選考対策 / 志望動機
業界の選び方と、志望動機への落とし方
転職の相談で、最初につまずくのが業界の選び方です。
「公務員から行ける業界が分からない」
この問いの立て方に、すでに難しさがあります。「公務員から行ける業界」という枠は、存在しません。
あるのは、自分が担ってきた機能に、需要がある業界です。
この記事では、機能から業界を探す手順を扱います。志望動機の組み立ては公務員からの転職で志望動機をどう組み立てるかにあります。
業界の分類は、統計基準として定められています
網羅的に見たい場合、公的な分類が使えます。
統計法第28条第1項です。
> 総務大臣は、政令で定めるところにより、統計基準を定めなければならない。
統計基準の1つとして、産業の分類が定められています。
日本標準産業分類は、この統計基準として設定されているもので、公表されています。
業界を網羅的に見たい場合、この分類を眺めるのが手早いです。大分類から中分類まで見れば、世の中の産業がどう区切られているかが分かります。
「自分が知っている業界」だけで考えると、選択肢が狭くなります。
役所で仕事をしていると、接する業界が限られます。建設、福祉、医療、教育、廃棄物、情報システム。担当した分野の関係先が中心です。
分類を眺めると、それ以外の業界が目に入ります。
機能から探す
業界を先に決めないでください。自分の機能を先に決めて、その需要がある業界を探します。
| 自分の機能 | 需要がある業界の例 |
|---|---|
| 債権の管理と回収 | 金融、不動産の管理、通信、医療の事務 |
| 審査と決定 | 保険、金融、人材、補助金の支援 |
| 契約と調達 | 製造、建設、情報システム、商社 |
| 制度の設計 | 自治体向けの事業、コンサルティング、法務 |
| 対外の説明 | 広報、営業、渉外、公共政策 |
| 施設の管理 | 不動産、設備、ビルの管理、施設の運営 |
| 現場の監督 | 建設、設備、施工管理、発注者支援 |
この表は、網羅ではありません。考え方の例です。
自分の機能を3つ書き出して、それぞれについて「この機能を売っている会社はどこか」を考えると、業界が絞れます。
3つの距離で分ける
業界は、役所との距離で3つに分けられます。
| 距離 | 内容 | 経験の使いやすさ |
|---|---|---|
| ① 顧客が自治体 | 自治体向けのシステム、建設コンサルタント、発注者支援 | そのまま使える |
| ② 規制を受ける側 | 医療、福祉、介護、建設、廃棄物、金融 | 制度の理解が使える |
| ③ 行政と関係が薄い | 消費者向けの事業、製造業の一部 | 機能だけが使える |
①から順に検討してください。
①は、経験がそのまま需要と重なります。制度の仕組み、意思決定の流れ、予算の時期。知っていること自体が価値になります。
②も、有利な面があります。規制を受ける側の会社では、行政の考え方を理解している人が求められます。許認可の申請、監査への対応、制度の改正への対応。
③は、機能だけで勝負することになります。可能ですが、①②より説明が難しくなります。
なお、①②③は優劣ではありません。③を選ぶ方もいます。経験が使いにくいぶん、説明を丁寧に組み立てる必要があるというだけです。
志望動機への落とし方
業界を選んだ理由は、志望動機に書けます。
| 距離 | 書き方 |
|---|---|
| ① | 「発注する側から、支援する側に回る」という転換 |
| ② | 「規制する側から、規制を受ける側の実務へ」という視点の移動 |
| ③ | 「担ってきた機能を、別の領域で使う」という接続 |
①の例
> 自治体のシステムの更改を、業務側の担当として経験しました。導入の前より、稼働した後のほうが手がかかることを実務として知っています。同じ場面を、支援する側から扱いたいと考えました。
②の例
> 食品営業施設の監視を担当し、基準に沿って指導する立場でした。事業者の側では、その基準を満たす仕組みを日常的に回す必要があります。指導していた側の知識を、仕組みを作る側で使いたいと考えました。
どちらも、「業界を選んだ理由」が、経験とつながっています。
求人票から業界を知る
公式サイトだけでは、実際の仕事の内容が分からないことがあります。求人票のほうが、具体的です。
| 求人票の欄 | 分かること |
|---|---|
