自治体別 / 中核市
旭川市職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
中核市62市の給与データは、これまで見てきたどの集団よりもばらつきが大きいという特徴があります。
地域手当は0%から16%まで7段階に分かれ、0%の市が24(62市のうち約4割)。ラスパイレス指数は93.3から102.7まで9.4ポイント開き、諸手当は49,341円から133,290円まで83,949円開きます。
特別区23区が「条件がそろった集団」だったのに対し、中核市はその正反対です。旭川市の位置から読み解いてください。
旭川市の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、旭川市の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 旭川市 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 98.7 |
| 平均年齢 | 43.9歳 |
| 平均給料月額 | 331,700円 |
| 諸手当月額 | 70,467円 |
| 平均給与月額 | 402,167円 |
| 平均給与月額(国ベース) | 365,176円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 0% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 0% |
中核市62市の分布を知っておく
| 項目 | 分布 |
|---|---|
| 地域手当 | 0%が24市、3%が10市、6%が12市、10%が8市、12%が4市、15%が3市、16%が1市 |
| ラスパイレス指数 | 93.3〜102.7(9.4ポイント幅) |
| 諸手当月額 | 49,341円〜133,290円(83,949円幅) |
| 平均給与月額 | 353,951円〜460,090円(106,139円幅) |
23区は地域手当が全区20%で完全に同じでした。中核市は7段階に分かれます。しかも0%が4割を占めます。
この違いは、応募先を考えるときに効きます。中核市どうしを比べても、前提がそろっていないからです。
旭川市は地域手当0%。平均給料月額331,700円は中核市のなかでは高いほうで、平均年齢43.9歳という年齢構成がそれを押し上げています。諸手当70,467円の比率は17.5%と薄めです。
道内の数字は北海道職員の転職と札幌市職員の転職に整理しています。
中核市の職員は、保健所を持つ立場にある
中核市で働く方が職務経歴書を書くときに、押さえておきたい点があります。
地方自治法第252条の22は、中核市が、指定都市が処理することができる事務のうち政令で定めるものを処理することができる、と定めています。
とくに大きいのが、保健所を設置する立場にあることです。食品衛生、医療分野の許認可、感染症対策、動物愛護。これらは一般の市では都道府県の仕事ですが、中核市では市の仕事になります。
ここが採用側との認識のずれを生みます。「市役所」と聞いて、住民窓口や地域行事を思い浮かべる採用担当者は少なくありません。しかし中核市の職員が担っているのは、県レベルの権限を伴う事務を含みます。
書き方の対処は単純です。
- 「市役所の仕事」ではなく、担当した事務の名前で書く(食品衛生、医療、環境、動物愛護)
- 市の人口と、年間の処理件数を書く
- 県と市で分かれている事務に関わったなら、どこが市の判断だったかを書く
市役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 市役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 動物取扱業の登録・監視指導 | 品質保証、規制対応、監査対応 |
| 食品衛生・医療の許認可と監視 | 品質保証、薬事管理、規制対応 |
| 家具・木工など地場産業の支援 | 事業開発、産地開発、ブランド企画 |
| 企業誘致・立地支援 | 事業開発、用地開発、アライアンス |
| 観光の誘客・受入環境整備 | 観光事業企画、集客企画 |
| 除排雪・冬期の都市運営 | インフラ運営、オペレーション改善 |
| 上下水道など公営企業 | インフラ運営、事業運営 |
| 市有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「感情が絡む相手を、制度で扱う」実務
旭川市役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
動物の愛護及び管理に関する法律第1条は、この法律が、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いその他動物の健康及び安全の保持等の動物の愛護に関する事項を定めるとともに、動物の管理に関する事項を定めて人の生命、身体及び財産に対する侵害等を防止することを目的とすると定めています。
「愛護」と「管理」が、同じ法律のなかに並んでいます。
守るべき対象であると同時に、管理すべき対象でもある。そしてこの領域は、関わる人の感情が強く出ます。
実務としては、次のような場面が続きます。
- 取扱業者を登録し、飼育環境を検査する
- 苦情が入れば、現地を確認して指導する
- 飼い主と近隣の主張が、真っ向から食い違う
- 引き取りや保護の判断を、その場で下す
- 数を減らす取り組みを、感情的な反対のなかで進める
「正しさの基準が人によって違う領域を、制度で扱う」という仕事です。
企業でも、同じ性質の場面が増えています。
クレーム対応、SNSでの批判、取引先とのトラブル、社内のハラスメント。どれも当事者の感情が強く、正論だけでは収まりません。そして基準を示さずに個別対応すると、対応がぶれて信用を失います。
