選考対策 / 職務経歴書
補助金・交付金の獲得経験の書き方
補助金の経験は、民間で対応する仕事がはっきりしているのに、書類では短くなりがちです。
「国庫補助金の申請事務を担当。」
申請という言葉が、全部を飲み込んでいます。
実際には、制度の要綱を読み、自分の事業が要件に合うか判断し、合うように事業を組み立て直し、期限までに申請し、交付の決定を受け、対象になる経費とならない経費を分けて執行を管理し、実績報告を出し、検査に対応していたはずです。
この記事では、5つの工程に分けて書き方を決めます。書類全体の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本、予算の側面は予算編成・査定の経験の書き方にあります。
結論:補助金の経験は、5工程で書く
| 工程 | 何をしたか |
|---|---|
| ① 制度の把握 | 要綱を読み、自分の事業が要件に合うかを判断する |
| ② 事業の組み立て | 要件に合うように、事業の内容・規模・時期を設計する |
| ③ 申請 | 資料の作成、期限の管理、照会への回答 |
| ④ 執行の管理 | 対象となる経費の区分、契約と支払いの管理、変更の手続き |
| ⑤ 実績報告と検査 | 報告書の作成、証拠の書類の整備、検査への対応 |
④と⑤が、書かれていないことが多い部分です。申請は入口で、管理は交付の後に続きます。
「もらって終わり」ではない、という構造
この仕事の性格は、交付の後に条件が続くことにあります。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第7条第1項は、交付の決定にあたって条件を付すとし、次の事項を挙げています。
> 一 補助事業等に要する経費の配分の変更(中略)をする場合においては、各省各庁の長の承認を受けるべきこと。>> 三 補助事業等の内容の変更(中略)をする場合においては、各省各庁の長の承認を受けるべきこと。>> 五 補助事業等が予定の期間内に完了しない場合又は補助事業等の遂行が困難となつた場合においては、すみやかに各省各庁の長に報告してその指示を受けるべきこと。
さらに、第22条です。
> 補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。
経費の配分を変えるにも、内容を変えるにも、承認が要る。遅れそうなら、報告して指示を受ける。取得した財産は、後年度まで処分が制限される。
つまり、補助金の担当は、交付の条件を守り続ける管理を担っているということです。
民間で同じ構造を持つのは、補助金や助成金を受けている事業の管理、公共の事業の受注の管理、研究の資金の管理です。条件付きの資金を、条件を守りながら使い切るという点で、同じです。
悪い例と良い例
悪い例
> 国庫補助金の申請および実績報告を担当した。
良い例
> 補助金・交付金の活用(年間◯件、交付額の規模 約◯億円)>> 所管する事業について、国および県の補助制度◯件の要件を確認し、適合する事業を選定。要件に合わせて事業の実施の時期と区分を組み替え、◯件を新たに補助の対象化。>> 申請にあたり、事業の目的、対象、効果の見込み、積算の根拠を整理した資料を作成。所管省庁からの照会◯件に回答し、交付の決定を受領。>> 執行の段階では、補助の対象となる経費と対象外の経費を契約の単位で区分し、混在が生じないよう支出の管理を実施。事業の内容の変更が生じた◯件について、承認の手続きを実施。>> 実績報告では、証拠の書類(契約書、検査調書、支払いの記録)を整理し、期限内に提出。実地の検査◯回に対応し、指摘なしで完了。
5工程が全部入っています。
「対象経費と対象外を契約の単位で区分した」は、民間の経理でそのまま読まれる記述です。
書けると効く4つの経験
| 経験 | なぜ効くか |
|---|---|
| 要綱を読んで適合させた | 制度を読み解いて、実務に落とせる。いちばん希少 |
| 対象経費を区分した | 資金の使途の管理。監査や検査に耐える実務 |
| 期限を管理した | 申請・変更・報告の期限は動かない。期限の管理の証拠 |
| 検査に対応した | 証拠の書類を整えていたことの証明 |
1つ目が、最も価値があります。要綱は、そのままでは自分の事業に当てはまりません。読み解いて、当てはまる形に事業のほうを設計し直す。この作業ができる人は、民間でも限られています。
金額は、規模として書く
