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制度とお金 / 給与・手当

給与改定(人事院勧告・人事委員会勧告)の流れ

人事院が給与の引上げを勧告したという知らせを見ても、その日から自分の給与明細が変わるわけではありません。国と地方では決める主体が異なり、勧告の後にも法律や条例の改正、給与計算への反映という段階があります。

この記事では、人事院勧告と人事委員会勧告の役割、改定が支給につながるまでの流れ、在職中や退職前後に確認する点を整理します。平均の改定率から自分の増減額を決めるのではなく、自分に適用される表と支給条件で確かめることが出発点です。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。年度ごとの改定内容や支給時期は、所属の給与担当に確認してください。

国の給与は、人事院の勧告だけでは改定されない

国家公務員法第28条は、給与などの勤務条件の基礎事項を社会一般の情勢に適応させる仕組みと、人事院による報告・勧告を定めています。人事院は毎年、国と民間の給与を調べ、条件の違いをそろえて比較し、その結果などを踏まえて給与勧告を行います。

人事院の令和8年8月の説明資料では、月例給について、常勤職員の4月分の給与を比較する手順が示されています。役職段階、勤務地域、学歴、年齢などの条件をそろえて比べるため、民間全体の単純な平均額と国の平均額をそのまま引き算する仕組みではありません。特別給についても、民間の支給実績を調べて比較します。

勧告の後は、内閣が取扱いを決め、法律改正が必要な事項については法案の提出、国会での審議・成立へと進みます。その後に改正法や関係する規則の内容に従って支給します。勧告された案、政府の取扱方針、成立した法律を、同じ段階の情報として扱わないことが大切です。

令和8年についても、人事院は当年の報告・勧告のページを公開しています。ただし、この記事は個別の引上げ額を案内するものではありません。自分の給与への反映を調べるときは、報道で見た勧告の概要に加え、成立・公布された法令と所属からの案内まで確認します。

地方では、人事委員会の報告・勧告と条例を読む

地方公務員法第26条は、人事委員会が少なくとも毎年1回、給料表が適当かについて議会と長へ同時に報告し、必要に応じて勧告する仕組みを定めています。国に人事院があるのと同じように、地方の人事委員会にも給与について調査・報告等を行う役割があります。ただし、全国すべての自治体に同じ人事委員会があるわけではありません。

所属の自治体に人事委員会がある場合は、その委員会の当年の報告と勧告を確認します。人事委員会を置いていない自治体では、自分の自治体の給与改定方針や条例改正案を確認します。都道府県の勧告が出たから、その内容が市町村の職員へ自動的に適用されるとは言えません。

地方公務員法第24条は、国、他の自治体、民間の給与などを考慮することと、給与その他の勤務条件を条例で定めることを規定しています。同法第25条も、給与は給与条例に基づいて支給するとしています。最終的に自分の給与を確かめる根拠は、所属の条例とその適用関係です。

東京都人事委員会の案内では、勧告を受け、知事が条例改正案を提案し、議会で可決されると給与改定を行う流れを示しています。この仕組みの説明を参考にしつつ、所属については、委員会の勧告、長の提案、議会の議決、公布された条例の順で確認します。

勧告から給与明細まで、確認する資料を切り替える

段階国で見る資料地方で見る資料
調査と報告・勧告人事院の当年の報告・勧告人事委員会の報告・勧告など
改定方針と提案政府の取扱方針と法律案自治体の方針と条例改正案
制度の確定成立・公布された改正法と規則議決・公布された改正条例と規則
個人への反映所属の給与計算の案内所属の給与計算の案内

資料を保存するときは、年度と段階をメモしておくと混同を防げます。勧告の概要が分かりやすくても、それだけで後の改正内容を確定できるとは限りません。反対に、現行の例規集だけを見ると、いつからの給与へ適用するかが分かりにくい場合があります。改正条例の附則や経過措置も読みます。

自分の給料表の読み方は、給料表の級と号給に整理しています。改定前と改定後を比較するときも、同じ給料表、同じ級、同じ号給をそろえることが必要です。

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平均改定率を、そのまま自分の給料に掛けない

給与改定の説明には、全体の平均の改定率や、民間との較差が示されることがあります。しかし、全員の給料月額を同じ割合で改めるとは限りません。どの級や号給をどう変えるか、手当をどう見直すかによって、個人への影響は変わります。

