制度とお金 / 任用
役職定年(管理監督職勤務上限年齢制)
財政課長、財政部長——管理職として財政を担ってきた方が、50代後半で転職を考える動機の1つに、役職定年があります。60歳に達すると管理監督職を離れ、管理職手当がなくなり、給与も下がる。「役職を離れて残るより、経験を外で生かしたい」という判断です。
役職定年は、正式には管理監督職勤務上限年齢制といい、定年の引上げと同時に導入されました。60歳に達した管理監督職の職員を、異動期間内に、管理監督職以外の職に降任または転任する制度で、地方公務員法第28条の2から第28条の5までに定められています。
この記事では、役職定年の条文、異動の仕組み、給与の変化、例外、そして転職の判断への影響を整理します。管理監督職の範囲と上限年齢は条例で定めるので、自分の職が対象かどうかと、降任後の給与の見込みは、人事の担当課で確かめてください。定年の引上げは定年引上げの仕組みに書いています。
条文——第28条の2
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 任命権者は、管理監督職(管理職手当を支給される職員の職とこれに準ずる職で条例で定める職)を占める職員で、その職に係る管理監督職勤務上限年齢に達している職員について、異動期間(上限年齢に達した日の翌日から同日以後の最初の4月1日までの間)に、管理監督職以外の職または上限年齢がその職員の年齢を超える管理監督職への降任または転任(降給を伴う転任に限る)をするものとする |
| 第2項 | 管理監督職勤務上限年齢は、条例で定める |
| 第3項 | 管理監督職と上限年齢を定めるに当たっては、国と他の自治体の職員との間に権衡を失しないようにする |
国の例では、管理監督職勤務上限年齢は60歳(国家公務員法第81条の2)で、自治体の条例も国に準じています。60歳に達した日の翌日から次の4月1日までの間に、管理職以外の職に移るのが原則の形です。
仕組み——降任等の流れ
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 60歳に達する | 管理監督職勤務上限年齢に達する |
| 異動期間 | 上限年齢に達した日の翌日から、次の4月1日まで |
| 降任等 | 異動期間内に、管理監督職以外の職(または上限年齢がより高い管理監督職)に降任または転任 |
| 管理監督職への任用の制限(第28条の3) | 上限年齢に達している者を、その管理監督職に採用・昇任・転任することはできない |
| 降任後 | 管理職手当がなくなり、給料月額は降任後の職の級・号給に応じた額(60歳以降の7割水準の措置と重なる) |
「降任」という言葉が使われますが、分限処分の降任とは違い、制度に基づく異動です。勤務成績を理由とするものではなく、年齢に達したことによる制度上の異動で、不利益処分ではありません。
給与の変化——管理職手当と7割水準
| 項目 | 役職定年の前 | 役職定年の後 |
|---|---|---|
| 管理職手当 | 支給 | なし |
| 給料月額 | 管理職の級・号給 | 降任後の職の級・号給に応じた額。60歳以降の給与は当分の間60歳時点の7割水準(国の例)の措置と重なる |
| 時間外勤務手当 | 管理職は原則として対象外 | 管理職でなくなれば、時間外勤務手当の対象になる |
| 退職手当 | ── | 降任による給与の減額が退職手当に不利にならないよう、減額前の給料月額を基礎にする特例(ピーク時特例など)が設けられている |
役職定年による給与の減少は、管理職手当の消滅と、7割水準の措置の2つが重なります。退職手当については、減額前の給料月額を基礎に計算する特例があるので、役職定年が退職手当を直接減らすことは、国の例では避けられています。自治体の条例で確かめてください。
例外——第28条の5と第28条の7
| 規定 | 内容 |
|---|---|
| 第28条の5(特例任用) | 職務の遂行上の特別の事情により、降任等をすると公務の運営に著しい支障が生ずる事由、または職務の特殊性により欠員の補充が困難となり著しい支障が生ずる事由として条例で定める事由があると認めるときは、異動期間を1年を超えない期間内で延長し、管理監督職のまま勤務させることができる(延長は繰り返せるが定年退職日まで) |
