制度とお金 / 共済
退職時の共済の手続き
退職の手続きは、人事の担当課が一覧にして案内してくれます。ところが、共済組合に関わる手続きは、その一覧の中で「共済の担当へ」とだけ書かれていることが多く、中身が見えません。
共済の手続きは、大半が自治体の共済の担当と共済組合の間で進み、本人が自分で動くものは限られます。その限られたものに、期限があるものと、退職手当の額に効くものが含まれています。
この記事では、退職時の共済組合の手続きを、本人がすることに絞って、地方公務員等共済組合法の条文で整理します。手続きの様式と細目は組合ごとに違うので、所属の共済組合の案内に従ってください。共済の全体は地方公務員共済組合の仕組みに書いています。
全体——3つの事業ごとに、退職で何が起きるか
| 事業 | 退職で起きること | 本人がすること |
|---|---|---|
| 短期給付(健康保険) | 退職の翌日に資格を失う。組合員証が使えなくなる | 組合員証の返納。任意継続を選ぶなら20日以内に申出 |
| 長期給付(年金) | 掛金の払込みが終わる。記録と権利は残る | 組合員の番号と書類の保管。退職等年金給付は65歳で請求 |
| 福祉事業(福利厚生) | 施設の利用、貯金、貸付の新規が終わる | 貸付の残債の精算、貯金の払戻し |
資格の喪失そのものは、自治体が共済組合に届け出ます。本人が「脱退の届出」をするわけではありません。本人がするのは、上の表の右の列です。
手続き1:組合員証の返納
短期給付は、組合員の資格がある間の給付です(第53条)。退職の翌日に資格を失うので、組合員証(と被扶養者の証)は退職時に自治体の共済の担当に返します。退職の翌日以降に使うと、後から医療費の返還を求められます。
被扶養者の分も同時に返します。配偶者や子が被扶養者になっている場合、退職の翌日から被扶養者の資格もなくなります。被扶養者の健康保険をどうするか——任意継続で続けるか、国民健康保険に入るか、家族の勤務先の扶養に入るか——も、同時に決めます。
手続き2:任意継続の申出——退職の日から20日以内
短期給付を退職後も続けたい場合、任意継続組合員の制度があります。第144条の2第1項は、退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員であった者が、退職の日から起算して20日を経過する日までに申し出ることで、引き続き短期給付を受けられると定めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 要件 | 1年以上の組合員期間 |
| 期限 | 退職の日から起算して20日を経過する日まで |
| 期間 | 最長2年(第5項第1号) |
| 掛金 | 在職中の掛金に、自治体の負担金相当を加えた額を本人が負担(第2項)。前納可(第3項) |
| 注意 | 初回の掛金を払込期日までに払わないと、任意継続組合員にならなかったものとみなす(第4項) |
申出と初回の掛金の払込みの2つで成立します。申出だけして払込みを忘れると、不成立です。任意継続を選ぶかどうかの比べ方は退職後の健康保険、3つの選択肢に書いています。
手続き3:貸付の残債の精算
福祉事業として、組合は貸付を行っています(第112条)。在職中に住宅の貸付や一般の貸付を受けていて残債がある場合、退職で組合員でなくなるため、残債の扱いを決めます。
扱いは組合の定めによりますが、一般的には次の形です。
| 扱い | 内容 |
|---|---|
| 退職手当からの精算 | 退職手当の支給時に、残債を差し引いて精算する。退職手当の手取りが減る |
| 退職後の分割の継続 | 組合の定めにより、退職後も分割で返す形が認められる場合がある |
| 一括の返済 | 自己資金で一括して返す |
残債の額と、精算の方法を、退職前に共済組合で確かめてください。退職手当から差し引かれる場合、退職手当をあてにした資金計画の考え方で書いた資金の空白に直接効きます。退職手当の見込額から残債を引いた額が、実際に手元に入る額です。
手続き4:貯金の払戻し
組合が福祉事業として行う貯金(共済貯金)は、組合員の資格を前提にしています。退職で払戻しになります。払戻しの時期と方法は組合の定めによるので、共済組合の案内に従ってください。財形貯蓄は共済組合とは別の制度で、扱いが違います。
手続き5:長期給付の書類の保管
長期給付の記録は共済組合が持ち、退職で消えません。本人がすることは、将来の請求のために書類を保管することです。
| 保管するもの | 何に使うか |
|---|---|
| 組合員の番号 | 65歳での退職等年金給付の請求、記録の照会 |
| 共済組合から交付される書類 | 同上 |
| 基礎年金番号 | 転職先での厚生年金の資格取得、老齢厚生年金の請求 |
第88条により、1年以上の引き続く組合員期間があれば、退職後65歳で退職年金を受け取れます。請求先は共済組合です。転職先とは無関係なので、書類を捨てないでください。退職の前に、退職等年金給付の給付算定基礎額(付与額の累計)を制度の照会として聞いておくと、いま辞めた場合の年金の骨が見えます(職域加算と年金払い退職給付)。
掛金の最終月
第114条第1項は、掛金等を組合員の資格を取得した日の属する月から、喪失した日の属する月の前月まで徴収すると定めています。月末退職なら退職の月まで、月の途中の退職なら前月までが、最後の掛金です。詳しくは退職日と加入月のずれに注意するに書いています。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、共済の手続きで効いてくる点は3つです。
