自治体別 / 施行時特例市
富士市職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
富士市の平均給料月額337,500円は、施行時特例市23市のなかで最も高い数字です。
ところが平均給与月額432,280円は、23市のなかで7番目です。
給料月額が1位で、総額は7位。しかも富士市より総額が高い6市は、6市とも給料月額では富士市より低い。この回で、その仕組みを開きます。
富士市の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、富士市の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 富士市 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 101.1 |
| 平均年齢 | 43.4歳 |
| 平均給料月額 | 337,500円(施行時特例市23市で最も高い) |
| 諸手当月額 | 94,780円 |
| 平均給与月額 | 432,280円(23市で7番目) |
| 平均給与月額(国ベース) | 369,022円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 3% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 3% |
諸手当は総額の21.9%を占めます。
富士市より総額が高い6市を並べる
| 市 | 平均給与月額 | 平均給料月額 | 地域手当(実支給) |
|---|---|---|---|
| 厚木市 | 467,495円 | 324,100円 | 16% |
| 平塚市 | 451,838円 | 333,900円 | 10% |
| 四日市市 | 440,264円 | 314,700円 | 10% |
| 小田原市 | 438,273円 | 331,000円 | 10% |
| 茅ヶ崎市 | 437,009円 | 318,400円 | 10% |
| 宝塚市 | 433,433円 | 314,700円 | 15% |
| 富士市 | 432,280円 | 337,500円 | 3% |
6市すべてが、給料月額では富士市より低くなっています。
そして6市すべてが、地域手当の実支給割合で富士市を上回っています。
厚木市と、差の中身を分解する
23市で総額が最も高い厚木市と並べます。
| 項目 | 富士市 | 厚木市 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均給料月額 | 337,500円 | 324,100円 | 富士市が13,400円多い |
| 地域手当の割合 | 3% | 16% | 13ポイント |
| 地域手当の概算 | 10,125円 | 51,856円 | 41,731円 |
| 地域手当以外の手当(概算) | 84,655円 | 91,539円 | 6,884円 |
| 諸手当月額 | 94,780円 | 143,395円 | 48,615円 |
| 平均給与月額 | 432,280円 | 467,495円 | 35,215円 |
総額の差は35,215円。ところが地域手当の差だけで41,731円あります。
地域手当の差が、総額の差を超えています。
給料月額は富士市が13,400円多く、地域手当以外の手当の差は6,884円しかありません。つまり、この2市の総額の差は、ほぼ地域手当だけで説明がつきます。
地域手当を引いて、7市を並べ直す
| 市 | 諸手当月額 | 地域手当の概算 | 地域手当以外(概算) |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 125,564円 | 31,470円 | 94,094円 |
| 厚木市 | 143,395円 | 51,856円 | 91,539円 |
| 茅ヶ崎市 | 118,609円 | 31,840円 | 86,769円 |
| 富士市 | 94,780円 | 10,125円 | 84,655円 |
| 平塚市 | 117,938円 | 33,390円 | 84,548円 |
| 小田原市 | 107,273円 | 33,100円 | 74,173円 |
| 宝塚市 | 118,733円 | 47,205円 | 71,528円 |
総額では7市のうち最も低い富士市が、地域手当を引くと4番目に上がります。
そして平塚市、小田原市、宝塚市の3市より、地域手当以外の手当は厚くなります。
諸手当そのものを見ると、富士市94,780円は7市のなかで最も薄い数字です。ところが、その薄さのかなりの部分は「地域手当が3%しかない」ことから来ています。
県内の数字は静岡県職員の転職に、隣接する施行時特例市は沼津市職員の転職に、総額が23市で1位の市は厚木市職員の転職に整理しています。
施行時特例市とは、どういう市か
特例市という制度は、2015年(平成27年)4月1日に廃止されました。
そのときに特例市だった市が、「施行時特例市」として、それまでと同じ事務を引き続き処理しています。富士市もその1つです。
中核市との違いは、はっきりしています。中核市は保健所を設置しますが、施行時特例市は設置しません。食品衛生や感染症対策は、都道府県の仕事として残ります。
一方で、施行時特例市が処理している事務も小さくありません。
- 都市計画法の開発許可
- 建築基準法の特定行政庁としての事務
- 騒音、振動、悪臭の規制
- 屋外広告物の規制
「建てる」「造る」「出す」に関わる許認可が中心です。
職務経歴書に書くときは、「市役所の仕事」ではなく、担当した事務の名前で書いてください。市の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。
市役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 市役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 悪臭・騒音・振動の規制、苦情対応 | 環境管理、品質保証、規制対応 |
| 工場の立地に関する調整 | 用地開発、渉外、事業開発 |
| 開発許可、建築確認の審査 | 規制対応、用地開発、品質保証 |
| 都市計画、区画整理、駅周辺の整備 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 産業の振興、企業の誘致 | 事業開発、法人営業、拠点開発 |
| 環境基本計画、温室効果ガスの削減 | 環境管理、サステナビリティ推進 |
| 上下水道など公営企業 | インフラ運営、事業運営 |
| 市有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「測りにくいもの」に線を引く実務
富士市役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