| 第28条の7(勤務延長) | 定年に達した職員について、特別の事情があると認めるときは、定年退職日の翌日から1年を超えない範囲で引き続き勤務させることができる |
例外は「公務の運営に著しい支障」が要件で、本人の希望で管理職を続けられる制度ではありません。財政課長の後任がいない、大規模な事業の途中で交代できない、といった事情がある場合に、任命権者の判断で延長されます。
転職の判断への影響
| 点 | 内容 |
|---|---|
| 60歳を境に、役職と給与が変わる | 管理職として財政を担ってきた方は、60歳以降、管理職ではない職で7割水準の給与になる。この変化を受け入れて続けるか、60歳前後で転職するか |
| 退職手当の時期 | 60歳以降の退職は退職事由を定年退職として算定する経過措置がある(国の例、自治体も準じる)。役職定年の直後に退職しても、退職手当の面で不利になりにくい |
| 管理職の経験の価値 | 財政課長・財政部長の経験は、自治体向けの企業、監査法人、コンサルティング、公益法人などで評価される。60歳前後の転職は、管理職の経験を外で生かす形として現実的 |
| 転職先の60歳以降の処遇 | 転職先の定年、再雇用の条件、給与を内定の段階で確かめる。7割水準の公務員の給与と、転職先の60歳以降の給与を並べる |
| 転職しない場合 | 役職定年後の職で定年まで続ける、定年前再任用短時間勤務に移る、という道もある |
役職定年は、管理職の方にとって、転職を考える自然な区切りです。60歳以降の退職手当の扱いが定年退職と同様になる経過措置があるので、役職定年の時期に転職しても退職手当の面で大きな不利は生じにくく、管理職の経験は外で評価されます。一方で、役職を離れた後の働き方に価値を見出す方もいます。
転職するとどうなるか
管理職で転職を考えている方にとって、役職定年で効いてくる点は3つです。
1. 60歳を境に、役職と給与が変わる
管理職手当がなくなり、給与は7割水準に。この変化を受け入れて続けるか、転職するかの区切りです。
2. 60歳以降の退職は、退職手当の面で不利になりにくい
退職事由を定年退職として算定する経過措置(国の例)があります。自治体の条例で確かめてください。
3. 管理職の経験は、外で評価される
財政課長・財政部長の経験は、自治体向けの企業や監査法人などで価値があります。役職定年の1〜2年前から準備すると、経験を最も生かせる転職先を選べます。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 時期 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 役職定年の1〜2年前 | 役職定年後の職と給与の見込み、60歳以降の退職手当の見込みを照会 | 58〜59歳 | 人事の担当課 |
| 同時に | 管理職の経験を生かせる転職先と、60歳以降の処遇を調べる | 58〜59歳 | 転職支援 |
| 60歳の前 | 自治体の情報提供・意思確認(60歳以降の働き方)を受ける | 60歳に達する前年度など | 人事の担当課 |
| 異動期間 | 管理監督職以外の職への降任等(特例の事由があれば延長) | 60歳に達した日の翌日から次の4月1日まで | 任命権者 |
| 転職する場合 | 退職の時期を60歳以降にすると退職手当の扱いが変わることが多い。入社日を退職日の翌日に | 60歳前後 | ── |
| 続ける場合 | 役職定年後の職で定年まで、または定年前再任用短時間勤務 | 60歳以降 | ── |
誤解されやすい点
「役職定年は勤務成績による降格」と思い込む
年齢に達したことによる制度上の異動で、全員に同じように適用されます(第28条の2)。
「希望すれば管理職を続けられる」と思い込む
特例は「公務の運営に著しい支障」が要件で、本人の希望による制度ではありません(第28条の5)。
「役職定年で退職手当が減る」と思い込む
減額前の給料月額を基礎にする特例があり、国の例では退職手当を直接減らさないよう措置されています。
「役職定年の時期に転職すると退職手当が自己都合になる」と思い込む
60歳以降の退職は退職事由を定年退職として算定する経過措置が国にあり、自治体も準じていることが多いです。
まとめ
