選考対策 / 職務経歴書
志望動機欄と職務経歴書の役割分担
書類が2通そろっていても、中身が混ざっていることがあります。
職務経歴書の末尾に、「貴社の理念に共感し、これまでの経験を活かして貢献したいと考えております」という段落が付いている。一方、志望動機の欄には、担当してきた業務の説明が並んでいる。
逆です。
職務経歴書は「何ができるか」、志望動機は「なぜここか」。この分担を守るだけで、2通の情報量が増えます。
この記事では、その分け方と、志望動機の組み立てを扱います。履歴書との書き分けは職務経歴書と履歴書の書き分けにあります。
結論:3つの問いを分担する
| 問い | どこで答えるか |
|---|---|
| 何ができる人か | 職務経歴書 |
| なぜこの会社か | 志望動機 |
| なぜ公務員を辞めるのか | 面接(書類には書かない) |
3つ目を志望動機に混ぜると、動機が「現職の話」で埋まります。転職理由の扱いは転職理由を職務経歴書に書くかに分けて書きました。
「役割を広く担う」という書かれ方
志望動機を組み立てるときに、役所の仕事の定義のされ方が参考になります。
地方自治法第1条の2第1項です。
> 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。
「役割を広く担う」。自治体は、やることの一覧ではなく、担う役割で定義されています。
同条第2項では、国と地方の役割分担が定められています。誰が何を担うかを決めたうえで、その範囲で動くという構造です。
会社も同じです。どの会社にも、市場の中で担っている役割があります。自治体向けのシステムを作る会社、インフラを設計する会社、人の採用を支援する会社。
志望動機とは、「その会社が担っている役割」と「自分が担ってきた役割」の接点を示すことです。
「理念に共感しました」では、接点が示せません。共感は、誰にでも書けるからです。
志望動機の3段
| 段 | 書くこと | 分量 |
|---|---|---|
| ① 応募先の役割の理解 | その会社が、誰に対して何をしている会社か | 2〜3行 |
| ② 自分の経験との接点 | 自分の経験の、どの部分がそこに対応するか | 4〜6行 |
| ③ 入って何をするか | 入社後に、どの場面で使えると考えているか | 2〜3行 |
全体で10行前後、300〜400字です。
①を調べるのに時間をかけてください。会社の公式サイトの事業の説明、採用の情報、公表されている資料。そこに書かれている言葉を使って書くと、②との接点が自然につながります。
悪い例と良い例
悪い例
> 貴社の理念に共感いたしました。これまで培った調整力とコミュニケーション能力を活かし、貴社の発展に貢献したいと考えております。
①も②も③も、ありません。どの会社にも出せる文章です。
良い例(自治体向けの事業をしている会社)
> 貴社は、自治体の業務システムの導入から運用の定着までを支援されていると理解しています。導入そのものより、稼働した後に職員が使いこなせる状態を作るところに比重を置いている点が、他社との違いだと受け止めました。>> 私は、基幹システムの更改にあたり、業務側の担当として現行の帳票◯種類と例外の処理◯類型を棚卸しし、要件の一覧を作成しました。稼働後は職員向けの手順書を作成し、問い合わせ約◯件に対応しながら、頻出する項目について手順書を改訂しています。導入の前より、稼働した後のほうが手がかかることを、実務として経験しています。>> 貴社では、導入の支援と、稼働後の定着の場面で、この経験が使えると考えています。とくに、職員がどこで詰まるかを事前に想定する部分で貢献できます。
良い例(一般の事業会社)
> 貴社は、製造の現場の品質の管理を、記録と手順の標準化によって支える事業をされていると理解しています。>> 私は、食品営業施設約◯施設の監視を担当し、年間約◯件の立入検査を行ってきました。施設ごとにばらついていた確認の項目を業種別に様式化し、監視員によって指摘の内容が変わる状態を統一した経験があります。基準を文書にして、現場で運用できる形にするところが、担ってきた役割です。>> 貴社の事業でも、顧客の現場ごとに違う実態を、標準の手順に落とす場面があると考えています。その部分で使える経験だと受け止めています。
どちらも、①②③が順に入っています。
