制度とお金 / 共済
任意継続組合員制度
退職すると、共済組合の組合員証はその翌日から使えません。ただし、申し出れば、退職後も最長2年、共済の短期給付を受け続けられる仕組みがあります。任意継続組合員制度です。
この制度は、要件、期限、掛金、やめ方のすべてが、地方公務員等共済組合法第144条の2という1つの条文に書かれています。条文は6項ありますが、退職する本人が知っておくべきことは、その6項にほぼ収まります。
この記事では、第144条の2を1項ずつ読みながら、任意継続組合員制度の要件から資格の喪失までを整理します。他の選択肢との比べ方は退職後の健康保険、3つの選択肢に、退職時の共済の手続きの全体は退職時の共済の手続きに書いています。掛金の額と手続きの様式は組合ごとに違うので、所属の共済組合に確かめてください。
条文の骨——第144条の2の6項
| 項 | 何が書かれているか |
|---|---|
| 第1項 | 要件(1年以上の組合員期間)、期限(退職の日から20日)、申出の効果(短期給付と福祉事業について組合員とみなす) |
| 第2項 | 掛金(任意継続掛金)の決まり方 |
| 第3項 | 前納ができること |
| 第4項 | 初回の掛金を払込期日までに払わないと、任意継続組合員にならなかったものとみなす |
| 第5項 | 資格を失う6つの場合 |
| 第6項 | 手続きの細目、短期給付の支給の特例などは政令で定める |
以下、順に見ていきます。
第1項——誰が、いつまでに、何を申し出るか
第1項は、退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員であった者が、退職の日から起算して20日を経過する日までに、引き続き短期給付を受け、福祉事業を利用することを希望する旨を組合に申し出ることができる、と定めています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 要件 | 退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員 |
| 期限 | 退職の日から起算して20日を経過する日まで(正当な理由があると組合が認めた場合はその認めた日まで) |
| 申出の内容 | 引き続き短期給付を受け、福祉事業を利用することを希望する旨 |
| 効果 | 短期給付と福祉事業に係る部分について、引き続き組合員であるものとみなす |
「1年以上」は、退職の日の前日まで引き続いて、です。採用から1年未満で退職する方は使えません。「20日」は退職の日から起算するので、3月31日に退職した場合、4月19日が20日目です。期限は暦日で数え、土日祝日で延びることはないので、余裕を持って申し出てください。
申出をすると、短期給付と福祉事業については組合員とみなされるので、国民健康保険法第6条第3号の適用除外(共済組合の組合員)に当たり、国民健康保険には入りません。医療費の給付は在職中と同じ仕組みで続き、被扶養者もそのまま被扶養者です。
第2項——掛金はどう決まるか
第2項は、任意継続組合員が払う掛金(任意継続掛金)を、在職中の短期給付・福祉事業に係る掛金と、地方公共団体の負担金の合算額を基礎として、組合が政令で定める基準に従い定款で定める金額と定めています。
ここが、在職中との最大の違いです。在職中は自治体が負担していた分を、退職後は本人が払うので、目安として在職中の掛金のおよそ2倍になります。ただし、政令の基準に従って組合が定款で定めるので、掛金の算定の基礎になる標準報酬に上限を設けている組合が多く、給与が高かった方は2倍より小さくなることがあります。自分の額は共済組合に見込みを聞いてください。
介護保険の第2号被保険者(40歳以上65歳未満)に当たる方は、介護納付金に係る分も含まれます。
第3項と第4項——前納と、初回の払込み
第3項は、将来の一定期間の掛金を前納できると定めています。前納すると、政令で定める額が控除されます。
第4項は、この制度で最も注意が要る規定です。初めて払い込むべき任意継続掛金を、その払込期日までに払い込まなかったときは、任意継続組合員にならなかったものとみなす。申出だけでは成立しません。申出と初回の払込みの2つで成立し、払込みを忘れると、申出は最初からなかったことになります。この場合、退職の翌日に遡って国民健康保険の被保険者になり、市区町村での手続きが要ります。
第5項——資格を失う6つの場合
| 号 | 場合 | いつ失うか |
|---|---|---|
| 第1号 | 任意継続組合員となった日から2年を経過したとき | 翌日 |
| 第2号 | 死亡したとき | 翌日 |
| 第3号 | 初回以外の掛金を払込期日までに払わなかったとき(正当な理由がある場合を除く) | 翌日 |
| 第4号 | 組合員、健康保険の被保険者などになったとき(転職先の健康保険に入ったとき) | その日 |
| 第5号 | やめることを希望する旨を申し出て、受理された日の属する月の末日が到来したとき | 翌日 |
| 第6号 | 後期高齢者医療の被保険者等となったとき | その日 |
転職する方に関わるのは、第4号と第5号です。
第4号により、転職先の健康保険に入れば、その日に自動的に任意継続の資格を失います。「2年の途中で転職先に入れないのでは」という心配は要りません。
第5号により、自分の意思でやめることもできます。申し出て受理された月の末日で資格を失うので、たとえば国民健康保険のほうが安くなる翌年度から切り替える、という使い方ができます。
第6項——政令に委ねられていること
