自治体別 / 施行時特例市
上越市職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
上越市の平均給与月額413,994円は、施行時特例市23市のちょうど真ん中、12番目の数字です。
同じ新潟県の長岡市は377,007円。36,987円離れています。
ところが両市は、地域手当がどちらも0%で、平均年齢の差も0.4歳しかありません。この回は、条件を揃えても残る差がどこから来るのかを追いかけます。
上越市の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、上越市の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 上越市 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 98.3 |
| 平均年齢 | 43.8歳(施行時特例市23市で2番目に高い) |
| 平均給料月額 | 325,600円 |
| 諸手当月額 | 88,394円(地域手当0%の4市で最も厚い) |
| 平均給与月額 | 413,994円(施行時特例市23市で12番目) |
| 平均給与月額(国ベース) | 347,581円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 0% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 0% |
諸手当は総額の21.4%を占めます。
長岡市と、条件を揃えて並べる
同じ新潟県、同じ施行時特例市、地域手当はどちらも0%。平均年齢は0.4歳しか違いません。
| 項目 | 上越市 | 長岡市 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均年齢 | 43.8歳 | 43.4歳 | 0.4歳 |
| 地域手当(実支給) | 0% | 0% | なし |
| ラスパイレス指数 | 98.3 | 96.4 | 1.9ポイント |
| 平均給料月額 | 325,600円 | 320,800円 | 4,800円 |
| 諸手当月額 | 88,394円 | 56,207円 | 32,187円 |
| 平均給与月額 | 413,994円 | 377,007円 | 36,987円 |
総額の差36,987円のうち、32,187円が諸手当の差です。割合にすると87.0%。
給料月額の差は4,800円しかありません。
ここまでの回で、地域手当の差が総額の差を作る場面を何度も見てきました。ところがこの2市には、その地域手当がありません。それでも差は残り、しかもその差は給料表の外側にあります。
地域手当0%の4市を並べる
施行時特例市23市のうち、地域手当の実支給が0%なのは4市です。
| 市 | 平均年齢 | 平均給料月額 | 諸手当月額 | 平均給与月額 |
|---|---|---|---|---|
| 上越市 | 43.8歳 | 325,600円 | 88,394円 | 413,994円 |
| 佐賀市 | 43.9歳 | 328,600円 | 68,260円 | 396,860円 |
| 伊勢崎市 | 42.4歳 | 324,000円 | 61,144円 | 385,144円 |
| 長岡市 | 43.4歳 | 320,800円 | 56,207円 | 377,007円 |
給料月額の幅は7,800円。諸手当の幅は32,187円です。
4市とも地域手当を持たないので、この32,187円には地域手当が1円も混ざっていません。時間外、特殊勤務、通勤、住居、管理職。そういう積み上げだけで、これだけ開きます。
富士市と並べると、指数の読み方が変わる
上越市と富士市(静岡県)は、平均年齢が43.8歳と43.4歳で、0.4歳しか違いません。
| 項目 | 上越市 | 富士市 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均年齢 | 43.8歳 | 43.4歳 | 0.4歳 |
| ラスパイレス指数 | 98.3 | 101.1 | 2.8ポイント |
| 平均給料月額 | 325,600円 | 337,500円 | 11,900円 |
指数2.8ポイントの差が、給料月額11,900円の差として出ています。1ポイントあたり、およそ4,250円です。
ところが、以前の回で見た大分市と宮崎市は、平均年齢が40.4歳で完全に一致し、指数3.5ポイントの差が給料月額8,900円の差でした。1ポイントあたり、およそ2,543円です。
同じ1ポイントが、片方では4,250円、もう片方では2,543円。1.7倍違います。
指数は学歴と経験年数を揃えたうえで国と比べた数字なので、金額そのものではありません。何ポイント差だから何円差、という換算はできません。
県内の数字は新潟県職員の転職に、同じ新潟県の施行時特例市は長岡市職員の転職に整理しています。
施行時特例市とは、どういう市か
特例市という制度は、2015年(平成27年)4月1日に廃止されました。
そのときに特例市だった市が、「施行時特例市」として、それまでと同じ事務を引き続き処理しています。上越市もその1つです。
中核市との違いは、はっきりしています。中核市は保健所を設置しますが、施行時特例市は設置しません。食品衛生や感染症対策は、都道府県の仕事として残ります。
一方で、施行時特例市が処理している事務も小さくありません。
- 都市計画法の開発許可
- 建築基準法の特定行政庁としての事務
- 騒音、振動、悪臭の規制
- 屋外広告物の規制
「建てる」「造る」「出す」に関わる許認可が中心です。
職務経歴書に書くときは、「市役所の仕事」ではなく、担当した事務の名前で書いてください。市の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。
市役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 市役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 除雪の計画、路線の優先順位付け | オペレーション設計、需給計画 |
| 委託業者の確保と出動の管理 | 調達、外注管理 |
| 開発許可、建築確認の審査 | 規制対応、用地開発、品質保証 |
| 都市計画、区画整理、駅周辺の整備 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 騒音・振動・悪臭の規制 | 環境管理、規制対応 |
| 合併後の制度統一、例規の整理 | 制度統合、規程整備 |
| 上下水道など公営企業 | インフラ運営、事業運営 |
| 市有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「造る」ではなく「使える状態に戻し続ける」実務
