制度とお金 / 任用
定年引上げの仕組み
50代で転職を考える公務員から、「定年が延びるなら、辞めずに続けたほうが得ではないか」「引上げの途中で辞めると損をするのか」という相談を受けます。定年の引上げは、退職の時期と退職手当と年金の受給の関係を変えるので、転職の判断にも直接効きます。
公務員の定年は、国家公務員法第81条の6で65歳と定められ、令和5年度から2年に1歳ずつ引き上げられて、令和13年度に65歳になります。地方公務員は、地方公務員法第28条の6により、国の職員の定年を基準として条例で定めるので、自治体も同じ段階で引き上げています。
この記事では、定年引上げの仕組み、引上げの途中の年度ごとの定年、60歳以降の給与の水準、引上げの途中で退職する場合の退職手当と年金、転職の時期の考え方を整理します。年度ごとの定年と給与の扱いは自治体の条例によるので、自分の生年月日での定年退職日と給与の見込みは、人事の担当課で確かめてください。
根拠——国は法律、地方は条例
| 規定 | 内容 |
|---|---|
| 国家公務員法第81条の6 | 職員は、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の3月31日(または任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日)に退職する。定年は年齢65年(職務と責任に特殊性がある場合などは例外) |
| 地方公務員法第28条の6 | 職員は、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の3月31日までの間において条例で定める日に退職する。定年は、国の職員につき定められている定年を基準として条例で定める |
| 地方公務員法第28条の7(特例) | 定年に達した職員について、職務の遂行上の特別の事情などがあると認めるときは、条例で定めるところにより、定年退職日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定めて引き続き勤務させることができる(勤務延長) |
国の法律が65歳と定め、その施行の附則で段階的な引上げを定め、自治体の条例が国に準じるという構造です。
段階的な引上げ——年度ごとの定年(人事院の説明による)
| 年度 | 定年 |
|---|---|
| 令和5年度・令和6年度 | 61歳 |
| 令和7年度・令和8年度 | 62歳 |
| 令和9年度・令和10年度 | 63歳 |
| 令和11年度・令和12年度 | 64歳 |
| 令和13年度以降 | 65歳 |
自分の定年退職日は、生年月日と、定年に達する年度の定年で決まります。自治体の条例も国に準じているので、人事の担当課に「自分の定年退職日」を確かめてください。引上げの途中の世代は、「60歳で退職すると思っていたら、62歳まで在職できる」という形になります。
60歳以降の給与——当分の間、60歳時点の7割水準
人事院の説明によれば、60歳を超える職員の給与の水準は、当分の間、60歳時点の7割水準とされています。地方公務員も、国に準じた給与条例の改正により、同様の扱いをしている自治体が一般的です。
| 項目 | 60歳以降の扱い(国の例) |
|---|---|
| 給料月額 | 60歳に達した日後の最初の4月1日以降、それまでの給料月額の7割 |
| 役職 | 管理監督職は、60歳に達すると役職定年により管理監督職以外の職に降任等(役職定年) |
| 退職手当 | 60歳以降の給与の減額が退職手当の額に不利にならないよう、計算の特例(ピーク時特例など)が設けられている |
| 働き方 | フルタイムで続けるほか、60歳以降に退職して定年前再任用短時間勤務の職に就く道がある(第22条の4) |
60歳以降は、給与が7割水準になり、管理職は役職を離れ、定年までフルタイムで働くか、短時間の職に移るかを選ぶという形です。
引上げの途中で退職する場合——退職手当と年金
| 退職の時期 | 退職手当 | 年金 |
|---|---|---|
| 定年の前に自己都合で退職(転職) | 自己都合退職の支給率。定年退職より低い | 共済の年金の受給は原則65歳から。退職後は転職先の厚生年金 |
