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ビジネス文書とメール|公文書との作法の違い
「文書は書き慣れているが、民間のメールに戸惑う」というご相談を伺います。
目的が違うためです。
この記事では、違いの出どころと、残すべき習慣を扱います。
公文書は、跡付けと検証のために作られます
公文書等の管理に関する法律第4条です。
> 行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。>> 一 法令の制定又は改廃及びその経緯>> (略)>> 四 個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
「経緯も含めた意思決定に至る過程」を、「跡付け、又は検証することができるよう」作る。
これが、公文書の目的です。
なお、この法律は国の行政機関等を対象としており、地方公共団体については同法第34条に定めが置かれています。
各団体では、条例や規程で文書の管理が定められています。
いずれにしても、「後から検証できること」が前提にあります。
ここが、ビジネス文書との違いの出どころです。
目的の違い
| 項目 | 公文書 | ビジネス文書 |
|---|---|---|
| 目的 | 跡付けと検証 | 相手に動いてもらう |
| 読み手 | 将来の担当者、監査、住民 | 目の前の相手 |
| 網羅性 | 経緯を含めて必要 | 絞る |
| 順序 | 経緯から結論へ | 結論から |
| 表現 | 定型、慎重 | 平易、簡潔 |
| 保存 | 規程による | 会社の定めによる |
3行目と4行目が中心です。
公文書では、経緯を落とすと検証できません。
ビジネス文書では、経緯が長いと読まれません。
どちらが正しいという話ではなく、目的が違うということです。
メールの作法の違い
| 項目 | 役所での扱い | 民間で多い扱い |
|---|---|---|
| 件名 | 案件の名称 | 用件と依頼が分かる形 |
| 宛名 | 職名を厚く書く | 簡潔 |
| 前置き | 挨拶、経緯 | 短い、または省く |
| 本文 | 経緯から | 結論・依頼から |
| 期限 | 文中に記載 | 明示する |
| 写しの送り先 | 決裁の流れに沿う | 関係者を広めに |
| 返信の速さ | 決裁を経る | 速さが求められる |
5行目です。
「いつまでに、何をしてほしいか」を明示するのが基本です。
7行目について。
内容の確定に決裁を要する場合でも、「確認中です。◯日までに回答します」と先に返すという運用が一般的です。
返事が来ないこと自体が、問題として扱われます。
残すべき習慣
公文書の作法のうち、民間でも価値があるものがあります。
| 習慣 | 民間での意味 |
|---|---|
| ① 根拠を確認してから書く | 誤りが少ない |
| ② 事実と推測を分ける | 判断を誤らせない |
| ③ 経緯を残す | 後から検証できる |
| ④ 定型を守る | 読み手が探しやすい |
| ⑤ 記録を残す | 言った言わないを防ぐ |
③が、実は評価されます。
「打合せの内容を記録に残し、関係者に共有する」という習慣は、民間でも徹底されているとは限りません。
合意の内容が残っていないために、後から食い違う。
この場面は、どの業界でも起きています。
書き方の例
悪い例
> 公文書の作成に慣れています。
良い例
> ◯◯に関する事務において、決裁の文書、要綱、通知、議会の答弁の資料を作成。経緯を含めて記録を残す運用を徹底し、担当の交代時に引継ぎの資料として活用。事業者との打合せについて、内容を記録し、双方で確認する運用を導入。
「作った書類の種類」「運用」「効果」が入っています。
基本の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本に整理しています。
面接で聞かれやすいこと
| 質問の趣旨 | 用意しておくこと |
|---|---|
| 作成した文書の種類 | 決裁、要綱、通知、資料 |
| 記録の運用 | どう残し、どう共有したか |
| 分量への向き合い方 | 絞る意識があるか |
| 速さ | 返信、確認の進め方 |
| 誤りを防ぐ工夫 | 確認の手順 |
3行目です。
「公文書は網羅するが、民間では絞る必要があると理解している」と示せると、適応の見通しが伝わります。
なお、特定の事案が分かる説明は避けてください。
