選考対策 / 面接
学習意欲をどう示すか
未経験の分野に応募するとき、必ず確認される点です。
「新しいことを学ぶ意欲はありますか」
「あります」と答えても、根拠がありません。「勉強します」も同じです。
聞かれているのは、意欲の強さではありません。これまでに、新しいことを実際に習得した事実があるかです。
この記事では、その示し方を扱います。面接の全体像は公務員からの転職面接|全体の流れと準備にあります。
研修は「与えられるもの」でした
民間との違いを、先に押さえておきます。
地方公務員法第39条です。
> 職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない。>> 2 前項の研修は、任命権者が行うものとする。
「与えられなければならない」「任命権者が行う」。
つまり、自治体では、研修の機会が制度として保障されています。新規採用の研修、階層別の研修、専門の研修。計画に沿って、順番に受ける仕組みです。
民間では、この仕組みが同じ形であるとは限りません。研修の制度がある会社もありますが、自分で必要なものを選んで学ぶ比重が高くなるのが通常です。
この違いを理解していることを示すと、答えに説得力が出ます。
結論:3点で示す
| 点 | 内容 |
|---|---|
| ① 過去 | これまでに、新しいことを習得した事実(業務の中で) |
| ② 現在 | いま学んでいること(あれば) |
| ③ 計画 | 入社後、何をどう学ぶつもりか(具体的に) |
①がいちばん大事です。過去の事実があれば、意欲は証明されます。
②が無くても構いません。③が具体的であれば足ります。
①の材料——業務の中で学んできたこと
「学習」を、資格や講座の話だと考えないでください。
| 場面 | 学んだこと |
|---|---|
| 異動のたびに分野が変わる | 新しい制度を短期間で習得してきた |
| 制度の改正 | 改正の内容を読み、運用に落とし、説明できる状態にした |
| システムの更改 | 新しい操作と業務の流れを覚え、手順書を作った |
| 新しい事業の立ち上げ | 前例のない業務を、他団体の例を調べながら設計した |
| 法令の解釈 | 条文と通知を確認し、判断の根拠を整理した |
1つ目が、公務員のいちばん強い材料です。
3年ごとに異動していれば、制度も相手も違う仕事をゼロから立ち上げた経験が6回あります。民間で同じ期間に、これだけ分野を変えている人は多くありません。
答え方の例を挙げます。
> 異動のたびに、扱う制度が変わります。税から福祉に移ったときは、根拠となる法令と、市の要綱、国の通知を読んだうえで、窓口で説明できる状態まで持っていくのに約2か月かかりました。以降は、新しい分野に入るときに、まず根拠となる規定を一覧にして、そこから運用を確認するという順で進めています。
「学び方の型を持っている」という話になっています。これが、この質問でいちばん強い答えです。
③の計画——具体的に述べる
「入社後に勉強します」では、計画になりません。
| 具体の入れ方 | 例 |
|---|---|
| 対象 | 「発生主義の会計の基礎」「業界の商習慣」 |
| 方法 | 「簿記の学習を続ける」「公表されている資料を読む」 |
| 時期 | 「入社までに」「最初の3か月で」 |
| 確認 | 「分からない部分は、都度確認させていただきたい」 |
4つを1文にすると、こうなります。
> 発生主義の会計は未経験なので、簿記の学習を続けています。入社後の3か月で、実際の処理の流れを覚えたいと考えています。
短くて構いません。具体であることが条件です。
資格の扱い
資格は、①の補強として使えます。
| 状況 | 話し方 |
|---|---|
| 取得済み | 実務との対応を添える(資格だけでは弱い) |
| 学習中 | 受験の予定を添える(「勉強中」だけは避ける) |
| 検討中 | なぜその資格かを述べる |
「取れば転職できる」という考え方は、実態に合いません。資格は、実務の隣にあって効きます。
詳しくは資格・免許の書き方と、書かないほうがよいものに整理しています。
「なぜその分野を学びたいのか」まで用意する
③を述べると、理由を聞かれることがあります。
「なぜ、その分野を学ぼうと思われたのですか」