| 60歳以降、定年前に退職(定年前再任用短時間勤務に移るなど) | 条例により、60歳以降の退職を定年退職と同じ支給率で扱う特例がある自治体が多い(国の例に準じる) | 同上 |
| 定年退職 | 定年退職の支給率 | 同上 |
| 勤務延長 | 延長後の退職は定年退職の扱い | 同上 |
転職を考える50代の方にとって効くのは、60歳以降の退職の扱いです。国の例では、経過措置として当分の間、60歳に達した日以後の非違によらない退職は退職事由を「定年退職」として退職手当を算定するとされ(内閣人事局・人事院の説明)、自治体の条例も準じていることが多いです。60歳の前に転職すれば自己都合退職の支給率、60歳以降なら定年退職と同じ支給率という差が、退職の時期の判断に効きます。自分の自治体の条例で、60歳以降の退職の扱いを確かめてください。
転職の時期——考え方
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 50代前半で転職を考える | 退職手当は自己都合の支給率。転職先での勤続の年数が長く取れる。転職先での評価と、退職手当の差を並べる |
| 50代後半で転職を考える | 60歳まで待てば退職手当が定年退職の扱いになる自治体が多い。60歳以降に退職して転職する形と、今転職する形を、退職手当の差と転職先の年齢の受入れで比べる |
| 60歳以降 | 給与は7割水準。定年まで続けるか、定年前再任用短時間勤務か、転職か。転職先の60歳以降の処遇(定年、再雇用の条件)を確かめる |
| 定年の引上げの途中の世代 | 定年が1〜2歳延びる分、在職を続けた場合の給与と退職手当の見込みが変わる。人事の担当課に、自分の定年退職日と退職手当の見込みを照会 |
定年の引上げは、「辞めずに続ける」の価値を上げましたが、転職を不利にするものではありません。在職を続けた場合の見込みと、転職した場合の見込みを、同じ紙に並べる材料が増えただけです。
転職するとどうなるか
50代以降で転職を考えている方にとって、定年引上げで効いてくる点は3つです。
1. 自分の定年退職日を確かめる
生年月日と年度ごとの定年で決まります。引上げの途中の世代は、思っていたより長く在職できます。
2. 60歳以降の退職は、退職手当の扱いが変わることが多い
60歳の前と後で、支給率が違う自治体が多いです。退職の時期の判断に直接効きます。
3. 60歳以降の給与は7割水準。転職先の60歳以降の処遇と比べる
在職を続けた場合の見込みと、転職先の定年・再雇用の条件を並べてください。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 50代で転職を考えたら | 自分の定年退職日、60歳以降の給与の水準、退職手当の見込み(60歳前・60歳以降)を照会 | 最初に | 人事の担当課 |
| 60歳の前 | 自治体の「60歳以降の働き方」の情報提供と意思確認(国に準じた制度)を受ける | 60歳に達する前年度など | 人事の担当課 |
| 60歳以降 | 定年まで続ける、定年前再任用短時間勤務、転職のいずれかを選ぶ | 60歳前後 | ── |
| 転職を考えるなら | 転職先の60歳以降の処遇(定年、再雇用の条件、給与)を確かめる | 内定の段階 | 転職先 |
| 定年退職の前 | 勤務延長の事由があれば任命権者の判断。なければ定年退職日に退職 | 定年退職日 | ── |
誤解されやすい点
「定年はもう65歳になっている」と思い込む
令和13年度に65歳で、それまでは2年に1歳ずつの段階的な引上げです。自分の定年退職日を確かめてください。
「60歳以降も給与は同じ」と思い込む
当分の間、60歳時点の7割水準です(国の例)。
「60歳の前に辞めても後に辞めても退職手当は同じ」と思い込む
60歳以降の退職を定年退職と同じ支給率で扱う特例がある自治体が多く、60歳の前の自己都合退職とは支給率が違います。
「定年が延びたから転職は不利」と思い込む
続ける道の価値が上がっただけで、転職を不利にするものではありません。見込みを並べて比べる材料が増えました。
まとめ
