選考対策 / 職務経歴書
条例・規則の改正経験の書き方
職務経歴書で、もっとも安く書かれている経験がこれです。
「◯◯条例の改正を担当」
1行です。実際には、制度の必要性を整理し、他の自治体の例を調べ、案を設計し、法制の担当と条文を詰め、関係課と協議し、議案の資料を作り、議会に説明し、公布と施行の日程を組み、対象者に周知したわけですが、それが全部この1行に入っています。
この記事では、5つの工程に分けて書き方を決めます。書類全体の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本、用語の扱いは公務員用語の言い換え一覧|そのまま使えない言葉にあります。
結論:改正の経験は、5工程で書く
| 工程 | 何をしたか |
|---|---|
| ① 必要性の把握 | 法改正への対応か、運用上の不具合か、新しい制度の創設か |
| ② 案の設計 | 対象・要件・効果・経過措置をどう組んだか |
| ③ 庁内の調整 | 法制の担当との条文の詰め、関係課との協議 |
| ④ 議決・公布 | 議案の資料、委員会での説明、質問への回答 |
| ⑤ 施行と周知 | 施行の日程、様式の改正、対象者への周知、システムの改修 |
①から⑤まで一貫して担当した経験は、民間の中途採用でそのまま読まれます。
制度を作って、合意を取って、動かすところまでやったという経験だからです。
条例は、「義務を課し、権利を制限する」規範です
まず、扱っていたものの重さを確認します。
地方自治法第14条です。
> 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。>> 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
さらに同条第3項は、条例に違反した者に対し、2年以下の拘禁刑、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができるとしています。
一方、規則は第15条第1項です。
> 普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。
整理すると、こうなります。
| 形式 | 誰が決めるか | できること |
|---|---|---|
| 条例 | 議会の議決 | 義務を課し、権利を制限できる。罰則も置ける |
| 規則 | 長が制定 | 長の権限に属する事務。過料は置ける |
| 要綱 | 内部の定め | 法規ではない。内部の運用の基準 |
この三層の違いを、職務経歴書でも意識してください。条例の改正と、要綱の制定では、通った手続きの重さが違います。
民間で近いのは、条例が「利用規約や約款の改定」、規則が「社内規程の改定」、要綱が「運用マニュアルの整備」です。ただし、条例は議決機関の承認を経ているぶん、合意形成の工程が1段多いと考えてください。
悪い例と良い例
悪い例
> ◯◯条例の改正を担当。関係課と調整のうえ、議会に上程した。
良い例
> ◯◯条例の改正(◯年度)>> 法令の改正により、◯◯の対象の範囲が変更されたことを受け、市の条例の改正を担当。対象者約◯件への影響を整理し、経過措置を◯年間置く案と置かない案の2案を作成。影響の大きさと近隣◯市の対応状況を比較したうえで、経過措置を置く案を採用。>> 法制の担当との条文の調整(◯回)、関係◯課との協議を経て議案を作成。常任委員会での説明資料を作成し、質問◯件に回答。>> 公布後、施行までの◯か月で、関係する規則◯本と様式◯種類を改正。対象者への通知(約◯件)と、窓口での説明の手順を整備。システムの改修の要件を情報部門に提示。
同じ改正ですが、5工程が全部入っています。
とくに②の「2案を作って比較した」部分は、民間で読まれる部分です。選択肢を作り、根拠を置いて選んだという設計の記述になります。
改正の種類で、書き方の重心が変わる
| 種類 | 重心を置く工程 |
|---|---|
| 法改正への対応 | ②の影響の整理と経過措置、⑤の施行までの段取り |
| 独自の制度の創設 | ①の必要性の根拠、②の制度の設計、④の説明 |
| 手数料・使用料の改正 | ②の原価の積算と比較、④の説明、⑤の周知 |
