制度とお金 / 年金
ねんきん定期便で確認しておくこと
ねんきん定期便は、毎年、誕生月に届きます。多くの方が、封を開けて見込額を一瞥して、しまい込んでいます。
転職を考え始めたら、一度だけ、目的を持って読んでください。目的は3つです。公務員の期間が正しく載っているか。見込額が「何を前提にした数字」なのか。そして、定期便に載らないものは何か。この3つが分かると、年金の不安の大半は、確かめられる形になります。
この記事では、ねんきん定期便で確認しておくことを、日本年金機構の案内と条文で整理します。年金は個別性が高い分野なので、制度の骨を書きます。記録に疑問があれば、年金事務所と共済組合で確認してください。受給額の考え方は受給額への影響の考え方に書いています。
定期便には、何が載っているか
日本年金機構の案内によれば、令和8年度の送付分は、35歳、45歳、59歳の方には封書で、その他の方にはハガキで届きます。封書には、より詳しい記録と見方のガイドが同封されます。
記載の内容は、年齢で分かれます。
| 年齢 | 主な記載 |
|---|---|
| 50歳未満 | これまでの年金の加入期間と保険料の納付額、これまでの加入実績に応じた年金額 |
| 50歳以上 | 加入実績に応じた年金額に加えて、年金の見込額 |
| 年金の受給者 | 受給の状況 |
記載の項目は、加入期間、標準報酬月額、保険料の納付額などです。この「見込額」の意味の違いが、この記事の中心です。
確認1:公務員の期間が載っているか
日本年金機構は、「ねんきん定期便」で共済組合等の年金加入記録を確認できると案内しています。各共済組合等から情報提供された共済加入記録や年金見込額などを使って、共済組合等の記録を表示しているとのことで、被用者年金制度の一元化以降(平成27年12月送付分以降)の定期便が対象です。
つまり、いま届く定期便には、公務員として共済組合に加入していた期間が載っているはずです。まず、これを確かめてください。
- 共済組合員の期間の月数が、自分の在職の月数と合っているか
- 標準報酬月額が、給与の水準と大きくずれていないか
- 一元化の前(平成27年9月以前)の期間も載っているか
載っていない、または月数が合わない場合は、共済組合に照会してください。見方ガイドによれば、共済の記録を持つ方には定期便の照会番号の欄に公務員共済の加入者番号が表示され、共済の記録についてはその加入者番号により各共済組合に問い合わせる、とされています。また、月別の加入区分は「(公共):公務員共済制度」と表示されます。
確認2:見込額が「何を前提にした数字」か
50歳未満の方の定期便に載るのは「これまでの加入実績に応じた年金額」です。これは、今の時点で加入をやめた場合に、これまでの期間だけで計算される額です。将来の期間は含まれていません。だから、若い方ほど、額が小さく見えます。「こんなに少ないのか」と驚く方がいますが、これから積み上がる期間が入っていない数字です。
50歳以上の方の定期便に載る「年金の見込額」は、日本年金機構の見方ガイドによれば、60歳未満の方は「現在の年金加入制度に60歳まで継続して加入したと仮定して、65歳から受け取れる年金見込額」です。つまり、公務員のまま60歳まで勤めた場合の数字です。転職すれば、その後の期間は転職先の標準報酬で計算され、前提が変わります。
| 年齢 | 定期便の額の前提 | 転職を考える方の読み方 |
|---|---|---|
| 50歳未満 | これまでの期間だけ | 「辞めた場合の骨」に近い。ここに転職先の期間が足される |
| 50歳以上 | 現在の状態が60歳まで続く | 「公務員のまま勤めた場合」。転職すれば後半の前提が変わる |
老齢厚生年金の額は、厚生年金保険法第43条により、平均標準報酬額×1000分の5.481×被保険者期間の月数で決まります。転職で変わるのは、転職後の期間の標準報酬と月数です。定期便の額を出発点に、その先を転職先の条件で置き換えて考えてください。
確認3:定期便に載らないもの
定期便は、日本年金機構が扱う公的年金の記録です。次のものは載りません。
| 載らないもの | どこで確かめるか |
|---|---|
| 退職等年金給付(共済の上乗せ) | 共済組合に給付算定基礎額を照会 |
| iDeCoや企業年金の資産 | 運営管理機関、企業年金の担当部門 |
| 転職後の見込み | 自分で、転職先の標準報酬を置いて考える |
なお、平成27年9月以前の期間の上乗せである「経過的職域加算額(共済年金)」は、50歳以上の方の見込額の表に行があり、載ります。見方ガイドは、一元化前の期間については各共済組合等から経過的職域加算額として支給される、と説明しています。載らないのは、一元化後の退職等年金給付です。公務員だけの上乗せで、地方公務員等共済組合法第88条により、1年以上の組合員期間があれば65歳で受け取れる年金ですが、共済組合に別に聞かないと額が分かりません。仕組みは職域加算と年金払い退職給付に書いています。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、定期便で効いてくる点は3つです。
1. 公務員の期間の記録を、転職の前に確かめておく
