選考対策 / 志望動機
「なぜ民間なのか」への答え方
志望動機を書くときに、必ず通る問いです。
なぜ、役所ではなく民間なのか。
面接での口頭の答え方は面接で「なぜ民間へ」と聞かれたときに書きました。この記事では、文章として書く場合の組み立てを扱います。
書く場合は、口頭より構造が問われます。読み返されるためです。
「必要且つ最少の限度」という原則
役所と民間の違いは、感覚の問題ではありません。資源の使い方の原則が違います。
地方財政法第4条です。
> 地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。>> 2 地方公共団体の収入は、適実且つ厳正に、これを確保しなければならない。
必要かつ最少の限度を超えて支出してはならない。
これが、役所の資源の使い方の原則です。
民間では、この原則が当てはまりません。投資して、回収して、拡大する。支出を増やして、より大きな成果を取りに行くことができます。
この違いは、日々の判断に現れます。
| 場面 | 役所 | 民間 |
|---|---|---|
| 予算が余った | 不用額として残す | 使って伸ばす判断もあり得る |
| 効果が不確実な事業 | 慎重に検討する | 試して確かめることがある |
| 収入を増やす | 税や使用料の範囲 | 自分たちで作れる |
「なぜ民間か」の答えは、この構造の違いのどこに反応したかで書けます。
3つの書き方
| 型 | 内容 |
|---|---|
| ① 資源の型 | 投資して回収する仕組みの中で働きたい |
| ② 速度の型 | 判断から実行までの距離を短くしたい |
| ③ 評価の型 | 成果が処遇や役割に反映される仕組みで働きたい |
3つとも、役所を否定していません。構造の違いを述べているだけです。
これが重要です。「役所は遅い」「役所は評価されない」と書くと、現職の否定になります。
同じ内容を、構造として書いてください。
悪い例と良い例
悪い例
> 年功的な制度で成果が評価されず、意思決定にも時間がかかります。民間企業のスピード感のある環境で、自分の力を試したいと考えました。
現職の否定で構成されています。また、「自分の力を試したい」は、どの会社にも当てはまります。
良い例(資源の型)
> 財政課で予算の査定を担当し、事業ごとに費用と効果を比較してきました。ただ、自治体の経費は、地方財政法上、目的の達成に必要な最少の限度で支出することとされています。効果が数年先に出る事業でも、判断の材料は単年度の枠に収まります。>> 投資の効果を数年単位で見て、回収まで含めて判断する仕事は、事業会社の側にあると考えました。これまで積み上げてきた、費用と効果を比較する進め方を、その枠組みの中で使いたいと考えています。
役所の仕組みを正確に述べたうえで、民間側にしかないものを1つ挙げています。
良い例(速度の型)
> 制度の改正のたびに、要綱と様式を作り直し、窓口の手順を整えてきました。決裁の段数が多いのは、後から検証できるようにするための仕組みだと理解しています。>> 一方で、同じ仕組みの中でも、事前に関係課と論点を詰めることで、期間を短縮できることも経験しました。判断の段数が少ない環境で、この進め方をどこまで速くできるかを試したいと考えています。
「遅い」とは書いていません。「仕組みを理解したうえで、別の環境を選ぶ」という形です。
使わないほうがよい言い回し
| ✕ | なぜ |
|---|---|
| 「民間の厳しさを学びたい」 | 中途採用は即戦力を採る枠です |
| 「公務員では成長できない」 | 現職の否定。次も同じ言い方をすると読まれます |
| 「安定より挑戦を選びました」 | 比べている軸が抽象的です |
| 「スピード感に魅力を感じて」 | 中身を知らずに言っていると受け取られやすい |
| 「利益を追求したい」 | 不自然に聞こえることが多いです |
5つ目について補足します。利益を動機に挙げること自体は問題ありませんが、役所で利益に触れてこなかった人が急に述べると、取ってつけた印象になります。
書くなら、「費用と効果を比較する仕事を続けたい」のように、自分がやってきたことの延長で書いてください。
