選考対策 / 職務経歴書
公務員用語の言い換え一覧|そのまま使えない言葉
職務経歴書を拝見していて、読む速度が落ちる箇所があります。
「◯◯係の所管事務について起案し、課長専決により決定。関係課に合議のうえ、復命書を供覧。」
庁内では、1行で正確に通じます。ところが、民間の採用担当者には、ほぼ読めません。
内容が難しいのではありません。同じ動作を指す言葉が、別に存在しているだけです。
この記事では、言い換えが要る言葉を4つに分けて一覧にします。書類全体の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本、自己PRでの使い方は自己PRの作り方|公務員の実績を民間の言葉にするにあります。
結論:言い換えが要るのは4種類
| 分類 | 代表的な言葉 |
|---|---|
| ① 組織と分掌 | 所管、事務分掌、担当、課内、部局 |
| ② 文書と決裁 | 起案、決裁、専決、代決、合議、供覧、復命、施行 |
| ③ 予算と契約 | 予算要求、査定、流用、補正、随契、指名、負担行為 |
| ④ 対外と議会 | 答弁、照会、通知、要綱、説明会、パブリックコメント |
この4つに含まれない言葉は、たいていそのまま使えます。全部を書き換える必要はありません。
「分掌」は、条例で決まった割り当ての言葉です
①の言葉が通じにくいのは、役所の組織が、法律と条例で組み立てられているからです。
地方自治法第158条第1項です。
> 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、必要な内部組織を設けることができる。この場合において、当該普通地方公共団体の長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌する事務については、条例で定めるものとする。
「事務を分掌させるため」の内部組織。そして、部に相当する組織の設置と、その分掌する事務は、条例で定められる。
つまり、「所管」とは、条例と規則で自分の課に割り当てられた事務の範囲を指しています。民間の会社に、これと同じ概念はありません。
会社にも分掌はありますが、根拠が社内の規程なので、範囲の固さが違います。「所管外です」という言い方が役所で通じるのは、割り当てが外から決まっているからです。
だから、「所管」は「担当していた範囲」に開いて書きます。言葉を変えるのではなく、根拠の違いごと、動作に開くのが基本の考え方です。
① 組織と分掌
| 庁内の言葉 | 書き換えの例 |
|---|---|
| ◯◯係の所管事務 | ◯◯係が担当していた◯◯に関する業務 |
| 事務分掌 | 担当の割り当て、業務分担 |
| 部局 | 部門 |
| 担当(人を指す) | 担当者。管理職の場合は「メンバー」 |
| 他課、庁内 | 他部門、社内に相当する範囲 |
② 文書と決裁
ここがいちばん多く出てきます。
| 庁内の言葉 | 書き換えの例 |
|---|---|
| 起案する | 案を作成する、提案の文書を作成する |
| 決裁を受ける | 上長の承認を得る |
| 専決する | 委任された権限の範囲で自ら決定する |
| 代決する | 上長の不在時に、代わって決定する |
| 合議(あいぎ) | 関係部門の同意を得る、関係部門と協議して承認を得る |
| 供覧 | 関係者に回付して共有する |
| 復命(書) | 出張や会議の内容を報告する(報告書) |
| 施行する | 文書を発送する、対外的に効力を発生させる |
| 決裁権者 | 決定権者、承認者 |
| 起案文書の回議 | 承認のプロセス、稟議 |
「稟議」は、民間側の言葉です。役所では使いませんが、書類で使うと、読む側の理解は速くなります。ただし、稟議と決裁は完全に同じではありません。専決の範囲がある場合は、「委任された範囲で自ら決定」と書き分けてください。
③ 予算と契約
| 庁内の言葉 | 書き換えの例 |
|---|---|
| 予算要求 | 予算案の申請、部門予算の策定 |
| 査定 | 予算案の妥当性の検証、コストの精査 |
| 予算の流用 | 費目間の資金の振り替え |
| 補正予算 | 期中の予算の修正 |
| 負担行為 | 支出の決定、発注の決定 |
| 随契(随意契約) | 競争入札によらない契約 |
| 指名(競争入札) | 指名した業者による競争入札 |
| 起債 | 借入、資金調達 |
| 債務負担行為 | 複数年度にまたがる支出の約束 |
| 不用額 | 予算の未執行分 |
略語は、必ず開いてください。「随契」「指名」「負担」は、庁内での短縮形です。
④ 対外と議会
| 庁内の言葉 | 書き換えの例 |
|---|---|
| 答弁(資料の作成) | 経営層・議決機関への説明資料の作成と想定問答の準備 |