「感情の強い相手に、一貫した基準で応じ続けた経験」を持つ人は、外から採用しにくい人材です。
求人票では、品質保証、規制対応、カスタマーサポート、リスクマネジメントといった名前で書かれています。
書くときのこつは、事案の内容を詳しく書かないことです。扱った件数、基準をどう決めて示したか、主張が食い違ったときに何を根拠にしたか、そして対応が一貫していることをどう担保したか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
旭川で、どの経験が値になるか
1. 感情が絡む案件を、基準で処理した経験
苦情、指導、引き取り、近隣調整。一貫した基準で応じ続けた経験は、クレーム対応や品質保証の職務で必要とされます。
2. 地場産業を支えてきた経験
家具、木工、食品。技術を持つ小さな事業者を動かした経験は、調達やパートナー営業の職務に直接つながります。
3. 冬を前提にした都市運営
除排雪、施設の設計、物流の確保。気象条件がコストに直結する地域での実務は、同じ条件の地域に展開する企業に直接読める経験です。
4. 広い市域を、限られた人員で回した経験
どこに拠点を置き、どう巡回し、何を集約したか。支店網を持つ企業の課題と同じです。
5. 保健所を持つ市としての実務
食品衛生、医療、環境。県レベルの権限を伴う事務を担っていることは、書けば伝わります。
道内・道外の求人を見るときに
旭川市は道北の拠点機能が集まる位置にあり、担当エリア型の求人であれば、拠点がここにあること自体が条件になることがあります。
判断の誤りは、通勤時間だけで線引きしてしまうことです。近年はリモート可、週数日出社といった勤務形態の求人が増えています。
まず職種で絞り、そのあとに勤務形態と担当エリアを確認する。勤務地から検索を始めると、この種の求人が最初から視界に入りません。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、市役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「○○推進事業を担当」では読み手に何も残りません。事業名は庁内でしか意味を持たない固有名詞です。何件を、どういう基準で審査し、どこで判断が割れて、どう決着させたか。
基準の作り方を書く
感情が絡む案件では、基準をどう決めて、どう示したかが実力を示します。個別対応の話ではなく、一貫性をどう担保したかを書いてください。
規模を必ず書く
市の人口、事業者の数、年間の処理件数、予算額。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。市役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、建築士、獣医師、食品衛生監視員。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
積雪寒冷地の設計と維持管理は、希少な経験になる
凍結深度、雪荷重、融雪、除排雪の動線。気象条件を前提に構造物と運用を成立させた経験は、同じ条件の地域に設備を置く企業から求められます。対象施設の数と、条件の整え方で書いてください。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。「行政なので利益はありません」と答えると、そこで話が終わります。事業の優先順位を付けた、単価の根拠を詰めた、複数案を比べた。同じ思考をしていたことを、民間の言葉で説明できるかが見られています。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
市内の企業の多くは、市役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 旭川市の一般行政職はラスパイレス指数98.7、平均給与月額402,167円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 中核市62市は、これまでのどの集団よりばらつきが大きい。地域手当は0%から16%まで7段階、うち0%が24市です
- ラスパイレス指数は93.3〜102.7の9.4ポイント幅、諸手当は83,949円幅。中核市どうしを比べても前提がそろいません
- 地域手当0%は「損」ではなく、条件で動く部分が小さいという利点があります
- 感情が絡む相手を制度で扱った経験は、企業のクレーム対応で必要とされます(動物愛護管理法1条)
- 事案の中身ではなく、基準をどう決めて示したか、一貫性をどう担保したかを書いてください
よくある質問
地域手当が0%ですが、損をしているのですか
そうとは言えません。地域手当は民間賃金の高い地域に支給される仕組みなので、0%はその地域の賃金水準を反映した結果です。中核市62市のうち24市が0%で、約4割を占めます。むしろ諸手当の比率が薄いぶん、条件で動く部分が小さく、去年の源泉徴収票が物差しとして使いやすくなります。
苦情や指導の対応は、スキルと言えますか
企業側から見ると、最も人の足りない部分です。クレーム対応、SNSでの批判、取引先とのトラブル。当事者の感情が強く、正論だけでは収まらない場面が増えています。多くの企業が個別対応でしのいでいて、対応がぶれる。基準をどう決めて示したか、一貫性をどう担保したかを書いてください。
中核市というだけで、小さい組織だと思われませんか
担当した事務の名前で書いてください。中核市は保健所を設置する立場にあり、食品衛生、医療、環境、動物愛護といった県レベルの権限を伴う事務を担っています。「市役所の仕事」と書かず、市の人口と年間の処理件数を1行入れると、読まれ方が変わります。