制度とお金 / 失業給付と税金
退職年の医療費控除
退職した年に医療費がかかったときは、在職中と退職後を分けず、その年に実際に払った費用から確認します。共済組合を脱退したことや、年の途中で収入が変わったことだけで、医療費控除の可否が決まるわけではありません。保険金などによる補填と、退職所得を含めた申告内容の整理も必要です。
本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。所得税法第73条と国税庁の案内に基づく一般的な説明です。対象費用や家族間の負担、退職所得を含む個別の計算は、資料をそろえて税務署などに確認してください。
退職日よりも実際の支払年を確認する
医療費控除の対象となる年は、原則として医療費を支払った年です。年末に診療を受け、翌年に支払った未払分を、診療を受けた年の支払済み費用へ含めないようにします。領収書の日付や決済の記録を確認し、通院した月だけで集計しないことが大切です。
退職日の前後で健康保険が変わっても、所得税の医療費控除は暦年で整理します。前半は共済、後半は再就職先の健康保険や国民健康保険という場合でも、対象となる自己負担の支払いを一年分集めます。保険者ごとの通知を一枚ずつ確認する作業が必要です。
健康保険や国民健康保険の保険料は、診療の自己負担とは別の費用です。医療費の集計表へ保険料まで入れず、該当する社会保険料控除として整理します。病院へ払った金額、保険者へ納めた保険料、後から受け取る給付を別々に記録すると、混同を避けやすくなります。
退職を予定している段階であれば、現在の共済の医療費通知をどこで取得できるか、退職後も閲覧できるかを担当窓口に確認しておきます。利用できる期間や方法は加入先によるため、職員向けの画面がずっと使えると見込まず、必要な通知や給付決定の資料を手元に残してください。
家族の医療費は生計と実際の負担を分けて見る
所得税法第73条は、自分のための医療費のほか、生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費を対象としています。健康保険で誰の被扶養者になっているかだけで判断する制度ではありません。税の扶養控除の対象かどうかとも、同じ確認ではありません。
親族の領収書が手元にあるというだけでは、申告する人の支払額とは限りません。本人が負担したのか、配偶者などが負担したのかを振込や決済の記録も使って確認します。夫婦双方が同じ支払いを自分の控除に入れることは避け、負担関係が分からない場合は税務署へ相談してください。
退職後に家族の健康保険の被扶養者となった場合も、そのことだけで医療費の申告者を決めません。税の扶養、健康保険の被扶養者、国民年金の資格を分ける考え方は、扶養に入る収入基準の考え方で整理しています。
医療や健康に関する支払いが全部入るわけではない
国税庁の対象費用の案内では、診療や治療、そのために必要な医薬品などが示されています。一方、健康増進や病気の予防のための支出を、治療の費用と同じようには扱いません。レシートに薬局名があることだけで、購入品をすべて医療費としないようにします。
通院の交通費にも条件があります。必要な公共交通機関の利用については日付、経路、受診との対応を記録し、自家用車のガソリン代や駐車場代とは分けます。タクシーも一律に対象となるわけではなく、公共交通機関を使えない事情などを含めて確認します。
退職前に受けた検査や、再就職に向けた健康診断なども、仕事に関係するという理由だけでは結論が出ません。一般に健康診断は原則として対象外とされるため、治療との関係など個別の事情は公式の対象費用の説明と税務署で確認してください。
セルフメディケーション税制は、一定の条件の下で利用する医療費控除の特例です。通常の医療費控除と同時に両方を受けるものではありません。市販薬があるという理由で通常の医療費に上乗せせず、対象となる取組や購入品を分けた上で、適用できる制度を確認します。
仕事探しでは、医療費の控除とは別に、通院と両立できる勤務日や勤務地の条件を整理できます。公務員経験を生かせる求人を確認する場合も、通院への配慮や休暇制度は求人票と採用先の説明で確かめてください。
補填金は対応する医療費と組み合わせる
支払った医療費からは、保険金などで補填される金額を差し引きます。共済や健康保険からの高額療養費、民間保険の入院給付などがある場合は、領収書だけでなく給付の通知も確認します。窓口で払った金額の合計をそのまま最終額としないことが大切です。
