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寒冷地手当とは
11月の給与明細に、夏の間はなかった手当の欄が増えることがあります。北海道や東北、北陸、山間部などに勤める職員に冬の間だけ付く寒冷地手当です。毎年のことなので、いつからいつまで、どういう基準で付いているのかを改めて確かめる機会は少ないかもしれません。
この記事では、寒冷地手当の根拠、支給される月、額の決まり方、自治体での定め方、退職や転職の時期とどう関係するかを整理します。
地方公務員の寒冷地手当は、各自治体が条例と規則で定めます。支給する地域も額も国と同じとは限りません。この記事では特定の自治体の地域区分や額を示しません。自分の扱いは、所属の給与条例・寒冷地手当の条例や規則と人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
寒冷地手当の根拠——地方自治法第204条と給与条例
地方自治法第204条第2項は、条例で支給できる手当の1つとして寒冷地手当を挙げています。同条第3項で、手当の額と支給方法は条例で定めることとされています。
地方公務員法第25条第1項は、給与は条例にもとづいて支給しなければならず、条例にもとづかずにはいかなる金銭も支給してはならないとしています。寒冷地手当も、条例で定めた地域・額・支給方法の範囲でだけ支給されます。
地方公務員法第24条第2項は、給与は生計費や国・他の地方公共団体の職員、民間事業の従事者の給与などを考慮して定めるとしています。自治体の寒冷地手当は、国の制度を参考にしつつ、地域の事情にあわせて定められているのが一般的です。
国の定め——寒冷地手当法第1条
国家公務員の寒冷地手当は、「国家公務員の寒冷地手当に関する法律」(以下、寒冷地手当法)が定めています。第1条の要点は次のとおりです。
| 項目 | 条文の内容 |
|---|---|
| 支給される時期 | 毎年11月から翌年3月までの各月の初日(基準日)に要件を満たす職員 |
| 支給される職員 | 別表に掲げる地域に在勤する職員、または寒冷・積雪の度を考慮して権衡上必要と認められる官署に在勤する職員 |
| 対象の勤務形態 | 常時勤務に服する職員と定年前再任用短時間勤務職員に限る |
| 予算との関係 | 給与法に規定する給与のほか、予算の範囲内で支給する |
ポイントは、「どこに住んでいるか」ではなく「どこに在勤しているか」で決まることです。第1条第1号は「別表に掲げる地域に在勤する職員」としています。また、11月から3月までの5つの基準日ごとに要件を見る作りになっています。
額の決まり方——地域の区分と世帯の区分
寒冷地手当法第2条第1項は、額を地域の区分と世帯等の区分の組み合わせで定めています。地域は一級地から四級地までの4区分、世帯等は次の3区分です。
| 世帯等の区分 | 意味 |
|---|---|
| 世帯主である職員のうち扶養親族のある職員 | 扶養親族を有し、主としてその収入で世帯の生計を支えている職員 |
| その他の世帯主である職員 | 扶養親族はいないが、一戸を構えている、または下宿・寮の一部屋を専用している職員 |
| その他の職員 | 上のいずれにも当たらない職員 |
世帯主の意味は寒冷地手当支給規則第2条に書かれています。条文の表では、たとえば一級地の扶養親族のある世帯主である職員は29,400円、四級地のその他の職員は8,200円とされています。これは国家公務員の、1つの基準日あたりの額です。
そのほか、条文には次のような定めがあります。
- 権衡上必要と認められる官署に在勤する職員の額は、四級地の額による(第2条第2項)
- 停職、一定の休職、育児休業、自己啓発等休業などの職員は額が零になる(第2条第3項第3号、支給規則第4条)
- 基準日の後、その月のうちに休職などの状態が変わった場合は日割りで計算する(第2条第4項、支給規則第5条)
支給日は、基準日の属する月の給与の支給日とされています(支給規則第6条第1項)。つまり国では、11月から3月までの毎月の給与と一緒に支払われる形です。
なお、時間外勤務手当などの計算に使う勤務1時間当たりの給与額は、給与法第19条で俸給の月額と地域手当・広域異動手当・研究員調整手当の月額から計算するとされています。寒冷地手当はここに入っていません。時間外勤務手当の計算は時間外勤務手当の記事にまとめています。
自治体での定め方
自治体の寒冷地手当は、条例と規則で定められています。どの地域を対象にするか、区分と額をどうするか、そもそも寒冷地手当を置くかどうかは自治体ごとに異なります。国の別表に載っている地域にある自治体でも、国と同じ区分・額とは限りません。
また、地方公務員法第24条の考え方にそって、人事委員会の勧告などをきっかけに見直されることがあります。過去の明細の額が、今後も同じとは限りません。
