選考対策 / 職務経歴書
住民対応の経験を、顧客対応として書く
窓口や電話の経験は、書き方でいちばん損をしている経歴です。
職務経歴書では、たいていこの1行になります。
「窓口業務および住民対応を担当。」
これだと、受付をしていた人としてしか読まれません。
実際には、制度の要件を聞き取りながら判断し、該当しない場合は代わりの制度を案内し、納得されない相手に根拠を説明し、他の課につなぎ、記録を残していたはずです。民間の顧客対応と、構造はほとんど同じです。
この記事では、4つの点に分けて書き方を決めます。書類全体の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本、数字の出し方は数字で書けない仕事を、数字で書く方法にあります。
結論:住民対応は、4点で書く
| 点 | 何を書くか |
|---|---|
| ① 量 | 1日あたり・年間の対応の件数、電話と来庁の内訳 |
| ② 類型 | 申請・相談・苦情・要望の4つに分けた内訳 |
| ③ 一次完結 | 自分の判断で完結させた範囲と、引き継いだ範囲 |
| ④ 仕組みの改善 | 案内、様式、記入例、想定問答、窓口の動線 |
③と④が、書かれていないことが多い部分です。ここを入れると、受付ではなく、設計をしていた人として読まれます。
「ひとしく受ける権利」という前提
民間の顧客対応との違いは、相手を選べないことにあります。ここは条文で押さえておきます。
地方自治法第10条第2項です。
> 住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う。
「ひとしく受ける権利」。さらに、第244条第2項・第3項は、公の施設について、正当な理由がない限り利用を拒んではならない、不当な差別的取扱いをしてはならないと定めています。
つまり、役所の窓口は、相手を選べません。民間なら「お取引をお断りする」という選択肢がある場面でも、根拠がなければ断れない。
この条件下で対応を続けてきたこと自体が、経歴の内容です。
民間の顧客対応との違いは、もう2つあります。売るものがないことと、断るときも根拠を示す必要があることです。
この3つの制約は、書いておくと効きます。「選べない相手に、根拠を示しながら対応してきた」という説明は、カスタマーサポートの責任者が読むと、意味が分かります。
悪い例と良い例
悪い例
> 市民課の窓口において、住民異動届の受付、証明書の発行、電話対応を担当。丁寧な応対を心がけた。
良い例
> 市民課 窓口(1日あたり約◯件、年間約◯件)>> 住民異動の届出、戸籍の届出、各種証明の交付を担当。窓口約◯件、電話約◯件を1日あたりで対応。内訳は、申請の受付が約◯割、制度の相談が約◯割、苦情と要望が約◯割。>> 制度の要件に該当しない相談については、根拠となる規定を示したうえで、利用できる他の制度を案内。他課への取次ぎが必要な案件は、内容を整理して引き継ぐ運用を徹底(年間約◯件)。>> 記載の不備による再来庁が多かったため、届出の種類ごとに必要な持ち物と記入の例をまとめた案内を作成。窓口で交付する運用に変更し、確認の手戻りを削減。繁忙期(◯月〜◯月)は、受付の段階で案件を分ける動線を設計。
受付の記述が、運用の設計の記述になりました。
「困難な対応」は、こう書く
長時間の対応や、強い口調の相手への対応を経験している方は多いと思います。書けますが、書き方に注意が要ります。
| ✕ 書かない | ○ こう書く |
|---|---|
| 暴言や威圧の具体的な内容 | 対応の手順をどう設計したか |
| 特定の相手が識別できる記述 | 類型として(長時間化しやすい相談の類型など) |
| 我慢した、耐えたという表現 | 記録の取り方、複数名での対応、上司への引継ぎの基準 |
書くべきは、耐えたことではなく、組織として対応する形を作ったことです。
> 長時間化しやすい相談について、対応の記録の様式を整備。一定の時間を超えた場合は複数名で対応し、係長に引き継ぐ基準を設定。対応の経過を記録に残す運用を導入。
この書き方なら、民間のクレーム対応の管理の経験として読まれます。