- 公務員の定年は、国家公務員法第81条の6で65歳と定められ、令和5年度から2年に1歳ずつ引き上げられて令和13年度に65歳になります(人事院の説明)。地方公務員は国の定年を基準として条例で定めます(地方公務員法第28条の6)
- 自分の定年退職日は、生年月日と、定年に達する年度の定年で決まります。引上げの途中の世代は、人事の担当課で確かめてください
- 60歳以降の給与は、当分の間、60歳時点の7割水準で、管理監督職は役職定年により管理職以外の職に移ります
- 60歳以降の退職は、自己都合であっても定年退職と同じ支給率で退職手当を計算する特例がある自治体が多く、60歳の前の自己都合退職とは支給率が違います
- 転職の時期は、定年退職日、60歳以降の給与の水準、60歳前・60歳以降の退職手当の見込みの3つを人事の担当課に照会してから決めてください
- 定年の引上げは、続ける道の価値を上げましたが、転職を不利にするものではありません
よくある質問
私は今57歳です。定年は何歳ですか
定年に達する年度の定年で決まるので、生年月日から計算し、人事の担当課で確かめてください。国の定年は令和5年度・6年度が61歳、令和7年度・8年度が62歳、令和9年度・10年度が63歳、令和11年度・12年度が64歳、令和13年度以降が65歳で、自治体の条例も国に準じています。57歳の方は、生年月日により、62歳または63歳が定年になる世代です。定年退職日は、定年に達した日以後における最初の3月31日までの間で条例で定める日(多くは3月31日)です。「60歳で退職する」と考えていた方は、2〜3年長く在職できることになり、その間の給与(60歳以降は7割水準)と退職手当(在職期間が延びる分と、60歳以降の給与の減額の特例)の見込みが変わります。人事の担当課に、自分の定年退職日と、定年まで在職した場合の退職手当の見込額、60歳で退職した場合の見込額を照会し、転職した場合の見込みと並べてください。
60歳で退職して転職する場合、退職手当は自己都合の扱いになりますか
自治体の条例によりますが、国の例に準じて、60歳に達した日以後の退職は定年退職と同じ支給率で計算する特例を設けている自治体が多いです。国家公務員退職手当法第5条は、25年以上勤続して定年に達した日以後にその者の非違によることなく退職した者を定年退職と同様に扱い、定年の引上げに伴う経過措置として、当分の間、60歳に達した日以後にその者の非違によることなく退職した者の退職手当は退職事由を「定年退職」として算定するとされています(内閣人事局・人事院の説明)。自治体の退職手当条例も国に準じています。この特例があれば、60歳以降の転職のための退職は、自己都合退職の支給率ではなく、定年退職の支給率で退職手当が計算されます。60歳の前(59歳など)に退職すれば自己都合退職の支給率なので、退職の時期を60歳以降にすることで退職手当が変わる可能性があります。人事の担当課に「60歳以降に自己都合で退職した場合の退職手当の支給率と見込額」を照会してください。併せて、60歳以降の給与が7割水準になることと、転職先の60歳以降の処遇(定年、再雇用の条件、給与)を確かめ、60歳で転職する形、定年まで続ける形、定年前再任用短時間勤務の形を並べて判断します。
定年が延びたので、転職せずに続けるほうが得ですか
「得かどうか」は、在職を続けた場合の見込みと、転職した場合の見込みを並べなければ分かりません。定年の引上げは、続ける道の材料を増やしただけです。在職を続けた場合の見込みは、60歳までの給与、60歳以降の7割水準の給与、定年までの在職期間、定年退職の退職手当、共済の年金で計算できます。転職した場合の見込みは、転職先の給与、60歳以降の処遇、退職金の制度、転職先での勤続の年数で計算します。財政・会計の経験は、自治体向けの企業、会計事務所、金融機関などで50代でも評価されることがあり、転職先によっては60歳以降の処遇が公務員の7割水準より有利な場合もあれば、不利な場合もあります。額の比較だけでなく、仕事の中身、働き方、健康の見込みも判断の材料です。人事の担当課への照会と、転職先の条件の確認の両方を行い、同じ紙に並べてから決めてください。定年の引上げを理由に転職を諦める必要も、定年の引上げを無視して転職を急ぐ必要もありません。