悪臭防止法第1条は、この法律が、工場その他の事業場における事業活動に伴つて発生する悪臭について必要な規制を行い、その他悪臭防止対策を推進することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とすると定めています。
そして第3条は、都道府県知事(市の区域内の地域については、市長)が、住民の生活環境を保全するため悪臭を防止する必要があると認める地域を、規制地域として指定しなければならないと定めています。
注目してほしい点が2つあります。
1つめは、「市長」と書かれていることです。市の区域内については、市長が規制地域を決めます。県から降りてきた基準をなぞる仕事ではなく、どこを規制地域にするかを、市が決めています。
2つめは、「指定しなければならない」という書き方です。「できる」ではありません。必要があると認めたなら、決めなければならない。
そして、この法律が扱っているのはにおいです。
においは、人によって感じ方が違います。同じ場所で、耐えられないと言う人と、気にならないと言う人が並んで暮らしています。それでも規制地域を決め、基準を決めなければなりません。
実務は、次のような形になります。
- 苦情の出ている場所と、出ていない場所の違いを調べる
- 測れるものは測り、測りきれない部分は別の方法で確かめる
- どこまでを規制地域にするか、線を引く
- 線の内と外で、扱いが変わることを説明する
- そして、線の外側にも苦情を言う人がいます
「主観がばらつくものに、公の線を引く」仕事です。
企業でも、同じ構造の場面が増えています。
品質のクレーム、使いにくさ、表示の分かりにくさ、職場の負担感。数値になっていないものに、どこかで線を引かなければ、対応も改善も始まりません。
そして多くの企業で、こうなります。「数値化できないから判断できない」で止まるか、声の大きい一件にだけ反応して、全体の基準を作らないか。
求人票では、品質保証、環境管理、カスタマーサポートの設計、リスク管理、内部統制といった名前で書かれています。
書くときのこつは、苦情の中身や事業者の名前をそのまま書かないことです。ばらつくものを、どうやって扱える形にしたか、線をどこに引き、その理由をどう説明したか、線の外側から出た声にどう対応したか、そして線そのものを見直した場面はあるか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
富士で、どの経験が値になるか
1. 主観がばらつくものに線を引いた経験
「数値化できないから判断できない」で止まる組織は多いです。それでも線を引いた経験が値になります。
2. 線の理由を説明した経験
内と外で扱いが変わるので、必ず説明を求められます。この説明の経験が、そのまま渉外の実務です。
3. 事業者と住民の両方を相手にした経験
利害が逆の相手に、同じ基準を通す。企業の調整職でそのまま使われます。
4. 開発許可と建築確認の実務
審査する側にいた経験は、そのまま職種になります。
県内・県外の求人を見るときに
富士市は静岡県東部にあり、県内や静岡県東部を担当エリアとする求人で、拠点がここにあること自体が条件になることがあります。
まず職種で絞り、そのあとに勤務形態と担当エリアを確認する。勤務地から検索を始めると、この種の求人が最初から視界に入りません。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、市役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「環境規制を担当」では読み手に何も残りません。どこに線を引き、その理由をどう説明したか。
線の外側から出た声を書く
線を引けば、必ず外側から声が出ます。そのとき何をしたかを書けると、実務があったことが伝わります。
規模を必ず書く
市の人口、対象となる事業場の数、苦情の件数、立入検査の件数。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。市役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、電気主任技術者、建築基準適合判定資格者、公害防止管理者、エネルギー管理士。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。規制や許認可に関わったなら、対象となる事業場の数、苦情の件数、立入検査の件数、是正までの期間で答えてください。「行政なので利益はありません」と答える必要はありません。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
市内の企業の多くは、市役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 富士市の一般行政職はラスパイレス指数101.1、平均給与月額432,280円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 平均給料月額337,500円は、施行時特例市23市で最も高い数字です。ところが総額は7番目です
- 総額で富士市を上回る6市は、6市とも給料月額では富士市より低く、6市とも地域手当の割合では富士市を上回っています
- 厚木市との総額差35,215円に対し、地域手当の差だけで41,731円。差の大きさが総額の差を超えています
- 地域手当を引くと、この7市のなかで富士市は最下位から4位へ順位を上げます
- 「主観がばらつくものに、公の線を引く」経験は、企業でほとんど誰も持っていません(悪臭防止法1条・3条)
よくある質問
給料月額が23市で1位なのに、総額が7位なのはなぜですか
地域手当です。富士市は3%、総額で上回る6市は10%から16%。厚木市との比較では、総額の差35,215円に対して地域手当の差だけで41,731円あります。給料月額は富士市が13,400円多く、地域手当以外の手当の差は6,884円しかありません。2市の総額の差は、ほぼ地域手当だけで説明がつきます。
地域手当3%は、実際にいくらですか
平均給料月額337,500円に3%を掛けると、およそ10,125円です。諸手当94,780円からこれを引くと、残りは84,655円。この残りの部分が、時間外の量、担当する業務、役職、住んでいる場所によって人ごとに違います。求人票と比べるときは、この部分がどれだけ自分に付いているかが効きます。
総額が7位であることは、転職で不利になりますか
団体の平均は、求人票の想定年収とは関係しません。見られるのは自分の実額です。しかも地域手当は、国が地域ごとに示した基準をもとに、団体が条例で支給率を決める手当です。総額の順位は、その団体がどう給与を決めたかをほとんど表していません。富士市は地域手当が3%なので、諸手当のうち給料月額に連動する部分が小さく、去年の源泉徴収票の支払金額が翌年もほぼそのまま使えます。