選考対策 / 職務経歴書
自己PRの作り方|公務員の実績を民間の言葉にする
自己PR欄で、よく拝見するのがこれです。
「責任感を持って、粘り強く業務に取り組んできました。住民の方に寄り添い、関係部署と協力しながら、課題の解決に努めてきました。」
書いていないことが、ひとつもありません。
責任感も、粘り強さも、協調性も、書いていない応募者がいないので、差が付きません。読む側は、この段落を読み飛ばします。
自己PRは、人柄を紹介する欄ではありません。「自分にはこの能力がある」と主張して、その証拠を出す欄です。
この記事では、その3ブロックの作り方を扱います。書類全体の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本、書き出しの5行は職務経歴書の要約欄|最初の5行で何を書くかにあります。
結論:自己PRは3つのブロックでできている
| ブロック | 中身 | 目安 |
|---|---|---|
| ① 能力の主張 | 何ができる人かを、1文で言い切る | 1〜2行 |
| ② 業績の裏づけ | その能力を使った具体的な場面を、数字付きで | 5〜7行 |
| ③ 応募先での再現 | その能力が、応募先のどの場面で使えるか | 2〜3行 |
全体で300〜400字。2つまで。3つ以上並べると、1つも残りません。
①だけの自己PRが、冒頭の例です。②が無いので、主張が宙に浮きます。逆に、②だけを書いて①が無い自己PRもよく拝見します。それは実績欄と同じなので、自己PR欄に置く意味がありません。
①で言い切り、②で証拠を出し、③でつなぐ。この順を崩さないでください。
「発揮した能力」と「挙げた業績」は、条文で分けられています
この2層の構造は、自治体の人事評価の仕組みと同じです。
地方公務員法第6条第1項は、人事評価をこう定義しています。
> 人事評価(任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価をいう。)
「発揮した能力」と「挙げた業績」。法律が、この2つを分けて書いています。そして第23条の2第1項は、任命権者に対して、職員の執務について定期的に人事評価を行わなければならないと定めています。
つまり、能力評価と業績評価の2本立ては、多くの自治体で毎年回っている仕組みです。自己PRの構造と同じです。
ここから、実用的な話が1つ出てきます。自分の人事評価のシートは、自己PRの下書きとして使えます。目標として何を掲げ、何を達成したと書いたか。すでに、年度ごとに言語化されています。
ただし、そのまま貼り付けないでください。評価シートの言葉は、庁内の読み手に向けて書かれています。置き換えが要ります。
庁内の言葉を、求人票の言葉に置き換える
| 庁内での言い方 | 求人票での書かれ方 |
|---|---|
| 関係部署との調整 | 社内の関係部門との折衝、合意形成、部門横断のプロジェクト推進 |
| 予算の査定 | 予実管理、投資判断、コストの妥当性の検証 |
| 要綱・要領の制定 | 社内規程・業務マニュアルの策定、業務プロセスの標準化 |
| 議会の答弁の資料の作成 | 役員・取締役会向けの資料作成、経営層への説明 |
| 住民説明会の運営 | ステークホルダーへの説明、住民合意の形成、リスクコミュニケーション |
| 滞納整理 | 債権の管理と回収、与信の管理、期限のある手続きの管理 |
| 補助金の交付決定 | 申請の審査、要件の確認、交付後のモニタリング |
| 入札と契約の事務 | 調達、ベンダーの選定、契約の管理、仕様書の作成 |
| 監査の対応 | 内部統制の対応、監査法人への対応、証憑の整備 |
| 事業者への指導・監督 | 委託先の管理、品質の管理、是正の要求とフォロー |
中身を変えているのではありません。同じ仕事の、別の呼び名です。
置き換えの目的は、検索と照合です。採用の担当者は、求人票に書いた言葉で書類を読みます。「調整」と書いてある書類と、「部門横断の合意形成」と書いてある書類では、同じ経験でも引っかかり方が違います。
置き換えに迷ったときは、その仕事で「自分が何をしたか」を動詞で3つ書き出すと決まります。調整なら、聞き取る・作り直す・合意する。この3つが入る言葉を選べば、大きく外しません。
悪い例と良い例
悪い例
> 責任感を持って粘り強く業務に取り組んできました。困難な案件でも、関係部署と協力しながら、最後まで諦めずに解決に努めてきました。
①だけです。しかも、能力の名前が具体的ではありません。
良い例(財政・予算の経験)
> 前提の数字を揃えて、合意に持っていくことが、自分の得意な部分です。>> 財政課で◯部局、約◯億円の予算の査定を担当しました。要求の資料が部局ごとにばらばらで、単価の根拠も年度の比較もできない状態だったため、事業ごとに単価と件数を分解して同じ様式に揃えました。そのうえで、削減の案を2案ずつ用意して各部局と協議し、◯件の事業について見直しに合意しました。前年度は査定後に復活の要求が集中していましたが、前提を揃えた年度はその件数が減りました。>> 御社でも、部門ごとに前提の違う数字を突き合わせて投資の優先順位を決める場面があると伺いました。同じ進め方が使えると考えています。
