選考対策 / 志望動機
行政と関係ない業界への志望動機
自治体を顧客とする会社なら、経験はそのまま使えます。書き方は自治体向け事業の会社への志望動機にあります。
問題は、行政とほとんど関係のない業界に応募する場合です。
消費者向けの事業、製造業、流通、飲食。顧客も、扱う制度も、これまでとは重なりません。
この記事では、その場合の組み立てを扱います。
業界を選ぶことは、自由です
前提として、確認しておきます。
日本国憲法第22条第1項です。
> 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
職業選択の自由。
どの業界を選ぶかは、本人が決めることです。
「公務員だから、行政関係の仕事に行くべき」ということはありません。
ただし、説明の難易度は上がります。顧客も制度も重ならないぶん、接続を自分で作る必要があるからです。
接続できるのは、機能だけ
| 接続の種類 | この場合 |
|---|---|
| 同じ顧客 | 使えません |
| 同じ制度 | 使えないことが多い |
| 同じ機能 | ここで接続します |
| 同じ困りごと | 使える場合がある |
機能で接続する、というのが基本の方針です。
機能とは、「何をしていたか」です。
| 機能 | 行政と関係ない業界での対応 |
|---|---|
| 債権の管理と回収 | 通信、小売の未収金、リース |
| 申請の審査 | 保険の査定、与信の審査、会員の審査 |
| 契約と調達 | 製造業の購買、外注の管理 |
| 窓口の運営 | 顧客の対応の部門、サポートの運営 |
| 記録と文書の管理 | 品質の記録、内部統制の文書 |
| 統計と分析 | 販売の分析、需要の予測 |
右側は、いずれも行政と無関係な業界にある仕事です。
「役所の仕事は特殊だから使えない」ということはありません。
業界を選んだ理由が要る
機能で接続できても、「なぜこの業界か」は別に必要です。
ここが、いちばん難しい部分です。
| ✕ | ○ |
|---|---|
| 「新しい分野に挑戦したい」 | その業界の何に関心があるかを具体的に |
| 「成長している業界だから」 | 業界の成長が、自分の仕事とどう関わるか |
| 「幅広い経験を積みたい」 | その業界で何を担うか |
業界を選んだ理由の材料を挙げます。
| 材料 | 内容 |
|---|---|
| 利用者としての経験 | その業界のサービスを使ってきた実感 |
| 役所での接点 | 許認可、指導、統計で接したことがある |
| 課題の認識 | その業界が抱える課題を知っている |
| 機能の需要 | 自分の機能が、その業界で不足している |
4つ目が、いちばん説明しやすいです。
> 製造業では、品質に関する記録の管理と、監査への対応が求められると理解しています。私は、監視指導の側で記録の様式を整備し、検査に対応してきました。その経験が、記録を作る側でも使えると考えました。
「業界に関心がある」ではなく、「この業界に、自分の機能の需要がある」という筋です。
未経験であることを認める
行政と関係のない業界では、業界の知識がありません。
これを隠さないでください。
> 業界の商習慣や、実際の業務の進め方については分かっていません。入社後に覚える必要があると考えています。
そのうえで、「何なら持ち込めるか」を述べてください。
分かっていないことを認めたうえで、持ち込めるものを示す。この形が、いちばん信頼されます。
③を書くと弱くなると考える方がいますが、逆です。知らないことを知っていると述べる人のほうが、入社後の立ち上がりを見積もりやすいと受け取られます。
志望動機の型
| 段 | 内容 |
|---|---|
| ① 業界を選んだ理由 | 自分の機能の需要があるという筋で |
| ② 機能での接続 | 具体的な場面と数字 |
| ③ 分かっていないこと | 業界の知識は未経験だと認める |
| ④ 入社後の行動 | 最初に何をするか |
③を入れるのが、この場合の特徴です。
自治体向けの会社であれば、③は要りません。知識があるからです。
関係のない業界では、③があるほうが誠実に受け取られます。
役所での接点を、思い出しておく
「行政と関係がない」と思っている業界でも、接点があることがあります。
| 接点の形 | 例 |
|---|---|