守秘の義務は、退職した後も続きます。
経験の言い換えから相談することもできます。
慣れるための手順
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 結論を最初の3行に置く練習 |
| 2 | 期限と依頼を明示する |
| 3 | 経緯は必要な分だけ後ろに |
| 4 | 件名を用件が分かる形にする |
| 5 | 速く返す(内容が固まる前でも) |
1と5が要です。
5について。
「確認中です。◯日までに回答します」と返すだけで、相手の予定が立ちます。
この一往復が、民間では重視されます。
3について。
経緯を省くのではなく、依頼の後ろに回すという順序の入れ替えです。
読み手が必要としたときに、そこにある形にしてください。
学ぶ前に考えること
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| ① すでにある経験 | 作った文書の種類と運用 |
| ② 何が足りないか | 順序、分量、速さ |
| ③ 応募したい求人の条件 | 文書の作成が挙がっているか |
| ④ 期限 | 応募の時期までに間に合うか |
なお、講座や資格を取れば転職できる、という関係にはありません。
何を、どう書き、どう残してきたかが、評価の対象です。
よくある失敗
1. 「公文書の作成に慣れている」とだけ書く
種類と運用を書いてください。
2. 記録を残す習慣を書かない
民間で不足していることが多い部分です。
3. 経緯から書き始める
ビジネス文書では結論が先です。
4. 期限を明示しない
依頼が伝わりません。
5. 返信を遅らせる
内容が固まる前でも返してください。
6. 件名を案件名だけにする
用件が分かる形にしてください。
7. 絞る意識がないと見られる
理解していると示してください。
8. 講座を受ければ進めると考える
何をどう書いてきたかが評価の対象です。
まとめ
- 公文書等の管理に関する法律第4条は、経緯も含めた意思決定に至る過程と実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう文書を作成することを定めています
- 公文書は「跡付けと検証」、ビジネス文書は「相手に動いてもらう」ことが目的です
- 違いが出るのは、網羅性・順序・表現です
- メールでは、結論と依頼から書き、期限を明示し、速く返してください
- 記録を残す習慣は、民間でも価値があります。書類に書いてください
- 「公文書の作成に慣れている」ではなく、種類と運用を書いてください
- 絞りすぎて根拠を落とさないでください。置く場所を変えてください
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よくある質問
敬語や言い回しは、変える必要がありますか
過度に硬い表現は、簡潔にするほうが読まれます。ただし、敬語そのものを崩す必要はありません。民間でも、社外への文書では丁寧な表現が使われます。変えるのは、前置きの長さと、一文の長さです。「平素より格別のご高配を賜り」といった定型の挨拶は、社内のメールでは省かれることが一般的です。一方、社外への初回の連絡では残ることがあります。会社ごとに慣習が違うため、入社後に周囲の文面を見て合わせるのが確実です。最初から完璧に合わせる必要はありません。
記録を残す運用は、どう書けばよいですか
対象・方法・共有の3点で書いてください。「事業者との打合せについて、当日中に要点を記録し、双方で内容を確認のうえ共有する運用を導入。認識の相違による手戻りを防止」という形です。運用として定着させたという点が伝わると、仕組みを作れる人として読まれます。なお、担当の交代時の引継ぎに使ったという事実があれば、併せて書いてください。属人化を防いだ経験として評価されます。扱いは同じ部署が長い場合の職務経歴書にも整理しています。
民間の文書の型は、どこで学べますか
実物を読むのが早いです。応募先の会社が公表している資料——お知らせ、事業の説明、採用のページ——を読むと、その会社の書き方の傾向が分かります。また、入社後は、周囲が過去に出した文書を読むのが確実です。会社ごとに型が違うため、一般論より現物が役立ちます。なお、応募の時期が近い場合、文書の学習に時間をかけないでください。職務経歴書の作成と、求人を読む作業のほうが、時期に直接効きます。扱いは選考スケジュールの組み方に整理しています。