自分の給料の変化を確認するなら、適用される給料表、級と号給、改定前後の同じ欄の金額を見ます。改定と同じ時期に昇給や昇格がある場合は、表の改定による変化と、自分の位置が変わることによる変化を分けて質問します。両方が重なっている明細だけを見ても、改定の影響だけを取り出せません。

給料月額に連動する手当がある場合は、その算定基礎への影響も確認します。一方で、すべての手当が同じ割合で動くわけではありません。扶養や住居、通勤などに関する手当を見直す改定なら、対象者、開始時期、経過措置を別に確認します。改定の概要を「基本給が上がる話」だけに縮めないことが大切です。

年度をまたぐ制度変更もあります。当年の月例給の改定と、翌年度から始まる手当の見直しが同じ資料に載っているときは、実施時期ごとに分けます。将来の制度案が示されていても、その段階で自分の確定した給与条件として転職先と比較しないようにします。

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適用日、施行日、実際の支給日を分ける

改正法や改正条例を読むときは、公布した日だけでなく、いつ施行され、どの日からの給与に適用されるかを確認します。施行日と適用する日を別に定め、過去の支給分について差額を精算する場合があります。ただし、毎年すべての項目が同じ日から遡って改定されると決まっているわけではありません。

たとえば、給料表はある月から、手当の変更は翌年度からというように、項目ごとに時期が違うことがあります。本文の施行日だけで判断せず、附則の各項と適用関係を確かめます。読みにくいときは、給与担当に「この改定で私に関係する項目と、それぞれの適用日を示してください」と尋ねます。

実際に差額が振り込まれる日は、適用日と同じではありません。改定後の計算と事務処理を経て支給されるため、所属の案内を確認します。通常の給与と同時なのか、別に支給されるのか、明細ではどの名称になるかを聞いておくと照合しやすくなります。

差額が支給されても、その額を翌月以降も毎月受け取る金額と考えないようにします。過去の複数月分の精算と、今後の通常月の給与は別です。給与改定後の生活費を考えるときは、一時的な差額支給を除いた通常月の見込みを給与担当に確認します。

退職や転職を予定しているときの確認事項

退職前後に改定が行われる場合は、退職した日と、改定の適用期間を伝えて照会します。改定前に支給済みの給与、期末・勤勉手当、退職手当への影響はそれぞれ異なる規定により確認する必要があります。「支給日に在職していないからすべて対象外」「在職した月があればすべて精算される」と決めつけないでください。

退職後にも精算や通知がある可能性を踏まえ、連絡先、振込先、必要な届出を給与担当に尋ねます。担当が異なる場合は、給与の差額と退職手当の再計算をそれぞれどこへ確認するかも把握します。退職後に人事システムへ入れなくなるなら、保存してよい本人用の明細や案内を事前に確認します。

転職先の給与を比べる際も、初回の支給額だけでは判断できません。入社月の計算や賞与の対象期間によって、通常月や通年の条件と異なることがあります。現職の差額精算と、転職先の初年度の支給条件を別の欄に置きます。税や社会保険への影響は、一般論だけで決めず、給与担当、共済組合、税の窓口などに確認してください。

仕事の経験の整理については、LINEで短く聞くこともできます。制度の個別の適用は所属の給与担当へ確認し、仕事選びの相談とは役割を分けて進めます。

よくある質問

人事院勧告が出たら、地方公務員も同じ額に改定されますか

自動的に同じ額にはなりません。地方公務員の給与は条例で定めます。国の勧告に加え、所属に関係する人事委員会の報告・勧告、自治体の改定方針、成立した改正条例を確認してください。自分の給料表と任用区分への適用も別に確かめます。

平均改定率を現在の給料に掛ければ見込みが出ますか

個人の確定した見込みには使えません。級や号給ごとに改定内容が異なる場合があり、手当も一律に動くとは限らないためです。改定前後の同じ給料表の欄と、対象になる手当を給与担当に確認します。

退職後に給与改定があった場合、確認は不要ですか

不要とは限りません。退職日と改定の適用期間によって、支給済み給与などの精算を確認する必要があります。給与、賞与、退職手当を分けて担当へ照会し、退職後の連絡方法も確認してください。

出典

  1. 国家公務員法 第28条
  2. 地方公務員法 第24条・第25条・第26条
  3. 人事院 給与勧告の仕組み(令和8年8月)
  4. 人事院 令和8年人事院勧告
  5. 東京都人事委員会 給与決定と算出の仕組み

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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