選考対策 / 志望動機
「なぜ辞めるのか」を無理に前向きへ変換しない
転職の相談でよく聞く助言に、「辞める理由は前向きに変換しましょう」というものがあります。
方向としては正しいのですが、やりすぎると崩れます。
不満を無理に言い換えた文章は、読むと分かります。そして、面接で掘られたときに、元の理由が出てきてしまいます。
この記事では、どこまで変換し、どこから事実で述べるかを扱います。志望動機の組み立ては公務員からの転職で志望動機をどう組み立てるかにあります。
不満は、制度上も想定されています
まず、前提を確認します。
地方公務員法第46条です。
> 職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置が執られるべきことを要求することができる。
勤務条件について、措置を要求できる。
つまり、勤務条件への不満は、制度上も想定された正当なものです。隠すべき感情ではありません。
問題は、不満があることではなく、不満の述べ方です。
面接で「勤務条件に不満があります」とだけ述べると、話が続きません。一方、不満を無理に前向きな言葉に置き換えると、中身が消えます。
事実として述べたうえで、次の方向につなぐ。これが、現実的な形です。
やりすぎた変換の例
| 元の理由 | やりすぎた変換 | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 異動で専門が積み上がらない | 「幅広い経験を活かしたい」 | 異動が理由だと分からなくなる |
| 成果が処遇に反映されない | 「より高い目標に挑戦したい」 | なぜ転職なのかが説明できない |
| 業務量が多い | 「効率的な環境で力を発揮したい」 | 掘られると元の理由が出てくる |
| 組織の方針に納得できない | 「新しい環境で成長したい」 | どの会社にも当てはまる |
4つとも、抽象的な言葉に置き換わっています。
抽象的になると、「なぜこの会社か」とつながらなくなります。
変換してよい部分と、事実で述べる部分
| 部分 | 扱い |
|---|---|
| 事実(何が起きていたか) | そのまま述べてよい |
| 感情(つらい、納得できない) | 述べない |
| 評価(無駄だ、間違っている) | 述べない |
| 次の方向(何を続けたいか) | ここで前を向く |
変換するのは、感情と評価の部分だけです。
事実は、事実として述べてください。
書き換えの例
元の理由:異動で専門が積み上がらない
| ✕ やりすぎ | ○ 事実 + 方向 |
|---|---|
| 「幅広い経験を活かしたい」 | 「自治体では、担当する分野が異動で決まります。財政の分野を3年担当し、この進め方が自分に合うと感じましたが、続けられるかどうかは選べません。同じ分野を継続して深められる環境を選びたいと考えました」 |
事実(異動で決まる)を述べ、そのうえで方向(継続したい)を示しています。
「役所の異動制度は良くない」とは言っていません。
「不満がない」と書かない
逆の失敗もあります。辞める理由が何も書かれていないという形です。
> これまでの経験を活かし、新しい環境で挑戦したいと考えました。
なぜ、いまの環境では駄目なのかが書かれていません。
読む側は、「では、なぜ辞めるのか」と考えます。
何かしらの理由があるから動くのであって、理由が無いなら動かないはずです。
理由を書くこと自体は、問題ではありません。
書きにくい理由の扱い
| 理由 | 扱い |
|---|---|
| 人間関係 | 書かない。確認できない情報は判断に使えません |
| 健康 | 回復していれば、業務に支障がない旨だけ |
| 家族の事情 | 事実として書いてよい。そのうえで仕事の選び方を添える |
| 処遇 | 単独では書かない。仕事の内容と併せて |
| 組織への不満 | 構造として述べる。評価は述べない |
5つ目について補足します。
「組織の方針に納得できない」は、そのままでは書けません。
ただし、「◯◯という制約の中で判断する必要があり、別の枠組みで仕事をしたいと考えた」という形であれば、構造の説明になります。
評価を含めないことが条件です。
職種別の書き方の例
理由の種類によって、事実の書き方が変わります。
技術職で、発注する側から作る側に移る場合