この差引きは、補填の対象となった医療費を限度に行います。ある入院について受け取った補填金がその入院費を上回っても、その余りを関係のない別の治療費から差し引く扱いではありません。すべての医療費とすべての給付を一括で相殺すると、対象額を誤る可能性があります。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 領収書・支払記録 | 支払日、受診者、費用の内容、実際の負担者 |
| 医療費通知 | 記載された対象期間と自己負担、別の資料との重複 |
| 給付・保険金の通知 | 何の治療に対する補填か、対象費用との対応 |
| 源泉徴収票など | 給与と退職所得、税額、申告する年分 |
給付の金額がまだ決まっていない場合や、申告後に金額が変わった場合は、補填がないものとして放置しないでください。決定予定や通知を整理し、申告時の扱いと、その後に手続きが必要かを税務署へ確認します。勤務先への申請と所得税の申告は別の手続きです。
控除の計算では退職所得も無関係ではない
医療費控除は、対象となる支払額から補填額を除き、さらに所定の基準額を差し引いて計算します。基準額は10万円ですが、その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、その金額の5%です。控除額には200万円の上限があり、支払額全額が税金からそのまま戻る制度ではありません。
ここでいう総所得金額等を、退職後の給与だけと考えないようにします。所得税法第73条の計算には退職所得金額なども関わります。退職所得は原則として分離課税ですが、そのため医療費控除の判定から一律に外れる、という意味ではありません。
退職手当の支給総額と、控除等を反映した退職所得金額も区別が必要です。手取りや銀行への入金額を使って独自に判定せず、退職所得の源泉徴収票などを確認します。複数の退職一時金やほかの所得がある場合には、それらも税務署へ伝えてください。
年の途中で退職して給与が少なくなった場合でも、医療費控除の結果だけで転職後の生活費を見積もるのは避けたいところです。仕事や働き方の希望は相談フォームで整理でき、税の計算は税務署などへ確認するというように、相談の目的を分けると進めやすくなります。
年末調整と確定申告の役割を分ける
医療費控除は年末調整では受けられず、適用を受けるには確定申告で手続きします。再就職先で給与の年末調整を受けた場合も、医療費控除まで済んだとは考えないようにします。給与や控除の資料がそろってから、その年分全体を確認します。
退職所得について受給に関する申告書を提出していれば、源泉徴収で精算され、原則として確定申告が不要となる場合があります。ただし、国税庁は、医療費控除などのために確定申告書を提出する場合には退職所得金額の記載が必要と案内しています。申告不要という説明だけを見て退職所得を省かないでください。
その記載は、退職手当を給与の収入欄へ足すという意味ではありません。給与所得と退職所得を区分し、退職所得の源泉徴収票も用意します。申告書を出す場合の所得の扱いは、退職所得の分離課税も参照してください。
中途退職で年末調整を受けていない人は、所得税が納め過ぎとなり還付申告をできる場合があります。一方、ほかの所得の状況などから申告義務がある場合もあります。医療費がある人は全員必ず還付されると考えず、義務の有無と任意の還付申告を分けて確認します。
通知の不足と領収書の重複を確認する
申告では医療費控除の明細書を用意します。必要事項を満たす医療費通知を利用できる場合もありますが、通知だけで全期間・全支払いがそろうとは限りません。保険者の切替前後の通知と、通知に載らない支払いを照合し、同じ費用を二度記載しないようにします。
領収書は原則として申告期限等から5年間の保存が必要とされます。医療費通知を添付して記載を省略した部分などでは扱いが異なるため、利用する提出方法の案内を確認してください。紙で提出しないことと、支払いを示す資料が不要になることは同じではありません。
よくある質問
年末調整を受ければ医療費控除も終わりますか
医療費控除は年末調整の対象ではありません。適用を受ける場合は、給与や退職所得など、その年分の資料をそろえて確定申告の手続きを確認します。
保険金が医療費より多いと、ほかの通院費からも引きますか
補填の対象となった医療費を限度に差し引きます。余った分を対応しない別の医療費から引くものではありません。給付と費用の対応が不明な場合は通知を持って相談してください。
源泉徴収で済んだ退職所得も記載しますか
医療費控除のために確定申告書を提出する場合には、退職所得金額の記載が必要です。給与とは区分し、退職所得の源泉徴収票を確認してください。
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