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営業の基礎|行政営業で公務員経験が効く理由
「営業の経験がないので、営業職は難しい」というご相談を伺います。
行政を相手とする営業は、事情が異なります。
この記事では、その理由と、示し方を扱います。
一定の契約は、議会の議決を要します
地方自治法第96条第1項です。
> 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。>> 一 条例を設け又は改廃すること。>> 二 予算を定めること。>> 三 決算を認定すること。>> (略)>> 五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。
一定の契約は、議会の議決を経るという仕組みです。
予算も、議決事件に含まれています。
つまり、行政を相手とする取引は、議会の日程に沿って動くということです。
いつ提案し、いつ決まり、いつ着手するか。
この時期の読み方が、行政を相手とする営業の中心になります。
そして、この読み方は、内側にいた人のほうが正確です。
民間営業との違い
| 項目 | 消費者・企業が相手 | 行政が相手 |
|---|---|---|
| 決まり方 | 担当者・決裁者の判断 | 予算と、手続 |
| 時期 | 相手の都合 | 年度と議会の日程 |
| 価格 | 交渉による | 予定価格、入札 |
| 提案の形 | 提案書、商談 | 仕様、プロポーザル |
| 関係の作り方 | 個別の関係 | 公平性の要請 |
5行目が、最も注意を要する点です。
行政の側には、公平性を保つ要請があります。
特定の事業者に有利な扱いをすることはできません。
この前提を理解しているかどうかが、行政を相手とする営業では分かれ目になります。
公務員経験が効く理由
| 経験 | 営業での使いどころ |
|---|---|
| ① 予算の時期を知っている | いつ提案すべきかが分かる |
| ② 議会の日程を知っている | 決まる時期が読める |
| ③ 決裁の流れを知っている | 誰に何が必要かが分かる |
| ④ 仕様の作り方を知っている | 提案の形が合う |
| ⑤ 公平性の要請を理解している | してはいけないことが分かる |
| ⑥ 制度の言葉が分かる | 説明が通じる |
①が、最も直接に効きます。
予算の編成の時期に情報が入っていなければ、翌年度の事業にはなりません。
この時期を外すと、1年待つことになります。
⑤について。
踏み込んではいけない場面を知っていることは、会社を守ることにもつながります。
書き方の例
悪い例
> 営業の経験はありませんが、折衝の経験があります。
良い例
> 発注する側として、◯◯に関する事業の仕様の作成から事業者の選定、履行の確認までを担当。年間約◯件の委託について、提案の内容を評価し、選定の理由を整理。事業者からの提案や照会に対し、制度上の制約と、求める内容を説明。
「立場」「件数」「評価」「説明」が入っています。
「営業の経験がない」と書き出さないでください。
発注する側にいた経験を、先に書いてください。
基本の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本に整理しています。
年度の流れと営業の動き
| 時期 | 行政の側 | 事業者の側 |
|---|---|---|
| 夏から秋 | 翌年度の事業の検討 | 情報の提供、提案 |
| 秋から冬 | 予算の要求・査定 | 見積りの提出 |
| 年度の変わり目の前 | 議決、入札の準備 | 入札・提案の準備 |
| 年度の始め | 契約、事業の開始 | 着手、体制の構築 |
| 年度の中間 | 執行の管理 | 履行、報告 |
1行目が要です。
この時期に情報が入っていなければ、翌年度の予算に載りません。
内側にいた人は、この感覚を持っています。
逆に、年度の途中に提案しても、予算がない限り動きません。
扱いは選考スケジュールの組み方にも整理しています。
面接で聞かれやすいこと
| 質問の趣旨 | 用意しておくこと |
|---|---|
| 提案を評価した経験 | 件数、評価の観点 |
| 予算・議会の時期の理解 | 年度の流れ |
| 公平性への理解 | してはいけないこと |