ここで答えが止まると、③が取ってつけたものに見えます。理由は、いまの仕事とつなげて述べてください。
> 予算の査定をしていると、単年度の収支でしか判断できない場面がありました。投資の効果が数年先に出る事業でも、その年度の枠の中で判断することになります。発生主義の会計を学びたいのは、その判断の物差しを増やしたいからです。
「必要だと言われたから」ではなく、「自分の仕事で足りないと感じたから」という筋にすると、①とも③とも自然につながります。
学ぶ対象を選ぶ理由が、自分の経験から出ている。この形が、いちばん説明が短く済みます。
年代による見られ方の違い
| 年代 | この質問で見られること |
|---|---|
| 20代 | 吸収の速さ。立ち上げの実績 |
| 30代 | 学び方の型。未経験の分野をどう処理するか |
| 40代以降 | 学ぶ姿勢があるか。過去の成功のやり方に固執しないか |
40代以降では、意欲そのものより「変われるか」が見られます。
「役所ではこうでした」を判断の根拠にしないという姿勢を、具体的な言い方で示してください。「まずは御社のやり方を覚えたうえで、気づいた点があれば相談させていただきます」という一言で足ります。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 「頑張ります」で答える
過去に習得した事実を述べてください。
2. 学習を資格や講座に限定する
異動のたびの立ち上げが、いちばん強い材料です。
3. 研修の受講の一覧を並べる
何を作ったか、何に使ったかを述べてください。
4. ③が抽象的
対象・方法・時期を入れてください。
5. 「勉強中です」だけ
受験の予定まで述べてください。
6. 過去のやり方に固執する姿勢を見せる
40代以降では、ここが見られます。
まとめ
- 聞かれているのは意欲の強さではなく、新しいことを実際に習得した事実です
- 地方公務員法第39条は、職員に研修を受ける機会が与えられなければならないとし、任命権者が行うと定めています。民間では自分で選ぶ比重が高くなります
- 示すのは、①過去に習得した事実 ②現在の学習 ③入社後の計画の3点。①がいちばん大事です
- 異動のたびに制度を習得してきた経験が、いちばん強い材料です
- 「学び方の型を持っている」という話にすると、説得力が出ます
- ③は、対象・方法・時期を入れてください。「勉強します」では計画になりません
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よくある質問
同じ部署が長く、新しいことを学んだ経験が思い出せません
制度の改正を思い出してください。同じ部署にいても、扱う制度は改正されます。改正のたびに、内容を読み、運用に落とし、窓口で説明できる状態にしてきたはずです。それは、新しいことの習得そのものです。加えて、システムの更改があれば、それも材料になります。話し方は、「改正の内容を読んで、どう運用に落としたか」の手順を述べてください。「改正の条文と国の通知を確認し、影響する要綱と様式を一覧にしてから、窓口の説明の手順を作りました」という形です。同じ部署が長いこと自体は、弱点になりません。
業界の知識がないことを、正直に言ってよいですか
言ってください。知らないことを知っているように話すと、その場の会話で崩れます。言い方は、「調べた範囲」と「分からない部分」を分けることです。「公表されている資料を拝見した範囲では、◯◯という事業が中心だと理解しています。実際の業務の進め方については、分からない部分が多いので、確認させていただきたいと考えています」。この形なら、準備してきたことと、謙抑の両方が伝わります。なお、公式サイトに書いてあることを知らないまま面接に臨むのは避けてください。それは意欲ではなく、準備の問題として見られます。
入社後の研修制度について、質問してもよいですか
質問して構いません。ただし、聞き方に注意が要ります。「研修制度はありますか」だけだと、受け身の姿勢として受け取られることがあります。「入社された方は、最初の3か月でどのように業務を覚えていかれますか」と聞くほうが、実態が分かり、姿勢も伝わります。あわせて、教育の担当が付くのか、実務の中で覚える形なのかを確認しておくと、入社後の見通しが立ちます。確認の質問は3つまでにして、残りは選考が進んだ段階で聞くようにしてください。