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特殊勤務手当とは|どんな業務に付くか
災害の現場で堤防を見回った日、用地の交渉に出た日、感染症の対応にあたった日。明細の手当欄に、数百円から数千円の小さな額が並んでいることがあります。これが特殊勤務手当です。1回ごとの額が小さいので、何の業務に付いた手当なのかを意識しないまま過ぎていることも多いはずです。
この記事では、特殊勤務手当の根拠、どんな業務に付くのか、額の決まり方、自治体での定め方、転職したときにどう扱われるかを整理します。
地方公務員の特殊勤務手当は、各自治体が条例と規則で定めます。種類も額も国と同じとは限りません。この記事では特定の自治体の手当の種類や額を示しません。自分の扱いは、所属の給与条例・特殊勤務手当の条例や規則と人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
特殊勤務手当の根拠——地方自治法第204条と給与条例
地方自治法第204条第2項は、条例で支給できる手当の1つとして特殊勤務手当を挙げています。同条第3項で、手当の額と支給方法は条例で定めることとされています。
地方公務員法第25条第1項は、給与は条例にもとづいて支給しなければならず、条例にもとづかずにはいかなる金銭も支給してはならないとしています。同条第3項第5号で、地方自治法第204条第2項の手当を支給する場合は、その手当に関する事項を給与条例に定めるとされています。特殊勤務手当も、条例に書かれていない業務には支給できない、ということです。
あわせて地方公務員法第24条は、第1項で給与は職務と責任に応じたものでなければならないとし、第2項で国や他の地方公共団体の職員、民間事業の従事者の給与などを考慮して定めるとしています。特殊勤務手当の種類や額を自治体が見直すとき、この考え方が土台になります。
国の定義——給与法第13条
国家公務員の特殊勤務手当は、給与法第13条第1項で次のように定められています。
「著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で、給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を俸給で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には、その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する。」
この条文から読み取れる要件は3つです。
| 要件 | 意味 |
|---|---|
| 著しく特殊な勤務であること | 危険・不快・不健康・困難などの性質が、通常の勤務と比べて著しいこと |
| 給与上特別の考慮が必要であること | その特殊性に給与で報いる必要があること |
| 俸給で考慮するのが適当でないこと | 職務の級や俸給表で織り込むのではなく、勤務ごとに手当で報いるのが合うこと |
3つ目の要件があるので、特殊勤務手当はその勤務に従事したときだけ付くのが基本の形になります。同条第2項は、種類、支給される職員の範囲、支給額などを人事院規則で定めるとしています。
どんな業務に付くか——人事院規則9-30第2条
人事院規則9-30第2条は、国の特殊勤務手当の種類を28に分けて列挙しています。主なものを性質ごとにまとめると次のとおりです。
| 性質 | 規則に挙げられている手当の例 |
|---|---|
| 高所・坑内・水上など危険な場所での作業 | 高所作業手当、坑内作業手当、水上等作業手当、山上等作業手当、道路上作業手当 |
| 危険物・有害物の取扱い | 爆発物取扱等作業手当、有害物取扱手当、放射線取扱手当 |
| 感染症・遺体などに関わる作業 | 防疫等作業手当、死体処理手当 |
| 災害への対応 | 災害応急作業等手当 |
| 夜間の特殊な業務 | 夜間特殊業務手当、夜間看護等手当 |
| 困難な交渉・取締り | 用地交渉等手当、犯則取締等手当 |
自治体の仕事に近いものを、条文で確かめておきます。
災害応急作業等手当(第19条) 異常な自然現象で重大な災害が発生し、または発生するおそれがある河川の堤防等、通行が禁止された区間の道路などの現場で行う巡回監視や応急作業、災害状況の調査に従事したときに支給するとされています。
用地交渉等手当(第27条の2) 道路、ダム、都市公園などの事業に必要な土地の取得の交渉や、損失の補償に係る交渉のうち、人事院が困難であると認めるものに従事したときに支給するとされています。
防疫等作業手当(第12条) 感染症の患者を入院させる病棟などで、病原体に汚染されている区域での看護や物件の処理作業に従事したときなどに支給するとされています。
額の決まり方——1日単位・1回単位が基本
国の規則は、手当ごとに支給額を定めています。たとえば高所作業手当(第3条第2項)は、一定の作業について作業に従事した日1日につき220円、地上または水面上20メートル以上の箇所で行われたときは320円とされています。このように、従事した日数や回数に応じて付く作りの手当が多く並んでいます。
支給の記録として、各庁の長は特殊勤務実績簿と特殊勤務手当整理簿を作成し、保管しなければならないとされています(第34条)。従事した事実を記録し、それにもとづいて支給する仕組みです。
