選考対策 / 職務経歴書
議会答弁の経験を評価される形にする
職務経歴書で、実際の負荷に比べていちばん短く書かれているのがこれです。
「議会対応を担当」
議会の前の数週間、何をしていたかを思い出してください。質問の内容を聞き取り、過去の答弁を調べ、数字の裏を取り、答弁案を作り、関係課と表現をすり合わせ、幹部の確認を受け、想定問答を用意し、本番で補助に付き、終わったら記録を残す。
これが「対応」の3文字に収まっています。
この記事では、4つの工程に分けて書き方を決めます。書類全体の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本、用語の扱いは公務員用語の言い換え一覧|そのまま使えない言葉にあります。
結論:答弁の経験は、4工程で書く
| 工程 | 何をしたか |
|---|---|
| ① 意図の把握 | 質問の聞き取り、過去の答弁と経緯の確認、論点の特定 |
| ② 案の作成 | 答弁案の作成、関係課との表現のすり合わせ、幹部への説明 |
| ③ 根拠の確認 | 数字の出どころの確認、法令と制度の裏取り、答えられる範囲の線引き |
| ④ 本番と事後 | 当日の補助、再質問への対応、答弁後の宿題の処理 |
この4つは、民間の「経営層への説明」とほぼ同じ構造です。
とくに③は、他の業務では身につきにくい部分です。外に出す数字の根拠を、出す前に全部確認する。この習慣は、そのまま評価されます。
答弁は、法律上の説明義務にもとづいています
この仕事の重さを、条文で確認します。
地方自治法第121条第1項です。
> 普通地方公共団体の長、教育委員会の教育長(中略)は、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席しなければならない。
「議会の審議に必要な説明のため」、出席しなければならない。任意の説明ではなく、法律上の義務です。
つまり、職員が作っている答弁は、この説明義務を果たすための文書です。
間違えれば、その場で訂正が必要になり、記録にも残ります。だから、数字の1桁、表現の1語まで確認するわけです。
民間で同じ構造を持つのは、株主総会の想定問答、取締役会への説明、監査法人への回答、大口の取引先の役員への説明です。間違えられない説明を、期限までに作る仕事という意味で、同じです。
悪い例と良い例
悪い例
> 議会対応を担当。答弁書の作成、委員会資料の作成を行った。
良い例
> 議会対応(年◯回の定例会、委員会◯回)>> 課の所管事項に関する一般質問と委員会質疑について、年間約◯件の答弁案を作成。質問の趣旨の聞き取りから、過去の答弁との整合の確認、関係◯課との表現の調整、幹部への説明までを担当。>> 答弁に用いる数値は、出典と算定の方法を1件ずつ確認したうえで使用。制度の解釈に関わる論点については、国の通知と他団体の取扱いを確認し、答えられる範囲と、持ち帰る範囲を事前に整理。>> 委員会の資料(年間約◯件)を作成。質疑の後に生じた調査事項◯件について、期限までに回答を作成し、提出。
同じ経験ですが、①〜④が全部入っています。
規模を示す数字
| 数えるもの | 書き方 |
|---|---|
| 答弁の本数 | 年間約◯件の答弁案を作成 |
| 会議の回数 | 定例会年◯回、委員会年◯回、決算・予算の特別委員会◯回 |
| 調整した相手 | 関係◯課、部内◯係との調整 |
| 期限 | 質問の通告から答弁の確定まで◯日 |
| 事後の宿題 | 調査事項◯件、資料要求◯件への回答 |
「質問の通告から答弁の確定まで◯日」は、書いておくと効く数字です。短い期限で、確認の済んだ文書を出していたことが伝わります。
決算・予算の特別委員会は、別に書く
一般質問への答弁と、決算・予算の審査は、求められるものが違います。
決算の審査では、すでに執行した金額について、目的どおりに使われたか、効果があったかを説明します。予算の審査では、まだ使っていない金額について、なぜその額が必要かを説明します。
どちらも、数字の根拠を単価と件数まで分解して答える必要があります。この経験は、民間の予実の説明とほぼ同じ形です。
書くなら、「決算特別委員会において、所管する事業約◯件について、執行の状況と成果の説明を担当。不用額が生じた事業◯件について、要因を整理して回答」という形です。一般質問の答弁とは別の項目として置いてください。