| 罰則・規制の強化 | ②の要件の設計、③の法制の詰め、④の説明 |
| 組織条例の改正 | ③の関係部門の調整、⑤の移行の段取り |
独自の制度の創設を担当した経験があれば、いちばん上に書いてください。前例のない制度を設計した経験は、この経歴で最も価値が読まれる部分です。
「法制執務」の経験は、分けて書く
法制の担当課にいた方、あるいは自分の課で例規の審査を受けた経験が長い方は、条文の技術そのものを別に書けます。
- 新旧対照表の作成(◯本)
- 条文の形式の審査、用語の統一
- 一部改正と全部改正の判断
- 附則の設計(施行期日、経過措置、関係条例の改廃)
- 他の例規への波及の確認
この5つは、民間でいえば契約書や規程の文言を精査する仕事に近いです。行政書士や法務の職種に応募する場合、実務の裏づけとして読まれます。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 「改正を担当」で終える
5工程に分けてください。1行では、事務手続きをした人として読まれます。
2. 条例・規則・要綱を区別せずに書く
通った手続きの重さが違います。条例なら、議決を経たことを書いてください。
3. 案を1つしか書かない
2案を比較して選んだなら、必ず書いてください。設計の記述になります。
4. 施行後の段取りを書かない
⑤が抜けると、「案を作った人」で止まります。様式、通知、システムの改修まで書いてください。
5. 対象者の規模を書かない
影響した件数を入れてください。規模が読めます。
6. 議会での説明を書き落とす
議決機関への説明は、経営層への説明として読まれます。
まとめ
- 改正の経験は、①必要性の把握 ②案の設計 ③庁内の調整 ④議決・公布 ⑤施行と周知の5工程で書きます
- 地方自治法第14条第2項は、義務を課し、又は権利を制限するには条例によらなければならないと定めています。同条第3項により罰則も置けます
- 第15条第1項の規則は、長の権限に属する事務について制定されます。要綱は法規ではありません
- 2案を作って比較した過程は、設計の記述として読まれます。必ず書いてください
- 独自の制度の創設を担当したなら、いちばん上に置きます
- 求人票では、社内規程の整備、コンプライアンス体制、約款・利用規約の改定として書かれています
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よくある質問
担当したのは要綱の制定だけです。条例ほど評価されませんか
書き方を変えれば、十分に読まれます。要綱は法規ではありませんが、現場の運用を決めているのは要綱であることが多いです。補助金の交付の基準、相談の受付の流れ、施設の使用の取扱い。対象者に直接影響する部分が、要綱に書かれています。書くときは、「法令と条例の枠内で、運用の基準を設計した」と位置づけてください。そのうえで、①必要性 ②設計 ⑤運用の定着の3工程を具体的に書けば、設計の経験として読まれます。むしろ、要綱は改正の回数が多いので、運用しながら直した回数を書けるという利点があります。
法制の担当課ではなく、事業課の側で改正を経験しました
事業課の側のほうが、書ける工程は多いです。法制の担当は③の条文の技術を担いますが、①の必要性の把握と、②の制度の設計、⑤の施行後の運用は、事業課が担っています。民間で求められているのは、条文の技術より、制度を設計して動かす側の経験であることが多いです。書くときは、「法制の担当と条文を調整」と書けば足ります。条文を自分で書いたかどうかは、問われません。対象者への影響をどう見積もり、どの案を選んだかを書いてください。
改正が議会で否決された、あるいは取り下げになった経験は書けますか
書けますし、書いてよい経験です。ただし、結果ではなく、そこで何をしたかを書いてください。「議会の理解が得られず、継続審査となったため、対象の範囲を◯◯に限定し、施行の時期を◯年遅らせる案に修正して再提出」という形です。修正して通した経験は、そのまま合意形成の経験になります。通らなかったまま終わった場合でも、「◯◯の懸念が示されたため、◯◯の調査を追加で実施」のように、対応した内容を書けます。面接で聞かれたときも、うまくいかなかった案件の扱い方は、見られている部分の1つです。隠すより、対処を書いたほうが読まれます。