| 許認可・届出 | 飲食、旅館、理美容、薬局、運送、建設 |
| 補助金・助成 | 製造業の設備投資、商店街、農林水産 |
| 統計の調査 | 事業所の調査、経済に関する統計 |
| 指導・監査 | 食品、環境、労働、廃棄物 |
| 入札の参加 | 物品の納入、印刷、清掃、警備 |
5つとも、役所の側から接してきた場面です。
その業界の会社が、行政に対してどういう手続きをしているかを知っているということは、その会社の中では希少な知識です。
たとえば、許認可の更新の時期や、必要な書類の実態を知っている。これは、総務や管理の部門で役立つ知識です。
「関係がない」と決める前に、自分が接したことのある業界かどうかを確認してください。接点があれば、志望動機の材料になります。
業界研究の最低限
応募の前に、次の3つは確認してください。
| 確認 | 見る場所 |
|---|---|
| その業界の顧客は誰か | 公式サイト、業界の解説 |
| 収益はどこから生じるか | 事業の説明 |
| その会社の位置づけ | 同業他社との比較 |
3つとも、公表されている情報で分かります。
深い知識は不要ですが、この3つを知らずに応募すると、面接の会話が成立しません。
経験の言い換えから相談することもできます。
なお、接点があった場合でも、特定の事業者の情報は書けません。地方公務員法第34条の守秘の義務は、退職後も続きます。書けるのは、制度上そうなっている一般的な事柄までです。
よくある失敗
1. 「挑戦したい」で業界の理由を済ませる
その業界である理由になりません。
2. 機能での接続を書かない
唯一の接続点です。
3. 業界の知識があるふりをする
面接の会話で崩れます。
4. 「なぜ行政関係を選ばないのか」に答えを用意していない
必ず聞かれます。
5. 業界の基本を調べずに応募する
会話が成立しません。
6. 経験が使えないと決めつける
機能は、どの業界にもあります。
まとめ
- 日本国憲法第22条第1項は、職業選択の自由を定めています。どの業界を選ぶかは、本人が決めることです
- 接続できるのは、機能だけです。債権の管理、審査、調達、窓口、記録、分析
- 業界を選んだ理由が別に必要です。「自分の機能の需要がある」という筋が説明しやすい形です
- 業界の知識がないことは、認めてください。そのうえで、持ち込めるものを示します
- 「なぜ行政関係を選ばないのか」への答えを用意してください
- 応募の前に、顧客・収益の源・会社の位置づけの3つは確認してください
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よくある質問
業界の経験がないと、書類で落ちますか
求人票の応募条件によります。「◯◯業界での経験」が必須なら、書類の段階で通りにくいです。一方、「顧客折衝の経験」「業務改善の経験」といった機能で書かれた条件であれば、業界が未経験でも応募できます。応募条件の書かれ方を見てください。なお、未経験者を対象とした募集もあります。その場合は、立ち上がりの速さと、学ぶ姿勢が見られます。示し方は学習意欲をどう示すかに整理しています。業界の経験がないこと自体は、応募できない理由にはなりません。
志望動機で、前職の話をどのくらい書きますか
②の機能での接続の部分だけで足ります。全体の半分程度です。役所の業務の説明が長くなると、読む側が追えません。とくに、行政と関係のない業界では、制度の説明をされても分からないためです。書くときは、制度の名前を出さずに、機能で書いてください。「生活保護の決定を担当」ではなく、「申請の内容を確認し、要件に該当するかを判断して決定する業務を、年間約◯件担当」という形です。業界の外の人が読んで分かる言葉にしてください。
年齢が上がるほど、業界を変えるのは難しくなりますか
年代によって、求められるものが変わります。20代・30代前半であれば、立ち上がりの速さと学ぶ姿勢が見られます。40代以降では、入社直後に持ち込めるものが重く見られます。したがって、年代が上がるほど、機能での接続を具体的に書く必要があります。「管理の経験」「折衝の経験」といった、業界を問わず使える機能を前に出してください。なお、業界を変えると処遇が下がることがあります。この点は、「年収が下がっても大丈夫か」への答え方に整理しています。条件も含めて判断してください。