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退職した年の確定申告
公務員でいる間、確定申告をしたことがない方がほとんどです。年末調整で終わっていたからです。
退職した年は、その年末調整が受けられる場合と、受けられない場合に分かれます。分かれ目は、年内に再就職して、転職先で年末調整を受けたかどうか。受けていなければ、確定申告をすることで、給与から引かれ過ぎた所得税が戻ることが多いです。
この記事では、退職した年の確定申告が要る場合と要らない場合を、所得税法の条文と国税庁の案内で整理します。税は個別性が高い分野なので、一般的な取扱いを書きます。自分の申告の要否は、税務署か税理士で確認してください。年末調整の側は年末調整は誰がやるかに書いています。
出発点——なぜ年の途中で退職すると納め過ぎになるのか
給与の源泉徴収は、その給与が1年間続く前提の概算で毎月引かれています。年末調整は、その概算を1年分の実際の所得と控除で精算する仕組みです。所得税法第190条は、扶養控除等申告書を提出した居住者に、その年最後に給与を支払う際に年末調整を行うと定めています。
年の途中で退職して、その年に他の給与を受けなければ、「その年最後の給与」を払う支払者がいなくなり、年末調整が行われません。国税庁のNo.1910は、この場合に「所得税及び復興特別所得税が納め過ぎになる場合があります」と説明し、確定申告で精算できるとしています。納め過ぎになる理由は、概算が1年分の前提で引かれているのに、実際の所得は退職の月までだからです。
要るか要らないか——3つの場面
| 場面 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| A. 年内に転職先に入社し、前職の源泉徴収票を出して年末調整を受けた | 転職先が、前職の給与を含めて行う | 原則、要らない(所得税法第121条第1項) |
| B. 年内に再就職しなかった、または入社が翌年 | 受けられない | 要る(正確には、しないと納め過ぎが戻らない)。翌年から5年以内に申告できる(No.1910) |
| C. 転職先に入社したが、前職の源泉徴収票を出さなかった | 転職先は年末調整できない | 要る |
Aが、いちばん多い形です。転職先に前職の源泉徴収票を出せば、転職先が前職の給与を含めて年末調整をし、確定申告は原則として要りません。所得税法第121条第1項は、給与所得者で給与が2,000万円以下の者が、1か所からの給与の全部について源泉徴収と年末調整を受けていて、他の所得が20万円以下などの場合に、確定申告を要しないと定めています。
Bは、退職から入社まで年をまたぐ場合です。年内に「最後の給与」を払う支払者がいないので、年末調整は行われません。確定申告をしなければ、納め過ぎは戻りません。No.1910は、中途退職した年の翌年から5年以内に申告できるとしています。
Cは、書類の出し忘れです。前職の源泉徴収票を転職先に出さないと、転職先は年末調整をできず、確定申告で精算する形になります。
退職手当は、確定申告と切り離せる
退職手当は、「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に提出していれば、正しい税額が源泉徴収され、確定申告は原則として要りません。所得税法第121条第2項は、退職所得を有する居住者が一定の場合に、課税退職所得金額に係る所得税について確定申告書の提出を要しないと定めています。国税庁のNo.2732も、申告書を提出した場合は原則として確定申告は不要と説明しています。
つまり、退職手当の税と、給与の税は、別々に考えられます。給与の側で確定申告が要る場合でも、退職手当の側は申告書を出していれば済んでいます。逆に、申告書を出していなければ、退職手当の側も確定申告で精算します(20.42パーセントが源泉徴収されているため)。詳しくは退職所得の受給に関する申告書に書いています。
確定申告をすると戻る可能性があるもの
Bの場合、確定申告で精算されるのは、概算で引かれ過ぎた所得税だけではありません。年末調整で反映されるはずだった控除も、確定申告で反映されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 引かれ過ぎた所得税 | 1年分の前提で概算していた分と、実際の所得との差 |
| 社会保険料控除 | 退職後に自分で納めた国民年金・国民健康保険(または任意継続)の保険料。全額が控除の対象 |
| 生命保険料控除・地震保険料控除 | 年末調整で出すはずだった控除 |
| 配偶者控除・扶養控除など | 所得の要件を満たす場合 |
| 医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税)など | 年末調整では扱われない控除。もともと確定申告が要るもの |
退職後に自分で納めた国民年金と健康保険の保険料は、社会保険料控除として全額が控除の対象です。空白の期間が長い方ほど、この額は大きくなります。納付の証明書や領収書を保管しておいてください。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、確定申告で効いてくる点は3つです。
