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業界研究 / ゼネコン・建設

ゼネコン・建設の志望動機|公務員からの転職でどう組み立てるか

ゼネコン・建設への志望動機で、財政課の方が最も陥りやすい失敗は、「ものづくりに関わりたい」「形に残る仕事がしたい」という大きな言葉で、財政課の具体的な経験と会社の事業がつながっていないことです。ゼネコンの面接官は技術者や支店長で、「形に残る仕事」は自分たちが毎日の仕事で持っているものなので、応募者から聞いても評価の材料になりません。聞きたいのは、「この人は、自分たちが持っていない何を持ち込むのか」です。

財政課の経験を持つ方がこの業界に持ち込めるのは、発注者が公共工事を出すときの予算と契約の仕組み——財源の組み方(起債、補助金、単独費)、債務負担行為と繰越明許費の使われ方、積算と予定価格の関係、財政課の査定、議会の日程——を内側から知っていることです。志望動機は、この「持ち込めるもの」を軸に組み立てます。

この記事では、ゼネコンの志望動機を「なぜ発注者側から受注者側へ」「なぜゼネコンか」「なぜこの会社か」の3層で組み立てる方法、財政課の経験から素材を取り出す手順、効く言い方と効かない言い方、服務の線を整理します。志望動機の一般論は公務員からの転職で志望動機をどう組み立てるかと自治体向け事業の会社への志望動機に、業界の構造と職種ごとの評価はゼネコン・建設は公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——志望動機の土台になる事実

建設業を営むには許可が要り(建設業法第3条第1項)、施工には主任技術者・監理技術者の設置が要ります(同法第26条)。会社の受注能力は技術者で決まります。一方で、公共工事の受注は、発注者の予算と契約の仕組みに沿った営業と事務で左右されます。公共施設の建設事業費は地方債の対象になり(地方財政法第5条第5号)、複数年度の工事は債務負担行為(地方自治法第214条)、年度内に終わらない工事は繰越明許費(第213条)で扱われ、公共工事の品質確保の促進に関する法律第7条第1項第10号は発注者に、これらの活用による実施時期の平準化を求めています。

志望動機に効くのはこの構造の裏側です。技術者の会社である以上、発注者の予算と契約を内側から知っている人は少数で、官公庁営業と事務系の枠でその少数が必要とされています。志望動機は「技術者の会社に事務職として入りたい」ではなく、「発注者の予算と契約の内側を、受注者側の会社に持ち込む」を軸にします。

志望動機の3層——「なぜ発注者側から受注者側へ」「なぜゼネコンか」「なぜこの会社か」

層問われていること財政課の経験からの答え方
① なぜ発注者側から受注者側へ決める立場を捨て、入札で選ばれ、仕様書に沿って施工し、検査を受ける立場に移る理由「1つの自治体の査定で変えられる範囲」の限界を、具体的な公共工事の予算で語る。辞める理由を無理に前向きに変換しない
② なぜゼネコンかなぜ建設コンサル(調査・設計の受注者)でも不動産(開発の事業者)でもなく、施工を請け負う側か財政課で見た「発注の時期と予算の組み方が、受注者側の施工と噛み合っていなかった」場面を、受注者側で埋めたい対象として語る。施工を請け負う側を選ぶ理由に答えを持つ
③ なぜこの会社か同業他社ではなく、なぜここかその会社の公共工事の比重、得意とする工種と地域、官公庁営業や事務系の枠の実績と自分の担当業務の重なり

①だけの志望動機(「発注者側にいて限界を感じた」)は、②③がないので通りません。②③だけの志望動機(「御社の公共工事の実績に惹かれた」)は、①がないので「なぜ決める側を辞めるのか」の質問で崩れます。3層すべてを、財政課の具体的な業務で埋めるのが型です。

②で注意したいのは、「なぜ建設コンサルや不動産ではなく、ゼネコンか」に答えを持っておくことです。建設コンサルは調査・設計を受注する側、不動産・デベロッパーは自分の資金で開発する側、ゼネコンは施工を請け負う側です。「計画や設計より、実際に工事が動く現場に近い側で、発注者の予算と契約の仕組みを活かしたい」など、ゼネコンを選ぶ理由を自分の言葉で言えるかが見られます。

