選考対策 / 志望動機
地元で働き続けたいという動機の扱い方
公務員から転職する方の動機で、よく挙がるのが地域です。
「この地域で働き続けたい」
自治体の職員は、地域を単位に仕事をしてきました。転職しても、その地域で働きたいと考えるのは自然なことです。
ただし、志望動機にそのまま書くと、弱くなることがあります。
この記事では、地域をどう位置づけるかを扱います。志望動機の組み立ては公務員からの転職で志望動機をどう組み立てるかにあります。
地域を単位に仕事をしてきた、という事実
まず、これまでの立ち位置を確認します。
地方自治法第2条第3項です。
> 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第五項において都道府県が処理するものとされているものを除き、一般的に、前項の事務を処理するものとする。
市町村は、基礎的な地方公共団体として、一般的に事務を処理する。
「一般的に」という言葉が示すのは、分野を限定せず、その区域の事務を広く担うという立ち位置です。
つまり、自治体の職員は「特定の分野」ではなく「特定の地域」を単位に働いてきました。
この経験は、地域に根ざした事業をしている会社では、そのまま強みになります。
地域の事情、人口の構成、産業の状況、行政の仕組み。知っていること自体が価値になる場面があります。
地域だけを理由にすると、弱くなる
問題は、地域だけで志望動機を構成した場合です。
> 地元で働き続けたいと考え、貴社を志望しました。
この文では、「なぜこの会社か」が説明できません。
同じ地域には、他にも会社があります。その中でなぜここかが書かれていないためです。
地域は、応募先を絞る条件です。選んだ理由ではありません。
地域 + 仕事の中身、で書く
| 構成 | 内容 |
|---|---|
| ① 地域の条件 | 1行。通勤の範囲、家族の事情など |
| ② 地域と仕事の接続 | その地域で、この仕事をする意味 |
| ③ 経験との接点 | 自分の経験が、どこで使えるか |
②が、いちばん効く部分です。
書き方の例
> 家族の事情から、通勤の範囲を◯◯県内に限る必要があります。(①)>> 御社は、県内の自治体を中心に業務システムの導入を支援されていると理解しています。県内の市町村は規模の差が大きく、同じ制度でも運用が団体ごとに違います。その違いを踏まえた導入の支援は、地域の事情を知っている人のほうが進めやすいと考えました。(②)>> 私は、◯◯市で基幹システムの更改を業務側の担当として経験し、現行の帳票と例外の処理を棚卸しして要件を整理しました。県内の他団体との協議の場にも参加しています。(③)
①は1行で足ります。
②で、「地域で働くこと」と「この会社で働くこと」をつないでいます。
地域を強みにできる場面
| 場面 | 強みになる理由 |
|---|---|
| 顧客が地域の自治体 | その自治体の事情を知っている |
| 顧客が地域の事業者 | 業界の構成、主要な事業者を知っている |
| 地域の課題を扱う事業 | 人口、産業、交通の実情を知っている |
| 転勤のない会社 | 定着が見込めると受け取られる |
4つ目について補足します。
転勤を伴う採用では、地域に縛られることが制約になります。
一方、拠点が限られる会社や、地域に根ざした会社では、「動かない前提で働ける人」は歓迎されます。
同じ条件が、応募先によって強みにも制約にもなります。
Uターンの場合
現在は地元を離れていて、戻る形で転職する場合もあります。
| 確認されること | 答え方 |
|---|---|
| なぜ戻るのか | 家族の事情、生活の基盤。事実として述べる |
| 地域に定着するか | 戻る前提の事情があれば、それを述べる |
| 地域の状況を知っているか | 離れている期間が長ければ、調べておく |
3つ目に注意してください。
離れている期間が長い場合、地域の状況が変わっています。
「地元だから分かります」と述べたときに、現在の状況を知らないと、その場で崩れます。
応募の前に、人口の推移や主要な産業を確認しておいてください。
地域の情報を、具体で示す
「地元だから分かる」を具体に落とすと、志望動機の②が書けます。
| 分野 | 具体の例 |
|---|---|
| 人口 | 世帯数の推移、高齢化の進み方、地区ごとの偏り |
| 産業 | 主要な業種、事業所の規模の構成 |