もう1つ押さえておきたいのは、他の手当の計算の土台に入らないことです。国の給与法第19条は、時間外勤務手当などの計算に使う勤務1時間当たりの給与額を、俸給の月額と地域手当・広域異動手当・研究員調整手当の月額から計算するとしています。特殊勤務手当はここに入っていません。時間外勤務手当の計算は時間外勤務手当の記事にまとめています。
なお、給与法第19条の8第1項は、第13条の規定を指定職俸給表の職員には適用しないとしています。
自治体での定め方
自治体の特殊勤務手当の種類と額は、条例と規則で定められています。給与条例の中に置くか、別の条例や規則に置くかも自治体ごとに異なります。国の規則にある種類と同じとは限りません。国の規則は国の機関の業務を前提にしているので、税の徴収、福祉、清掃、保健など自治体の業務に合わせた種類を独自に置いているかどうかは、所属の条例・規則で確かめる必要があります。
また、特殊勤務手当は、地方公務員法第24条の考え方にそって種類や額が見直されることがあります。いま付いている手当が、来年度も同じ条件で付くとは限りません。
転職するとどうなるか
1. 民間には法律上の特殊勤務手当はない
民間企業には、給与法第13条にあたる法律上の定めはありません。危険作業手当、資格手当、現場手当などを置くかどうか、いくら払うかは、会社の賃金規程で決まります。
2. 時間外の単価の土台が変わることがある
民間の残業代は、労働基準法第37条の割増率で計算されます。同条第5項は、割増賃金の基礎となる賃金に家族手当、通勤手当などを入れないとしていますが、それ以外の手当をどう扱うかは、会社の賃金の組み立てと規程によります。作業に付く手当がある会社に入るなら、その手当が残業代の土台に入るかどうかも確かめてください。
3. 業務に付く手当は、業務が変われば無くなる
特殊勤務手当は、特定の業務に従事したときに付く手当です。転職して業務が変われば、当然ながら付かなくなります。いまの明細の合計から比べるときは、特殊勤務手当を外した額で比べてください。
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手続きと確認のしかた
特殊勤務手当は、従事した実績にもとづいて支給されるのが一般的です。確認するとよいのは次の点です。
- 所属の特殊勤務手当の条例・規則:自分の業務にどの種類の手当が付くか、1日・1回あたりの額
- 実績の記録:従事した日や回数をどう記録し、誰が確認するか
- 支給月:実績をどの月の給与で支払うか。とくに退職する月の実績がいつ支払われるか
退職する月に従事した分がどの月に支払われるかは、退職の時期を考えるときに確かめておくと安心です。
誤解されやすい点
「特殊勤務手当は危険な現場の職員だけのもの」と思い込む
国の条文は、危険な勤務だけでなく、不快、不健康、困難な勤務も対象にしています(給与法第13条第1項)。用地交渉等手当のように、交渉の困難さに着目した手当もあります(人事院規則9-30第27条の2)。
「国にある手当は自治体にもある」と思い込む
自治体の手当は、条例と規則で定めたものだけが支給されます(地方公務員法第25条第1項)。国の種類と同じとは限りません。
「特殊勤務手当も時間外の単価に入る」と思い込む
国の条文では、勤務1時間当たりの給与額の計算に特殊勤務手当は入っていません(給与法第19条)。
まとめ
- 特殊勤務手当は、地方自治法第204条第2項にもとづき条例で支給できる手当の1つ。条例に書かれていない業務には支給できない(地方公務員法第25条第1項)
- 国では、著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で、俸給で考慮するのが適当でないものに付く(給与法第13条)
- 国の種類は人事院規則9-30第2条に28種類。災害応急作業等手当、用地交渉等手当、防疫等作業手当などがある
- 額は1日・1回単位で定められているものが多い。時間外の単価の土台には入らない(給与法第19条)
- 民間には法律上の定めはない。転職先では、作業に付く手当の有無と、それが残業代の土台に入るかを確かめる
よくある質問
特殊勤務手当は会計年度任用職員にも付きますか
会計年度任用職員の給与や報酬の扱いは、各自治体の条例で定められています。特殊勤務手当に相当する額をどう扱うかも条例・規則によるので、任用通知書と所属の人事担当で確かめてください。会計年度任用職員の制度は会計年度任用職員の記事にまとめています。
特殊勤務手当は退職手当の計算に入りますか
一般的には、退職手当は給料月額をもとに計算されるので、特殊勤務手当は計算の土台に入らないのが一般的な取扱いです。計算の土台となる額や加算の扱いは、各自治体の退職手当条例で定められています。自分の場合は、退職手当条例と人事担当課で確かめてください。退職手当の計算は退職手当の基本額の記事にまとめています。
特殊勤務手当は税金の対象になりますか
一般的には、特殊勤務手当も給与の一部として、所得税の源泉徴収の対象になります。共済の掛金の計算にどう入るかは、所属の共済組合の案内で確かめてください。具体的な税額は扶養の状況などで変わるので、明細と税務署の案内で確認するのが確実です。