財政課の経験から動機の素材を取り出す手順

素材は、財政課で「発注者側の予算と契約が、受注者側と噛み合っていなかった」場面と、「財源の側から発注の形を変えた」場面にあります。次の順で棚卸しをしてください。

1. 公共工事の予算と契約に関わった場面を書き出す。工事の予算査定(積算と予定価格の関係、財源の組み方)、起債の協議、補助事業の査定、債務負担行為と繰越明許費の設定、設計変更に伴う予算の増減、議会での説明。自分が「何を判断し、何を作ったか」を添える。

2. それぞれで「発注者側と受注者側が噛み合っていなかった」場面を書き出す。単年度で組んだ工事が年度末に集中し、繰越が常態化していた。債務負担行為で組めば平準化できた工事を、単年度で発注していた。補助の内示が遅れて発注が年度後半にずれ、工期が圧縮された。設計変更で予算が追いつかず、受注者側に負担が寄っていた。この「噛み合わなさ」が、受注者側の営業と事務の中で、財政課の経験が埋められる部分です。

3. 自分がどう直したかを添える。単年度で組まれていた工事を債務負担行為に組み替えて平準化した、繰越の理由を精査して発注の時期を前倒しさせた、設計変更の予算を早めに手当てした。「噛み合っていなかった」だけでなく「直した」まで書けると、受注者側で何ができるかが伝わります。

4. 応募先の実績と重ねる。その会社の公共工事の比重、得意とする工種(建築、土木)と地域、官公庁営業や事務系の枠の実績を確かめ、自分の「直した場面」がどの業務に当たるかを見る。重なる部分が③の素材、重ならないが自分が困っていた部分が「入社後にやりたいこと」の素材になります。

地方自治法第2条第14項は、地方公共団体が事務を処理するに当たって「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことを求めています。財政課はこの条文を、公共工事の査定でも使っています。「最少の経費で最大の効果」を、査定する側ではなく、発注者に提案し施工する側から実現したい——この言い方は、財政課の経験とゼネコンの業務を1本でつなぐ軸になります。

効く言い方・効かない言い方

効かない言い方なぜ効かないか効く言い方
「ものづくりに関わりたい」「形に残る仕事がしたい」面接官(技術者)が毎日持っている思いで、応募者から聞いても材料にならない「単年度で組まれて年度末に集中していた工事を、債務負担行為に組み替えて平準化した。この視点を受注者側で使いたい」
「公共工事の査定をしていたので工事が分かります」査定で見ていたのは財源と妥当性で、施工の技術ではない。技術者に「分かっていない」と受け取られる「発注者側で予算と契約を担当していた。施工は御社の技術者に学ぶ」
「御社の公共工事の実績に惹かれました」実績のどこに自分が関われるかがない「御社の官公庁営業の中で、発注の見通しと財源の組み方を読む部分を財政課の経験で担いたい」
「自治体のことなら何でも分かります」自分の自治体の運用を一般化している「私の自治体では債務負担行為を多く使ったが、単年度で組む自治体もある。共通の制度と自治体ごとの運用を分けて営業に反映したい」
「コンサルでもゼネコンでもよいのですが」②の答えがない。施工を請け負う側を選ぶ理由を持っていない「計画や設計より、実際に工事が動く側で、発注者の予算と契約の仕組みを活かしたい」

共通するのは、効く言い方はすべて「予算と契約の具体」と「発注者の内側であること」と「技術者との線引き」のいずれかを含んでいることです。効かない言い方は、どれも欠けています。

自分の「直した場面」が、どの会社のどの業務に当たるのかは、一人で調べるより話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

会社のタイプ別——「なぜこの会社か」の作り分け

ゼネコンと一口に言っても、会社の形は分かれます。③の層は、タイプごとに作り分けが要ります。

大手・準大手のゼネコンで、公共と民間の両方を手がける会社。公共工事の比重は会社によって違い、官公庁営業の部門は本社と支店に分かれていることが多いタイプです。③は「官公庁営業の部門で、発注者の予算と契約の内側を活かしたい」を軸にしますが、公共工事の比重と、自分が入る部門(本社か支店か)を確かめてから書くことが前提です。民間工事の営業に配属される可能性も面接で確かめます。

地域のゼネコンで、地元の自治体の公共工事が中心の会社。特定の自治体との関係が長く、公共工事の比重が高いタイプです。財政課の経験が最も直接に効き、③は「地域の自治体の予算の周期と財源の事情を内側から知っている」を軸にできますが、自分の自治体と取引がある場合は服務の線(後述)を先に確かめ、元の自治体を担当しない前提で書くのが安全です。