もう1つ、窓口の経験で書けるのが「繁忙期の設計」です。年度末から年度初め、あるいは制度の改正の直後は、通常の数倍の来庁がある部署があります。その時期をどう回したかは、民間の繁忙期の運営とそのまま重なります。書くなら、「◯月〜◯月の繁忙期について、受付の動線と人員の配置を設計し、待ち時間を約◯分に抑制」という形です。
数字の作り方
窓口の件数は、記録が残っていないことがあります。その場合の出し方を挙げます。
| 数える方法 | 例 |
|---|---|
| 繁忙期の1日から | 繁忙期は1日約◯件、通常期は約◯件 |
| 交付の件数から | 証明の交付が年間約◯件(統計や決算の資料に出ていることがある) |
| 待ち番号の発券から | 発券の枚数が記録されていることがある |
| 引継ぎの資料から | 後任に説明していた件数の目安 |
「約」で構いません。桁が分かれば足ります。公表されている統計に載っている数字があれば、そちらを優先してください。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 「丁寧な応対を心がけた」と書く
姿勢は全員が書きます。手順と記録で書いてください。
2. 件数を書かない
1日あたりでも構いません。量が分かると仕事の像が立ちます。
3. 対応の類型を分けない
申請・相談・苦情・要望。4つに分けると、中身が読めます。
4. 一次完結の範囲を書かない
自分の判断で完結させた範囲は、対応力そのものです。
5. 困難な対応を、苦労話として書く
組織として対応する形を作ったかで書いてください。
6. 個人が識別できる事例を書く
書かないでください。類型で足ります。
まとめ
- 住民対応は、①量 ②類型 ③一次完結 ④仕組みの改善の4点で書きます
- 地方自治法第10条第2項は、住民が役務の提供をひとしく受ける権利を有すると定め、第244条第2項・第3項は、正当な理由がない限り利用を拒めず、不当な差別的取扱いをしてはならないとしています
- 相手を選べない条件で対応を続けてきたことが、この経歴の内容です
- 困難な対応は、耐えたことではなく、組織として対応する形を作ったことを書きます
- 求人票では、カスタマーサポート、窓口業務の運営、コールセンターの運営として書かれています
- 「丁寧に対応した」ではなく、「誰が対応しても同じ結論になるように整えた」と書きます
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よくある質問
会計年度任用職員として窓口を担当していました。正職員と書き方は変わりますか
書き方は変わりません。担当していた内容を、そのまま4点で書いてください。雇用の形態は、履歴書と在籍の一覧に書けば足ります。注意するのは、判断していた範囲を正確に書くことです。「要件の確認と受付を担当し、可否の判断は正職員が実施」と書くべき場面で、判断まで含めて書くと、面接で食い違いが出ます。線を引いた書き方のほうが、かえって信用されます。なお、窓口の経験は、雇用の形態に関わらず件数で読まれます。年数が短くても、件数が書いてあれば経験として伝わります。
電話だけの対応で、窓口には出ていません
電話の対応は、独立した経験として書けます。むしろ、相手の状況が見えない中で、聞き取りだけで要件を特定するという点では、窓口より難しい面があります。書くなら、「1日あたり約◯件の電話に対応。制度の相談、進捗の照会、苦情の受付が中心。聞き取りの内容を記録に残し、折り返しが必要な案件は担当に引き継ぐ運用を担当」という形です。加えて、よくある問い合わせをまとめた想定問答を作った経験があれば、必ず書いてください。問い合わせの削減に向けた設計として読まれます。コールセンターを運営する会社では、この経験が直接に対応します。
苦情対応ばかりで、実績と呼べるものがありません
苦情の対応は、それ自体が実績です。ただし、件数だけでは伝わりません。苦情の内容を分類して、原因ごとに対処した経験があれば、そこを書いてください。「苦情の内容を記録し、月次で分類。制度の説明が不足していたことによるものが約◯割を占めたため、案内の文面を見直し」という形です。苦情の分析は、民間でいえば顧客の声の分析です。加えて、再発の防止に向けて仕組みを変えた経験があれば、それが最も読まれます。分類と対処の記録が残っていない場合でも、記憶の範囲で類型を挙げるだけで、書類の中身は変わります。