選考対策 / 志望動機
安定志向をどう説明するか
面接で、確認として聞かれることがあります。
「安定した環境から、民間に移ることに不安はありませんか」
この質問に、「不安はありません」と答えるのは不自然です。違いは、制度上も明確にあるからです。
この記事では、その違いを踏まえた答え方を扱います。面接での口頭の答え方は面接で「なぜ民間へ」と聞かれたときにもあります。
身分保障は、法律に定められています
まず、違いを条文で確認します。
地方公務員法第27条第2項です。
> 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、又は免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職され、又は(中略)降給されることがない。
法律で定める事由による場合でなければ、意に反して降任・免職されない。
これが、公務員の身分保障です。
民間では、この規定が当てはまりません。労働契約法や労働基準法の保護はありますが、仕組みが違います。
つまり、「安定している」というのは、感覚の話ではなく、制度上の事実です。
この事実を否定して答えると、かえって不自然に聞こえます。
結論:認めたうえで、判断の軸を示す
| 段 | 内容 |
|---|---|
| ① 事実の確認 | 身分保障の面では、いまの環境が有利だと理解している |
| ② 比べた軸 | それでも、何を重く見たか |
| ③ 準備 | 環境の違いに対して、何を備えているか |
①を飛ばさないでください。
「安定は求めていません」と答えると、制度を理解していないか、強がっていると受け取られます。
答え方の例
> 身分の保障という点では、いまの環境のほうが有利だと理解しています。>> そのうえで、担当する分野を自分で選べるかどうかと、成果が評価に反映されるかどうかを重く見て、環境を変えることにしました。>> 退職手当や年金の取扱いの違いも確認したうえで判断しています。
3段で、40秒程度です。
③があると、「調べたうえで決めた人」として伝わります。
「安定を求めること」自体は、否定しなくてよい
安定を求める姿勢を、隠す必要はありません。
| ✕ | ○ |
|---|---|
| 「安定より挑戦を選びました」 | 「安定の意味が、自分の中で変わりました」 |
| 「安定は求めていません」 | 「長く働ける環境であることは、いまも重く見ています」 |
右側の言い方であれば、定着の見込みとしても受け取られます。
採用する側も、長く働いてくれる人を求めています。
「安定を求めない人」より、「長く働ける環境を選んでいる人」のほうが、歓迎されることがあります。
「安定」の中身を分けて考える
安定という言葉には、複数の意味が含まれます。
| 種類 | 内容 | 民間での状況 |
|---|---|---|
| 雇用の安定 | 職を失わないこと | 会社と業界による |
| 収入の安定 | 変動が小さいこと | 評価による変動がある |
| 生活の安定 | 勤務地、時間が読めること | 会社による |
| 将来の見通し | 数年後が予測できること | 事業の状況による |
4つのうち、どれを重く見ているかを自分で把握してください。
すべてを求めると、選択肢がなくなります。
逆に、どれか1つを譲れば、候補は広がります。
たとえば、収入の変動は受け入れるが、勤務地は動かしたくない。この形であれば、地域に拠点がある会社という条件で探せます。
志望動機に書くかどうか
この論点は、志望動機に書く必要がありません。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 志望動機 | 書かない(聞かれてから答える) |
| 面接で確認されたとき | 3段で答える |
| 家族との相談 | 制度の違いを具体的に説明する |
志望動機に「安定より挑戦を」と書くと、比べている軸が抽象的になります。
また、書いた瞬間に「安定を捨てる覚悟」の話になり、仕事の内容の話が減ります。
書くのは、仕事の内容と、自分の経験との接点です。安定の話は、聞かれたときに答えれば足ります。
なお、応募先から「不安はありませんか」と聞かれた場合、それは確認であって、覚悟を試す質問ではありません。入社後に相違が生じないよう、条件の理解を確かめているのが通常です。
制度の違いを、先に調べておく