> 自治体の技術職は、設計と施工を委託し、発注者として監督する立場です。◯年担当する中で、成果物を確認する側より、設計そのものに関わりたいと考えるようになりました。
窓口・相談の担当から、仕組みを作る側に移る場合
> 窓口で制度を説明する中で、制度の要件と実際の相談の内容が合わない場面がありました。制度を運用する側ではなく、設計する側の仕事に関心が移っています。
内部管理の部門から、事業に近い仕事に移る場合
> 人事や財政では、事業を支える立場で仕事をしてきました。事業の成果を直接見る位置で働きたいと考えるようになりました。
3つとも、いまの立場を否定していません。
「立場が違う」という事実を述べたうえで、別の立場を選ぶという形です。この書き方であれば、役所の仕事の価値を認めたまま、動く理由が示せます。
前を向くのは、最後の1文
全体の構成としては、次の形になります。
| 順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 事実(いまの環境がどうなっているか)1〜2行 |
| 2 | 自分がどう受け止めたか(評価ではなく、判断)1行 |
| 3 | 方向(何を続けたいか、どういう環境を選ぶか)1〜2行 |
3で前を向けば足ります。
1と2で前を向こうとすると、無理な変換になります。
経験の言い換えから相談することもできます。
この構成は、書類でも面接でも同じです。長さだけが変わります。書類では3行、面接では30秒。中身は同じものを使ってください。
よくある失敗
1. 抽象的な言葉に置き換える
「なぜこの会社か」とつながらなくなります。
2. 感情や評価を述べる
変換するのは、この部分だけです。
3. 理由を何も書かない
「では、なぜ辞めるのか」と考えられます。
4. 面接で掘られると崩れる表現を使う
同じことを言える表現にしてください。
5. 人間関係を理由にする
確認できない情報は判断に使えません。
6. 1行目から前を向こうとする
前を向くのは、最後の1文です。
まとめ
- 地方公務員法第46条は、勤務条件について措置が執られるべきことを要求できるとしています。不満は制度上も想定されたものです
- 変換するのは、感情と評価の部分だけ。事実は、事実として述べてください
- 抽象的な言葉に置き換えると、「なぜこの会社か」とつながらなくなります
- 理由を何も書かないのも失敗です。「では、なぜ辞めるのか」と考えられます
- 基準は、「面接で掘られても同じことを言える表現か」です
- 構成は、事実 → 受け止め → 方向。前を向くのは最後の1文で足ります
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よくある質問
事実を書くと、現職の批判になりませんか
評価を含めなければ、批判にはなりません。「異動で担当する分野が決まります」は、制度の説明です。「異動が多くて専門性が身につかない仕組みになっています」は、評価が入っています。この差です。判断の目安は、その文を、いまの職場の人が読んでも違和感がないかです。制度の説明であれば、同僚が読んでも「そのとおり」となります。評価が入ると、受け止め方が分かれます。書いた後に、この基準で読み返してみてください。
前向きな理由が思い浮かびません
思い浮かばない場合、方向(3の部分)の材料が足りていない可能性があります。「何を続けたいか」「どういう環境を選ぶか」。これは、いまの仕事の中から見つかります。担当してきた業務のうち、自分に合っていると感じた部分を1つ挙げてください。それを続けられる環境、という形で方向が書けます。それでも思い浮かばない場合、動く理由がまだ固まっていないのかもしれません。その場合は、急いで書類を作る必要はありません。整理してからで間に合います。
理由が複数あります。全部書くべきですか
1つに絞ってください。複数書くと、どれが主なのかが分からなくなります。また、理由が多いほど、「不満が多い人」という印象になります。選ぶ基準は、応募先で解消される理由です。分野を続けたいことが理由なら、職種が固定される会社。評価の仕組みが理由なら、評価と処遇が連動する会社。選んだ理由が、その会社で解消されることを1文添えると、この話は終わります。残りの理由は、聞かれたときに答えれば足ります。