自治体を顧客とする会社の場合
この場合、答えが少し変わります。
「民間に移る」というより、「同じ相手に、別の立場で関わる」という形になるからです。
> 制度を運用する側にいて、仕組みを作る段階から関われないもどかしさがありました。御社は、自治体の業務を設計する側から関わられています。同じ相手に、別の立場で関わることになると理解しています。
この書き方であれば、①〜③の型を使わなくても成立します。
「なぜ民間か」より、「なぜこの立場か」という問いに変わるためです。
現職を肯定したうえで書く
どの型で書く場合も、共通する条件が1つあります。
役所の仕事を否定しないこと。
| ✕ | ○ |
|---|---|
| 「無駄な手続きが多く」 | 「後から検証できるようにするための仕組みだと理解しています」 |
| 「評価されない」 | 「成果が処遇に反映される仕組みで働きたい」 |
| 「やりがいがない」 | 「◯◯の部分を、別の形で続けたい」 |
否定せずに書いても、動く理由は述べられます。
むしろ、否定しないほうが、動機の説得力が上がります。現職を全力でやってきた人が、そのうえで選んでいる、という形になるからです。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 現職の否定で構成する
構造の違いとして書いてください。
2. 「なぜこの会社か」と分離する
2つはつながっている必要があります。
3. 「成長したい」で書く
役所でもできます。
4. 急に利益の話をする
自分がやってきたことの延長で書いてください。
5. 感覚で書く
条文を1つ挙げると、短く正確になります。
6. 抽象的な比較をする
「安定より挑戦」は、比べている軸が不明確です。
まとめ
- 地方財政法第4条第1項は、経費を目的の達成に必要かつ最少の限度をこえて支出してはならないとしています。これが役所の資源の使い方の原則です
- 書き方の型は、①資源 ②速度 ③評価の3つ。いずれも役所を否定せず、構造の違いとして書けます
- 「民間の厳しさを学びたい」は使わない。中途採用は即戦力を採る枠です
- 急に利益の話をしない。自分がやってきたことの延長で書いてください
- 「なぜ民間か」と「なぜこの会社か」はつながっている必要があります
- 自治体を顧客とする会社なら、「同じ相手に、別の立場で関わる」という書き方ができます
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よくある質問
条文を引用すると、堅苦しくなりませんか
1文であれば、かえって短くなります。「役所は予算の使い方が硬直的で、単年度でしか判断できず」と感覚で説明すると、3行かかります。一方、「自治体の経費は、地方財政法上、目的の達成に必要な最少の限度で支出することとされています」と書けば、1行で済みます。しかも、正確です。ただし、条文の引用は1つまでにしてください。複数並べると、制度の説明が中心になり、自分の話が減ります。あくまで、動機の前提を短く示すために使ってください。
面接で話す内容と、書く内容は同じでよいですか
同じ筋で構いません。ただし、長さと構造が変わります。書く場合は、300〜400字で、①②③の構造が見える形にします。話す場合は、1分以内で、結論を先に述べます。書いたものをそのまま読み上げると、話し言葉として不自然になります。準備としては、書いたうえで、声に出して1回言ってみるのが確実です。そのときに、長すぎる部分や、言いにくい言い回しが見つかります。面接での答え方は面接で「なぜ民間へ」と聞かれたときに整理しています。
「公務員に戻りたくなったら」と聞かれたら
この質問は、定着の確認です。答えるときは、戻る可能性を否定する必要はありません。「経験者採用の枠がある自治体もあると承知しています」と述べたうえで、「いまは、民間で経験を積むことを選んでいます」と、現時点の判断を明確にすれば足ります。注意するのは、「二度と戻りません」と断言しないことです。断言は、根拠がないぶん、かえって信用されません。現時点の判断として述べるのが、いちばん自然です。あわせて、入社後に何をするかを1行添えると、この質問は終わります。