転職後は共済組合との接点が減ります。記録のずれは、在職中のほうが照会しやすいです。
2. 見込額の前提を読み替える
50歳未満なら「これまでの分」、50歳以上なら「公務員のまま60歳まで」。転職後の期間は、転職先の標準報酬で置き換えて考えます。
3. 退職等年金給付は、共済組合に別に聞く
定期便には載りません。「いま辞めた場合」の年金の全体を見るには、この数字が要ります。
手続きと期限
| 場面 | すること | どこで |
|---|---|---|
| 定期便が届いた | 共済組合員の期間の月数と標準報酬月額を確かめる | 自分で |
| 記録に疑問がある | 共済組合の記録は定期便に表示された加入者番号で共済組合に、それ以外は年金事務所に照会 | 共済組合・年金事務所 |
| 退職等年金給付の額を知りたい | 給付算定基礎額(付与額の累計)を制度の照会として聞く | 共済組合 |
| 随時に記録を見たい | ねんきんネットで電子版の定期便を確認 | ねんきんネット |
| 転職後 | 転職後に届く定期便で、公務員の期間と民間の期間の両方が載っているか確かめる | 自分で |
期限はありませんが、公務員の期間の照会は在職中のほうが動きやすいので、転職の前に一度、確かめておくことをお勧めします。
誤解されやすい点
「定期便には公務員の期間は載らない」と思い込む
一元化以降(平成27年12月送付分以降)は、共済組合の記録も載ります(日本年金機構の案内)。
「50歳未満の見込額は、将来もらえる額」と思い込む
これまでの加入実績だけで計算した額です。これから積み上がる分は入っていません。
「50歳以上の見込額は、辞めても同じ」と思い込む
公務員のまま60歳まで勤めた前提です。転職すれば、後半の期間の前提が変わります。
「定期便を見れば、年金の全部が分かる」と思い込む
退職等年金給付は載りません。共済組合に別に聞く必要があります(経過的職域加算額は50歳以上の見込額の表に載ります)。
まとめ
- ねんきん定期便は毎年誕生月に届き、35歳・45歳・59歳は封書、その他はハガキです(令和8年度送付分、日本年金機構)
- 一元化以降(平成27年12月送付分以降)は、共済組合の加入記録も載ります。公務員の期間の月数と標準報酬月額を確かめ、ずれがあれば加入者番号で共済組合に照会してください
- 50歳未満の額は「これまでの加入実績に応じた年金額」で、これから積み上がる分は入っていません。50歳以上(60歳未満)の額は「現在の年金加入制度に60歳まで継続して加入したと仮定」した見込額で(見方ガイド)、転職すれば後半の前提が変わります
- 退職等年金給付は定期便に載りません。共済組合に給付算定基礎額を照会してください(地方公務員等共済組合法第88条)。一元化前の期間の経過的職域加算額は、50歳以上の見込額の表に載ります
- 転職後の見込みは、定期便の額を出発点に、転職後の期間を転職先の標準報酬で置き換えて考えます(厚生年金保険法第43条)
- しまい込む前に、記録の確認と退職等年金給付の照会の2つをしてください
よくある質問
定期便に、公務員になる前の会社員の期間と、公務員の期間の両方が載っていますか
載っているはずです。日本年金機構の案内によれば、一元化以降の定期便は、各共済組合等から情報提供された共済加入記録を使って共済組合等の記録を表示しています。会社員の期間は日本年金機構の記録、公務員の期間は共済組合から提供された記録として、同じ定期便に並びます。両方の月数が自分の在職の月数と合っているかを確かめてください。共済組合の記録に疑問があれば加入者番号で共済組合に、会社員の期間に疑問があれば年金事務所に照会してください。基礎年金番号で両方がつながっていることが前提なので、番号が分かれている可能性がある方は、年金事務所で確認してください。
定期便の見込額が思ったより少ないのですが、転職するともっと減りますか
まず、その額が「何を前提にした数字か」を確かめてください。50歳未満なら「これまでの加入実績に応じた年金額」で、これから積み上がる分は入っていません。少なく見えるのは、期間が短いからです。50歳以上なら「現在の状態が60歳まで続いた場合」の見込額で、転職すれば後半の期間の標準報酬が転職先の額に変わります。厚生年金保険法第43条の式では、転職先の標準報酬が公務員のときより高ければ、後半の期間の分は増えます。「減る」かどうかは、転職先の標準報酬で決まります。定期便の額を「減る前の額」として読むのは、前提を取り違えています。詳しくは受給額への影響の考え方に書いています。
退職等年金給付の額は、どこで分かりますか
共済組合に照会してください。定期便には載りません。退職等年金給付は共済組合の制度で、日本年金機構の定期便の対象ではありません。地方公務員等共済組合法第88条により、1年以上の引き続く組合員期間があれば退職後65歳で退職年金を受け取れますが、額の元になる給付算定基礎額(付与額の累計)は共済組合が持っています。退職の意思を伝えなくても、制度の照会として聞けます。定期便の余白に、その額を書き込んでおくと、「いま辞めた場合の年金の骨」が1枚で見えます。仕組みは職域加算と年金払い退職給付に書いています。