PFIや公民連携の事業に力を入れている会社。設計・施工・維持管理を担う事業者グループの一員として公共施設の整備に関わるタイプです。③は「PFIの財政負担の比較と債務負担行為を、発注者側で見ていた視点から事業者側で組みたい」を軸にします。

どのタイプでも共通するのは、「その会社の公共工事の比重と、事務系の枠の実績」を確かめてから書くことです。タイプを取り違えた志望動機は、一次面接の最初の質問で分かります。

服務の線——志望動機に書いてよいこと、書けないこと

志望動機は「噛み合わなさ」と「直した場面」を書く文章なので、自治体の内部情報を書き込みやすいという落とし穴があります。入札に関わる情報は受注者側に直接の利害があるので、この線は特に厳しく見られます。

地方公務員法第34条の秘密を守る義務は、退職後も続きます。志望動機に、未公表の内部情報(個別の工事の予定価格、最低制限価格の算定、他社の入札状況、発注の未公表の見通し、設計変更の内部の判断、個別の受注者への評価)を書いてはいけません。「単年度で組まれていた工事を債務負担行為に組み替えた」という業務の性質は書けますが、「○○工事の予定価格は○億円で、○○社の入札は」のような内容は、事実であっても書けません。守秘義務は退職後も続くかに線引きを整理しています。

もう1つは、在職中に応募先の会社が受注した工事の予算査定や入札に関わっている場合です。予定価格の積算の確認、入札の執行、検査、設計変更の承認に該当する場合、選考の中で隠さず伝え、応募の時期と入社後の担当の切り分けを会社側と相談してください。退職後に元の職場へ働きかけることは地方公務員法第38条の2で規制されており、官公庁営業では元の自治体を担当から外す配慮を会社が求めることがあります。再就職者による働きかけの規制に整理しています。

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まとめ

よくある質問

財政課で公共工事の予算に直接関わったことがなく、一般会計の査定が中心でした。素材はありますか

あります。一般会計の査定で、施設の改修や修繕の予算、繰越明許費の設定、債務負担行為の議案を見ていれば、「発注者側の予算と受注者側の施工が噛み合っていなかった」場面は経験しているはずです。年度末に修繕の予算が集中して繰越が常態化していた、債務負担行為で組めば平準化できた改修を単年度で発注していた——こうした場面を「直した場面」として書き出してください。大型の公共工事に直接関わっていないことは正直に示し、自分の自治体の発注の見通しや入札結果を読んで理解した内容を添えるほうが、面接で崩れません。

「なぜ建設コンサルではなくゼネコンなのか」と聞かれたら、どう答えればよいですか

建設コンサルは調査・設計を受注する側、ゼネコンは施工を請け負う側です。「計画や設計より、実際に工事が動く現場に近い側で、発注者の予算と契約の仕組みを活かしたい」「財政課で見た『発注の時期と施工の噛み合わなさ』を、施工する側で埋めたい」など、ゼネコンを選ぶ理由を、財政課で見た具体的な場面と結びつけて答えてください。「どちらでもよい」は、②の答えがないと見られます。

自分の自治体の工事を受注している会社に応募します。志望動機で自治体の名前を出してよいですか

自治体の名前を出すこと自体は問題ありませんが、2つの点に注意してください。1つは、未公表の情報(個別の工事の予定価格、最低制限価格の算定、その会社の入札の状況、設計変更の内部の判断)を書かないこと(地方公務員法第34条)。入札の情報は受注者側に直接の利害があるので、この線は特に厳しく見られます。もう1つは、在職中にその会社が受注した工事の予算査定や入札に関わっていた場合、志望動機に書く前に選考の中で伝え、応募の時期と担当の切り分けを相談することです。志望動機は「元の自治体を担当しない前提で、発注者の予算と契約の内側を知っている点を活かしたい」という形で書くのが安全です。

出典

  1. 建設業法 第3条(建設業の許可)/第26条(主任技術者及び監理技術者の設置等)|e-Gov法令検索
  2. 公共工事の品質確保の促進に関する法律 第3条(基本理念)/第7条(発注者等の責務)|e-Gov法令検索
  3. 地方自治法 第2条第14項(最少の経費で最大の効果)/第213条(繰越明許費)/第214条(債務負担行為)|e-Gov法令検索
  4. 地方財政法 第5条(地方債の制限)|e-Gov法令検索
  5. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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