| 議会対応 | 議決機関への説明、資料の作成、質問への回答 |
| 照会・回答 | 問い合わせへの対応、他機関からの確認への回答 |
| 通知 | 対象者への正式な文書での連絡 |
| 要綱 | 内部の運用の基準(法令ではない取扱いの定め) |
| 要領 | 実務の手順書 |
| 住民説明会 | 利害関係者への説明会、合意形成の場 |
| パブリックコメント | 案の公表と意見の募集、意見への対応方針の作成 |
| 陳情・要望への対応 | 外部からの要望の受付と、対応方針の整理 |
変換の原則——迷ったら動作に開く
表に無い言葉が出てきたときの原則は、1つです。
「その言葉が指している動作を、3つの要素で書き直す」。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 誰に対して | 住民、事業者、他部門、上位の機関 |
| 何をして | 確認した、決定した、依頼した、報告した、調整した |
| どこまで | 自分が決めたのか、案を作ったのか、実行したのか |
「合議」なら、「関係する3つの部門に対して、案の内容を説明し、同意を得た」です。この形にすれば、言い換えの表がなくても伝わります。
自分の書類のどこが読みにくくなっているかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。経験の言い換えから相談することもできます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担です)。
よくある失敗
1. 略語をそのまま書く
随契、負担、起債、予特。庁内の短縮形は、開いてください。
2. 全部を民間語に置き換える
条例、許認可、監査、法令は残す。置き換えると専門性が消えます。
3. 「対応」で丸める
「議会対応」「住民対応」「苦情対応」。何をしたかが消えます。動作で書いてください。
4. 漢字の熟語を重ねる
「所管事務の進行管理及び総合調整」。読めますが、中身が入っていません。
5. 役職の通称を使う
「課長級」「部長級」は説明が要ります。人数と権限で示してください。
6. 制度の略称を説明しない
「マイナ」「地財」「交付税」。正式名称か、内容で書いてください。
まとめ
- 言い換えが要るのは、①組織と分掌 ②文書と決裁 ③予算と契約 ④対外と議会の4種類です
- 地方自治法第158条第1項は、事務を分掌させるための内部組織を定め、直近下位の内部組織とその分掌する事務は条例で定めるとしています。「所管」は条例に根拠のある割り当てです
- 略語(随契・負担・起債)は必ず開く。庁内の短縮形は外では通じません
- 「条例」「規則」「許認可」「監査」「法令」は書き換えない。置き換えると専門性が消えます
- 表に無い言葉は、誰に・何をして・どこまでの3要素に開けば伝わります
- 音読すると、引っかかる言葉が見つかります。役所の外の人に読んでもらうのも有効です
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よくある質問
応募先が自治体向けの事業をしている会社です。それでも言い換えますか
この場合は、残す言葉が増えます。自治体向けのシステム、建設コンサルタント、自治体向けの人材サービス。これらの会社の社員は、庁内の言葉をある程度知っています。「起案」「専決」「予算要求」「議会」は、むしろ知っていることの証明になります。ただし、読むのが人事部門であることは変わりません。一次の書類選考は、事業部門ではなく人事が見ることが多いです。対策は、最初の1回だけ開いて、以降は庁内の言葉を使うことです。「予算要求(部門予算の策定)」と一度書けば、以降は「予算要求」で通ります。この書き方なら、両方の読み手に届きます。
専門用語を減らすと、書類が薄くなる気がします
薄くなるのは、用語を減らしたからではなく、動作を書いていないからです。「所管事務の総合調整を担当」を「調整を担当」に変えても、中身は増えません。開くというのは、短くすることではなく、具体にすることです。「◯係と◯係で分担の重なっていた◯件の処理について、受付の段階で振り分ける手順を決め、両係の担当者と合意した」。用語は減りますが、文字数も情報量も増えています。書き換えて薄くなったと感じたときは、3要素(誰に・何をして・どこまで)のどれかが抜けています。
面接でも、同じように言い換えるべきですか
面接では、庁内の言葉が出ても構いません。むしろ、言い換えを意識しすぎて話が止まるほうが不利です。出てしまったときは、「役所では起案と言うのですが、案を作って承認を得る流れです」と、一言添えれば足ります。この添え方ができる人は、相手の前提に合わせて説明できる人として読まれます。面接で見られているのは、用語の正しさではなく、知らない相手に説明する力です。用語の言い換えは、書類のほうで整えておけば十分です。