身につく3つの力を、言葉にする
答弁の仕事で身につくものは、3つに整理できます。
| 力 | 職務経歴書での書き方 |
|---|---|
| 要約 | 複数の課にまたがる情報を、1〜2分で読める分量に集約 |
| 想定 | 想定される再質問を事前に洗い出し、回答の範囲を準備 |
| 期限 | 確定の期限から逆算して、確認と調整の工程を配置 |
この3つは、業種を問わず求められます。
自己PRに使うなら、「想定」が書きやすいです。「聞かれることを先に洗い出して、答えを用意しておく」という説明は、面接でそのまま実演できるからです。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 「議会対応」で終える
4工程に分けてください。3文字では、雑務として読まれます。
2. 答弁の本数を書かない
量が分かると、経験の厚みが読めます。
3. 議員の名前や、質問の政治的な背景を書く
書かないでください。個人を特定する記述は避けます。論点の類型で書けば足ります。
4. 苦労の話にする
「深夜まで答弁を作った」は、成果ではありません。確認の工程をどう設計したかを書いてください。
5. 幹部への説明を省略する
幹部に説明して了解を得る工程は、民間でいえば経営層への合意形成です。書いてください。
6. 事後の宿題を書き落とす
期限までに回答を出した実績です。期限の管理の証拠になります。
まとめ
- 答弁の経験は、①意図の把握 ②案の作成 ③根拠の確認 ④本番と事後の4工程で書きます
- 地方自治法第121条第1項は、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席しなければならないと定めています。答弁は法律上の説明義務にもとづく文書です
- 規模は、答弁の本数・会議の回数・調整した課の数・通告から確定までの日数で示します
- 求人票では、経営層への報告、取締役会事務局、株主総会の運営、監査対応として書かれています
- 議員の名前と政治的な背景は書かない。論点の類型で書きます
- 動機として語るときは、負担ではなく、次にやりたいことの側から言うほうが通ります
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よくある質問
答弁を書いたのは課長で、私は資料を集めただけです
資料を集めた工程も、③の根拠の確認です。書けます。「答弁に用いる数値について、出典と算定の方法を確認し、根拠の資料を整理」という形です。むしろ、数字の裏を取る工程は、答弁を書く工程より外で評価されやすい面があります。民間で求められているのは、文章力より、出す前に確かめる習慣だからです。加えて、過去の答弁との整合を確認した経験があれば、それも書いてください。組織として過去に言ったことと矛盾しないかを確認する作業は、企業の開示や広報でも同じ形で存在します。自分の担当した工程だけを、正確に書けば足ります。
議会事務局にいました。執行機関側とは立場が違いますが、書けますか
書けます。事務局側は、会議の運営そのものを担っています。日程の調整、議案の受理と配付、会議の記録、委員会の運営、議員からの調査依頼への対応。これは、民間でいえば株主総会や取締役会の事務局です。書くときは、運営の規模を入れてください。「年◯回の定例会、委員会◯回の運営を担当。議案約◯件の受理と配付、会議録の調製を担当」という形です。会議体の運営を、法令と例規に従って回した経験は、上場企業の総務や法務で読まれます。加えて、議員という、指揮命令関係にない相手と日程や手続きを調整した経験も書いてください。
答弁の内容を、職務経歴書にどこまで書けますか
公開されている範囲は、書けます。本会議と委員会の質疑は、会議録として公開されているのが通常です。したがって、「◯◯に関する質問への答弁を担当」という記述自体は、公開情報の範囲です。書かないほうがよいのは、調整の過程です。どの課が反対したか、どの表現を誰が直したか、幹部がどう判断したか。これらは内部の検討の経緯なので、書類にも面接にも出しません。地方公務員法第34条の守秘の義務は、退職後も続きます。書けるのは、自分が使った方法と、確認の工程です。詳しくは公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本に整理しています。