選考対策 / 職務経歴書
係長・課長補佐の経験をマネジメント経験として書く
係長や課長補佐の方から、よく伺う言葉です。
「部下はいますが、人事権も予算の決定権もありません。マネジメント経験とは書けないと思います」
この遠慮で、書類が1段階小さくなっています。
民間の求人票が「マネジメント経験」と書くとき、求めているのは人事権ではありません。仕事が回る状態を、自分で作れるかどうかです。
この記事では、その中身を4つに分けて書き方を決めます。管理職の場合は管理職経験の書き方|部下の人数と権限の示し方、書類全体の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本にあります。
結論:マネジメント経験は、4つの要素で書ける
| 要素 | 中身 | 係長・補佐がやっていること |
|---|---|---|
| ① 人 | 誰が、何を担当するかを決める | 係の事務分担、繁忙期の応援の割り振り |
| ② 進行 | 期限までに終わる状態を作る | 進捗の管理、議会や出納の締めからの逆算 |
| ③ 品質 | 出るものの水準を揃える | 起案の確認、決裁前の修正、例外の判断 |
| ④ 折衝 | 外と話をつける | 他課との調整、事業者との折衝、上位への説明 |
この4つのうち、係長・課長補佐は全部を担当しています。人事権の有無とは関係がありません。
書くときは、4つを分けて書いてください。「係長として係を統括」の一文にまとめると、4つとも消えます。
「権限の委任」は、法律に書かれています
③の品質のところで、多くの方が「最終的に決めるのは課長です」とおっしゃいます。その前提を、条文で確認しておきます。
地方自治法第153条第1項です。
> 普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部をその補助機関である職員に委任し、又はこれに臨時に代理させることができる。
長の権限は、補助機関である職員に委任できる。この条文を受けて、多くの自治体が事務決裁規程(専決規程)を定めています。
専決とは、委任を受けた職員が、自分の判断で決裁することです。金額、案件の種類、影響の範囲によって、課長専決、課長補佐専決、係長専決の区分が定められています。
つまり、係長・課長補佐には、規程で定められた判断の範囲があるということです。「決裁は課長」ではありません。課長に上げるものと、自分で決めるものが、あらかじめ分かれています。
職務経歴書には、この「自分で決めていた範囲」を書いてください。
> 事務決裁規程に基づき、◯万円未満の支出負担行為、および◯◯に関する処分の決定について専決。年間約◯件を自らの判断で決定。
この2行があるだけで、判断の範囲が具体的になります。
係長の書き方
悪い例
> 係長として、係員5名を指導し、係の業務を統括した。
4要素が全部「統括」に吸収されています。
良い例
> ◯◯課 ◯◯係 係長(係員◯人)>> 係の事務分担を毎年度設計。年間約◯件の申請の処理について、繁忙期(◯月〜◯月)は処理の状況を週次で確認し、担当者間で件数を再配分。前年度は繁忙期の時間外が特定の担当者に偏っていたため、受付の段階で案件を分ける運用に変更。>> 起案の内容の確認と、事務決裁規程に基づく専決(年間約◯件)を担当。制度の要件に当てはまらない事案については、過去の取扱いと関係法令を確認のうえ判断の方針を整理し、課長と協議する案件との線引きを明確化。>> 他課との協議(年間約◯件)と、事業者◯社との契約の履行の確認を担当。新任の担当者◯人について、月次で処理の内容を確認し、手順書を整備。
4要素が、1つずつ書かれています。
課長補佐の書き方——「課の中の調整」を足す
課長補佐は、係長の4要素に加えて、課の中をまたぐ仕事を担当していることが多くあります。
| 補佐に特有の仕事 | 書き方の例 |
|---|---|
| 課の予算の取りまとめ | ◯係の要求を取りまとめ、課として約◯億円の要求を編成。財政課との協議に同席 |
| 課内の係の間の調整 | ◯係の間で分担の重なる案件について、処理の流れを整理 |
| 議会・上位への説明の準備 | 答弁の資料、委員会の資料、照会への回答の取りまとめ、年間約◯件 |
| 課長の不在時の代決 | 事務決裁規程に基づく代決を担当 |
| 計画・制度の改正の担当 | ◯か年の計画の策定、要綱の改正を担当 |
