制度とお金 / 共済
家族の扶養に入る場合
退職後の健康保険の選択肢は、任意継続、国民健康保険、転職先の健康保険の3つに、配偶者や親の健康保険の被扶養者になるという4つ目が加わります。この道だけは、本人の保険料がかかりません。
ただし、被扶養者になれるかどうかは家族の勤務先の健康保険が認定するもので、収入の要件があります。退職手当と、失業者の退職手当の扱いで、認定されるかどうかが分かれることがあります。
この記事では、退職した本人が家族の被扶養者になる場合の要件と手続きを、健康保険法第3条第7項と、日本年金機構が示す認定の基準で整理します。認定は家族の勤務先の健康保険(健康保険組合、協会けんぽ、共済組合)が行い、基準の運用は保険者ごとに違うので、この記事は枠組みです。家族の勤務先を通じて、要件と必要な書類を確かめてください。選択肢の全体は退職後の健康保険、3つの選択肢に書いています。
被扶養者の範囲——健康保険法第3条第7項
第3条第7項は、被扶養者を次のように定めています。
| 号 | 範囲 | 同居の要件 |
|---|---|---|
| 第1号 | 被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主としてその被保険者により生計を維持するもの | 不要 |
| 第2号 | 被保険者の三親等内の親族で第1号以外のもので、同一の世帯に属し、主としてその被保険者により生計を維持するもの | 必要 |
| 第3号 | 事実婚の配偶者の父母・子で、同一の世帯に属し、生計を維持するもの | 必要 |
退職する本人から見ると、配偶者の被扶養者になる場合は第1号(配偶者)、親の被扶養者になる場合も第1号(子)です。どちらも同居は要件ではなく、「主としてその被保険者により生計を維持する」かどうかが要件です。
家族が公務員で共済組合の組合員である場合も、共済の被扶養者の仕組みは同じ考え方で、認定は共済組合が行います。
収入の要件——日本年金機構が示す基準
「主として生計を維持する」の判断は、日本年金機構が事業主向けに示している基準が実務の目安です。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 年間収入 | 130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満) |
| 同居の場合 | 収入が被保険者の収入の半分未満 |
| 別居の場合 | 収入が被保険者からの仕送り額未満 |
| 収入に含むもの | 給与のほか、雇用保険の失業等給付、公的年金、傷病手当金、出産手当金など |
| 失業等給付の受給者 | 日額3,611円以下であれば要件を満たす |
| 届出の期限 | 事実の発生から5日以内(被保険者が事業主を通じて) |
「年間収入」は、過去の収入ではなく、被扶養者になる時点から先の見込みで判断します。ここが退職者に効く点です。在職中の給与が高くても、退職後に収入の見込みがなければ、見込みの年間収入は少ないと判断されます。
退職者に特有の論点——退職手当と失業者の退職手当
1. 退職手当の扱い
退職手当は一時金で、退職後の継続的な収入ではありません。認定の時点から先の年間収入の見込みに含めるかどうかは、保険者の運用によります。一時金として含めない扱いが一般的ですが、家族の勤務先の健康保険に、退職手当の額を伝えたうえで扱いを確かめてください。
2. 失業者の退職手当の扱い
雇用保険の失業等給付は収入に含まれ、日額3,611円以下なら要件を満たします。公務員には雇用保険がなく、代わりに失業者の退職手当の仕組みがあります。失業者の退職手当を受ける場合、その日額を雇用保険の失業等給付と同じように扱う保険者が多いので、日額が3,612円以上なら、受給している間は被扶養者になれないと考えて、家族の勤務先に確かめてください。受給が終われば、その時点から被扶養者になれます。
3. 退職後に収入が出た場合
被扶養者になった後、転職先に入社して健康保険の被保険者になれば、その日に被扶養者ではなくなります。転職先に入らない形で収入が出て年間収入の見込みが基準を超えた場合も、被扶養者から外れる届出が要ります。外れる届出を怠ると、後から医療費の返還を求められることがあります。
国民年金——配偶者の被扶養者なら第3号被保険者
配偶者の健康保険の被扶養者になる場合、年金も連動します。国民年金法第7条第1項第3号は、第2号被保険者(厚生年金の被保険者)の配偶者で、主として第2号被保険者の収入により生計を維持する20歳以上60歳未満の者を、第3号被保険者と定めています。
| 誰の被扶養者か | 健康保険 | 国民年金 |
|---|---|---|
| 配偶者(厚生年金の被保険者) | 被扶養者。保険料なし | 第3号被保険者。保険料なし |
| 親(厚生年金の被保険者) | 被扶養者。保険料なし | 第1号被保険者。自分で国民年金の保険料を納める |
親の被扶養者になる場合は、健康保険の保険料はかかりませんが、国民年金の保険料は自分で納めます。第3号は配偶者に限られます。国民年金の切替えは退職したら国民年金はどうなるかに書いています。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、家族の扶養で効いてくる点は3つです。
1. 空白の期間に収入がないなら、最も負担の少ない道
任意継続にも国民健康保険にも保険料がかかりますが、被扶養者は本人の保険料がかかりません。家族の保険料も増えません。
2. 転職先に入った日に、自動的に外れる