| 仕事内容 | 日々の業務の中身。いちばん情報量が多い |
| 応募条件 | その業界で求められる経験 |
| 配属先 | 組織の構成 |
| 募集の背景 | 増員か後任か、事業の状況 |
同じ業界の求人票を5件読むと、その業界で何が求められているかが見えてきます。
応募条件の欄に繰り返し出てくる言葉が、その業界の共通の要件です。「折衝」「提案」「進行の管理」「要件の整理」。その言葉が、自分の経験と重なるかを見てください。
この作業は、応募の前にできます。求人票は、応募しなくても読めます。
絞り込みの手順
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 自分の機能を3つ書き出す |
| 2 | 顧客が誰の会社で働きたいかを決める |
| 3 | ①〜③の距離で、候補の業界を挙げる |
| 4 | 産業分類を眺めて、見落としている業界がないか確認する |
| 5 | 候補の業界から、2社ずつ公式サイトを読む |
5つ目までやると、志望動機の①の材料が揃います。
この作業は、合計で3〜4時間です。求人を探し始める前にやっておくと、その後が速くなります。
経験の言い換えから相談することもできます。
なお、業界の検討に時間をかけすぎないでください。3〜4時間で一巡したら、あとは求人を見ながら調整するほうが早いです。候補の業界は、求人票を読むうちに増えたり減ったりします。最初の見立てが完璧である必要はありません。
よくある失敗
1. 業界を先に決める
機能から探してください。
2. 知っている業界だけで考える
産業分類を眺めると、見落としが見つかります。
3. 顧客が誰かを考えない
業界より大きい違いです。
4. ③から探し始める
①②のほうが、経験が使えます。
5. 業界を選んだ理由を書かない
志望動機の材料になります。
6. 1社だけ見て判断する
2社比べると、違いが見えます。
まとめ
- 「公務員から行ける業界」という枠はありません。あるのは、自分の機能に需要がある業界です
- 統計法第28条第1項にもとづく統計基準として、産業の分類が定められ、公表されています。網羅的に見るときに使えます
- 業界は、役所との距離で①顧客が自治体 ②規制を受ける側 ③関係が薄いの3つに分かれます。①から検討してください
- 業界より、「顧客が誰か」のほうが大きい違いになることがあります
- 業界を選んだ理由は、そのまま志望動機の材料になります
- 1つに絞る必要はありません。2〜3の業界を並行して見て、求人票の仕事内容で判断してください
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
よくある質問
産業分類は、どこで見られますか
総務省が所管する統計の基準として公表されています。分類の一覧は、大分類、中分類、小分類の階層になっており、大分類だけで20程度あります。眺める目的は、網羅性の確認です。「自分が候補に挙げた業界以外に、機能が使えそうな領域はないか」を見るために使ってください。なお、分類は産業を統計上の区分で分けたものであり、求人の探し方と一対一で対応するわけではありません。あくまで、見落としを減らすための道具として使ってください。
未経験の業界に応募して、通るものですか
職種によります。同じ業界でも、職種によって未経験の扱いが違います。たとえば、自治体向けのシステムの会社で、開発の職種は経験が要件になることが多い一方、導入の支援や、業務の分析の職種では、行政の実務経験が評価されることがあります。判断の目安は、求人票の応募条件です。「◯◯の業界での経験」が必須なら、その業界の経験が要ります。一方、「行政での実務経験」や「顧客折衝の経験」が挙げられているなら、業界が未経験でも応募できます。業界ではなく、条件を見てください。
業界を絞ったら、求人が少なくなりました
絞りすぎている可能性があります。対処は2つです。1つは、職種を広げること。同じ業界の中で、営業、導入の支援、管理部門など、複数の職種を見る。もう1つは、隣接する業界に広げること。自治体向けのシステムを見ているなら、建設コンサルタント、発注者支援、公共の施設の運営なども、顧客が自治体という点で共通しています。顧客が誰かで括ると、業界をまたいで候補が見つかります。絞る軸を、業界から顧客に変えてみてください。