転職するとどうなるか
1. 民間には法律上の寒冷地手当はない
民間企業には、寒冷地手当法にあたる法律上の定めはありません。「寒冷地手当」「燃料手当」「冬季手当」などを置くかどうか、いくら、いつ払うかは会社の賃金規程で決まります。同じ地域に本社がある会社でも、置いていないことがあります。
2. 年間の総額で比べるときは、冬の月を外して考える
寒冷地手当は冬の5か月だけ付く手当です。11月から3月までの明細を基準にすると、月の給与を高めに見積もることになります。いまの給与と求人票を比べるときは、寒冷地手当を外した月の額で比べ、寒冷地手当は年間の別枠として足し引きしてください。
3. 転職先の勤務地で変わる
国の制度は在勤地で決まります。民間の会社に同じような手当があっても、本社勤務と支店勤務で扱いが違う、転勤で外れる、といった作りになっていることがあります。勤務地が変わる可能性のある会社なら、手当の条件も確かめてください。
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手続きと確認のしかた
寒冷地手当は、在勤地と世帯の状況にもとづいて支給されます。確認するとよいのは次の点です。
- 所属の寒冷地手当の条例・規則:対象地域と区分、世帯等の区分ごとの額、支給する月
- 世帯の区分の届出:扶養親族の有無や、一戸を構えているかどうかの届出が必要か。扶養手当の届出と連動しているか
- 基準日と退職日の関係:基準日に在職していれば、その月の分が支払われるのか
国の規則では、基準日から支給日の前日までの間に離職した職員には、その基準日に係る寒冷地手当を離職の際に支給するとされています(支給規則第6条第2項)。国の作りでいえば、11月1日などの基準日に在職しているかどうかで、その月の分が付くかが決まります。自治体の扱いは条例・規則によるので、退職日を考えるときは人事担当課で確かめてください。扶養の届出については扶養手当の記事にまとめています。
誤解されやすい点
「寒い地域に住んでいれば付く」と思い込む
国の条文は、別表の地域に在勤する職員としています(寒冷地手当法第1条第1号)。住所ではなく勤務する官署の所在で決まる作りです。自治体の扱いは条例で確かめてください。
「冬の間はずっと同じ額が付く」と思い込む
国では、11月から3月までの各月の初日を基準日とし、その日の状況で額が決まります(第1条・第2条)。基準日の後に休職などで状態が変わると、日割りになることがあります(第2条第4項)。育児休業中などは零になります(支給規則第4条)。
「寒冷地手当も時間外の単価に入る」と思い込む
国の条文では、勤務1時間当たりの給与額の計算に寒冷地手当は入っていません(給与法第19条)。
「国の別表にある地域なら、自治体も同じ額」と思い込む
自治体の手当は条例と規則で定めたものだけが支給されます(地方公務員法第25条第1項)。国と同じとは限りません。
まとめ
- 寒冷地手当は、地方自治法第204条第2項にもとづき条例で支給できる手当の1つ。地域・額・支給方法は条例で定める(同条第3項、地方公務員法第25条第1項)
- 国では、11月から3月までの各月の初日(基準日)に、別表の地域などに在勤する職員に支給する(寒冷地手当法第1条)
- 額は、一級地から四級地までの地域の区分と、扶養親族の有無などの世帯等の区分で決まる(第2条第1項、支給規則第2条)
- 国では、基準日の属する月の給与の支給日に支払われる。時間外の単価の土台には入らない(支給規則第6条、給与法第19条)
- 民間には法律上の定めはない。比べるときは冬の手当を外した月額で比べ、退職日は基準日との関係を確かめる
よくある質問
寒冷地手当は会計年度任用職員にも付きますか
会計年度任用職員の給与や報酬の扱いは、各自治体の条例で定められています。国の寒冷地手当法は、常時勤務に服する職員と定年前再任用短時間勤務職員に限って支給するとしています(第1条)。自治体で会計年度任用職員に寒冷地手当やこれに相当する額を支給するかは条例・規則によるので、任用通知書と所属の人事担当で確かめてください。会計年度任用職員の制度は会計年度任用職員の記事にまとめています。
寒冷地手当は退職手当の計算に入りますか
一般的には、退職手当は給料月額をもとに計算されるので、寒冷地手当は計算の土台に入らないのが一般的な取扱いです。計算の土台となる額や加算の扱いは、各自治体の退職手当条例で定められています。自分の場合は、退職手当条例と人事担当課で確かめてください。退職手当の計算は退職手当の基本額の記事にまとめています。
寒冷地手当は税金の対象になりますか
一般的には、寒冷地手当も給与の一部として、所得税の源泉徴収の対象になります。共済の掛金の計算にどう入るかは、所属の共済組合の案内で確かめてください。具体的な税額は扶養の状況などで変わるので、明細と税務署の案内で確認するのが確実です。