③の準備を示すには、実際に調べておく必要があります。
| 調べる項目 | 確認先 |
|---|---|
| 退職手当の算定 | 所属の退職手当の規程 |
| 年金の取扱い | 共済組合、年金事務所 |
| 健康保険の切替え | 共済組合、次の勤務先 |
| 雇用保険 | 次の勤務先で加入することになります |
税・社会保険・年金は個別性が高いため、一般的な取扱いとして理解したうえで、必ず個別に確認してください。
調べた事実を1行添えるだけで、答えの信頼性が上がります。
家族に説明する場面
この論点は、面接より家族との会話で問われることが多いかもしれません。
| 説明すること | 材料 |
|---|---|
| 制度の違い | 身分保障、退職手当、年金の取扱い |
| 応募先の状況 | 設立からの年数、事業の構成、顧客 |
| 条件の比較 | 年間の支給、勤務地、働き方 |
| 判断の理由 | 何を重く見たか |
4つとも、面接で述べる内容と同じです。
家族に説明できる状態になっていれば、面接でも詰まりません。
逆に、家族に説明できない状態で進めると、内定が出てから止まることがあります。
経験の言い換えから相談することもできます。
この作業には、1〜2週間かかることがあります。共済組合や年金事務所への問い合わせは、在職中は時間が限られます。選考が進んでから始めると間に合わないので、早めに着手してください。
よくある失敗
1. 「安定は求めていません」と答える
制度上の事実を否定することになります。
2. ①の事実の確認を飛ばす
強がっていると受け取られます。
3. 「民間は不安定」と一括りにする
会社と業界で状況が違います。
4. 安定の中身を分けない
すべてを求めると、選択肢がなくなります。
5. 制度の違いを調べない
③の準備が示せません。
6. 家族に説明しないまま進める
内定が出てから止まります。
まとめ
- 地方公務員法第27条第2項は、法律で定める事由による場合でなければ、意に反して降任・免職されないとしています。安定は制度上の事実です
- 答えは、①事実の確認 ②比べた軸 ③準備の3段。①を飛ばさないでください
- 「安定は求めていません」と答えない。制度を理解していないか、強がっていると受け取られます
- 安定の中身を、雇用・収入・生活・将来の見通しに分けてください。すべてを求めると選択肢がなくなります
- 「民間は不安定」と一括りにしない。応募先の事業の構成を確認してください
- 家族に説明できる状態になっていれば、面接でも詰まりません
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
よくある質問
応募先の経営の状況を、どこで確認できますか
公表されている資料がある会社もあります。上場している会社であれば、有価証券報告書や決算に関する資料が公表されています。そうでない会社でも、公式サイトの会社の概要で、設立の年、従業員数、事業の構成が確認できることがあります。加えて、顧客の種類を見てください。自治体や大企業が顧客の中心であれば、取引の期間が長い傾向があります。人材会社を経由している場合は、担当者が事業の状況を把握していることがあります。確認して差し支えありません。調べたうえで応募したこと自体が、面接での材料になります。
試用の期間中に解雇されることはありますか
試用の期間の扱いは、会社の規程によります。一般に、試用の期間中であっても労働契約は成立しており、解雇には制約があります。ただし、本採用の拒否が認められる場合の基準は、通常の解雇とは異なるとされています。詳しい扱いは、提示された労働条件の書面と、就業規則で確認してください。なお、公務員の条件付採用(地方公務員法第22条)とは制度が違います。同じものとして考えないでください。不安がある場合は、面接で「試用の期間の運用」を確認して構いません。
転職した後に、また公務員に戻ることはできますか
経験者を対象とした採用を行っている自治体があります。ただし、募集の有無、時期、要件は団体ごとに異なります。戻ることを前提に転職するのは勧めませんが、道が完全に閉じるわけではないという点は、判断の材料にして構いません。面接でこの話を持ち出すと、定着の見込みを確認されます。聞かれない限り、述べる必要はありません。なお、退職手当や年金の期間の通算については、制度が複雑です。共済組合や年金事務所で確認してください。