| 行政 | 市町村の規模の差、広域での連携の状況 |
| 交通 | 通勤の流れ、公共交通の状況 |
| 制度の運用 | 同じ制度でも団体によって運用が違う点 |
5つ目が、公務員にしか書けない部分です。
同じ介護保険でも、同じ建築の確認でも、団体によって運用の細部が違います。その違いを知っていることは、地域で事業をする会社にとって実用的な情報です。
なお、特定の自治体の内部の事情は書けません。書けるのは、公表されている情報と、制度上そうなっている事実です。この線は、公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本で書いた守秘の扱いと同じです。
地域を条件として伝える場面
志望動機とは別に、条件として伝える場面があります。
| 場面 | 伝えること |
|---|---|
| 応募の段階 | 通勤の範囲、転勤の可否 |
| 面接 | 制約がある場合は、理由とともに |
| 条件の提示 | 就業の場所の変更の範囲の確認 |
転勤の扱いは転勤の可否を聞かれたときに整理しています。
制約は、早い段階で伝えてください。最終まで進んでから条件が合わないと分かるのが、いちばん時間を失います。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 地域だけで志望動機を構成する
「なぜこの会社か」が説明できません。
2. 地域の話に紙幅を使う
1行に抑えてください。
3. 「地元だから分かる」と抽象的に述べる
知っている人にしか書けない具体を出してください。
4. 離れている期間が長いのに、現状を調べない
その場で崩れます。
5. 転勤の制約を伝えない
最終まで進んでから外れます。
6. 地域を制約だと決めつける
応募先によっては、強みになります。
まとめ
- 地方自治法第2条第3項は、市町村を基礎的な地方公共団体とし、一般的に事務を処理するとしています。自治体の職員は、地域を単位に働いてきました
- 地域は、応募先を絞る条件です。選んだ理由ではありません
- 書き方は、①地域の条件(1行)②地域と仕事の接続 ③経験との接点です
- ②が効きます。「この地域で、この仕事をする意味」を書いてください
- 「地元だから分かる」ではなく、知っている人にしか書けない具体を出してください
- 拠点が限られる会社では、動かない前提で働けることが強みになります
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
よくある質問
地元の会社に、自治体の出身者は歓迎されますか
事業の内容によります。顧客に自治体が含まれる会社では、行政の仕組みを知っている人が求められることがあります。地域の建設会社、施設の運営、福祉や医療の事業者、地域の金融機関。いずれも、許認可や補助金、制度への対応が業務に含まれます。一方、消費者向けの事業では、行政の経験が直接に評価される場面は限られます。その場合は、機能で接点を探してください。なお、地域が狭いほど、人のつながりで情報が伝わることがあります。在職中の活動では、連絡手段の扱いに注意してください。進め方は連絡手段と、職場に知られないための注意にあります。
出身の自治体を辞めて、同じ地域の会社に入るのは気まずくないですか
珍しいことではありません。自治体の職員が、地域の企業や団体に移る例は各地にあります。ただし、地方公務員法第38条の2の制限は確認してください。離職前5年間の職務に属する契約等の事務について、離職後2年間、元の組織の職員への働きかけが制限されます。自治体を顧客とする会社に移る場合は、入社前に応募先と共有してください。詳しくは内定から入社までにやることに整理しています。制限を守ったうえでであれば、同じ地域で働くこと自体は問題になりません。
家族の事情で地域が決まっている場合、それを書いてよいですか
書いて構いません。ただし、1行にとどめてください。「家族の介護のため、通勤の範囲を◯◯に限る必要があります」で足ります。詳しい事情を述べる必要はありません。そのうえで、仕事を選んだ理由を書いてください。事情だけを述べると、「条件が合えばどこでもよい人」と受け取られます。加えて、勤務の時間や、急な休みの可能性がある場合は、条件として別に伝えてください。応募の段階で共有しておくほうが、入社後の調整がしやすくなります。