1. 年内に入社するなら、前職の源泉徴収票を転職先に出す
それで転職先が年末調整をし、確定申告は原則として要りません。
2. 年をまたぐなら、翌年に確定申告をする
納め過ぎが戻ることが多く、退職後に納めた社会保険料も控除されます。
3. 退職手当は、申告書を出していれば切り離せる
給与の側の申告の要否と、退職手当の側は別です。申告書を出していれば、退職手当の側は済んでいます。
手続きと期限
| 場面 | すること | 期限 |
|---|---|---|
| 退職時 | 給与所得の源泉徴収票を受け取り保管。退職所得の源泉徴収票も別に保管 | 退職後、支払者から交付される |
| 年内に入社 | 前職の給与所得の源泉徴収票を転職先に提出 | 転職先の年末調整の前(通常は入社時か11月頃) |
| 年をまたぐ | 確定申告書を作成し提出。国税庁の確定申告書作成コーナーが使える | 還付の申告は、翌年1月1日から5年間(No.1910は翌年から5年以内と説明) |
| 退職後に自分で納めた保険料 | 控除証明書・領収書を保管 | 申告時に使う |
還付を受けるための申告は、翌年の早い時期から出せます。確定申告の期間(2月16日から3月15日)を待つ必要はありません。申告に必要な書類が揃い次第、早めに行うことをお勧めします(No.1910)。
誤解されやすい点
「退職した年は必ず確定申告が要る」と思い込む
年内に転職先で年末調整を受ければ、原則として要りません(所得税法第121条第1項)。
「確定申告は義務だから、しなくても損はしない」と思い込む
Bの場合、申告しなければ納め過ぎが戻りません。義務というより、戻すための手続きです。
「退職手当の分も確定申告が要る」と思い込む
申告書を出していれば、退職手当の側は原則として要りません(第121条第2項、No.2732)。
「確定申告の期限は3月15日だから、過ぎたらできない」と思い込む
還付の申告は翌年から5年以内にできます(No.1910)。
まとめ
- 給与の源泉徴収は1年分の前提の概算で、年末調整で精算されます(所得税法第190条)。年の途中で退職して年内に他の給与を受けなければ、年末調整が行われず、納め過ぎになることがあります(No.1910)
- 年内に転職先に入社し、前職の源泉徴収票を出して年末調整を受ければ、確定申告は原則として要りません(第121条第1項)
- 年をまたぐ場合や、源泉徴収票を出さなかった場合は、確定申告で精算します。中途退職した年の翌年から5年以内に申告できます(No.1910)
- 確定申告では、引かれ過ぎた所得税に加えて、退職後に自分で納めた国民年金・健康保険の保険料が社会保険料控除として全額反映されます
- 退職手当は、「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば、確定申告は原則として要りません(第121条第2項、No.2732)
- 退職の年の給与所得の源泉徴収票、退職後の保険料の証明書、退職所得の源泉徴収票を1つの封筒に入れておいてください
よくある質問
3月に退職して、同じ年の5月に転職先に入社しました。確定申告は要りますか
転職先に前職の給与所得の源泉徴収票を提出して年末調整を受ければ、原則として要りません。国税庁のNo.1910は、同じ年内に再就職した場合は新しい勤務先で前の給与を含めて年末調整されると説明しています。所得税法第121条第1項により、給与が2,000万円以下で、その全部について源泉徴収と年末調整を受け、他の所得が20万円以下などの場合は確定申告を要しません。ただし、退職から入社までの空白の2か月に自分で納めた国民年金や健康保険の保険料は、転職先の年末調整で社会保険料控除として申告できるので、証明書を転職先に出してください。医療費控除やふるさと納税の寄附金控除を受けたい場合は、別に確定申告が要ります。
12月末に退職して、翌年4月に入社します。確定申告は要りますか
要ります。正確には、しないと納め過ぎが戻りません。退職の年の「最後の給与」を払う支払者が自治体なので、退職時に自治体が年末調整をする場合もありますが、12月末退職で年末調整が行われなかった場合や、退職後に納めた保険料の控除を反映したい場合は、翌年に確定申告をします。退職の年の給与所得の源泉徴収票を使い、国税庁の確定申告書作成コーナーで作成できます。還付を受けるための申告は、翌年の早い時期から5年以内に出せます(No.1910)。翌年の4月に入社した転職先では、翌年分の給与について年末調整が行われます。退職の年と翌年は、別々に考えてください。要否の判断は、税務署か税理士で確認を。
退職手当の申告書を出し忘れました。確定申告で何をすればよいですか
退職所得の源泉徴収票を使って、退職所得の控除と2分の1の計算を反映した税額を申告し、差額の還付を受けます。国税庁のNo.2732は、申告書を提出していない場合は支給額の20.42パーセントが源泉徴収されるため、確定申告で精算すると説明しています。給与の側の確定申告と同じ申告書で、退職所得の欄に記載します。退職所得の源泉徴収票は支払者から交付されるので、保管しておいてください。申告の時期と方法は税務署か税理士で確認を。住民税についても、市区町村の窓口に確認してください。申告書そのものの仕組みは退職所得の受給に関する申告書に書いています。