| 数字への向き合い方 | 委託の件数、規模 |
| 対人の場面 | 事業者への説明 |
3行目です。
行政を相手とする営業では、公平性の要請を理解していることが前提になります。
「特定の事業者に有利になる情報の提供はできない」という認識を示してください。
なお、特定の事業者が分かる説明は避けてください。
守秘の義務は、退職した後も続きます。
経験の言い換えから相談することもできます。
学ぶ前に考えること
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| ① すでにある経験 | 発注する側の実務 |
| ② 相手が誰か | 行政か、企業か、消費者か |
| ③ 応募したい求人の条件 | 営業の経験が必須か |
| ④ 期限 | 応募の時期までに間に合うか |
②で大きく変わります。
相手が行政であれば、経験が直接使えます。
相手が消費者であれば、必要な力が異なります。
扱いは職種を変える転職と、変えない転職に整理しています。
なお、研修を受ければ転職できる、という関係にはありません。
どの立場で、何を判断してきたかが、評価の対象です。
よくある失敗
1. 「営業の経験がない」から書き出す
発注する側にいた経験を先に書いてください。
2. 提案を評価した経験を書かない
評価する側の基準を知っていることが価値です。
3. 予算・議会の時期に触れない
時期の読み方が中心です。
4. 公平性の要請に触れない
前提の理解として示してください。
5. 相手が誰かを確認しない
必要な力が変わります。
6. 仕様の作成を書かない
提案の形が分かることの証明です。
7. 委託の件数を書かない
規模が伝わりません。
8. 研修を受ければ進めると考える
何を判断してきたかが評価の対象です。
まとめ
- 地方自治法第96条第1項は、条例、予算、一定の契約の締結などを議決事件としています
- 行政を相手とする取引は、予算と議会の日程に沿って動きます
- 公務員経験が効くのは、予算の時期、議会の日程、決裁の流れ、仕様の作り方、公平性の要請、制度の言葉です
- 「営業の経験がない」から書き出さないでください。発注する側の経験を先に書いてください
- 提案を評価した経験は、提案する側に回ったときにそのまま使えます
- 夏から秋の情報の提供が、翌年度の事業につながります
- 商品の理解と、数字を負う進め方は、入社後に覚える部分として分けて話してください
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
よくある質問
数字の目標を負うことに、抵抗があります
抵抗があること自体は、珍しくありません。確認しておきたいのは、目標の性質です。会社によって、個人の目標か、チームの目標か、新規の開拓が中心か、既存の関係の維持が中心かが異なります。行政を相手とする事業では、既存の取引先との継続が中心になることがあります。その場合、新規の開拓を前提とする営業とは、進め方が違います。面接で、「目標はどのように設定されますか」「新規と既存の比率はどの程度ですか」と確認してください。性質が分かれば、判断ができます。読み方は求人票の読み方|どこを見れば実態が分かるかに整理しています。
元の勤務先に営業することになりませんか
会社の方針と、制度上の扱いを確認してください。在職していた団体との関係については、離職後の規律が関わることがあります。国家公務員の場合は別に定めがあります。扱いは国家公務員から民間へに整理しています。地方公務員の場合も、法令と各団体の規程によります。必ず、所属の人事担当に確認してください。なお、会社の側でも、担当の割り当てを調整することがあります。応募の段階で、この点を相談して差し支えありません。確認しないまま入社すると、後から調整が必要になります。
提案書を書いた経験がありません
仕様書を書いた経験があれば、材料になります。仕様書は、求める内容を言葉にした書類です。提案書は、それに応える書類です。構造は対応しています。「何を求められているか」を読み取る力は、仕様を書いた経験から来ます。書き方は、「◯◯の事業の仕様書を作成し、求める成果と評価の観点を整理」という形です。なお、提案書の書き方そのものは、入社後に覚える部分です。様式や表現は会社ごとに違います。面接では、「仕様を書く側にいたので、評価の観点は理解している」と説明してください。