①能力の主張 → ②業績の裏づけ → ③応募先での再現。3つとも入っています。
良い例(窓口・福祉の経験)
> 制度の要件を守りながら、目の前の事情に合わせて手順を組み直すことを続けてきました。>> 生活保護の担当として約◯世帯を受け持ちました。新任の担当者ごとに訪問時の確認の項目がばらついていたため、確認の項目と記録の様式を整理し、引継ぎの時に使える形にまとめました。就労の支援では、ハローワークと就労支援の事業所を含む関係機関と連携し、◯件の支援の計画を作成しています。>> 御社の事業でも、制度の要件を満たしながら利用者ごとに対応を変える場面があると理解しています。その両立を続けてきた経験が使えると考えています。
よくある失敗
1. 能力を3つ以上並べる
2つまで。「調整力と、分析力と、実行力があります」と書かれた書類は、どれも印象に残りません。
2. ②の場面が、いちばん大変だった仕事になっている
苦労の量と、能力の証明は別です。自分が方法を決めた仕事を選んでください。大変さは伝わらなくて構いません。
3. ③が無い
②で終わる自己PRが、いちばん多い形です。③が無いと、「役所ではすごかった人」で止まります。1行でよいので、応募先の場面につないでください。
4. 評価シートの言葉をそのまま使う
「目標管理シートの重点項目」「所属長評価」。庁内の様式の言葉は、外では読めません。
5. 数字を1つも入れない
②には、必ず数字を1つ入れてください。件数でも、世帯数でも、部局の数でも構いません。
6. 応募先ごとに書き換えない
①と③は、応募先ごとに変わります。②は使い回せます。全文を書き直す必要はありません。
自分のどの経験を①に置くかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。経験の言い換えから相談することもできます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担です)。
まとめ
- 自己PRは、①能力の主張 ②業績の裏づけ ③応募先での再現の3ブロック。全体で300〜400字、能力は2つまで
- 地方公務員法第6条第1項は、人事評価を「発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」と定義しています。能力と業績は、条文の上でも分かれています
- 第23条の2により、人事評価は定期的に行われます。自分の評価シートは、自己PRの下書きとして使えます
- ただし、庁内の言葉はそのまま使えません。調整・査定・要綱・答弁の資料は、求人票では別の言葉で書かれています
- ①に置くのは、「その能力が無い人は、どこで詰まるか」を説明できる能力です。人柄の言葉は証拠が出せません
- ①と③は応募先ごとに書き換え、②は使い回す。全文を書き直す必要はありません
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よくある質問
人事評価のシートの内容を、そのまま書いてよいのですか
内容を使うのは問題ありません。自分の目標と自分の達成は、自分の情報です。注意が要るのは2点です。1つは、評価の結果そのもの(評語やランク)を書かないことです。自治体ごとに基準が違うので、外では比較できません。もう1つは、シートに書かれた個別の案件の情報です。事業者の名前や、個人が特定できる事案は、地方公務員法第34条の守秘の義務に関わります。この義務は、その職を退いた後も同様と条文に書かれています。使えるのは、自分が何をどうしたかという方法の部分です。数字は、公表されている範囲のものを選んでください。
大きな成果がありません。地味な仕事しかしていません
自己PRに必要なのは、成果の大きさではなく、再現できる方法があることです。読む側が知りたいのは、「この人を採ったら、同じことをやってくれるか」です。表彰された実績より、「毎年同じところで詰まっていた作業を、様式を変えて詰まらないようにした」のほうが、再現の見込みが読めます。②に書く場面は、自分が方法を決めたものから選んでください。規模が小さくても構いません。むしろ、大きすぎる事業は「組織の成果であって、この人の成果ではない」と読まれることがあります。自分の手が届いていた範囲で選ぶのが確実です。
転職の回数がない(新卒で入庁して1度も転職していない)ことは、不利になりますか
同じ組織に長くいたこと自体は、減点の材料になりません。むしろ、制度の運用を継続して担ってきた経験として読まれます。気をつけるのは、その期間を「1つの経験」として書いてしまうことです。20年在籍していれば、多くの場合6〜7の部署を経験しています。機能で分ければ、担った機能の数はそれだけあります。自己PRでは、その中から応募先に近い機能を1つ選んで、①と②を作ってください。全部を入れようとすると、「幅広く経験しました」という薄い段落になります。選ぶことで、在籍の長さが経験の厚みとして読まれます。