1. 貸付の残債は、退職手当の手取りに効く
退職前に額と精算の方法を確かめてください。退職手当の見込額から残債を引いた額が、手元に入る額です。
2. 任意継続は、申出と初回の掛金の払込みの2つで成立する
期限は退職の日から20日。払込みを忘れると不成立です。
3. 長期給付は、書類を保管するだけ
記録は共済組合が持ちます。組合員の番号と書類を、基礎年金番号と一緒に保管してください。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 期限 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 退職前 | 残債の額と精算の方法、任意継続の掛金の見込みを照会 | 退職日が決まったら | 共済組合 |
| 退職前 | 退職等年金給付の給付算定基礎額を照会(任意) | ── | 共済組合 |
| 退職時 | 組合員証と被扶養者の証の返納 | 退職日 | 自治体の共済の担当 |
| 退職時 | 貸付の残債の精算、貯金の払戻し | 組合の定めによる | 共済組合 |
| 退職の日から20日以内 | 任意継続の申出(選ぶ場合) | 20日(第144条の2) | 共済組合 |
| 払込期日まで | 任意継続の初回の掛金の払込み | 期日 | 共済組合の指定する方法 |
| 退職後 | 組合員の番号と書類を保管 | ── | 自分で |
| 65歳 | 退職等年金給付の請求 | ── | 共済組合 |
期限が明確なのは、任意継続の20日と初回の掛金の払込期日です。国民健康保険を選ぶ場合は、資格喪失後に速やかに市区町村で手続きをします。
誤解されやすい点
「共済の脱退は自分で届け出る」と思い込む
資格の喪失は自治体が共済組合に届け出ます。本人がするのは、組合員証の返納、任意継続の申出、精算です。
「貸付の残債は退職後もそのまま分割で返せる」と思い込む
組合の定めによります。退職手当から精算する形が多く、退職手当の手取りに効きます。
「任意継続は申出だけで成立する」と思い込む
初回の掛金の払込みが要ります。忘れると不成立です(第144条の2第4項)。
「共済の書類は退職したら要らない」と思い込む
65歳で退職等年金給付を請求するときに使います。保管してください。
まとめ
- 退職時の共済の手続きは、資格の喪失は自治体が届け出るため、本人がするのは組合員証の返納、任意継続の申出、貸付と貯金の精算、長期給付の書類の保管です
- 組合員証と被扶養者の証は退職時に返納します。退職の翌日から使えません(第53条)
- 任意継続は、退職の日から20日以内の申出と、初回の掛金の払込みの2つで成立します。払込みを忘れると不成立です(第144条の2)
- 貸付の残債は、退職手当から精算する形が多く、退職手当の手取りに効きます(第112条、組合の定め)。退職前に額と方法を確かめてください
- 長期給付の記録は残ります。組合員の番号と書類を保管し、退職等年金給付は65歳で共済組合に請求します(第88条)
- 掛金の最終月は、月末退職なら退職の月まで、途中退職なら前月までです(第114条)
よくある質問
共済の貸付の残債があります。退職手当からいくら引かれますか
残債の額と精算の方法は、共済組合の定めによります。福祉事業としての貸付(第112条)は組合員の資格を前提にしているので、退職で残債の扱いを決める必要があり、退職手当の支給時に差し引いて精算する形が多く見られます。退職手当の見込額から残債を引いた額が、実際に手元に入る額です。退職の意思を伝えなくても、共済組合に「残債の額と、退職時の精算の方法」を制度の照会として聞けます。退職後も分割で返す形が認められる組合もあるので、精算の方法の選択肢も併せて確かめてください。資金計画への入れ方は退職手当をあてにした資金計画の考え方に書いています。
被扶養者の配偶者と子の健康保険は、退職後どうなりますか
退職の翌日に、被扶養者の資格も同時になくなります。組合員証と一緒に被扶養者の証も返納します。その後の健康保険は、あなたが任意継続を選べば、被扶養者も任意継続の側で続けられます。国民健康保険を選ぶ場合は、配偶者と子も1人ずつ国民健康保険に加入し、世帯で保険料が計算されます。配偶者が勤務先の健康保険に入っているなら、あなたと子がその被扶養者になる道もあります。扶養している家族が多い方は、任意継続が有利になりやすいですが、額は人によるので、共済組合と市区町村の両方で見込みを聞いて比べてください。選択肢の比べ方は退職後の健康保険、3つの選択肢に書いています。
退職の翌日に転職先に入社します。共済の手続きで何か要りますか
本人がすることは、組合員証の返納と、貸付・貯金の精算、長期給付の書類の保管だけです。健康保険は退職の翌日から転職先の健康保険に切り替わるので、任意継続の申出は要りません。年金も、転職先が厚生年金の資格取得を届け出るので、基礎年金番号を伝えれば足ります。共済組合に対して本人が届け出る「脱退」の手続きはなく、資格の喪失は自治体が届け出ます。貸付の残債がある場合だけ、精算の方法を退職前に確かめてください。退職等年金給付の請求は65歳のときなので、組合員の番号と書類を保管しておけば、それまでは何も要りません。