選考対策 / 面接
「スピード感についていけるか」への答え方
公務員の面接で、もっとも答えにくい質問かもしれません。
「役所とは、だいぶスピード感が違いますが、大丈夫ですか」
「大丈夫です」と答えると、根拠がありません。「慣れます」でも同じです。かといって、「役所も速いです」と言い返すと、噛み合いません。
この質問は、答え方が決まっています。構造を説明し、自分が短縮した経験を1つ出す。それだけです。
この記事では、その組み立てを扱います。面接の全体像は公務員からの転職面接|全体の流れと準備にあります。
結論:構造の説明 + 短縮の経験
| 段 | 内容 | 長さ |
|---|---|---|
| ① | 速度の違いがなぜ生じるかを構造で説明する | 30秒 |
| ② | その構造の中で、自分が短縮した経験を1つ | 30秒 |
| ③ | 応募先では何が変わると理解しているか | 20秒 |
「大丈夫です」は、どこにも入りません。
役所にも、処理の期間を管理する仕組みがあります
まず、事実の確認です。
行政手続法第6条です。
> 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(中略)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは(中略)公にしておかなければならない。
「標準処理期間」です。申請を受けてから処分までの標準的な期間を定めるよう努め、定めたら公にしておく。
つまり、役所にも、処理の期間を決めて管理する仕組みがあります。
許認可の窓口を担当したことがある方は、この期間を意識して仕事をしてきたはずです。「何日以内に返す」という基準の中で動いていた。
この事実は、①の説明に使えます。「速度の概念が無い」わけではない、と言えるからです。
遅く見える3つの構造
そのうえで、違いは確かにあります。理由は3つです。
| 構造 | 内容 |
|---|---|
| ① 合議 | 決裁に関係する部門の同意が要る。段数が増える |
| ② 記録 | 判断の過程を文書に残す。後から検証されるため |
| ③ 公平性 | 同じ条件の相手に同じ扱いをする。例外を作ると全体に波及する |
3つとも、速度を落とすためにあるのではありません。
後から検証できることと、相手によって扱いが変わらないことを担保するための仕組みです。
この説明ができると、「制度の意味を理解したうえで、違いを把握している人」として受け取られます。
逆に、「役所は無駄な手続きが多くて」と答えると、現職を否定する形になり、面接で「なぜ民間へ」と聞かれたときで書いた問題が起きます。
短縮した経験を1つ用意する
②が、この質問の核心です。同じ構造の中で、自分が期間を縮めた経験を1つ用意してください。
| 短縮の型 | 例 |
|---|---|
| 事前に詰める | 決裁に回す前に関係課と論点を協議し、差戻しを減らした |
| 様式を整える | 確認の項目を様式化し、やり直しを減らした |
| 順番を変える | 並行できる工程を切り出し、同時に進めた |
| 判断の基準を決める | 迷う案件の基準を決め、そのつど相談する工程をなくした |
| 権限を使う | 専決の範囲を確認し、上位に上げる案件を絞った |
どれか1つは、心当たりがあるはずです。
> ◯◯の手続きについて、決裁に回してから差し戻される件数が多かったため、回す前に関係する2課と論点を協議する運用に変えました。結果として、申請から決定までの期間が平均で約◯日短縮しています。
この1文があると、①の説明が机上の話でなくなります。
③——変わると理解していること
最後に、応募先で何が変わるかを述べます。
| 変わること | 言い方の例 |
|---|---|
| 決裁の段数 | 判断の段数が減るぶん、個人が負う責任の範囲が広がると理解しています |
| やり直しのコスト | 先に走って、途中で直す進め方になると理解しています |
| 記録の量 | すべてを文書にするのではなく、必要な範囲を選ぶことになると理解しています |
| 顧客の期限 | 年度ではなく、顧客との約束が期限になると理解しています |
2つ目が、いちばん大きい違いです。
