験の例 |
|---|---|
| 市税・保険料 | 賦課、収納、滞納整理。収納率を動かした経験 |
| 使用料・手数料 | 施設の使用料、証明の手数料。改定の検討に関わった経験 |
| 国・県の補助金 | 要件に合わせて事業を組み、申請して交付を受けた経験 |
| 財産の活用 | 未利用地の売却、貸付け、広告の掲載 |
とくに、②の使用料・手数料の改定に関わった経験がある方は、それを話してください。
使用料や手数料の額を決めるには、原価を積み上げる必要があります。施設の維持にかかる費用、人件費、減価の見込み。この作業は、民間の価格の設定とほぼ同じ構造です。
② 原価——費用を積み上げた経験
| 経験 | 民間での対応 |
|---|---|
| 工事や委託の積算 | 原価の計算、見積りの査定 |
| 単価の妥当性の確認 | 調達の価格の検証 |
| 人件費を含む事業費の算定 | 案件ごとの原価の把握 |
| 補助の対象経費の区分 | 費目の管理、プロジェクトの原価の管理 |
積算をしたことがある方は、「原価を積み上げた経験があります」と言って構いません。
民間の事業でも、見積りは単価と数量の積み上げです。やっていることは同じです。
③ 効果——費用と効果を比べた経験
いちばん強い材料です。
> 事業の見直しにあたり、◯件の事業について、対象者1人あたりの費用を算出しました。対象者の数が減っている事業と、1人あたりの費用が他の事業の◯倍になっている事業を抽出し、廃止と縮小の案を作成しました。
「対象者1人あたりの費用」を出した経験は、単位あたりの原価を見ているということです。
事務事業の評価に関わった方も、同じ材料を持っています。指標を設定し、実績を測り、継続の可否を判断する。これは、事業の採算の判断と同じ構造です。
答え方の例
> 利益という形では意識していません。自治体は、地方自治法上、各年度の歳出をその年度の歳入で賄う仕組みになっていて、利益を出す設計ではないためです。>> ただ、費用と効果を比べる仕事は担当してきました。事業の見直しで、◯件の事業について対象者1人あたりの費用を算出し、他の事業と比較したうえで、廃止と縮小の案を作成しています。>> また、歳入の側では、補助金の要件に合わせて事業の実施の時期と区分を組み替え、一般財源の負担を約◯億円抑えました。>> 民間では、複数年で投資を回収するという考え方が入ると理解しています。その部分は未経験なので、入社後に身につけたい部分です。
最後の1文で、分かっていない範囲を認めています。この形にすると、次の質問が「では、どう学ぶつもりか」に進みます。
この答えは、1分半程度です。長くする必要はありません。構造の説明に20秒、経験に40秒、未経験の部分に10秒という配分で足ります。
本当に材料が無い場合
窓口や相談が中心で、金銭に関わる仕事をしてこなかった場合もあります。
その場合は、時間と人の配分で答えてください。
> 予算には関わっていませんが、限られた人数で処理の量を回す設計はしてきました。繁忙期に◯人で年間約◯件を処理するために、受付の段階で案件を分ける動線を作り、待ち時間を約◯分に短縮しています。
人と時間は、費用そのものです。この観点で話せば、材料が無いということはありません。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 「ありません」で終える
否定してから、具体を出す。この順です。
2. コスト削減の話だけをする
収入の側の経験を1つ入れてください。
3. 「住民のため」で答える
質問に答えていません。
4. 分かっているふりをする
未経験の部分は認めるほうが通ります。
5. 歳入の経験を話さない
税の収納、使用料、補助金。どれも収入の仕事です。
6. 数字を出さない
件数、金額、単位あたりの費用。具体で話してください。
まとめ
- 聞かれているのは利益の経験ではなく、費用と効果を見比べて判断した経験です
- 地方自治法第208条第2項は、各会計年度の歳出をその年度の歳入で賄うと定めています。利益は出ませんが、収支が合わないことは許されません
- 材料は、①収支(歳入の確保)②原価(積算)③効果(費用対効果)の3つ。1つ具体的に話せれば足ります
- コスト削減だけを話さない。収入の側の経験を1つ入れてください
- 未経験の部分(複数年での投資の回収など)は、認めるほうが通ります
- 金銭に関わる仕事がない場合は、人と時間の配分で答えられます
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よくある質問
簿記の知識がありません。学んでおくべきですか
応募先の職種によります。経理、財務、経営の企画の職種であれば、簿記の基礎があると、面接での会話が具体的になります。一方、営業、導入の支援、事務の職種では、必須とされないことが多いです。学ぶかどうかの判断は、応募先が決まってからで足ります。なお、公会計の財務書類(貸借対照表、行政コスト計算書など)の作成に関わった経験がある方は、それを話してください。発生主義の考え方に触れた経験として読まれます。ただし、関わった範囲は正確に述べてください。集計の一部を担当しただけであれば、そう言うほうが確実です。
「売上を上げた経験は」と重ねて聞かれました
無い場合は、無いと答えて構いません。そのうえで、近い構造の経験を出してください。使用料や手数料の収入を増やした経験、補助金を獲得した経験、滞納の回収で収納率を動かした経験。どれも、収入を増やす仕事です。加えて、「売上を作る仕事は未経験なので、入社後の最初の目標として取り組みたい」と述べれば、意欲の確認にもなります。無い経験を有るように話すのは避けてください。入社後に確認されるため、その場では通っても、後で問題になります。
公営企業(水道・下水道・病院など)の経験があります
この場合、答えは大きく変わります。地方公営企業は、経済性の発揮が法律上の原則とされ、発生主義による会計で運営されています。損益計算書も貸借対照表もあります。この経験がある方は、「利益を意識したことはあるか」に対して、そのまま答えられます。料金の設定、原価の計算、資産の減価、企業債の償還。どれも民間の財務とほぼ同じ構造です。書類にも、公営企業の会計を扱っていたことを明記してください。一般会計の経験とは別の材料として読まれます。