- 役職定年(管理監督職勤務上限年齢制)は、管理監督職勤務上限年齢(国の例で60歳、条例で定める)に達した管理監督職の職員を、異動期間内に管理監督職以外の職に降任または転任する制度です(地方公務員法第28条の2)
- 勤務成績によるものではなく、年齢に達したことによる制度上の異動で、上限年齢に達した者を管理監督職に任用することもできません(第28条の3)
- 役職定年後は管理職手当がなくなり、給与は60歳以降の7割水準の措置と重なります。退職手当は減額前の給料月額を基礎にする特例で不利にならないよう措置されています(国の例)
- 特例(第28条の5)は公務の運営に著しい支障がある場合に限られ、本人の希望で管理職を続けられる制度ではありません
- 60歳以降の退職は退職事由を定年退職として算定する経過措置(国の例)があり、役職定年の時期の転職は退職手当の面で不利になりにくいです
- 役職定年は転職の自然な区切りですが、急ぐ理由にはなりません。1〜2年前に制度と見込みを確かめ、管理職の経験を最も生かせる形を選んでください
よくある質問
財政課長です。役職定年で降任されたら、どの職になりますか
管理監督職以外の職で、条例と自治体の運用によります。多くの自治体では、担当課長級や主幹級などの職に転任する形です。第28条の2第1項は、管理監督職以外の職または上限年齢がより高い管理監督職への降任・転任と定めており、具体的にどの職に就くかは任命権者の判断です。自治体によっては、役職定年後の職として「担当部長」「担当課長」「主幹」「専門員」などの職を設け、管理職手当のない職として管理職の経験を生かした業務(専門的な助言、後進の指導、特定のプロジェクトの担当)に当たる運用をしています。財政課長の経験がある方が、財政に関する専門的な業務や、他の部署への財政面の助言に当たる例もあります。人事の担当課に「役職定年後にどの職に就くか、給与はどうなるか」を照会し、その職での働き方に価値を見出せるかを考えてください。価値を見出せなければ、管理職の経験を外で生かす転職が、自然な選択肢です。降任後の職は「降格」ではなく、制度に基づく異動なので、経歴の説明でも「役職定年により○○職に転任」と事実で書けます。
役職定年の時期に転職すると、退職手当は自己都合の扱いになりますか
自治体の条例によりますが、国の例に準じて、60歳に達した日以後の退職は退職事由を定年退職として算定する経過措置を設けている自治体が多いです。定年の引上げに伴い、国では当分の間、60歳に達した日以後にその者の非違によることなく退職した者の退職手当は、退職事由を「定年退職」として算定するとされています(内閣人事局・人事院の説明)。役職定年は60歳に達した日の翌日からの異動期間で行われるので、役職定年の時期の退職は、この経過措置の対象になります。加えて、役職定年による給料月額の減額が退職手当に不利にならないよう、減額前の給料月額を基礎にする特例も設けられています。したがって、国の例に準じた自治体では、役職定年の時期に転職しても、退職手当の面で大きな不利は生じにくいです。人事の担当課に「役職定年後に退職した場合の退職手当の退職事由と見込額」を照会してください。60歳の前(59歳など)に退職すると自己都合退職の支給率になるので、退職の時期を60歳以降にする判断も含めて、見込額で比べます。
役職定年を延長してもらうことはできますか
本人の希望で延長する制度ではなく、公務の運営に著しい支障がある場合に任命権者が判断する特例です。第28条の5は、職務の遂行上の特別の事情により降任等をすると公務の運営に著しい支障が生ずる事由、または職務の特殊性により欠員の補充が困難となり著しい支障が生ずる事由として条例で定める事由があると認めるときに、異動期間を1年を超えない期間内で延長し、管理監督職のまま勤務させることができると定めています。財政課長の後任が確保できない、大規模な事業や制度の改正の途中で交代できない、といった自治体の側の事情がある場合に適用されるもので、本人が「続けたい」と希望しても、事由がなければ延長されません。延長は繰り返すことができますが、定年退職日を超えることはできません。延長の見込みを前提に人生の計画を立てるのは避け、役職定年で管理職を離れることを前提に、続けるか転職するかを考えてください。延長された場合は、その期間に転職の準備を進める時間ができたと考えれば、判断の質が上がります。