役所では、間違いを出さないことが優先されます。民間では、早く出して直すほうが結果が良い場面があります。この違いを認識していることを、1文で示してください。
この3つは、聞かれてから考えると出てきません。とくに2つ目は、役所では当たり前の感覚なので、意識して言葉にしておく必要があります。
答え方の例
> 役所の手続きが時間を要するのは事実です。ただ、理由は3つあって、決裁に関係部門の同意が要ること、判断の過程を文書に残すこと、同じ条件の相手に同じ扱いをする必要があることです。いずれも、後から検証できるようにするための仕組みだと理解しています。>> そのうえで、同じ仕組みの中でも短縮はできます。◯◯の手続きについて、決裁に回す前に関係する2課と論点を協議する運用に変えたところ、申請から決定までの期間が平均で約◯日短くなりました。>> 御社では、判断の段数が減るぶん、個人が負う責任の範囲が広がると理解しています。先に出して途中で直す進め方は経験がないので、そこは入社後に身につける必要があると考えています。
1分半程度です。③で未経験の部分を認めているので、過大な約束になっていません。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 「大丈夫です」で終える
根拠がありません。構造と経験で答えてください。
2. 役所を否定して答える
「無駄な手続きが多くて」は、現職の否定になります。
3. 役所も速いと反論する
噛み合いません。違いは認めたうえで話してください。
4. 短縮の経験を出さない
この質問の核心は②です。1つ用意してください。
5. 「根回し」という言葉を使う
「事前の合意形成」と言い換えてください。
6. 全部できると答える
未経験の部分を認めるほうが、信用されます。
まとめ
- 答えは、①構造の説明 ②自分が短縮した経験 ③応募先で変わることの理解の3段です
- 行政手続法第6条は、標準処理期間を定めるよう努め、定めたときは公にしておくことを求めています。役所にも期間を管理する仕組みがあります
- 遅く見える理由は、合議・記録・公平性の3つ。後から検証できるようにするための仕組みです
- ②が核心です。事前に詰めた、様式を整えた、順番を変えた、基準を決めた。どれか1つを用意してください
- 「根回し」は「事前の合意形成」と言い換えます
- 未経験の部分(先に出して直す進め方)は、認めるほうが信用されます
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よくある質問
実際に、速度の違いについていけるか不安です
不安を面接で述べる必要はありませんが、準備はできます。入社後に差が出るのは、判断の速度そのものより、「確認しきらずに進める」ことへの慣れです。役所では、確認できていない状態で進めると問題になります。民間では、確認を待って止まるほうが問題になる場面があります。対処としては、進める前に「この判断は後戻りできるか」を分ける習慣が有効です。後戻りできる判断は先に進め、後戻りできない判断は確認する。この切り分けができれば、速度の差は埋まります。入社後の3か月で慣れる方が多い、というのが実際のところです。
前職の進め方を持ち込むと、煙たがられませんか
やり方を押し付けなければ、問題になりません。むしろ、記録を残す習慣や、関係部門に事前に確認する習慣は、評価されることが多いです。困るのは、「役所ではこうでした」を判断の根拠にすることです。言い方を変えて、「確認しておいたほうがよい点があります」と内容で述べれば、同じことが伝わります。入社直後は、まず相手のやり方を覚えるほうが確実です。改善の提案は、仕組みが分かってからで間に合います。この姿勢を面接で述べると、③の答えとしても機能します。
「決断が遅い」と指摘されたことがあります
指摘された事実は、面接で自分から述べなくて構いません。ただし、「短所は」と聞かれた場合には使えます。答え方は、事実と、その後の対処をセットにすることです。「確認を優先しすぎて判断が遅れたことがあり、それ以降は、後戻りできる判断と、できない判断を分けて、前者は先に進めるようにしています」という形です。短所を述べて、対処を添える。この形であれば、短所の質問は1回で終わります。対処が無いまま短所だけを述べると、その点について確認が続きます。