上越市役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法第1条は、この法律が、積雪寒冷の度が特にはなはだしい地域における道路の交通を確保するため、当該地域内の道路につき、除雪、防雪及び凍雪害の防止について特別の措置を定め、産業の振興と民生の安定に寄与することを目的とすると定めています。
注目してほしいのは、「除雪、防雪及び凍雪害の防止」という3つの言葉が並んでいることです。
除雪は、降ったものを取り除くこと。防雪は、降る前に備えること。凍雪害の防止は、凍って壊れることを防ぐこと。
同じ雪に対して、時間軸の違う3つの手を打っています。
さらに第3条は、国土交通大臣が、道路の交通の確保が特に必要であると認められる道路を指定しなければならないと定めています。「できる」ではなく「しなければならない」です。そして指定は、積雪や寒冷の度、道路の重要性その他の事情を勘案した政令の基準に従って行われます。
つまり、どの道路を優先するかを決める作業が、制度として法律の中に組み込まれています。
実務は、次のような形になります。
- 路線ごとに、いつまでに通れる状態にするかを決める
- 出動の判断基準を、降雪量や気温で定める
- 限られた機械と人を、どの順で回すかを決める
- 委託する業者を、シーズンの前に確保しておく
- そして、決めた順番で回らない夜が必ず来ます
「全部を同時にはできない」という前提から始まる仕事です。
企業でも、同じ構造の場面が増えています。
障害対応の優先順位、繁忙期の人員配置、部品が足りないときの生産順、配送が遅れたときの振り分け。「全部やる」と言えば、その場は収まります。ところが資源は有限なので、実際には何かが後回しになります。
そして多くの企業で、こうなります。優先順位を決めていないので、声の大きい順に対応が動きます。あとから「なぜあれが後回しになったのか」を説明できません。
求人票では、オペレーション設計、需給計画、生産管理、供給網の管理、事業継続計画といった名前で書かれています。
書くときのこつは、降雪量や路線の話をそのまま書かないことです。限られた資源をどの順で配るかをどう決めたか、その基準を誰と合意したか、基準どおりに回らなかったとき何をしたか、そして翌シーズンに基準をどう直したか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
上越で、どの経験が値になるか
1. 優先順位を事前に決めた経験
その場で決めると、声の大きい順になります。先に基準を作った経験が値になります。
2. 有限な資源を配った経験
機械、人、時間。足りない前提で配分を設計した経験は、生産管理と物流でそのまま使われます。
3. 合併後の制度を1つに揃えた経験
条件がまったく違う区域を、同じ制度で扱えるようにする。企業の統合後の作業と、構造が同じです。
4. 開発許可と建築確認の実務
審査する側にいた経験は、そのまま職種になります。
県内・県外の求人を見るときに
上越市は新潟県上越地方の中心にあり、県内や上越地域を担当エリアとする求人で、拠点がここにあること自体が条件になることがあります。
まず職種で絞り、そのあとに勤務形態と担当エリアを確認する。勤務地から検索を始めると、この種の求人が最初から視界に入りません。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、市役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「除雪業務を担当」では読み手に何も残りません。どういう基準で優先順位を決め、誰と合意したか。
基準どおりに回らなかった場面を書く
決めただけでは回りません。そのとき何をしたかを書けると、実務があったことが伝わります。
規模を必ず書く
市の人口、対象となる路線の延長、委託した業者の数、出動の回数。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。市役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、電気主任技術者、建築基準適合判定資格者、公害防止管理者。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
雪と凍結を前提にした設計は、扱える人が限られる
融雪、荷重、排水、凍上。冬を前提に設計と点検を組んだ経験は、同じ条件の地域を持つ企業から求められます。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。除雪や許認可に関わったなら、対象路線の延長、委託の件数、出動の回数、予算の執行率で答えてください。「行政なので利益はありません」と答える必要はありません。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
市内の企業の多くは、市役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 上越市の一般行政職はラスパイレス指数98.3、平均給与月額413,994円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 施行時特例市23市のちょうど真ん中、12番目の数字です
- 同じ新潟県の長岡市とは36,987円差。ところがその87.0%は諸手当の差で、給料月額の差は4,800円しかありません
- 地域手当が0%の4市だけを並べても、諸手当の幅は32,187円。地域手当が1円も混ざらない差です
- 富士市との比較では、指数1ポイントが約4,250円。大分市・宮崎市では約2,543円。同じ1ポイントの重さが1.7倍違います
- 「全部を同時にはできない」前提で優先順位を設計した経験は、企業の現場でほとんど誰も持っていません(積雪寒冷特別地域道路交通確保法1条・3条)
よくある質問
長岡市との差36,987円は、給料表の違いですか
違います。給料月額の差は4,800円で、総額の差の13.0%にすぎません。残る32,187円は諸手当です。両市とも地域手当は0%なので、この差に地域手当は1円も含まれていません。時間外、特殊勤務、通勤、住居、管理職といった積み上げの違いです。
ラスパイレス指数98.3は、どう読めばよいですか
金額ではなく、学歴と経験年数を揃えて国と比べた指数です。上越市と富士市は年齢差0.4歳で、指数2.8ポイントの差が給料月額11,900円(1ポイント約4,250円)。一方、大分市と宮崎市は年齢が完全一致で、指数3.5ポイントの差が給料月額8,900円(1ポイント約2,543円)。同じ1ポイントの重さが1.7倍違うので、何ポイント差だから何円差という換算はできません。
総額が23市の真ん中であることは、転職で有利ですか
団体の平均は、求人票の想定年収とは関係しません。見られるのは自分の実額です。上越市は地域手当0%で、諸手当が総額の21.4%。年ごとに動くのは時間外と扶養や住居の変動くらいなので、去年の源泉徴収票の支払金額が翌年もほぼそのまま使えます。求人票と、そのまま並べて比べられます。