課長補佐は、民間でいえば「課長代理」や「マネージャー補佐」よりも、実務の裁量が広いことが多いです。その裁量を、規程の言葉で示してください。
「部下の人数」は、実数で書く
係員の人数は、そのまま書いてください。3人でも構いません。
民間の中途採用で見られているのは、人数の多さではなく、人を見た経験があるかどうかです。3人を見ていた人と、見ていない人では、入社後に任せる範囲が変わります。
人数に加えて、次の3つのどれかを添えると、中身が伝わります。
- 担当を決めていた(事務分担を自分が設計した)
- 育てていた(新任◯人の指導、手順書の作成)
- 評価に関与していた(人事評価の1次の評価者だった場合は、その旨)
人事評価の評価者だった方は、必ず書いてください。1次の評価者は、民間でいえば直属の上司の評価と同じ位置です。これは、人事権に近い関与として読まれます。
自分の役割がどう読まれるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。経験の言い換えから相談することもできます。ご利用は無料です(紹介手数料は採用企業の負担です)。
よくある失敗
1. 「統括」「総括」でまとめる
4要素に分けてください。役所の言葉では、この2語が便利すぎます。
2. 人事権が無いことを先に書く
聞かれてから答えれば足ります。先に書くと、4要素まで小さく読まれます。
3. 専決の範囲を書かない
自分で決めていた範囲が、書類から消えます。規程の言葉で書けます。
4. 部下の人数を書かない
3人でも書いてください。人数より、見ていたかどうかが読まれます。
5. 苦労した調整を、苦労の話として書く
何を整理して、どう合意したかに置き換えてください。
6. 実務の比率を書かない
プレイングマネージャーであることは、弱点ではありません。比率で書いてください。
まとめ
- マネジメント経験は、①人 ②進行 ③品質 ④折衝の4要素。人事権の有無とは別です
- 地方自治法第153条第1項は、長の権限を補助機関である職員に委任できると定めています。事務決裁規程の専決は、ここに根拠があります
- 「決裁は課長」ではありません。自分で決めていた範囲を、規程の言葉で書いてください
- 課長補佐は、課の予算の取りまとめ・係の間の調整・議会対応・代決が加わります
- 部下の人数は実数で。3人でも書きます。人事評価の1次の評価者だった場合は、必ず記載します
- プレイングマネージャーであることは、比率で書く。実態に合っているほうが、入社後の見積もりが立ちます
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よくある質問
係長ですが、部下がいません(1人係です)
その場合は、①の人の要素を外して、②③④で書いてください。1人係は、担当と決裁を同じ人がやっている状態なので、専決の範囲がそのまま自分の判断の範囲になります。書くなら、「◯◯に関する事務を単独で担当し、事務決裁規程に基づき年間約◯件を専決」という形です。加えて、1人係は他課との折衝が多くなる傾向があります。④を厚く書いてください。人を見た経験が無いことは、書類の段階では大きな差になりません。中途採用で最初から管理を任せる求人は限られています。実務の範囲と判断の範囲が明確なほうが、読まれます。
「主査」「主幹」など、係長かどうか分かりにくい職名です
職名は書いたうえで、実態を添えてください。自治体によって、主査が係長級のこともあれば、担当者級のこともあります。民間の採用担当者は、この違いを知りません。書くなら、「主査(係長級、係員◯人)」あるいは「主査(担当者級、◯◯を単独で担当)」という形です。判断の材料は、事務決裁規程の専決の区分と、人事評価の評価者かどうかの2つです。この2つが分かれば、職名に関係なく、職責の位置が示せます。職名だけで示そうとすると、外では読めません。
民間のマネジメントとは違う気がして、書くことに抵抗があります
違う部分は確かにあります。採用も解雇も自分では決められませんし、予算の枠も外から決まります。ただ、それは「与えられた制約の中で回す」という条件が違うだけです。民間の課長も、人員の枠と予算の枠は上から決まっていることがほとんどです。共通しているのは、決まった人数と決まった枠で、期限までに仕事を終わらせる設計をすることです。書くときに気をつけるのは、違いを自分から説明しないことだけです。4要素を具体的に書けば、読む側が自分で対応づけます。面接で違いを聞かれたら、そのときに答えれば足ります。