「なぜ今か」を聞かれたときの材料
志望動機は、「なぜこの会社か」と「なぜ今か」の2つで構成されます。②までで前者は示せますが、後者を聞かれる場面があります。
答えの材料になるのは、自分の仕事の区切りです。
| 区切りの例 | 言い方 |
|---|---|
| 担当した制度の改正が施行された | 一区切りがついたため、次の環境で経験を広げたい |
| 計画の策定と初年度の運用を終えた | 作った仕組みが回り始めたところで、次に進みたい |
| 異動の周期に当たっている | 分野が変わる時期に、自分で選ぶことにした |
| 資格の取得や実務の要件を満たした | 使える場所を広げたい |
「なぜ今か」は、現職の不満ではなく、自分の区切りで答えられます。この材料を1つ用意しておくと、面接で詰まりません。
職務経歴書に志望動機を書く場合
応募先から指定された場合のみ、職務経歴書の末尾に置きます。
- 分量は5〜8行
- 内容は②の接点を中心に(①③は短く)
- 経歴の説明を繰り返さない
指定がなければ、職務経歴書には書かないでください。経歴の情報が減ります。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 理念への共感から書き始める
誰にでも書けます。会社が担っている役割から書いてください。
2. 業種の説明で終わる
「自治体向けのシステムの会社」は、業種です。その会社の特徴を書いてください。
3. 自分の経歴の説明で埋まる
経歴は職務経歴書にあります。志望動機では接点だけを示します。
4. 「成長したい」で締める
入って何をするかを書いてください。学ぶ姿勢は前提です。
5. 公務員を辞める理由を混ぜる
面接で聞かれたときに答えれば足ります。
6. 全社に同じ文章を出す
①と②は、応募先ごとに変わります。使い回せるのは③の一部だけです。
まとめ
- 職務経歴書は「何ができるか」、志望動機は「なぜここか」。辞める理由は面接で答えます
- 地方自治法第1条の2第1項は、地方公共団体が住民の福祉の増進を基本として、役割を広く担うと定めています。会社にも、市場の中で担っている役割があります
- 志望動機は、①応募先の役割の理解 ②自分の経験との接点 ③入って何をするかの3段、300〜400字です
- ①に時間をかけてください。同じ業種の2社を比べると、書く材料が見つかります
- 職務経歴書に志望動機を書くのは、指定がある場合のみ。5〜8行です
- 志望動機が書けない求人は、見送る判断もあります
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よくある質問
業界の知識がないので、①が書けません
公式サイトに書いてあることで足ります。専門の知識は求められていません。書くのは、「誰に対して、何を提供している会社か」です。事業の説明のページ、採用のページ、公表されている資料。この3か所を読めば、2〜3行は書けます。加えて、その会社の顧客に自治体が含まれているかどうかは必ず確認してください。含まれていれば、自分が顧客の側にいた経験が、そのまま②の材料になります。分からない部分を推測で書くのは避けてください。面接で確認すればよいことです。
応募先が複数あり、志望動機を全部作る時間がありません
③は使い回せます。変えるのは①と②です。②についても、自分の経験の引き出しを3つ用意しておけば、応募先に応じて選ぶだけで済みます。たとえば、「制度を読み解いて実務に落とした経験」「関係部門を動かして合意を作った経験」「現場の手順を標準化した経験」の3つを用意しておく。応募先の役割に近いものを1つ選んで、①とつなげる。この作り方なら、1社あたり20分で作れます。全部を一から書こうとすると、応募の数が減ります。
「公務員から民間へ」という動機を、どう位置づければよいですか
動機の中心に置かないでください。中心に置くと、「民間ならどこでもよい人」と読まれます。位置づけるなら、③の一部として1行です。「制度を運用する側で仕事をしてきたため、制度に合わせて仕組みを作る側で経験を広げたいと考えています」という形です。この1行があると、業種を変える理由が自然につながります。ただし、この1行だけでは志望動機になりません。①と②が具体的であることが前提です。辞める理由そのものの扱いは転職理由を職務経歴書に書くかに整理しています。