転職先の健康保険の被保険者になれば、被扶養者ではなくなります。家族の勤務先を通じて、外れる届出を5日以内にします。
3. 失業者の退職手当を受けるなら、日額で分かれる
日額が基準を超えるなら、受給している間は被扶養者になれないことが多いので、その間は任意継続か国民健康保険です。受給の期間が短いなら、国民健康保険で1〜2か月をつなぎ、受給が終わってから被扶養者になる、という形もあります。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 期限 | 誰が |
|---|---|---|---|
| 退職前 | 家族の勤務先の健康保険に、要件・必要書類・退職手当の扱いを照会 | 退職日が決まったら | 家族 |
| 退職時 | 共済の資格喪失証明書、退職証明書などを受け取る | 退職日 | 本人 |
| 退職後 | 被扶養者(異動)届を家族の勤務先を通じて提出 | 事実の発生から5日以内 | 家族(事業主経由) |
| 退職後 | 配偶者の被扶養者なら、国民年金第3号の届出(健康保険の届出と同時に) | 同上 | 家族(事業主経由) |
| 認定まで | 認定の前に受診した場合は全額を負担し、後から療養費を請求 | ── | 本人 |
| 転職先に入ったとき | 被扶養者から外れる届出 | 5日以内 | 家族(事業主経由) |
認定の結果が出るまで日数がかかるので、退職の直後に受診の予定がある方は、その間の扱いを家族の勤務先に確かめてください。
誤解されやすい点
「在職中の年収が高いと扶養に入れない」と思い込む
認定はこれから先の年間収入の見込みで判断します。退職後の収入の見込みがなければ、要件を満たすことがあります。
「退職手当があるから入れない」と思い込む
退職手当は一時金で、扱いは保険者の運用によります。額を伝えて、家族の勤務先の健康保険に確かめてください。
「親の扶養に入れば年金も払わなくてよい」と思い込む
第3号被保険者は配偶者に限られます(国民年金法第7条第1項第3号)。親の被扶養者は第1号で、国民年金の保険料は自分で納めます。
「一度入れば転職先が決まるまで何もしなくてよい」と思い込む
収入の見込みが基準を超えた時点、転職先の健康保険に入った時点で、外れる届出が要ります。怠ると医療費の返還を求められることがあります。
まとめ
- 退職した本人は、配偶者または親の健康保険の被扶養者になれることがあります。要件は主としてその被保険者により生計を維持することで、同居は要件ではありません(健康保険法第3条第7項第1号)
- 実務の基準は、年間収入130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満は150万円未満)、同居なら被保険者の収入の半分未満、別居なら仕送り額未満です(日本年金機構)
- 年間収入は、これから先の見込みで判断します。在職中の給与の高さは直接は関係ありません
- 退職手当の扱いは保険者の運用によります。失業者の退職手当は、日額が3,612円以上なら受給の間は被扶養者になれない扱いが多いので、家族の勤務先に確かめてください
- 配偶者の被扶養者なら国民年金は第3号被保険者で保険料なし。親の被扶養者なら第1号で自分で納めます(国民年金法第7条第1項第3号)
- 届出は事実の発生から5日以内に、家族の勤務先を通じて。転職先の健康保険に入ったら、外れる届出も5日以内です
よくある質問
退職の翌月から、失業者の退職手当を受けます。配偶者の扶養に入れますか
日額によります。日本年金機構の基準では、雇用保険の失業等給付は年間収入に含まれ、日額3,611円以下なら要件を満たします。公務員の失業者の退職手当は雇用保険の給付ではありませんが、同じ扱いをする保険者が多いので、日額が3,612円以上なら受給している間は被扶養者になれないと考えて、配偶者の勤務先の健康保険に日額を伝えて確かめてください。受給の期間が終われば、その時点から被扶養者になれます。受給の間は、任意継続か国民健康保険でつなぎます。なお、失業者の退職手当は、退職手当の額が雇用保険の基本手当の相当額に満たない場合にその差額を受ける仕組みなので、そもそも対象になるかどうかを先に確かめてください(失業者の退職手当)。
親の扶養に入る場合、国民年金はどうなりますか
自分で第1号被保険者として納めます。国民年金法第7条第1項第3号の第3号被保険者は、第2号被保険者の配偶者に限られます。親の被扶養者になっても、年金の面では配偶者ではないので、第3号にはなりません。退職の翌日から国民年金の第1号被保険者になり、市区町村で種別の変更の届出をして、保険料を自分で納めます。収入がない期間は、保険料の免除や納付猶予の申請ができます。健康保険の保険料はかからず、国民年金の保険料はかかる、という組合せです。切替えの手続きは退職したら国民年金はどうなるかに書いています。
扶養に入った後、転職先が決まりました。何をすればよいですか
転職先の健康保険の被保険者になった日に、被扶養者ではなくなります。家族の勤務先を通じて、被扶養者から外れる届出を事実の発生から5日以内にしてもらってください。転職先が資格取得の届出をしても、家族の勤務先の健康保険には自動では伝わりません。外れる届出を怠ると、被扶養者の証で受診した分の医療費の返還を求められることがあります。配偶者の被扶養者で国民年金の第3号だった方は、転職先で厚生年金の第2号被保険者になるので、第3号から外れる手続きも家族の勤務先を通じて同時にします。転職先の入社日が決まったら、その日付を家族に伝えて、届出を頼んでおくと滞りません。被扶養者の証は、家族の勤務先を通じて返します。