「◯億円を獲得」と書くと、面接で必ず確認されます。制度の枠が決まっていて、要件を満たせば交付されるものも多いためです。
| ✕ 成果として書く | ○ 規模として書く |
|---|---|
| 補助金◯億円を獲得 | 交付額の規模 約◯億円、年間◯件の申請を担当 |
| 財源を◯億円確保 | 一般財源の負担を約◯億円に抑制(補助率◯分の◯) |
自分が判断した部分は、「適合する事業を選定した」「事業を組み替えた」という工程の記述で示してください。
交付する側の経験も、同じ形で書ける
自治体が事業者や住民に補助金を交付する側を担当していた方も、同じ5工程で書けます。
- 交付の要綱の設計(対象、要件、補助率、上限、申請の様式)
- 申請の審査(要件の確認、積算の妥当性の確認)
- 交付の決定と、額の確定
- 実績報告の確認と、返還の処理
- 不正の防止(重複の受給の確認、証拠の書類の確認)
交付する側の経験は、民間では「審査」「与信に近い判断」「委託先の管理」として読まれます。要綱を自分で設計した経験があれば、それを上に置いてください。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 「申請事務」で終える
5工程に分けてください。入口だけでは、事務として読まれます。
2. 獲得額を成果として前に出す
規模として書いてください。制度の枠で決まる部分と混ざります。
3. 対象経費の区分を書かない
民間の経理でそのまま読まれる実務が抜けます。
4. 実績報告と検査を省略する
証拠の書類を整えていた証明です。書いてください。
5. 変更の手続きを書かない
承認を要する変更を実務で回した経験です。
6. 補助制度の名称だけを並べる
制度名は、外では読めません。目的と規模で書いてください。
まとめ
- 補助金の経験は、①制度の把握 ②事業の組み立て ③申請 ④執行の管理 ⑤実績報告と検査の5工程で書きます
- 補助金適正化法第7条第1項は、経費の配分の変更・内容の変更には承認を、期間内に完了しない場合等は報告して指示を受けることを条件として挙げています
- 同法第22条は、補助事業で取得した財産の処分を制限しています。交付の後も管理が続きます
- 要綱を読み解いて、事業のほうを設計し直した経験が、いちばん希少です
- 金額は、成果ではなく規模として書きます
- 交付する側の経験も同じ5工程で書けます。要綱を設計した経験は上に置いてください
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よくある質問
申請の書類を作っただけで、制度を選んだのは上司です
書類を作る過程で、要件との突合はしているはずです。そこを書いてください。「補助の要件と、事業の内容の適合を確認し、対象となる経費の範囲を整理」という形です。加えて、照会への回答を担当していたなら、それも書けます。所管省庁や県からの照会は、要件の解釈に関わる部分で来ます。回答を作るには、要綱と実態の両方を理解している必要があります。「照会◯件に回答」と書けば、その理解の深さが示せます。制度を選んだのが上司であることは、書類の価値を下げません。
交付金(使途の自由度が高いもの)の担当でした。補助金と分けて書きますか
分けて書くほうが正確です。使途が特定されない交付金は、配分の考え方そのものが仕事になります。書くなら、「◯◯交付金(約◯億円)について、対象となる事業の選定と配分の案を作成。事業ごとの効果の見込みと、他の財源との組み合わせを比較したうえで、◯件に配分」という形です。配分の基準を作った経験は、民間の予算の配分と同じ構造で読まれます。なお、交付金は制度の変更が比較的多いため、変更に対応した経験があれば、それも書いてください。制度の変更に実務を合わせる作業は、そのまま評価されます。
会計検査院の検査を受けた経験は書けますか
書けます。ただし、検査の中身や、指摘の具体的なやり取りは書かないでください。書けるのは、準備の工程と、結果の有無です。「実地の検査に対応。事業の実施の記録、契約の書類、支払いの記録を整理し、説明を担当」という形です。指摘を受けた場合は、その後の対処を書くことができます。「指摘を受けて、確認の手順を見直し、チェックの項目を様式化」という形です。証拠の書類を整えて検査に臨んだ経験は、民間の内部統制や監査法人への対応と同じ形の仕事として読まれます。うまくいかなかった案件の書き方はうまくいかなかった仕事を書くべきかにも整理しています。