第6項は、申出の手続き、任意継続組合員に対する短期給付の支給の特例、前納の手続きなどを政令で定めるとしています。この「支給の特例」により、任意継続組合員には、在職中の組合員と同じ給付がすべて出るわけではありません。在職中の給付との違い(傷病手当金など働けない期間の所得の補てんに関わる給付の扱い)は、所属の共済組合の案内で確かめてください。医療費の給付は続きます。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、任意継続で効いてくる点は3つです。
1. 退職の翌日に入社するなら、任意継続は要らない
転職先の健康保険に入社日から入るので、空白がありません。申出をしても、入社日に第5項第4号で資格を失うだけです。
2. 空白があるなら、20日の期限までに申出と初回の払込み
空白の長さにかかわらず、退職の日から20日が期限です。短い空白のために2年の制度を選ぶ必要はありませんが、扶養する家族が多い方は、国民健康保険と比べて任意継続が有利になることがあります。
3. 転職先に入れば、自動で終わる
第5項第4号のとおり、その日に資格を失います。前納していた分は、政令の定めにより還付されます(第6項)。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 退職前 | 掛金の見込額と払込期日を共済組合に照会 | 退職日が決まったら | ── |
| 退職後 | 任意継続の申出 | 退職の日から起算して20日を経過する日まで | 第1項 |
| 払込期日まで | 初回の掛金の払込み | 組合が定める払込期日 | 第4項 |
| 毎月 | 掛金の払込み(前納も可) | 払込期日 | 第2項・第3項 |
| やめるとき | やめる旨の申出(受理された月の末日で喪失) | ── | 第5項第5号 |
| 転職先に入ったとき | 手続き不要(その日に自動で喪失)。組合員証は返納 | ── | 第5項第4号 |
誤解されやすい点
「任意継続の掛金は在職中と同じ額」と思い込む
自治体の負担金相当が加わります(第2項)。およそ2倍が目安で、上限の有無は組合の定款によります。
「申出をすれば成立する」と思い込む
初回の掛金の払込みが要ります(第4項)。忘れると、申出はなかったことになります。
「2年間はやめられない」と思い込む
転職先の健康保険に入ればその日に自動で終わり、自分の意思でも申し出てやめられます(第5項第4号・第5号)。
「在職中と同じ給付がすべて続く」と思い込む
医療費の給付は続きますが、給付の一部には特例があります(第6項)。組合の案内で確かめてください。
まとめ
- 任意継続組合員制度は、退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員であった者が、退職の日から20日以内に申し出ることで、短期給付と福祉事業について組合員とみなされる仕組みです(地方公務員等共済組合法第144条の2第1項)
- 掛金は、在職中の掛金と自治体の負担金の合算額を基礎に、組合が政令の基準に従い定款で定めます(第2項)。およそ2倍が目安で、額は共済組合に確かめてください
- 申出と初回の掛金の払込みの2つで成立します。初回の払込みを忘れると、任意継続組合員にならなかったものとみなされます(第4項)
- 資格を失うのは、2年の経過、死亡、掛金の未払い、転職先の健康保険などへの加入(その日)、やめる旨の申出(受理された月の末日)、後期高齢者医療への移行の6つです(第5項)
- 転職先に入ればその日に自動で終わり、自分の意思でもやめられます。2年縛りではありません
- 任意継続の間は国民健康保険の適用除外です(国民健康保険法第6条第3号)
よくある質問
採用から10か月で退職します。任意継続は使えますか
使えません。第144条の2第1項の要件は、退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員であったことです。10か月では満たしません。この場合、退職の翌日に転職先の健康保険に入るのでなければ、国民健康保険か、家族の健康保険の被扶養者のどちらかです。国民健康保険は前年の所得と世帯の人数で保険料が決まるので、市区町村で見込みを聞いてください。なお、前の職場で健康保険や別の共済組合に入っていた期間があっても、この要件は当該組合の組合員期間が引き続き1年以上かどうかで見るので、通算はされません。所属の共済組合に、自分の組合員期間がいつからかを確かめてください。
任意継続を選んだ後、国民健康保険のほうが安いと分かりました。切り替えられますか
切り替えられます。第144条の2第5項第5号により、任意継続組合員でなくなることを希望する旨を組合に申し出ると、その申出が受理された日の属する月の末日で資格を失います。翌月の1日から国民健康保険の被保険者になるので、市区町村で資格取得の届出をしてください。よくあるのは、退職の年度は前年の在職中の所得で国民健康保険が高いので任意継続を選び、翌年度に退職の年の所得で国民健康保険が下がるので切り替えるという使い方です。切り替えの前に、市区町村で翌年度の見込みを聞いて、任意継続の掛金と並べてください。前納していた場合は、政令の定めにより残りの期間の分が還付されます(第6項)。
任意継続の申出をした後、退職の翌月に転職先が決まりました。何か手続きは要りますか
任意継続をやめる手続きは要りません。第144条の2第5項第4号により、転職先の健康保険の被保険者になったその日に、任意継続組合員の資格を失います。転職先が健康保険の資格取得の届出をすれば、自動的に切り替わります。本人がすることは、任意継続の組合員証を共済組合に返納することと、前納していた場合の還付の手続きです。掛金は月単位で計算されるので、転職先の健康保険に入った月の任意継続の掛金がどうなるかは、共済組合に確かめてください。転職先の入社日が決まったら、その日付を共済組合に伝えておくと、返納と還付の案内がもらえます。